長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第60回は、6〜7月の梅雨の時期にかけて需要が伸びる「除湿機(衣類乾燥機)」の最新トレンドについて解説する。
【図1】価格.com「除湿機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
最近は、年間を通じて「衣類乾燥機」として利用できるとして広く訴求されている除湿機だが、当然ながら湿度が上がる夏にかけて需要が高まることに変わりはない。図1を見れば一目瞭然だが、毎年4月くらいから需要が上がりはじめ、6月をピークにグンと跳ね上がる傾向にある。まさに梅雨の時期の湿気対策、部屋干し対策としての需要が強いことがわかるだろう。なお、その後、8月くらいにはピークアウトするので、その需要期は4〜7月というかなり短い期間に集中していることがわかる。
【図2】価格.com「除湿機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)
ちなみに過去3年間の動きを見てみると、閲覧者数自体はほぼ横ばいだが、昨年2024年はやや需要が落ち込んでいる。今年2025年は、3月の値だけを見れば、過去3年の同月に比べて高めの数を示している。さらに、直近半年の同カテゴリ−の閲覧者数推移を示した図2を見てみると、3月7日前後がかなり突出しているが、これは例年にはない動きだ。このピークが何によるものかは不明だが、今後盛り上がってくる除湿機の需要にとっては明るい兆しと見ることもできる。
【図3】価格.com「除湿機」カテゴリーにおける主要メーカー別閲覧者数推移(過去3年)
図3は、過去3年の価格.com「除湿機」カテゴリーにおける主要メーカー別の閲覧者数推移を示したものだ。これを見ると、シャープが頭ひとつ抜けてトップの座をほぼ維持しており、パナソニックとコロナが入り乱れて次点を争うという状況が見て取れる。図1でも見たように、昨年はいずれのメーカーも調子を落としているが、なかでもパナソニックの落ちこみ方が大きい。例年、冬の時期には首位のシャープを超えるほどの人気となるところが、その動きもなく、かなり低迷している感じだ。逆に5位あたりに付ける三菱電機は、大きな盛り上がりはないものの、昨年の落ち込みもあまりなく、現在では2位グループの一角を形成している。
【図4】価格.com「除湿機」カテゴリーにおける除湿方式別の売れ筋製品割合(2025年3月時点)
図4は、同カテゴリ−における除湿方式別の売れ筋製品割合を示したものだが、これを見ると、コンプレッサー式が7割近くを占めており圧倒的な人気。次がハイブリッド式で約2割、残る1割程度がデシカント式だ。一般的に、コンプレッサー式は夏に強いが冬に弱く、デシカント式は冬に強いが夏に弱いと言われており、ハイブリッド式はその両方を兼ね備えているため年間を通じて利用できるとされている。これら方式のうち、ハイブリッド式やデシカント式のラインアップを比較的多く備えているのがパナソニックなのだが、そのパナソニックがここ1〜2年程度(特に冬期)やや不調となっているのは、デシカント式および、それを内包するハイブリッド式の人気がやや陰っているということの表れなのかもしれない。
【図5】価格.com「除湿機」カテゴリーにおける人気製品別閲覧者数推移(過去半年)
そのことを裏付けるようなデータがある。図5は、過去半年間の価格.com「除湿機」カテゴリーにおける人気製品別の閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、2023年3月に発売されたシャープのコンプレッサー式モデル「CV-R71-W」が頭ひとつ抜けた人気で首位をキープしており、次点には同じシャープのハイブリッド式モデル「CV-SH150-W」が比較的安定した人気を維持していることがわかる。それより下位の製品は混戦状態だ。比較的冬場に強いとされるパナソニックのデシカント式モデル「F-YZX60B-H」が、やはり12〜2月くらいまでは相対的に順位を高めているが、その人気はほぼ横ばい。むしろ、3月以降は、三菱電機のコンプレッサー式モデル「MJ-P180WX-W」や、コロナのコンプレッサー式モデル「CD-S6324(W)」などに抜かれて、順位を落としている状態だ。そしてその間、パナソニックのハイブリッド式モデル「F-YEX120B-W」の人気はほぼ横ばいという状況だ。
このグラフから読み取れるのは、シャープの製品はコンプレッサー式、ハイブリッド式とも一定の人気があるが、パナソニックの製品はデシカント式、ハイブリッド式とも、さほど人気が上がらず横ばいであることだ。パナソニック的には、本来は冬場にもう少し伸びるであろうデシカント式モデルが今ひとつ伸びず、パナソニックが得意とするハイブリッド式モデルも今ひとつ人気が上がらない状態で、それが同社の数値を押し下げている要因として考えられる。
【図6】価格.com「除湿機」カテゴリーにおける人気製品別最安価格推移(過去半年)
こうした状況を生み出している要因のひとつは、製品の販売価格だ。図6は、上記人気モデルの過去半年間の最安価格推移を示したものだが、まずいちばん高値なのがパナソニックのハイブリッド式モデル「F-YEX120B-W」で、2月に一時的に6万円を切る展開もあったが、そのほかはおよそ6.5万円前後で推移している。同じハイブリッド式のシャープ「CV-SH150-W」が現状5万円を大きく割り込むような推移を見せているのに比べると、3割程度高い印象だ。これが「F-YEX120B-W」の人気が今ひとつ上がってこない大きな理由なのは否めないだろう。
また、パナソニックのデシカント式モデル「F-YZX60B-H」も、2.8万円前後で推移しているが、同等スペックのデシカント式モデルは2万円前後の最安価格であることが多く、こちらも競合製品に比べて3割くらい高い印象だ。
この販売価格の高さが、パナソニックの除湿機の人気をやや押し下げている要因になっていることは間違いないだろう。数年前であれば、それでも性能のよさで同社製品を選ぶユーザーも多かったように思うが、さまざまな物価が高くなってきている現在、除湿機についても、その価格には厳しい目が向けられていると言えそうだ。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年4月16日時点のものです
価格.com最安価格:21,800円
発売日:2024年3月
ユーザー満足度・評価:★4.00(2人)
シャープの小型なコンプレッサー式除湿式。2023年に発売され、価格.com上でも長らく人気No.1を維持してきた「CV-R71-W」の後継モデル。A4サイズのフットプリントで設置できるコンパクトボディながらも1日あたり6.3L/7.1L(50Hz/60Hz)という除湿能力を備え、衣類乾燥や小さめの部屋の除湿などに利用できる。「プラズマクラスター7000」を搭載し、衣類などの脱臭にも効果があるとされる。タンク容量は約2.5Lで、ホースをつなげば連続排水にも対応する。
価格.com最安価格:42,800円
発売日:2024年3月
ユーザー満足度・評価:★4.46(6人)
シャープのハイブリッド式除湿機。コンプレッサー式とデシカント式の両方のメリットを持つハイブリッド式モデルでありながらも、最安価格で5万円を切るコスパの高さで価格.com上でも長く人気のモデルだ。1日あたりの除湿能力は12L/13L(50Hz/60Hz)と十分で、約2kgの洗濯物を梅雨期約57分、冬期約75分で乾燥できる。「プラズマクラスター25000」を搭載し、脱臭効果も期待できる。タンク容量は約3.6Lで、ホースをつなげば連続排水にも対応する。
価格.com最安価格:36,300円
発売日:2024年4月22日
ユーザー満足度・評価:★4.15(5人)
三菱電機のコンプレッサー式除湿機。ハイパワーが特徴で、1日あたりの除湿能力は、15.5L/18L(50Hz/60Hz)とかなり高い。そのため、7畳の部屋なら約19分で快適な状態にでき、衣類乾燥も6kgの洗濯物を一気に乾かせるという。なお、一般的にコンプレッサー式は冬場の除湿に弱いとされるが、本機は霜取り運転機能「おまかせ霜取り」や、低温時に強運転よりパワフルな風量を実現する「冬モード」を搭載しており、冬場の除湿にも利用できる。タンク容量は約4.7Lで、ホースをつなげば連続排水にも対応する。
価格.com最安価格:22,500円
発売日:2024年3月中旬
ユーザー満足度・評価:★4.69(10人)
コロナのコンプレッサー式除湿機。スリムでコンパクトなボディながら、1日あたり5.6L/6.3L(50Hz/60Hz)の除湿能力を備え、衣類乾燥や小さめの部屋の除湿に役立つ。ユーザーレビューでは、動作音の静かさを評価する声も多い。タンク容量は約3.0L。ちなみに、「価格.comプロダクトアワード2024」にて金賞を受賞した高評価モデルだ。