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パナソニック サイクルテック 柏原工場、取材レポート

国内屈指の自転車ブランド「パナソニック」。 その工場では、熟練の職人が腕を振るっていた!

パナソニック サイクルテック 柏原工場

パナソニック サイクルテック 柏原工場

「パナソニック」というブランドから自転車を連想する人がどれだけいるだろうか。しかし、パナソニックは、国内でも歴史の長いれっきとした自転車ブランドであり、今でもトップクラスの実績を持っている。どころか最近では、パナソニック本体とのシナジーが見込まれる「電動アシスト自転車」の普及によって、ますます存在感を増してきているのだ。そんなパナソニックの自転車工場を見学する機会に恵まれた。自転車歴40年の価格.comマガジン編集長・鎌田が、その様子を熱くレポートする!

意外と古い、パナソニックの自転車事業

パナソニック サイクルテックのエントランスにあるショールーム内に掲げられた、同社の沿革資料。まさか、松下幸之助さんが自転車店で丁稚していたとは、存じ上げませんでした……

総合家電メーカーとして知られるパナソニックが自転車を製造し始めたのは、意外にも結構古い。パナソニックグループ創業者の松下幸之助氏が、丁稚(でっち)として大阪に出たのが、明治37年(1904年)11月のこと。それからすぐ明治38年(1905年)2月には、五代自転車店に移っており、松下幸之助氏は実に9歳の頃から自転車店で働いていた。意外にもパナソニックと自転車の関係は深いのだ。その後、大正6年(1917年)に、電球用ソケットの製造販売を始め、翌年大正7年(1918年)に松下電気器具製作所を設立し、これが今のパナソニックにつながっていくのだが、創業から5年後の大正12年(1923年)には、早くも自転車用砲弾型ランプを考案・発売している。当時の主力製品であった電球ランプをいち早く自転車に取り付けたのである。

そのいっぽうで、大正13年(1924年)には、現在のパナソニック サイクルテックの前身となった相宅金属工業が、自転車用のハンドル・フレームを製造開始している。これが戦後の昭和27年(1952年)に、当時の「ナショナル自転車」のフレーム・ハンドル専属工場となったことで、後の総合自転車メーカー「ナショナル自転車工業」へと発展を遂げていく。その後、平成18年(2006年)に「パナソニック サイクルテック」と社名を変え、今に至っているが、創業からすでに90年以上自転車製造に携わっている、国内でも老舗のメーカーであることはおわかりいただけるだろう。

同社ショールームで懐かしい自転車を発見!! 筆者が子供時代にはこういう感じのランドナーがはやっていたのだ。ATシフト型の6速変速機とか、スーパーカーライトとか、アナログ式のスピードメーターとか、懐かしすぎて思わず何枚もシャッターを切ってしまった

自転車好きな方ならよくご存じのことと思うが、パナソニックの自転車は、一般用途の自転車だけでなく、競技スポーツとしてのロードバイクなどの世界でもよく知られた存在だ。国内の自転車メーカーとしては、タイヤメーカー「ブリヂストン」系列のブリヂストンサイクルと並ぶ、二大巨頭とも呼べる存在であり、各種のレースなどでその製品を目にしないことはない。今でも、パナソニックのロードバイクは「POS(パナソニック・オーダー・システム)」と呼ばれるオーダーメイド方式で生産されており、1台1台、職人の手による受注生産で、世界に1台だけのオリジナルオーダーのバイクを作り出している。このように、パナソニックの自転車は、いわゆる「ママチャリ」の類いから、プロのアスリートが使うロードバイクに至るまで、かなり幅広いラインアップをそろえており、この種類の多さは国内でも随一の存在となっているのだ。

自転車好きの中では有名なパナソニックのロードバイク。ひと目でそれとわかる、この独特なカラーリングにあこがれた人も多いことだろう

レーム1本から国内生産。しかもオーダーメイドで1mm単位の注文も可能という、パナソニックのオーダーシステム(POS)。プロの競輪選手なども御用達のこのシステム。ああ、あこがれる……

電動アシスト自転車市場においても国内トップシェア

同社ショールームに展示されていた、昔の電動アシスト自転車。なんと第一号は昭和55年(1980年)に発売されたというから、その歴史は結構古い

そんなパナソニックの自転車が、今もっとも力を入れているのが、電動アシスト自転車である。現在、国内の電動アシスト自転車市場は、パナソニック、ヤマハ、ブリヂストンの3ブランドでほぼ占められている状況であるが、その中でもトップシェアをキープし続けているのがパナソニックなのだ。これはある意味では当然のこととも言えるが、家電製品の製造を中核に置くパナソニックにとって、電動アシスト自転車の核となるアシストユニットを製造することはまさに得意分野。自社グループ内でアシストユニットやバッテリーを製造できるというメリットを生かし、自転車のフレームからアシストユニットまですべてを自社開発・製造できるというのが、パナソニックならではの強みと言える。こうした製造環境に加えて、充実した国内の販売網を持つパナソニックの電動アシスト自転車は、バラエティも多様で、さまざまなユーザーの細かいニーズにしっかり応えられる。

パナソニックの電動アシスト自転車のラインアップは実に多岐にわたる。いわゆるママチャリ的な実用車「VIVI(ビビ)」シリーズ(写真上)から、小さな子供を乗せられる「Gyutto(ギュット)」(写真中央)、通学向けの「TIMO(ティモ)」やスポーツ系(写真下)まで、現行のカタログラインアップだけで32製品ものタイプが存在する

それだけではない。新分野への展開も早く、たとえば、スポーツタイプの電動アシスト自転車を、ライバルに先駆けて数多く展開しているのもパナソニックだ。全世界的に見ても、スポーツタイプの電動アシスト自転車というのはまだまだ例が少ないが、パナソニックでは、現行カタログに掲載されているだけでも5車種のスポーツタイプの製品を展開中。この7月に発売される最新モデル「XM2」では、ECOモードで100kmを超えるアシスト距離を実現しており、スポーツタイプの電動アシスト自転車も本格的普及に勢いをつけている。

パナソニックが電動アシスト自転車で強みを持つ理由のひとつは、グループ内でバッテリーを製造できる環境があること。バッテリーは年々小型化しており、アシスト可能な走行距離も伸びている

今年度2018年度のパナソニック サイクルテックの大方針のひとつには、「スポーツバイク事業の拡大」があげられており、電動アシスト自転車では、ハイエンドシリーズの「X」シリーズに加え、中価格帯、低価格帯のゾーンも拡充していく考えだという。また、単純なハードウェアの提供という枠を超え、自転車の楽しみ方をみずから提案するため、各種イベントの開催や、観光地・リゾート地での積極的なレンタル展開も考えているとのこと。同社社長である片山栄一氏によれば、現状ではまだ自転車全体の8%程度しかない電動アシスト自転車の市場を、40〜50%程度にまで上げていきたいということで、この事業にかけるパナソニックの熱い期待が伝わってくる。

「現状ではまだ自転車全体の8%程度しかない電動アシスト自転車の市場を、40〜50%程度にまで上げていきたい」と語った片山社長

パナソニック サイクルテック柏原工場を取材!

ついに工場見学開始! ここは最初の工程で、通路の両側に並んだ鉄パイプをカットし、フレームとして加工していく場所となる

「パナソニック」ブランドの自転車を製造するパナソニック サイクルテックは、大阪府の柏原市にある。ここでは、上記の通り、フレーム製造から塗装・組み立て、駆動ユニットの生産、梱包出荷までの一貫生産を行っており、国内でこの工程すべてをまかなえる工場は、ほかに例がないという。今回は、そんな一貫生産の現場を実際に見ることができる貴重な機会ということで、筆者も期待に胸がふくらんだ。

この柏原工場での自転車製造の工程は、大きく5つに分けられる。まずは「生地」という、フレーム製造・溶接を行う工程だ。柏原工場では、アルミを除く鉄(クロモリ)、チタンのフレームを一環製造できる設備を持っており、パイプの切断から加工、溶接までを行っている。このうちもっとも難易度が高いのは溶接の作業であるが、すべてをオートメーションで行っているのかと思いきや、ところどころで手作業による溶接が行われていたのには驚いた。「MAG溶接」と呼ばれる電気溶接はロボットに任せているが、美しい仕上がりが期待される「ロー付け溶接(ガス溶接)」や、チタンフレームで使われる「TIG溶接(電気溶接)」に関しては、熟練の工員がしっかりと行うことで、見た目にも美しい仕上がりを実現しているのだ。

熟練の職人の手によって、ロー付け溶接がなされていく様子。すべてがオートメーションではなく、必要な場所は、仕上がりがきれいになる人の手による溶接で加工を行うのが、同社のこだわりの部分だ

フレームができあがると、次は「塗装」の工程に移る。ここでは、下処理を行ったフレームに対して、「下塗り」「中塗り」「上塗り」という3つの塗装が施される。まず下塗りで下色をうけ、中塗りで本色をつけ、さらに上塗りでコーティングを行うという流れだ。この塗装作業も主に人の手を介して行われており、最終的に厳しい検査を受けて、色ムラがないか、塗装ダマなどができていないかがチェックされる。なお、パナソニックの自転車の2018年モデルのカラーラインアップは全31色にのぼるが、登録色は200色用意されており、オーダーメイドなどで細かく対応できるとのことだ。

ここまででパーツの準備が終わり、続いては「組立」工程に移る。その後は「駆動」と呼ばれる工程で、ここでは電動アシスト自転車におけるアシストユニットの取り付けが行われるのだが、ここでも熟練の工員たちが、1台1台しっかりとユニットを取り付け、精度の高い組み立てを行っていたのが印象的だった。これが終わると、いよいよ「梱包・出荷」という工程に移っていき、全国・全世界にここからパナソニックの自転車が出荷されていくという形だ。

肝となるアシストユニットの取り付けも、ひとつひとつていねいに熟練の工員たちが行っていく。以前は販売店での最終組み立てが常識だった自転車市場だが、最近は安全面の配慮などもあり、メーカー側で最後までしっかり組み立ててから出荷するとのことだ

工場取材を終えて

最新のスポーツモデル「XM2」。実際に工場内の坂道コースで試乗してみたが、踏み出しからいきなり効く強力な電動アシストに驚かされた。30°程度の坂道でも難なくのぼっていってしまうほどパワフルだ

今回のパナソニック サイクルテック柏原工場の取材を終えて感じたのは、パナソニックの自転車作りに対する本気度である。幼い頃より自転車に親しんできた筆者にとっては、パナソニックの自転車(当時はナショナルの自転車)は、マスプロダクトの代表のような存在に思えていた。また、その製品ラインアップもあまりにも多岐にわたるため、かえって特徴のないものに映っていたのも確かだ。それは、大量のマスプロダクトを生産する家電メーカーのパナソニックのイメージが強かったせいかもしれない。

しかし、今回の工場取材で見たように、パナソニックの自転車は、かなりこだわりを持って、1台1台が高い精度で作られていた。特に、熟練の工員が1台1台ていねいに溶接を行ったり、塗装したりといったイメージは、実際にその目で見てみないとなかなかわかないものだけに、今回の取材でかなり見方が改まった。加えて、パナソニックが得意とする電気分野を巧みに取り込んだ、電動アシスト自転車の進化が予想以上に早いことにも驚かされた。取材の最後に、いくつかのパナソニック製・電動アシスト自転車を試乗することができたのだが、そのアシスト力の強さと、こぎ出しから反応する速さには、ここ数年の電動アシスト自転車の進化スピードの速さをまざまざと感じさせられた。

パナソニックの電動アシスト自転車にかける思いはかなり本気だ。そして、トップシェアを誇るパナソニックが本気になればなるほど、電動アシスト自転車の普及スピードも増していくことはもはや疑う余地がない。あと10年もすれば、日本の自転車利用シーンは大きく様変わりしているかもしれない。

鎌田 剛(編集部)

鎌田 剛(編集部)

価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。

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