無謀 or 英断? 36歳から始めるトライアスロン

無謀 or 英断? 36歳から始めるトライアスロン【第1回シューズ選び】

スイム、バイク、ランの3種目を続けて行う過酷なスポーツ「トライアスロン」の魅力に迫る

スイム、バイク、ランの3種目を続けて行う過酷なスポーツ「トライアスロン」の魅力に迫る

スイムとバイクをこなしたうえで、最後はランニング――。

“鉄人レース”とも呼ばれるトライアスロンは、過酷なスポーツというイメージが強い。そんな競技に今、ひとりの男がチャレンジしようとしている。「価格.comマガジン」編集者、牧野(36歳)だ。トライアスロンを趣味にしているライターの私からその魅力について吹き込まれ、ちょっと興味があるそぶりをしていたら、いつの間にかチャレンジすることに……。準備期間は1年間。果たして超初心者の牧野は完走できるのか? そして、先日放送された「24時間テレビ 愛は地球を救う」のみやぞんのように、トライアスロンの魅力と感動をお届けできるのか?

トライアスロンとはどんな競技?

牧野は、日ごろフットサルに興じ、過去にフルマラソン(42.195km)を1回完走した経験がある。しかし、多少体力に自信があるとはいえ、トライアスロンについては詳しく知らない。この状態では完走できるとは思えない……。

そんな牧野がまず訪れたのが、東京・千駄ヶ谷にあるトライアスロン専門ショップ「アスロニア」だ。国内最大級の専門店で、自転車やウェットスーツなど、トライアスロンで使用するギアの販売だけではなく、スクールの運営やレースの主催も行うなど、トライアスロンというスポーツを総合的にサポートしている。

自身もトライアスロンを楽しんでいるという店長の蒔田(まきた)俊史さんに、まずは競技の基礎を聞いてみた。

カフェのように開放的で明るい「アスロニア」の店内。厳選したギアを展示・販売する

カフェのように開放的で明るい「アスロニア」の店内。厳選したギアを展示・販売する

店長の蒔田さんもトライアスリート。常に選手としての目線を大切にするために、競技を続けている

店長の蒔田さんもトライアスリート。常に選手としての目線を大切にするために、競技を続けている

蒔田さん(以下、蒔田) トライアスロンは「ライフスタイルスポーツ」と言われている競技です。レースに向けてトレーニングの計画を立てて、それを生活に組み込んでいく。そのプロセスを、言い換えれば「トライアスロンがある生活」を楽しんでいくスポーツなんです。

牧野 プロセスがあって、結果がある。そこから達成感を見出しているんですね。レースで完走するだけが目的ではないんだ……。そういった特徴が、経営者といったエグゼクティブな人たちをも魅了しているんですかね。知り合いにも競技者がいますけど、生活そのものが“トライアスロンになっていく”から、あんなにハマっているんだと理解できました(笑)。

距離は主に4種類! 初心者でも十分に完走できる

しかし、いくら「プロセスが楽しいんだ!」と言われても過酷なものは過酷。そうそう簡単に完走できるものではないと思われる。

蒔田 確かに過酷なイメージがありますが、実はいろいろな距離設定がそろっており、そんなに過酷さを感じないレースもあります。自分の実力に合ったレースを選んで、きちんと準備しておけば、初心者でも十分に完走することができますよ。お客さんにもそんな人はたくさんいますから。

基本的なトライアスロンのレースの距離設定。ちなみに、「ロングディスタンス」より長い「アイアンマンレース」は、スイム3800m、バイク180q、ラン42qの総距離約225km!

蒔田 一般の人がイメージするトライアスロンは、「ロングディスタンス」のイメージだと思います。いっぽうで、「アイアンマンレース」となると、総距離約225km。確かに過酷です。でも、「スプリントディスタンス」や「オリンピックディスタンス」の距離ならどうですか? トライアスロンの「ただただ過酷」というイメージは少し変わりますよね。

牧野 確かに、これならちょっとできるかもしれない、という気にはなります(笑)。

蒔田 「オリンピックディスタンス」は、名前の通り、オリンピックにおけるトライアスロンの距離設定。現地やテレビで観戦するのにちょうどいい距離として作られました。

「オリンピックディスタンス」に初心者が挑戦する場合、大体競技時間は3時間ちょっとになります。完走を目指すなら、まずは3時間動き続けられる体力をつけることが目標になりますが、牧野さんの場合、フルマラソンを完走しているのでそのあたりは問題ないでしょう。

次のポイントはスイム。1500mを泳げる泳力が必要です。競泳をやっていた人でも、1500mを連続して泳ぐのは大変ですので、スイムのトレーニングは十分にしておくといいでしょう。

スイム、バイク、ランの3種目にプラス1種目?

スイム、バイク、ラン以外に、トライアスロンの面白さのひとつとしてあげられるのが、「トランジション」だ。スイムからバイク、バイクからランに移行する際、着替えといった次の種目の準備が必要で、実はその切り替え時間も競技時間として計測される。この切り替えは「トランジション」と呼ばれ、“第4の種目”とも言われている。

牧野(左)の超基本的質問に対してもていねいに答えてくれる蒔田さん(右)

牧野(左)の超基本的質問に対してもていねいに答えてくれる蒔田さん(右)

蒔田 初心者の場合はそれほど「トランジション」の時間を気にしなくてもいいですが、プロレベルになるとそうはいきません。スムーズに競技を切り替えることが、順位に大きく影響してきますから。初心者にしても、目標を「制限時間ギリギリにフィニッシュ」に設定している場合は少し気にする必要が出てきます。「トランジション」の時間を1分減らせば、競技を1分速くこなしたのと同じ効果がありますからね。

牧野 それなら、ランのタイムを1分縮めるよりも、切り替え時間を短縮したほうが効率的じゃないですか!

蒔田 確かにそうなんですが、初めのうちはスピードよりも確実性を重視したほうがいいですね。急ぎすぎてヘルメットを忘れたまま自転車に乗ろうとしてしまった人も見たことがありますし。そのことにもし途中で気づいたら、ヘルメットを取りに戻らなくてはいけないんです。

牧野 それ、大きなタイムロスになりますね。ちなみに、その「トランジション」はどこで行うものなんですか? あと、自転車やシューズなどはどこに置いてあるんですか?

蒔田 「トランジションエリア」という場所が会場に準備されていて、その中に自分のゼッケン番号が書かれた専用スペースが用意されています。レースが始まる前に、その専用スペースに、自転車やヘルメット、ランニングシューズなどを置いておくんです。

そして、レーススタート。まずは「スタートエリア」から泳ぎ始めます。泳ぎ終わったあとは、「トランジションエリア」へ行き、着ていたウェットスーツを脱ぎ、ヘルメットをかぶり、自転車に乗って走り始めます。バイクが終わったあとも同じです。自転車などのギアを「トランジションエリア」に再度置き、今度はランニングシューズを履いて最後のランに挑みます。

牧野 なるほど! 種目間に自分の「トランジションエリア」を挟むんですね。種目の切り替えも計測対象になるなんて、スポーツとしては珍しいですね!

トライアスロンには“機材スポーツ”という側面もある

特徴的な形状のトライアスロン(専用)バイク。深い前傾姿勢をとって空気抵抗を減らすために、ハンドルの上にヒジを乗せて走るためのパッドが付いている

牧野 先ほどウェットスーツの話が出ましたが、スイムの時には必ず着る必要があるんですか?

蒔田 日本の場合、ほとんどの大会で着用は義務化されています。トライアスロン用ウェットスーツは、保温目的というよりも、浮力を受けるために着るという意味合いが強いです。素材に気泡が含まれていて浮きやすいうえに、スイムの動きに会わせてカッティングが工夫されていたり、素材の厚さが変えられていたりと、普通のウェットスーツとは異なる作りに仕上げられています。

牧野 それはちょっと着てみたいな〜。ところで、お店に置いてある自転車もちょっと変わった形をしていますが、これもトライアスロン用の自転車なんですか?

蒔田 いいところを見てますね! 確かにこのちょっと変わった形の自転車は、トライアスロン用の自転車です。空気抵抗を減らすためにかなり前傾姿勢がとれるようになっていたり、エアロダイナミクスを考えた形状になっていたりと、まさにレース用自転車といった感じです。

牧野 普通のロードバイクはレースでは使えないんですか? 

蒔田 問題なく使えますよ! トライアスロンバイクはレース専用で使うモデルで、ロードバイクは何にでも使えるモデルと思ってもらっていいです。長い距離を走る練習から、通勤、さらにはお買い物にだって使えるので、初心者のほうが最初に購入するなら、ロードバイクが最適だと思いますよ。

トライアスロン的ランニングシューズの選び方

「アスロニア」には、ホカ オネオネやONのシューズが取りそろう

「アスロニア」には、ホカ オネオネやONのシューズが取りそろう

牧野 スイムとバイクには専用ギアも存在することはわかりましたが、ランニングはどうなんですか?

蒔田 ランニングシューズにおいても、トライアスロンモデルは発売されています。トップ選手になると、バイクからランにトランジションした時に時間短縮のためにソックスをはかない選手もいます。そのため、足がこすれないようにシューズの中の縫い目が少ないモデルのほか、身体を冷やすために水をかぶることが多いので、水抜けがいい構造を採用しているモデルなどがラインアップされています。

ただ、ランに関しては、普段使っているランニングシューズでも問題ないと思います。慣れないトライアスロンモデルで走るよりも、履き慣れているランニングシューズのほうがいいと思いますし、もしこすれが気になるなら、ソックスをはいて快適さ重視で走ったほうがいい結果は出ると思いますよ。ちなみに、トライアスロンに寄って作られたランニングシューズも発売されています。

牧野 トライアスロン専用シューズとはどう違うんですか?

蒔田 「専用モデル」ではないのですが、多くのトライアスリートに愛されているモデルはたくさんあります。トライアスロンのランは、スイムとバイクをこなしたあとで行いますから、クッション性が高く、足にやさしいモデルが好まれます。特に「ロングディスタンス」になれば、最後にフルマラソンを走ることになるので、足にダメージが少ないシューズは選手の大きなサポートになります。

牧野 最後にフルマラソン……(ゴクリ)。

蒔田 初心者はまず「スプリントディスタンス」や「オリンピックディスタンス」から。いきなり「ロングディスタンス」について考えなくていいですよ! 

牧野 そ、そうですよね! 安心しました(汗)。まずは短い距離から始めてみます。

トライアスロンに最適なホカ オネオネのランニングシューズ

最後に、蒔田さんがトライアスロンに最適なランニングシューズをセレクト。今回は、ブランド設立当初から、ランナーの足を守ることを考えて厚底を採用してきたシューズブランド「HOKA ONE ONE(ホカ オネオネ)」から3モデルをピックアップする。

ホカ オネオネ
「クリフトン 5」 

メーカー希望小売価格は18,360円(税込)。重量は266g(片足27p)

メーカー希望小売価格は18,360円(税込)。重量は266g(片足27p)

「クリフトン 5」は、距離に関わらず使いやすいスタンダードモデル。今回紹介する3モデルの中では、ヒールの厚さが29mmでフォアフットの厚さが24mmと、2番目にソールが厚い。アッパーには、やさしい足当たりの「エンジニアードメッシュ」を採用しており、素足で履いてもこすれを気にせずに走れる。

ミッドソールには、軽量性とクッション性にすぐれた素材を使用。加えて、前足部は柔軟性が高いことでなめらかな走り心地が体感できる

ホカ オネオネ
「ボンダイ 6」

メーカー希望小売価格は22,680円(税込)。重量は310g(片足27cm)

メーカー希望小売価格は22,680円(税込)。重量は310g(片足27cm)

「ボンダイ 6」は、厚底が特徴のホカ オネオネの中でも、ヒールの厚さが33mm、フォアフットの厚さが29mmと最もクッション性が高いモデルのひとつ。ホカ オネオネのランニングシューズは「マシュマロのような履き心地」と言われるが、「ボンダイ 6」はその厚底感から最も“マシュマロ”に近いモデルと言えよう。また、着地がやわらかいだけではなく、ソールの形状がクルマのタイヤのように丸くなっていることにより、足が自然と前に転がるように出ていく感覚が味わえる。

耐久性とグリップ力にすぐれるラバーをアウトソールの一部に配置。いっぽうで、ミッドソールは肉抜きすることで軽量化を追求している

ホカ オネオネ
「マッハ」

メーカー希望小売価格は20,520円(税込)。重量は231g(片足27cm)

メーカー希望小売価格は20,520円(税込)。重量は231g(片足27cm)

「マッハ」という名前の通り、231gと軽量なスピードモデル。ミッドソールには素材「PROFLY」を搭載しており、ソフトな着地だけではなく、推進力も生み出してくれる。スピード感のある「オリンピックディスタンス」のランに最適だ。ソールの厚さはヒールが24mm、フォアフット19mmと、今回の3モデルの中では1番薄い。

アウトソールには高い反発性を持つ「RMAT」を採用。耐久性も持ち合わせているので、トレーニングからレースまで使用できる

【おまけ】結ぶ必要のないシューレース!
ツインズ「キャタピラン」

メーカー小売希望価格は1,058円(税込)

メーカー小売希望価格は1,058円(税込)

「キャタピラン」は、簡単に言えばゴム製のシューレースだが、トライアスロンのランニングには効果的なギア。ひもを結ばなくてもシューズの着脱が可能なため、「トランジション」の時間を短縮できる。ひもの長さは50cmと75pから選択可能。カラーは全20種類で展開する。

ひもには「こぶ」が一定間隔に付いている。シューズの穴に通した際にこぶが引っかかり、シューズの締め付けを保っておけるのだ。“つま先付近はゆるく、中足部はほどほどに、足首付近はきつく”など、普通のシューレースでは難しい、足の部分ごとの調節が簡単にできるのがポイントだ

ちなみに、こちらがトライアスロン専用シューズの上位モデルであるスペシャライズドの「S-Works Trivent Triathlon Shoes」。ダイヤルを回すとワイヤーが靴を締め付ける「Boa L4クロージャシステム」を搭載しており、着脱を素早く行える。価格は39,960円(税込)

【取材協力】
「アスロニア」

日本最大級のトライアスロン専門ショップ。蒔田さんが「国内外のブランドにこだわらず、ここにしかないアイテムを厳選して販売しています」と語る通り、オーソドックスなアイテムからマニアックなギアまで、トライアスロンに必要なギアを幅広く取りそろえる。また、トライアスロンスクールも運営しているので、初心者でも不安なくレース完走まで導いてくれる。

【店舗情報】
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷1丁目1番24号 鳩森八幡神社ビル1F
営業時間:【平日】12:00〜21:00【土・日・祝】11:00〜19:00
定休日:火曜日

今 雄飛

今 雄飛

ミラソル デポルテ代表。自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン。

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