長年、家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第66回は、めまぐるしくトレンドが変化しているコードレススティック掃除機の最新状況について詳しく解説する。
※最安価格は2025年7月16日時点のものです
【図1】価格.com「掃除機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
まずは掃除機市場全体のトレンド変化から見てみよう。図1は、価格.com「掃除機」カテゴリーの過去3年間における閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、掃除機市場全体はこの3年間、多少の減少はあるもののその下がり方はゆるやかであり、ほかの家電製品と比べても、その需要は底堅いことがわかる。なお、掃除機の需要ピークは毎年、年末年始が多く、夏の時期は需要が停滞しやすいことも見て取れる。
【図2】価格.com「掃除機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)
さらに、同カテゴリーのこの半年における閲覧者数推移を示したのが図2だ。こちらも年末年始のピーク以降は週12万〜18万人くらいを遷移しており、さほど需要は落ちていないことがわかる。むしろ、直近ではやや上昇傾向にあることも見て取れる。
【図3】価格.com「掃除機」カテゴリーにおける主要メーカー別閲覧者数推移(過去3年)
以上のように、掃除機カテゴリー全体で見ると、この3年で需要はそれほど落ちていないようだが、これをメーカーごとに見ると、いろいろ変化があることがわかる。図3は、過去3年間における、同カテゴリーにの主要メーカーごとの閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、3年前は閲覧者数が多かった日立の数値が下がっており、直近ではこの3年間トップ争いを続けているダイソンに首位の座を奪われていることがわかる。また、この2社と首位争いを演じてきたパナソニックもやや停滞気味で、2024年の年末あたりから急激に伸びてきたSharkに追いつかれるような展開だ。その下のアイリスオーヤマ、マキタもやや減少傾向だが、ロボット掃除機を手掛けるエコバックスはほぼ横ばいか、やや上昇傾向にあり、これら2社とつばぜり合いを演じている状況だ。
このように、この3年間で日本の掃除機市場における主要プレイヤーの立ち位置が変化してきている。ざっくりまとめるなら、ここ数年好調だった日本メーカーの人気が下がり、海外メーカーの人気が上がってきたということだ。かつてダントツの人気でこの市場を牽引してきたダイソンは、ここ数年、日立などの国内メーカー人気に押され気味だったが、ここへ来て再び人気を取り戻しつつある。また、国内市場では新興メーカーといえる米Sharkも、徐々に認知度を高めており、ユーザー評価もなかなかに高いことから、日本市場でもしっかりとした地盤を固めている。
これに加えて、ロボット掃除機の分野では、中国のエコバックスが確実にその地歩を固めており、かつて同カテゴリーで高い人気を維持していたiRobotの「ルンバ」を大きく引き離す人気を獲得しつつある。ただ、掃除機市場全体の中では、相変わらずコードレススティック掃除機がほとんどのシェアを占めており、ロボット掃除機はまだまだシェアとしては小さい状況だ。
【図4】価格.com「掃除機」カテゴリーにおける主要製品別閲覧者数推移(過去半年)
この状況について、もう少し詳しく解説しよう。図4は、現時点(2025年7月中旬)で価格.com同カテゴリーの人気ランキングにおいてベスト10に入っているコードレススティック掃除機7モデルの、過去半年間の閲覧者数推移を示したものだ。ちなみに、7製品中、ダイソンが3製品、Sharkと日立がそれぞれ2製品という内訳だ。
これを見ると、まず、今年2025年2〜3月くらいにトップ人気だった日立「ラクかるスティック PV-BL3L(C)」が人気を下げている。同様に人気だったダイソン「Dyson V8 Slim Fluffy Extra SV10K EXT BU」も人気を下げているが、直近ではやや戻してきている。また3月くらいに人気だったダイソン「Dyson V12 Detect Slim Fluffy SV46 FF」も、一時は人気を下げたが、直近では戻している。また、Shark「EVOPOWER SYSTEM STD CS102JGY」は、半年前から比べると大きく人気を伸ばしており、直近では人気トップの座についている。
上記の4モデルで比較すると、まず日立「ラクかるスティック PV-BL3L(C) 」は、標準重量1.1kg(※)という軽さが売りの製品で、最安価格で3万円を切る手ごろさもあって人気を得てきた製品だ。当モデルに代表される日立の軽量コードレススティック掃除機は、ここ数年、価格.comの「掃除機」カテゴリー内でも根強い人気を維持しており、人気上位の常連製品であったが、ここへ来てやや失速してきているようだ。なお、同じ日立でも、紙パックを採用した「かるパックスティック PKV-BK3L(V)」のほうは、比較的安定した人気を維持している。
いっぽうのダイソンだが、まず「Dyson V8 Slim Fluffy Extra SV10K EXT BU」については、以前のモデルを一部改良した廉価版モデルという位置づけの製品だ。2万円台で購入できる手ごろさからここ最近人気が高い。もうひとつの「Dyson V12 Detect Slim Fluffy SV46 FF」は、「Hyperdymiumモーター」を採用したサイクロン式掃除機のスタンダードモデルで、パワフルな集じん力が特徴。ただし最安価格で4万円台前半と、ダイソン製品としては比較的安めなことから、人気が増してきている。
最後に、直近で人気を高めているShark「EVOPOWER SYSTEM STD CS102JGY」だが、こちらはシンプルな構造の軽量コードレススティック掃除機で、最安価格は2万円を切る価格の安さが特徴。取り立てて特徴的な機能があるわけではないが、コスパとしては相当に高く、ユーザー満足度も総じて高い。
上記4製品を比べてみると、4万円を超える「Dyson V12 Detect Slim Fluffy SV46 FF」を除いた3モデルはほぼ1万円台後半〜2万円台という最安価格をつけている廉価モデルであり、このあたりの価格帯に人気が集まっていることがわかる。一時期は3万〜5万円くらいのレンジで人気モデルが分散していたが、最近はかなり低価格モデルに人気が寄ってきているようだ。
日立の「ラクかるスティック」も十分に安く、バランスの取れた製品として人気を維持してきたが、それより安い旧モデルを販売するダイソンやSharkにコスパ面でやや押されているような雰囲気がある。逆に言えば、このあたりの海外メーカー勢の実力が多くのユーザーに認められ、日本市場においてもしっかり浸透してきた表れと言ってもいいだろう。
※:標準重量は、本体、延長パイプ、ヘッド、電池の合計質量
●当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年7月16日時点のものです
価格.com最安価格:18,980円
発売日:2024年12月
ユーザー満足度・評価:★4.85(7人)
アメリカの家電メーカーSharkが販売するシンプルな機能のコードレススティック掃除機。ダストカップが小さく、全体的にボディのスリムさが特徴だ。独自の「ブラシレスパワーフィン」によって、さまざまなタイプの床に対応可能。上部のボタンを押すだけでハンディクリーナーに早変わりする機構も備え、充電スタンド付きで2万円を切る低価格で人気を伸ばしている。なお、ゴミを自動収集してくれるクリーンドックが付属する姉妹製品「EVOPOWER SYSTEM STD+」も便利だ。
価格.com最安価格:42,346円
発売日:2024年4月10日
ユーザー満足度・評価:★4.38(22人)
ダイソンの現行モデルの主力製品。「Hyperdymiumモーター」を使った強力なサイクロン吸引で、ゴミを強力に取り除く。LED付きの「Fluffy Opticクリーナーヘッド」によってゴミが見やすく、掃除がしやすくなった。除去したゴミの状況やバッテリーの残り時間などを見やすく表示するデジタルディスプレイも搭載。この内容で4万円ちょっとという最安価格なら、決して高くはない。
価格.com最安価格:26,315円
発売日:2022年5月18日
ユーザー満足度・評価:★3.93(47人)
2019年に発売されたダイソンのコードレススティック掃除機「Dyson V8 Slim」をベースに一部改良を加えた廉価版モデル。吸引力の高い「V8モーター」によるサイクロン吸引と「Fluffyヘッド」の組み合わせで、強力にゴミを取り除く。ダイソンとしては軽めの2.15kg(標準装備)で扱いやすく、標準クリーナーに加え、ミニモーターヘッドやすき間ノズルなどが付属する。スイッチはトリガー式だ。設計はやや古いが、2万円台で買えるダイソンとして今も人気が高い。
価格.com最安価格:29,771円
発売日:2023年6月28日
ユーザー満足度・評価:★4.39(26人)
標準質量で1.5kgという軽量のコードレススティック掃除機。ダイソンならではの強力な集じん力を持ちつつも、女性でも楽に扱える軽さのため、人気がある。ヘッドも小型で扱いやすい「Micro Fluffy クリーナーヘッド」を採用。スイッチはトリガー式ではなくボタン式なので、使用中にずっと引いている必要もない。最安価格で3万円を切る低価格もうれしい。
価格.com最安価格:29,700円
発売日:2024年3月
ユーザー満足度・評価:★4.30(19人)
価格.comでは長らく人気を誇ってきた日立の軽量コードレススティック掃除機「ラクかるスティック」の2024年モデル。標準重量1.1kgの軽さで取り扱いやすく、ゴミが見えやすいLED付きの小型モーターヘッドと、ハイパワーのファンモーターとの組み合わせで、ゴミをしっかり吸引する。ハンディブラシやすき間ブラシのほか、スタンドも付属するなど、アタッチメント類も多く、最安価格で3万円を切る価格帯としてはお得感が高い。紙パック版の「かるパックスティック PKV-BK3L(V)」も人気だ。