筆者はそこそこの頻度で運動をしているおかげで、お腹がぽっこり出ているということはなく、シックスパック(腹直筋が6つに割れたキレイな腹筋)を作りたい願望もなかったため、腹筋を鍛える系のEMSギアは自分には必要ないものだと思っていた。
しかし、最近、周囲でMTGの「シックスパッド パワースーツ コアベルト」(以下、「パワースーツ コアベルト」)を活用するランナーを見かけるようになった。なかでも、箱根駅伝でもおなじみの明治大学・駅伝部が体幹強化のために練習に導入しているという話を聞いたことで、俄然興味が湧き、どんなものか試してみることにした。
ランナーの人気が高まっているMTGの「シックスパッド パワースーツ コアベルト」(HOME GYM対応モデル)。公式サイト価格は53,900円(税込)
持ち運びに便利な収納ケース付き。出張や旅行のお供にも
EMSとは、Electrical Muscle Stimulationの略。電気刺激によって筋肉を動かすというもので、リハビリテーションの分野で長く使用されていたテクノロジーだったが、近年、フィットネス分野でも活用されるようになった。
通常の運動では、脳からの指令が脊髄を経由して運動神経に伝わり、筋肉を動かしている。いっぽう、EMSは外部から電気的な刺激を与えることで、狙った部位の筋肉を動かすという仕組みだ。
また、EMSでは速筋を優先的に鍛えられるという。筋肉は大きく速筋と遅筋に分けられ、速筋とは瞬発力やパワーにすぐれ、筋肥大しやすい筋肉。しかし、速筋は高重量のウエイトトレーニングなどを行わなければ、なかなか鍛えられない。運動経験がないと少々ハードルが高いのだが、EMSを活用すれば、日常的にトレーニングをしていない人でも、手軽に速筋を刺激できるわけだ。
とはいえ、電気刺激なら何でもOKということでもない。「シックスパッド」の製品には主に20Hzの周波数が採用されている(トレーニング内容によって4Hzも推奨)。20Hzとは1秒間に20回、電気刺激を送るということ。筋肉は刺激を受けると収縮して張力を発揮し、次の刺激に備えて態勢を整え、また刺激を受けると収縮する。このサイクルを繰り返せる上限が0.05秒なのだという。
“ながらトレーニング”に最適。面倒くさがりでも継続しやすいはず
さっそく、「パワースーツ コアベルト」を使ってみた。
まずは、「パワースーツ コアベルト」本体内側の電極部分(6か所)に水を吹きかける(スプレーボトルが付属)。実は、この電極部分にも「シックスパッド」ならではのテクノロジーが用いられている。「パワースーツ コアベルト」に採用されているのは、「エレダイン」という布製の電極だ。
シートやパッドを電極とするタイプのEMS製品の場合、一定期間でシートやパッドを買い替える必要があり、ランニングコストや買い替えの手間が、トレーニングの開始・継続のハードルになっていた。「エレダイン」は染色技法を応用した特殊な加工による導電性繊維を電極にしたもので、通電の安定性、安全性、耐久性を備え、金属アレルギーの心配もない。自宅での洗濯も可能なので、衛生面の心配もないというかなりのスグレモノなのだ。
各電極(「エレダイン」)に10プッシュほど水を吹きかけてから使用
ホックとファスナーで開閉する仕組み
本体の内側には6か所の電極が付いており、腹直筋、腹斜筋(脇腹)、広背筋下部・脊柱起立筋(背中の下側)を同時に鍛えられる
付属のネットに入れれば洗濯機で洗える(コントローラーは必ず外すこと!)
20Hzモードのトレーニングプログラムは約23分間。最初の1分間はウォーミングアップで最後の1分間はクールダウンだ。5分1セットで刺激が段階的に強くなる。刺激のレベルは20段階で調整でき、「FRONT」(腹部)と「SIDE BACK」(脇腹・背中)のレベルを別々に変更できる。スタート時はレベル1に設定されているのだが、筆者の場合はこれで十分。せいぜい2か3までで、それ以上は刺激が強過ぎるなと感じた。しかし、ちょうどいいレベルは体型や体質によって異なるだろうと思われる。
20Hzモードは、腹筋を内側からつかまれるような感覚で、効いている感がかなりある。自宅でのトレーニングではなかなか鍛えにくい広背筋(下部)にも刺激が入るのは「パワースーツ コアベルト」の魅力だろう。1〜2日に1回の使用を2週間ほど続けると、腹筋が硬くなってきたような感覚が得られた。
また、デスクワークの合間に「パワースーツ コアベルト」を使用して、“ながらトレーニング”をすると、体幹部に刺激が入るからか、それ以降、よい姿勢がとりやすくなる印象。姿勢への意識も高まるので、このまま使い続けていけば、デスクワーク時の不良姿勢が改善していきそうだ。「パワースーツ コアベルト」、ありがとう!
「パワースーツ コアベルト」を着用し、EMSトレーニングをしながらランニングする「ハイブリッドランニング」も、「シックスパッド」が推奨する使い方だ。正しいランニングフォームを長く維持するには体幹の力が大切。フォームが乱れるとパフォーマンスが落ちるのはもちろんのこと、ケガのリスクも高くなる。体幹を鍛える補強トレーニングとして、プランクなどを行っているというランナーも多いのではないだろうか。
しかし、仕事や家事で忙しいなか、走る時間に加えて、補強トレーニングの時間を捻出するのはなかなか大変なこと。そこで、「ハイブリッドランニング」の出番というわけだ。
ランニングやウォーキングと組み合わせるのもおすすめ。効率のよいダイエットを求める人にもよさそう
まずは、20Hzモードでトレーニングしてみる。「パワースーツ コアベルト」の着用によって腹周りが締まることと、EMSの刺激のおかげで体幹を意識しやすく、よい姿勢が保たれる感覚がある。ランナーのレベルによるのかもしれないが、筆者の場合は、EMSの刺激があったほうがよいフォームで走れていそうだ。
一定の刺激が約30分間続く4Hzモードでも走ってみた。筋肉を効率的に鍛えるならば20Hzモードなのだろうが、体幹に刺激を入れたい、フォームへの意識を高めたいというだけなら4Hzモードのほうが適していそう。本格的に走る前にウォーミングアップとして短いジョグをしている、あるいはランニング後にクールダウンでウォーキングしているといった人ならば、ウォーミングアップやクールダウンの時に本製品を併用するのもよさそうだ。
また、ランナーではなくても、ダイエットのためにウォーキングをしているという人は、本製品を使ったEMSトレーニングを組み合わせることで、より効率的に脂肪燃焼を目指せるのではないだろうか。
およそ1か月、「パワースーツ コアベルト」を使ってみたが、筆者はこのまま継続して使っていこうと思っている。大きな理由は“ながらトレ”ができるところ。自宅で原稿を書いているとき、資料をまとめているとき、またはテレビを観ているときに、気軽に体幹トレーニングができ、効果も実感しているからだ。運動する時間が取れなかった日も、EMSトレーニングだけでもやっておくと罪悪感がなく、清々しい気持ちで就寝できる(笑)。習慣にすれば、猫背が改善されそうな気配があるのもうれしいポイントだ。
また、自己流の体幹トレーニングだと、強い部位が勝手に弱い部位を補ってしまったり、左右差が生まれてしまったりすることがあるが、「パワースーツ コアベルト」を使えば、狙った部位を外さない点も魅力だろう。トレーニングビギナーにとてもやさしいギアだと言える。
お腹周りが気になっている人やシックスパックを作りたい人だけでなく、体幹を強化して身体のパフォーマンスをアップしたい、身体を整えたいという人にも試してもらいたい。