1993年に世界で初めて電動アシスト自転車を世に送り出したヤマハが、新たなe-Bike(スポーツタイプの電動アシスト自転車)、グラベルロードタイプの「WABASH(ワバッシュ)RT」とクロスバイクタイプの「CROSSCORE(クロスコア)RC」を発表。これまでヤマハのe-Bikeは「YPJ」シリーズとして展開されてきたが、今回発表された2車種はそのシリーズ名を冠さない個別の車種名となる。
詳しくは後述するが、左写真が「WABASH RT」で、右写真が「CROSSCORE RC」。両モデルとも2022年3月10日発売予定となっている
2車種ともに新設計のアルミフレームを採用し、バッテリーをフレームで挟み込む形状のツインチューブ構造とすることで耐性を確保。ドライブユニットは、海外向けにユニット単体で輸出していた「PWseries ST」で、ヤマハのe-Bikeとしては初採用となる。搭載されるバッテリー(36V/13.1Ah)も共通で、フレーム内に収まるインテグレーテッドタイプ。アシスト走行が可能な最大距離も200kmと同じだ。ただ、ホイール径はWABASH RTが700Cで、CROSSCORE RCが27.5インチと異なる。ハンドルや変速ギアといったパーツにも違いがあり、ドライブユニットも同じものを採用しているものの、ソフトウェアのセッティングなどは特性に合わせて最適化されているという。
ダウンチューブをツインチューブ構造とすることで、剛性を確保するとともに、美しいシルエットも実現
新たに採用されたドライブユニット「PWseries ST」は、従来の「PWseries SE」ユニットより100g軽量で、高いケイデンス(ペダルの回転数)に対応している
未舗装路(グラベル)を走れるタイプのロードバイク「グラベルロード」に仕上げられた「WABASH RT」は、細かいノブの付いた、700×45Cの太めのタイヤを装着。グリップとクッション性の高いタイヤを履いているものの、電動アシスト機能があるためタイヤの抵抗は気にならない。e-Bikeと相性がよく、世界的に人気の高いタイプだ。変速ギアなどは、シマノ製のグラベルロード向けのコンポーネント「GRX」を採用している。なお、WABASH RTは“脱スポーツ”をイメージしており、サイクリングロードだけでなく街乗りにも似合うデザインとなっているのもポイント。コンパクトなドライブユニットと、フレームに内蔵されるバッテリーの効果もあって、知らない人が見たらe-Bikeとは気付かないようなシルエットを実現している。
サイズはS、M、Lが用意されており、全幅は3サイズとも580mmで、全長(S/M/L)は1,780/1,790/1,815mm。重量(S/M/L)は21.1/21.2/21.3kgとなっている。セレスタイトブルーの1色展開で、メーカー希望小売価格は438,900円(税込)
バッテリーは、フレームと一体化したインテグレーテッドタイプなので目立たない。さらに、バッテリーカバー(ブラック)をフレームとあわせ、ツートンカラーにデザインされているので、よりスマートな印象だ
新搭載のドライブユニット「PWseries ST」にも、フレームと一体化させるようなカバーが装着されている
ドライブユニットをこちら側から見ると、バイクのクランクケースっぽいデザインとなっているのがヤマハらしいところ
ケーブルなどもフレーム内部に通す設計され、スッキリしたシルエットに貢献。トップチューブもツートンカラーになっている
速度の維持がしやすい700Cのホイールだが、タイヤは45mm幅の未舗装路の走行にも対応したものを装着
コンポーネントはシマノ製「GRX」で、変速ギアはリアのみの11速。フロントにはチェーン落ちを防ぐパーツも装備されている
前後に装備された油圧式のディスクブレーキもシマノ製「GRX」グレード。少ない力で強い制動力を得られる
ドロップハンドルを装着しているが、前傾姿勢はキツすぎず、下側が広がったフレアタイプの形状なのでオフロードでも抑えが効きやすい。シートポストに座ったままハンドルのレバーで高さを調整できるドロッパーシートポストも採用されているので、ペダリングする場面ではシートを高くしておき、下りなどでは下げられるようにするというように、ライディングポジションの自由度が高まる。未舗装路走行にも対応するグラベルロードらしい装備だ。さらに、シートポストにサスペンション機構も内蔵されており、路面からのショックを吸収する。
サスペンション機構を組み込んだドロッパーシートポストを採用。サドルはスリムなスポーツタイプ
ロードバイクらしいドロップハンドルだが、幅は広く、曲がりも浅めなフレアタイプ。オフロードでコントロールしやすく、初心者にも乗りやすい形状だ
ハンドルには、バッテリーから給電されて点灯するライトを装備
ディスプレイも手元に装備。ライトとディスプレイのステーは共用されており、ハンドル周りのスペースを有効活用している
通勤や街乗りなどに向いていて、初めてのスポーツタイプの自転車としても人気の高いクロスバイクタイプの「CROSSCORE RC」は、WABASH RTとフレームやドライブユニットを共用しながらメーカー希望小売価格が317,900円(税込)と、WABASH RT と比べ12万円以上抑えられている。コンポーネントやシートポストといったパーツが異なることが要因だが、フラットハンドルを採用し、サイドスタンドも標準装備するなど、普段使いに適したパーツセレクトとなっており、街乗り用途としては申し分ないスペックだ。街中での取り回しを高めるため、ホイールもWABASH RTより少し径の小さい27.5インチを採用。フロントには衝撃を吸収するサスペンションも装備されている。
サイズはS、M、Lが用意されており、全幅は3サイズとも590mmで、全長(S/M/L)は1,750/1,760/1,780mm。重量(S/M/L)は23.7/23.8/23.9kgとなっている。カラーはピュアパールホワイト、ミスティグリーン、フレイムオレンジの3色展開で、メーカー希望小売価格は317,900円(税込)
バッテリーの収まる部分を生かしたツートンカラーのデザインは、WABASH RTと共通
フラットタイプのハンドルには、手のひらを受け止めるエルゴノミック形状のグリップを装備。変速操作はラピッドファイアと呼ばれる方式で、右手側で行う。左手側にディスプレイが備えられている
普段使いするのに役立つ、サイドスタンドを標準装備
27.5×2.0インチの太めのスリックタイヤを装着。フロントには、SR SUNTOUR製「NEX-E25」のサスペンションを装備している
変速コンポーネントはシマノ製「ALIVIO」で、変速段数はリアのみの9速。フロントにはチェーンガイドも装備
ブレーキもシマノ製の油圧ディスクを採用。ディスク径はフロント180mm、リア160mmだ
乗り味もじっくり確かめたいところだが、発表会会場には5m程度の試乗スペースしかなかったため、走行性能を語るほどには試乗できず。しかし、漕ぎ出しの感覚は実感できた。「WABASH RT」「CROSSCORE RC」ともに、アシストの感覚はなめらか。一般的にe-Bikeは、通常の電動アシスト自転車で漕ぎ出した時に感じるガツンというアシスト感ではなく、ペダルを漕いだ力にスムーズにアシストが上乗せされるような乗り味が特徴だが、今回発表された2車種は、そのスムーズさがさらに磨き上げられている印象だ。
限られたスペースだったが、漕ぎ出しのスムーズさは期待感の高まる
アシストのセッティングにはかなり力を入れているらしく、センサーも傾斜角センサーを加えた「クワッドセンサーシステム」というヤマハのe-MTB「YPJ-MT Pro」に装備されているものが採用されている。その効果のほどは、ぜひ坂道などで試乗して試してみたいところだ。
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。