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ポストOPPOの実力は? パイオニアとパナソニックのハイエンドUHD BDプレーヤーを比べてみた

昨年末の話になるが、パイオニアとパナソニックからほぼ同時期にUHD BD(Ultra HDブルーレイ)対応の高級プレーヤーが登場した。これまで、高級BDプレーヤーの世界ではOPPOが強い存在感を示していたが、同ブランドのAV事業撤退により、はたしてこのジャンル、高級BDプレーヤーという製品カテゴリーはこの先どうなっていくのか、注目を集めていたのは確かだ。そこにいち早く名乗りを上げたのが、パイオニア「UDP-LX800」とパナソニック「DP-UB9000(Japan Limited)」の2製品だ。

パイオニア「UDP-LX800」
パナソニック「DP-UB9000(Japan Limited)」

実は両メーカーとも、高級BDプレーヤーというジャンルにおいてこれまでも製品ラインアップを有していた。とはいえ、2016年発売のパナソニック「DMP-UB900」はまだしも、パイオニア「BDP-LX88」は2014年発売と、少々間が空いてしまっているうえにUHD BDには非対応。また、「DMP-UB900」のほうはUHD BDやHDRにしっかり対応しているものの、“UHD BD対応第1世代機”然とした内容となっていて、今となってはユーザビリティや画質の点で気になるポイントがいくつか散見する。OPPOの撤退が呼び水となった可能性もあるが、どちらの製品にとっても、この冬がリニューアルのベストタイミングだったのだろう。とにもかくにも、光ディスク系の高級UHD BDプレーヤー最新モデルが2つも登場してくれたことは、大いに歓迎したい。

そんな両製品の実際のクオリティや使い勝手はどうなのか、メリットはどんなところなのかは大いに気になるところ。特に、筆者のようなOPPO「UDP-205」ユーザーにとっては、買い替えの必要があるか否か、はたまた映像メインと音声メイン!?で2台並べて使う必要に迫られることになるのか等々、OPPO含む3台を横並びにして見比べたいところだ。ということで今回は、パイオニア「UDP-LX800」とパナソニック「DP-UB9000(Japan Limited)」、OPPO「UDP-205」の3台を集め、その実力を比較してみることにした。

OPPO「UDP-205」、パナソニック「DP-UB9000(Japan Limited)」、パイオニア「UDP-LX800」の3機種を比較

OPPO「UDP-205」、パナソニック「DP-UB9000(Japan Limited)」、パイオニア「UDP-LX800」の3機種を比較

今回の比較視聴では、映像面に的を絞って3製品のクオリティをチェックしている。音声に関しては、視聴環境の都合もあって、次の機会に見送らせていただいた。正直、いま所有している「UDP-205」のアナログ音声出力、特にXLRバランス出力は同じ価格帯の上級ピュアオーディオ機器に迫るクオリティを有しているため、勝ることはあっても劣ることはほぼない、と考えている。とはいっても、実際に試してみなければ分からないので、そのうち機会があったら音声比較も行ってみたいと思う。

電源由来のノイズに配慮するため、3機種とも壁コンセントから直出しではなく、中村製作所「Power Line Cleaner」経由で供給する形とした

それぞれ個性のある3製品

さて、まずは3製品の特徴を紹介していこう。

最初はパイオニア「UDP-LX800」から。こちらの製品最大の特徴といえば、やはり“筐体の徹底した作り込み”という部分だろうか。各部を独立配置した「3分割シャーシ構造」や筐体の静音性と高剛性を実現する「鋼板トップパネル&アルミサイドパネル」、高剛性と低重心を実現する3mm厚鋼板「リジッドアンダーベース」など、ガチガチに固め上げているのだ。

パイオニア「UDP-LX800」。今回取り上げた3機種の中でもっとも大柄なボディサイズとなっており、重さも14.5kgとかなりの重量級。箱から出して設置するだけでもかなり苦労した

いっぽうで、大容量トランスやSACDプレーヤーのノウハウをつぎ込んだオーディオ基板、ESSテクノロジー社製「ES9026PRO」をLR独立で搭載するなど、音声出力にも徹底したこだわりを投入しているのも特徴といえるだろう。さらに、アナログ音声出力時にデジタルオーディオ回路と映像回路の電源供給を停止するダイレクトモードに加え、デジタル音声出力時はアナログオーディオ回路を電源トランスの段階からカットするトランスポートモードをそれぞれ選択できるのも興味深い。

高音質カスタム電解コンデンサーなどの厳選パーツを惜しみなく投入した「UDP-LX800」のオーディオ回路部

高音質カスタム電解コンデンサーなどの厳選パーツを惜しみなく投入した「UDP-LX800」のオーディオ回路部

もちろん、映像クオリティにもこだわりを持っている。たとえば画像モードは、ディスプレイごとに最適な数値をプリセットで用意しており、マスタークオリティを再現する「リファレンス」に加え、「LCD TV」、「OLED TV」、「プロジェクター」と、各製品の特徴に最適な画質が(しかもSDR用とHDR用それぞれに)選択できるようになっている。また、「PQLS」機能対応のパイオニア製AVレシーバーとの組み合わせにより、HDMI接続での高純度なジッターレス伝送も実現している。

続いてパナソニック「DP-UB9000(Japan Limited)」を紹介しよう。こちら、最大の特徴といえば、パナソニックハリウッド研究所(PHL)で培った技術を応用したという独自の4K対応エンジン「4Kリアルクロマプロセッサplus」の搭載だろう。こちら、デコードした4K(4:2:0)信号を独自の高精度マルチタップ処理で4K(4:4:4)に補間することで、鮮度が高く、自然な質感と立体感にあふれた4K映像を実現しているとアピールする。

パナソニック「DP-UB9000(Japan Limited)」。今回用意した3機種の中でもっともコンパクトな筐体となっている

デコードした4K(4:2:0)信号を独自の高精度マルチタップ処理で4K(4:4:4)に補間する独自の4K対応エンジン「4Kリアルクロマプロセッサplus」を搭載

機能面では、ネットサービスに幅広く対応している点もイマドキだ。「NETFLIXや「Amazonプライム・ビデオ」の4K HDR映像やDolby Visionに対応。「dTV」やベルリン・フィル「デジタル・コンサートホール」、YouTubeの4K HDR映像を楽しむこともできる。

また、「DP-UB9000」に搭載されている「HDRトーンマップ機能」にも注目したい。こちら、あまたのHDRディスプレイやプロジェクターを解析して作り上げた設定で、「HDRディスプレイ設定」を“入”にして、接続するHDRディスプレイのタイプを選択すれば、利用環境に最適なHDR映像を実現することができるという。特に、JVC製の最新プロジェクターを使用しているユーザーには朗報があり、「V9」「V7」「V5」3モデルに関しては専用の設定が用意されているという。こちらの効果がいかがなものか、大いに期待したいところだ。

通常はディスプレイ側で行うトーンマップ処理をプレーヤー側で高精度に実施する「HDRトーンマップ機能」。出力先のディスプレイに左右されず、より安定したHDR映像を楽しめるのが特徴だ。なお、初期設定は「切」となっている

もちろん、高級モデルだけに音声に関しても手抜かりはない。フロントパネルには7mm厚、サイドパネルにも3mm厚のアルミ押し出し材を採用。同時にトップパネルには板厚の異なる鋼板を組み合わせた2層構造を、底側には4層構造のベースシャーシを採用することで、振動やノイズに強い高剛性・低重心の筐体を作り上げ、よりピュアな音楽再生を実現したとアピールしている。

最後は、参考までにOPPO「UDP-205」の概要を。

OPPO「UDP-205」。すでに販売完了となっており、手に入れるには中古しかないという状況だが、今なお高い人気を誇っている

こちら、当然UHD BD対応のプレーヤーで、HDR対応、「Dolby Vision(ドルビービジョン)」対応など、現在も最新といえる機能性を有している。加えて、輝度やコントラスト、色相、彩度、シャープネスなどを調整できる「アドバンスト・ピクチャー・コントロール機能」も搭載されている。プレーヤー側で映像を細やかに調整できる点は、まさに高級プレーヤーならではの機能性といえる部分だ。

また、音声出力にかなりの力を注いでいるのが特徴で、ステレオ出力にはESSテクノロジー社製ハイエンドDAC「ES9038PRO」を採用することで高音質を実現したほか、USB入力を用意することで最大768kHz/32bitのPCM、最大22.6MHz(DSD512)のDSDネイティブ再生に対応。発売後のファームウェアアップデートでMQA-CDやMQAファイルにも対応を果たした。UHD BDプレーヤーとしてはもちろんだが、音楽プレーヤーとしてみてもかなり優秀なモデルに仕上がっている。

UHD BDの4Kコンテンツを使って3機種を横並び比較

ということで、今回はこの3台を並べて映像を見比べてみた。視聴に使ったテレビは東芝の4K対応液晶テレビ「REGZA 55Z720X」。ソフトは「ラ・ラ・ランド」「ハドソン川の奇跡」「君の名は」の4Kディスク版を使用した。

3機種を並べて一斉視聴スタート

3機種を並べて一斉視聴スタート

改めて、OPPO「UDP-205」の完成度の高さに驚かされた。たいした調整をせず、ほぼデフォルトのままソフトを再生してみたのだが、どれも奥行き感のある映像を楽しむことができた。特に、黒側の階調が細やかで、「ハドソン川の奇跡」の夜景シーンでもハッキリと画面全体が見渡せる。音声出力のクオリティに大きなアドバンテージを持つ製品だが、映像面でもかなりの良質さを持ち合わせていることが把握できた。

続いて、パイオニア「UDP-LX800」を確認してみる。こちらの映像は、「UDP-205」に近いイメージだ。黒側の粘りがよく、暗いシーンでもしっかりした奥行き感を感じる。「君の名は」の隕石落下シーンでは、隕石廻りの光に潰されず、背景の描写がしっかりと描かれていた。また、明るいシーンではHDRならではといえる、光がとても煌びやかに感じられる、ワイドレンジな映像表現だった。

最後のパナソニック「DP-UB9000」は、先の2台とかなり異なった表現だった。「君の名は」を見ると、黒側の階調に粘りがなく、コントラストの不足気味に感じられるため、平坦な映像に思える。しかしながら、「ハドソン川の奇跡」を見ると、やや明るめかな?といった画面ではあるものの、奥行き感を感じる映像が再生されている。さらに秀逸だったのが「ラ・ラ・ランド」だ。全体的にカラフルでありながらしっとりとしたこの映画独特の表現がしっかりと引き出され、より印象的な映像に感じられるようになったのだ。プールの水の描写もリアルさを感じられ、描写の的確さも見事なもの。もしかすると、コンテンツによる得手不得手、またはHDRトーンマップ機能をもっと的確に詰めていく必要があったのかもしれない。このあたりは、機会があればプロジェクターでも視聴してみるなどさらなるチェックを行いたく思った。

このように、今回の結果からは「UDP-205」ユーザーは特に買い替える必要はなく、新たに購入を考えているユーザーは「DP-UB9000」「UDP-LX800」どちらか好みの製品を選べばよい(無理して「UDP-205」の中古品を探し回る必要はない)印象を持った。「DP-UB9000」については、ユーザーの視聴環境やコンテンツによっては得手不得手があるかもしれないので、事前に店頭などでチェックするのが理想だ。いずれにしても、この3台はどれを選んでも間違いはなく、好みや予算次第でチョイスしてOKだ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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