キャンプや車中泊などのアウトドア用途や災害時の備えとして、一家に1台あると便利なのがポータブル電源。特に、災害はいつ起こるかわからないだけに、早めに購入しておきたいものだ。ところが、ポータブル電源は同じ価格帯で似通ったスペックの製品が多く、実際に使用してみないと選びにくいことも。そこで今回は、価格.comでも安定した支持を集めているJackery(ジャクリ)の「ポータブル電源 1000 New JE-1000D(以下、ポータブル電源1000)」をピックアップ。実際に使用してみてのレビューをお届けする。
はじめに、Jackeryというメーカーについて紹介しておこう。すでにご存じの方も多いだろうが、同社は2019年に日本法人を設立しており、国内ではポータブル電源の先駆的メーカーである。
そんなJackeryのポータブル電源の特徴が、本体重量の軽さだ。ポータブル電源の本体重量は、バッテリー容量や最大出力とともに、製品比較のうえで重視したいポイントと言える。筆者自身、プライベートや仕事でポータブル電源を何台も使用してきて、持ち運びがしやすいことに大きなメリットを感じたからだ。
「ポータブル電源1000」は、災害時にも見つけやすいオレンジをアクセントとするボディカラーが特徴。本体上部に収納式のハンドルを備えており、持ち運びがしやすい
今回ピックアップした「ポータブル電源1000」の最大出力は、家庭用コンセントと同じ1,500Wに対応しており、バッテリー容量は1,070Wh。大出力・大容量バッテリーを搭載しながら、重量は1,000〜1,500Whクラスで最軽量となる約10.8kgと、スペック面からしてすぐれている。
バッテリー容量が1,070Whなら、目安として、消費電力29Wのスマートフォンを約45回、同80WのノートPCを約7回充電できる。また、衛星経由でインターネットに接続できる「スターリンク・ミニ」(29W)を約32.9時間利用できるのもうれしい。
本製品の本体サイズは、327(幅)×224(奥行)×247(高さ)mmと、このクラスではコンパクト。本体上部に折りたたみ式の大型ハンドルを搭載しており、片手でも両手でも掴めるため、持ち運びがしやすい。
実際に、本製品をリビングルームからキッチン、仕事部屋へと持ち運ぶことが何度かあったが、持ち運びが苦ではなかった。また、屋外への持ち出しにも便利なので、電気の消費量が多い午前中にキッチンで使用し、その後はベランダなどの日当たりのいい場所に設置し、ソーラーパネルに接続して太陽光充電をするといった使い方もできる。
端子類も必要十分だ。本体前面には、AC出力ポートを3つ、USB Type-C出力ポートを2つ、USB Type-A出力ポートを1つ、シガーソケット出力ポートを1つ搭載。主電源ボタンを押した後に、DC/USB出力ボタン、AC出力ボタンを押すと各ポートから給電ができる。
また、AC電源ポートは最大出力1,500Wに対応。ドライヤーや電気ケトルなど、電源立ち上げ時に数倍の電力を必要とする機器に供給しても、瞬間的に3,000Wまでに対応する。
なおUSB端子は、USB Type-A出力ポートが最大18W、上のUSB Type-C1出力ポートが最大30W、USB Type-C2出力ポートが最大100Wに対応しており、スマートフォンをはじめ、複数のデジタル機器への同時給電が可能。ノートPCなどを接続するときは、出力が大きいUSB Type-C2出力ポートに接続すれば、ノートPCの安定した動作が期待できる。
本体中央の液晶ディスプレイにはバッテリー残量と電力の入力値、出力値などを表示。動作状況がわかりやすい。また、液晶ディスプレイの右にはLEDライトを配置。LEDスイッチを押すと、微光モード/強光モード/SOSモード/消灯に切り替えられる
そのほか、Wi-FiとBluetoothに対応しており、専用のスマートフォンアプリから設定や動作状態の確認などが可能。動作モードや充電速度を変更することもできる。
専用のスマートフォンアプリでは、設定や動作状態の変更が可能。「バッテリ節約モード」を選択すれば、内蔵バッテリーへの負荷を30%程度軽減できるので、ポータブル電源本体の長寿命化が期待できる
「ポータブル電源1000」はUPS(無停電給電装置)機能も搭載する。UPSとは、停電時などに、電力の供給を家庭用コンセントからバッテリーに切り替える機能。本製品の場合、停電時に0.02秒以下で電力の供給源をバッテリーに切り替えられる。
UPS機能を搭載したポータブル電源を使用していれば、突然家庭用コンセントからの電源供給が切れても、瞬時にポータブル電源からの給電に切り替わるため、UPS機能に対応するWi-FiルーターやデスクトップPC、NASなどを常時接続しておけば、停電時もインターネット接続を維持し、大事なデータを喪失するリスクを避けられる。
デジタル機器を接続することでUPSのようにも使える。UPS機能に対応するWi-FiルーターやデスクトップPC、外付けHDDなどを常時接続しておくと安心だ
筆者の事務所は、築年数の古いアパートで30A契約のため、検証作業などで複数の家電を動作させると、ひんぱんにブレーカーが落ちていた。その都度、デスクトップPC内のデータ喪失や、HDDなどの破損が心配になったものだ。
さらに不便なのが、ブレーカーを上げても、しばらくはインターネットにつながらないこと。UPS機能を搭載したポータブル電源を活用すれば、こうした不便さからも解放される。
「ポータブル電源 1000」は、内蔵バッテリーに長寿命なリン酸鉄リチウムイオン電池を採用しており、毎日充電しても約10年間の使い続けられるという。約4,000回の充放電サイクル後も、70%のバッテリー残量が維持できるというから、長期間の使用が見込める。ポータブル電源は決して安くない買い物だけに、本体寿命の長さは特に重視したいものだ。
本製品は、専用のスマートフォンアプリを操作することで、バッテリーの消費を節約できる「バッテリ節約モード」に対応。これは、最大バッテリー容量を約85%に制限し、80%以下になったときのみ充電することで、バッテリーの寿命を1.5倍に延長する仕組みだ。
また、Jackeryの独自技術「低自然放電技術ソリューション」を採用しており、バッテリー残量100%の状態で1年間保存した場合、自然放電が約5%に抑えられる。災害対策などで置きっぱなしにしても、常に満充電に近い状態で使用できるのだ。
「ポータブル電源 1000」は、最大出力が1,500Wでバッテリー容量1,000Wh〜1,500Whクラスのポータブル電源の中では、最も軽量な重量約10.8kgというのが最大の魅力。ポータブル電源に大出力と軽さを求めるなら、本製品はベストな選択と言えるだろう。
1,070Whというバッテリー容量は、本格的な防災対策を考えればやや物足りないと感じるかもしれない。ただし、最大出力が1,500Wに対応するため、短時間なら出力1,000Wを超える家電も余裕で動かせるので、使い方を工夫すれば、防災対策用にも重宝する。
また、朝の忙しい時間に、家庭用コンセントだけではトースターや電子レンジ、ドライヤーなどが同時に使えない、といった問題も解消でき、普段使いにも便利な製品と言える。
さらに本製品は、3年間の基本保証に加えて、製品登録により2年間の保証延長ができ、最長で5年間の長期保証も受けられる。しかも、国内対応のサポートや修理サービス、使用後の回収サービスも用意されている。
持ち運びがしやすくて、必要十分なバッテリー容量を備え、さらに、購入後の製品サポートも充実と、Jackeryの「ポータブル電源1000」は、初めてポータブル電源に最適と言える。ポータブル電源は比較が難しい製品だが、個人的には「迷ったらJackery」と提案したい。