掃除機はゴミを“吸って取る”ものですが、4月下旬に発売されるシャープのロボット掃除機「COCOROBO RX-V95A(以下、RX-V95A)」は“吹いてから吸い取る”でキレイにします。何を“吹く”のかというと、空気。部屋の隅に到達すると風を吹き付け、コーナーにたまったゴミを取りやすくする手法を開発しました。この機能を搭載したことにより、部屋の隅ゴミの除去率は従来の約2.6倍にアップ。さらに、部屋の状況にあわせて走行を“縦横”の規則正しいものからランダムに切り替えたり、フローリングから絨毯に床質が変わった際には吸引力を強めるなど大幅に掃除システムが改良されました。そんな「RX-V95A」の動きを発表会で見てきたので、レポートします。
家事をしている間や不在時に、勝手に掃除してくれるロボット掃除機は非常に便利なアイテム。普通の掃除機ほどの吸引力はないため大きなゴミは吸じんできませんが、日々、たまってしまうホコリや毛、砂ゴミなどの微細じん除去に役立ちます。しかし、ブラシが届きにくい部屋の隅にあるゴミは取り残してしまうことも。シャープがロボット掃除機ユーザーに調査したところ、部屋の隅や窓際にたまるゴミを取ってほしいという不満が多かったそう。そのいっぽうで、“隅にあるゴミまで取ってほしいけれど、壁や家具への接触は気になる”という声も寄せられました。そこで、同社は風の力を利用して隅ゴミをかき出す「エアーすみブラシ」を開発。加えて、家具の配置状況を検知して走行パターンを自動で変える「縦横無じんシステム」も搭載しました。これらの機能を、順に見ていきましょう。
ロボット掃除機利用者の声を集めると、購入前に気になっていた “部屋の隅のゴミ”や“壁際のゴミ”、“壁や家具への接触”に関しては、実際に使用しても満足感は得られていないことがわかります
風の力でかき出す「エアーすみブラシ」
靴を脱いで生活する日本の家庭には綿ぼこりなどの繊維系のゴミが多く、重量が軽い繊維系のゴミは部屋の中心部には留まらず、隅のほうに集まってしまいがち。ロボット掃除機の基本的な集じん方法は、本体から飛び出たサイドブラシでゴミをかき出し&かき集め、本体裏面にある吸込口から吸い込みます。そのため、ブラシの届かない場所にあるゴミは取ることが困難。とくに部屋の隅ではこのようなことが起こりやすく、結局手作業で掃除しなければなりませんでした。そんな状況で作用するのが、「エアーすみブラシ」です。「RX-V95A」が“部屋のコーナーだ”と検知すると、左右にボディを振りながら、風を放出。進行方向にゴミがかき出されるように風を吹き付けるので、そのあとの走行でゴミはキレイに吸じんされます。
サイドブラシが集めたゴミを、回転ブラシでかき込むと同時に吸引。基本的な構造は、一般的なロボット掃除機と同じです。サイドブラシの長さや位置も、他社のロボット掃除機と遜色なさそう
超音波センサーで部屋の隅を検知すると、本体右の側面からのみ風が放出。風を吹き付けたまま、ボディを左右に動かすことで隅にあるゴミをこれから走行する方向へとかき出します
“吹く”効果を見てみましょう(下の動画参照)。部屋の隅にくると、内蔵されたファンの回転数がアップし、風が吹き付けられます。隅に溜まっていたゴミが進行方向に移動し、キレイに除去されました。ブラシは届いていませんが、風で上手にゴミが誘導されていますね。
走行パターンを自動で変える「縦横無じんシステム」
ロボット掃除機の走行スタイルは、縦横に規則正しく動くものとランダムに走るものに分類されます。何も障害物がない空間では、どちらの走行でもほぼキレイに吸じんできますが、実環境には障害物がいっぱい。とくに日本の住宅は、比較的面積が狭く、家具や物がいくつも配置されているため、どちらかだけの走行ではゴミを取り切れないこともあるそう。そこで開発されたのが、部屋の状況にあわせて走行パターンを自動で切り替える「縦横無じんシステム」。障害物がない所では縦横にジグザグ走行、障害物が多くなってきたらランダム走行と変化するだけでなく、椅子などの脚周りを走る「くるりん走行」、そして「ゴミセンサー」がゴミがたくさんある所を発見するとその場所を中心に何度も動く「8の字走行」に次々と変えて掃除します。
障害物の検知は、超音波センサーで実施。縦横のジグザグ走行でスタートし、家具などが多いと判断するとランダム走行に切り替わります。脚周りを1周する「くるりん走行」や集中掃除する「8の字走行」は、必要に応じて作動。もちろん、コーナーでは「エアーすみブラシ」が作用します
下の動画のように家具の脚を検知すると、その周りをクルリと走行して掃除するのが「くるりん走行」。
センサーがゴミの多い場所を検知すると、吸引力がアップ。走行してきた方向に一度戻るように動き、ゴミがある場所を集中的に縦横に動くのが「8の字走行」です(下の動画参照)。
実環境で、「RX-V95A」を稼働した走行経路を視覚化したものが下の動画。家具の配置に合わせ、走行パターンが瞬時に切り替わり、部屋中をくまなく走行したことがわかります。
風を利用して隅ゴミをかき出す「エアーすみブラシ」と走行パターンが変化する「縦横無じんシステム」が大きな改良ポイントですが、「COCOROBO」といえば、おしゃべりする「ココロエンジン」も見逃せません。また、シャープが誇る除菌技術「プラズマクラスター」も搭載されています。その他の押さえておきたい機能を紹介しましょう。
もっと愛着がわく!? おしゃべりする「ココロエンジン」
ロボット掃除機が掃除する姿を見ていると、愛着がわいてくるという話をよく聞きます。その上をいくのが「COCOROBO」。「COCOROBO」は第1号機から人工知能「ココロエンジン」が搭載されており、“おしゃべり”することで注目を集めました。掃除中に段差を見つけると「おっとっと」と言ったり、充電台に戻ると「ただいま!」と発する姿がかわいいと評判なんだそう。さらに、本体に声をかけることで操作したり、「COCOROBO」がユーザーに返事をするシステムも用意されています。「RX-V95A」では、この“おしゃべり”機能がバージョンアップ。これまでよりも、「ゴミ発見!」「壁際やりまーす!」といったように仕事状況をアピールするようになったほか、挨拶のバリエーションも豊富に。また、録音機能が追加されたことにより、本体の声を変更できるようになりました。
留守中にお掃除した、その働きぶりや気分を伝える機能も追加。本体のランプが光っていたら、「COCOROBO」の声を聞いてあげましょう
SDカードを挿入し、本体前方にあるマイクに向かって声を吹き込めば、好きな声を本体の音声にすることができます。孫の声で挨拶してくれる「RX-V95A」を、祖父母にプレゼントするのもよさそうですね
プラズマクラスターでスポット脱臭
空気清浄機に採用されているプラズマクラスターが、「RX-V95A」にも搭載されています。吸じんされたゴミは内部のフィルターでキャッチされるため、排出される空気はキレイですが、その排気にのせてプラズマクラスターイオンが放出されます。と言っても、広い空間に作用するわけではありません。掃除するモードとは別に「プラズマクラスターシャワーモード」が用意されており、このモードにすると走行はせずに、プラズマクラスターイオンのみが放出されます。
本体をクローゼットの近くに置き、「プラズマクラスターシャワーモード」を作動させることで、衣類に付いたタバコの付着臭を除去できるそう。ただし、送風する必要があるため、掃除中と同じレベルの運転音がします
簡単で清潔なゴミ捨てと手軽なバッテリー交換
掃除はおまかせでも、ゴミ捨ては手作業。「RX-V95A」のダストボックスは上から取り出す仕様となっており、すべて水洗いできます。また、バッテリーは自身で交換できるタイプなので、長期間使用してバッテリーの持ちが悪くなってきた際に本体ごと預ける必要がありません。
横に引き出すタイプのダストボックスよりも、本体から取り出す際に周囲にゴミが落ちにくいのも魅力。ダストボックス上部にあるフィルター(写真右の青い部分)が、細かいホコリをキャッチします。抗菌・消臭効果があるので、ニオイの低減にも効果を発揮
約1,100回の充電ができるリチウムイオンバッテリーを採用。交換時期がきたら、自分で外して取り替えられます
「8の字走行」を自動で行うためのゴミセンサーや、SDカードに音声を録音できる機能などを省いた「RX-V70A」も同日発売されます。
市場想定価格は75,000円前後。カラーは「ホワイト系」のみ