ソニーもついに8Kテレビ発売へ−−。ソニーは同社の薄型テレビ「BRAVIA」の新モデルとして、8Kチューナー内蔵液晶テレビ「Z9H」シリーズを発表、85型の「KJ-85Z9H」を3月7日より発売する。市場想定価格は200万円前後(税別)だ。
ソニーは一昨年より海外で8Kテレビを発売しているが、ついに日本市場向けに8Kチューナー内蔵モデルを投入した形だ。日本国内で8K放送を視聴できるチューナー内蔵8Kテレビの投入は、シャープに次ぐ2社目にあたる。
ソニーが3月7日に発売するチューナー内蔵8Kテレビ「BRAVIA Z9H」
ソニーによる日本国内向け初の8Kテレビだ
ソニーの高画質テレビの証しである“MASTER Series”を冠し、85型の「KJ-85Z9H」1機種のみの展開となる「Z9H」シリーズ。200万円という超ハイエンドな価格帯で登場するプレミアムモデルの特徴を詳しくレポートしよう。
ソニーが日本国内向けに初めて投入する8Kテレビ「Z9H」は、日本の新8K衛星放送に対応する8K放送チューナーを2系統搭載する。2K/4K/8Kの全放送に対応する視聴専用チューナー1系統、録画専用チューナー1系統という構成で、8K放送の録画中に別系統のチューナーを使った8K/4K放送のライブ視聴も可能となっている。
8K放送の録画については、外付けHDDの接続で対応。ちなみに、8K放送録画に用いる外付けHDDは、専用オプションとして用意される録画用HDDではなく、USB 3.0のスペックに対応した一般的なサードパーティー製録画用外付けHDDで対応できるようになっている。
8K放送を操作するシステム全体は、従来通りAndroid TVプラットフォームを採用。システム全体のSoCも4Kモデルと共通だ。番組表をはじめとしたGUIについては、システムが4K解像度で出力したものを8K画質にアップコンバートして表示する形となっている。
8K高画質の実現に向けて、「Z9H」にはソニーの最高画質の機能が惜しみなく投入されている点も見逃せない。8Kパネルは8Kの120Hz表示対応の倍速パネルを採用。パネル方式は非公表だがコントラストを確保できるVA方式と見られる。また、ソニーが液晶テレビの上位機種で採用機種を増やしている広視野角技術「X-Wide Angle」も搭載。実際に斜めから視聴してみたが、色変化が非常に少ないことが確認できた。
液晶方式ながら広視野角技術「X-Wide Angle」により、斜めから見た際の色変化を最小限に抑えている
「Z9H」のバックライトは、高輝度・高コントラストのバックライト方式「Backlight Master Drive(BMD)」が復活を遂げた。日本国内で販売されているBRAVIAとしては、2016年発売の4K液晶テレビ「Z9D」シリーズで初めて採用され、その後海外向けの8Kテレビでも採用されている液晶バックライトの最高峰となる技術で、すべてのLEDを単独でコントロールすることで高コントラスト、高輝度を実現できるのが特徴となっている。
BMDのスペック上のバックライト分割数、最大輝度性能は非公表。だが、BRAVIAには映像の明るい部分に電流を集中して輝度を引き上げる「X-tended Dynamic Range PRO(XDR)」を搭載したモデルには、独自のコントラスト基準であるXDRコントラストというものが記載されており、表記されている倍率で大まかな輝度性能を把握できる。ちなみに、「Z9H」の倍率は20倍。BMDを搭載する国内向け最後のモデルだった4K液晶テレビ「Z9D」が16倍、BRAVIA現行モデルで最上級機種の「Z9F」が12倍ということからも、「Z9H」の輝度性能の高さがおわかりいただけるはずだ。
実際にデモルームで視聴した「Z9H」の画面も非常に明るかった。8Kテレビはこれまでの4Kテレビに比べると、画素密度の高さゆえにバックライトの透過率が低く、しっかりと輝度を確保できていないモデルだと、全体的に映像が暗いと感じることがあるが、「Z9H」は画面全体の明るさとピークの輝度感がしっかり確保されていた。8K解像度、85型という画面サイズに相応しい高画質を備えたモデルといっていいだろう。
「Backlight Master Drive」のおかげで、明暗差の激しいシーンでもしっかりとしたコントラスト表現ができている
さらに、動きボケの対策については120Hzの倍速パネルの搭載とともに、「X-Motion Clarity」を搭載。ソニーの4K液晶テレビの上位モデルでも採用する技術で、フレーム単位の黒挿入方式ではなく、エリアごとにLEDバックライトの発光制御を行うことで残像感を低減している。色域については従来通りトリルミナス搭載で、4Kテレビと同等の水準だ。
高画質プロセッサーは「X1 Ultimate」を採用。2019年の4K有機EL/液晶テレビで採用しているものと同じ、ソニーの高画質プロセッサーの最上位モデルだ。2018年の「X1 Ultimate」発表時から8K解像度までの映像信号処理を想定したもであることは知られており、海外向けの8K液晶テレビではすでに採用していた。日本国内向け8Kテレビ「Z9H」の登場にあたっては、あらゆる映像を8K高画質に高精細化する「8K X-Reality PRO」の機能として8K映像向けの超解像データベースを追加し、8Kアップコンバートの精度を高めたという。
8K信号にも対応した高画質プロセッサー「X1 Ultimate」の搭載で、あらゆる映像を高画質に8Kアップコンバートしてくれる
なお、HDMI入力は、HDMI4が8K映像入力に対応。今年は次世代ゲーム機の投入が予定されているが、PS5など8K対応機器との接続性がしっかりと確保してある点はうれしいところだ。なお、HDR信号については、HDR10とHLG、Dolby Visionには対応しているが、HDR10+には非対応となっている。
8K映像信号対応のHDMI入力搭載でPS5対応も準備万端。ちなみに、8K映像のほかにも、4K120Hzの入力も可能になっているそうだ
スピーカーは、音を画面の中に定位させて映像と音の一体感を高める「Acoustic Muti Audio」を採用した2.2ch構成。画面の上下左右の4か所に搭載したミッドレンジスピーカーとツイーター、背面の中央程度の高さにサブウーハーを独立駆動で左右に2基搭載している。最大出力は80Wで、L/Rスピーカー(上)が10W×2、L/Rスピーカー(下)が(10W+10W)×2、サブウーハーが10W×2というアンプ構成だ。なお、8K放送の22.2ch放送のサウンドには対応せず、8K放送ではサイマル放送されている5.1chの音声信号を受けて再生する仕様となっている。立体音響はDolby Atmosに対応している。
画面上部にもスピーカーを搭載する「Acoustic Muti Audio」を採用
テレビとしての基本的な操作性はAndroid TVがベースで、高速レスポンスの「サクサク操作」にも対応。豊富な映像配信対応という汎用性に加え、アップルAirPlay/Homekit対応と、ブラビアの4Kモデルと同等の機能も用意されている。
本体デザインは業務用マスターモニターを彷彿とさせるデザイン。画面フレームはアルミ製で放熱性能を高めている構造。スタンドはスチール製で、テレビ背面に接続するケーブルカバーを用意。電源や外部機器との接続ケーブルを、スタンドのカバーで隠せる構造となっている。
スタンドはスチール製
スタンド足にケーブルを隠せる設計だ
ついに登場したソニーの日本国内向け8Kテレビ「Z9H」。85型のワンサイズで200万円というプレミアム価格となったのは、やはり日本国内の新8K衛星放送に対応したチューナーを搭載したこと、そしてワールドワイドで販売するモデルではなく、日本市場にだけ投入する分コスト高となってしまったようだ。85型という超大型サイズ、200万円という価格のため、決して万人向けのモデルではないが、大画面で明るい8Kテレビだからこそ感じられるリアルな映像は、「Z9H」でしか体験できない唯一無二の価値といえる。購入層は画質にこだわるハイエンドユーザーが中心になりそうだが、興味のある方はソニーストアなどでぜひ体験してほしいところだ。
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。