無謀 or 英断? 36歳から始めるトライアスロン

3〜5万円台のハイスペックなサイクルコンピューター3モデルをテストしてみた!

“鉄人レース”とも呼ばれるトライアスロンは、過酷なスポーツというイメージが強い。そんな競技に今、ひとりの男がチャレンジしようとしている。「価格.comマガジン」編集者、牧野(37歳)だ。トライアスロンを趣味にしているライターの私からその魅力について吹き込まれ、ちょっと興味があるそぶりをしていたら、いつの間にかチャレンジすることに……。準備期間は1年間。果たして、超初心者の牧野は完走し、トライアスロンの魅力と感動をお届けできるのか?

今回は自転車用サイクルコンピューターに注目! 連載バックナンバーはこちら

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目標とするレース(10月を予定)まで、あと数か月。本当に走り切れるか不安が募るところだが、「練習が足りないなら機材で補えばいいのよ!」と機材探しにまい進する日々。そんな中、注目しているのが、ハイスペックなGPSサイクルコンピューター。さまざまな走行データを分析することでトレーニングの効率アップに役立つと言われているが、果たして本当にそうなのか? ここでは、トライアスロンのレースやトレーニングにおける簡単な使用方法に加えて、最新の3モデルをレビューする。

使用用途の大半はトレーニング! 練習で使用しやすいものを選ぶ

バイクの必需品であるサイクルコンピューター(以下、サイコン)は、走行中の時速や走行距離、心拍数などを計測し、走行中はもちろん走行後も記録データを表示できるアイテム。価格帯の高いハイスペックモデルにおいては、GPSで走行ログが記録でき、また集めたデータをPCやスマホで細かく分析できたりする。

どの競技にも言えることだが、トレーニングの時間に比べるとレースの時間は短い。今回、牧野が出場予定のトライアスロンのレース(オリンピックディスタンス)は、3種目合計して51.5qの距離を走るものだが、想定される競技時間は3時間くらい。長い時間に思えてしまうが、初心者がこの距離のトライアスロンに出場する場合、最低でも3か月の練習時間が必要と言われている。このことから、トライアスロンで使えるサイクルコンピューターとは、トレーニングの相棒として使う時間のほうが長いのだ。

後述のガーミン「エッジ830」は、練習後、リカバリーの時間も教えてくれる

後述のガーミン「エッジ830」は、練習後、リカバリーの時間も教えてくれる

近年のモデルは、記録データからユーザーの体調を解析して、休息時間を割り出すモデルもある。もはや“コーチそのもの”と言っても過言ではないが、どれくらいトレーニングすればいいかわからない、経験値の少ない初心者にとっては、ありがたい機能だ。

これらの機能に加えて、マップが表示されるモデルもトレーニング時には使いやすい。バイクのトレーニングの場合、一般道を走ることが多く、「知らないルートを通って自宅に戻ってくる」ということもよくある。その際にGPS機能を利用したマップ表示があると、走りに集中できるので便利なのだ。スマホのスポーツ用アプリを使用するのもOKなのだが、「スマホ自体のバッテリー消費が激しい」「アプリが落ちて起動していないことがある」など、ちょっと使いにくいところがある。そのため設計段階から、バッテリーのもち、雨や振動への対応がしっかりなされているサイコンのほうがトレーニングには最適と言えるだろう。

レース中は表示の見やすさや操作の簡単さが必要

いっぽうレース中は、選手がコースミスしないように誘導がしっかりしているため、マップの表示は必要ない。その代わり、心拍数や速度、距離などのペース管理の指標になる項目が表示できるサイコンが必要になる。さらに言えば、疲れた状態でもパッと見て数値を把握できる視認性の高いモデルだとなおよい。

そのあたりは、ハイスペックなGPSサイコンであれば、表示項目の種類、表示項目数をカスタマイズできるものが多いので、心配ないだろう。たとえば、心拍数を基準にペースを作っていこうと考えたとき、心拍数を大きく表示して、そのほかの速度表示などを小さくするということも可能だ。

レース中のことだけを考えれば、少し表示が見にくいかもしれないがハイスペックなものではなくても対応は可能だろう。ただ、しっかりとトレーニングを積んでからレースに出場したいなら、およそ2〜3万円は高くなるが、ハイスペックモデルのほうがオススメだ。

ナビからトレーニングまでオールインワン
ガーミン「エッジ830」

重量は79.1gと軽量コンパクトでありながら、画面サイズは40(横)×52(縦)mmと大きく、走行中も地図や数値が見やすい

「エッジ830」は、ハイスペックサイコンの代名詞と言えるほどの人気を誇るガーミンの最新モデル。自転車用ナビとして優秀な素早いルート検索から、仕事率を意味する「パワー」(単位はワット)を使った最新のトレーニングまで、さまざまな機能を利用できる。

駆動時間は最大 20 時間と長く、長時間のトレーニングやロングディスタンスのトライアスロンにも問題なく対応。さらに新機能として、停めておいたバイクに振動が加わると、警報を鳴らす盗難防止用の「バイクアラーム」も搭載するなど、まさに“何でもできる”多機能サイコンに仕上がっている。先述したように、個人的には回復までの時間「リカバリータイム」を教えてくれるのがありがたかった。

画面はタッチパネル式。サイコンの中には、タッチパネル式ディスプレイがいまいち使いにくいものも少なくないが、本機のディスプレイはスマホのようにスムーズに使用できる。

ナビ機能は、まるでカーナビのように速くてスムーズ。

レベルアップの参考になる「走り」のデータは、スマホの専用アプリでチェック

レベルアップの参考になる「走り」のデータは、スマホの専用アプリでチェック

本機とスマホを連携させれば、専用アプリ「Garmin Connect」においてデータを詳細に確認できる。ちなみに「パワー」や「左右のバランス」の計測には、別売のパワー計が必要。

トレーニングを終えると、そのトレーニング中に摂取したカロリーと水分量を記録する画面に切り替わる。小まめに記録しておくことでレース中に適切な補給量が割り出される

スマホ連動で各種設定が簡単
ワフー「ELEMNT ROAM」

重量は93.5g。35(横)×60(縦)mmの大きいモニターと特徴的なフォントで視認性が高い

重量は93.5g。35(横)×60(縦)mmの大きいモニターと特徴的なフォントで視認性が高い

以前、本連載で「スマートトレーナー」を紹介したWahoo(ワフー)のサイコン「ELEMNT ROAM」は、カラーモニターを採用した最新モデル。特徴は、走行データの表示やルートの設定がスマホで行えるところ。デバイス自体を操作する部分はごく簡単なことに留めておいて、少し込み入った設定はスマホで直感的に行わせる、という割り切ったシステムがすごく使いやすかった。また、ファームウェアのアップデートがたびたびリリースされ、どんどん使いやすくなっていくところにも好感が持てる。駆動時間も17時間と長く、通勤で使用している分には1週間くらい充電しなくても問題なかった。

表示項目の変更や並び替えはスマホで行う。ワイヤレス&リアルタイムで変更されるので、トレーニング中の出先でも簡単に設定可能。

表示項目の数を変える場合は、デバイスのボタンを操作。
目的地を設定してナビ機能を使う場合は、スマホで表示したルートをデバイスに転送する方式。

スマホから本体へのマップの転送はスムーズで、待たされる感じはほとんどなかった。カラーモニターとは言っても、実際はモノクロの一部をカラー表示にした仕様。しかし、道が細かいエリアでも、見やすく特に不便は感じなかった。ルートを間違えた場合は、すぐにリルートしてくれるので、知らない道を走っても迷う心配はなさそうだ

縦置きと横置きの両方で使える
ステージズ「ダッシュ M50」

重量65gで、47(横)×35(縦)mmのカラーモニターを装備したコンパクトなボディが特徴。デバイスを固定するブラケットを交換しなくても、縦置き/横置きを使い分けられる。オンラインショップ価格は、36,780円(税込)

「パワー(W数)」を基準にするトレーニングは、レベルを問わず自転車乗りが取り入れ始めている。「ダッシュ M50」はそのパワー計測器をリリースするSTAGES(ステージズ)から登場したサイコン。個人的にはタッチパネルより、誤作動が少ないボタン操作のみなところが好み(慣れるには少し時間がかかるが……)。

現状は、PCを通じて表示項目やルート設定を行わなくてはいけないが、まもなくスマホでこれらの設定が可能になると言う。なお、データ表示はスマホアプリでも可能。

また、センサーが光量の強さを検知して、モニターの明るさを自動で変更してくれるので、カラー表示されたマップや表示は視認性が高い。

デフォルトの表示設定で使ってみたが、要所をカラーで表示することでシンプルでありながら数値が把握しやすい

スマホのデータ表示画面。必要な情報が下に項目分けされて整然と並べられているので、見たいデータにたどり着きやすい

ナビ画面では進むルートのほか、標高も表示されるので「山トレーニング」にいく場合にも役立つ

ナビ画面では進むルートのほか、標高も表示されるので「山トレーニング」にいく場合にも役立つ

現状はPCでルートを作成して、それをデバイスに転送することでナビが使用できる

現状はPCでルートを作成して、それをデバイスに転送することでナビが使用できる

【まとめ】トレーニングやレースをイメージして自分に合ったものを

ハイスペックなサイコンは、その機能ゆえに価格は高額になりがち。その中でも、オールインワンのサイコン王者、ガーミンの「エッジ830」、スマホと連動して直感的に使えるワフーの「ELEMNT ROAM」、カラーモニター搭載で3万円代とコストパフォーマンスにすぐれるステージズ「ダッシュ M50」と、それぞれにできること/できないことがある。トレーニングのスタイルやレースの状況をイメージして、自分に合ったものを選んでほしい。

今 雄飛

今 雄飛

ミラソル デポルテ代表。自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン。

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