とにかく高画質なテレビが欲しいならば、最有力候補は有機ELテレビ! ひと昔前は“夢のテレビ”だった有機ELテレビですが、現在では家電量販店にも並ぶ身近な存在になりました。
その性能は年々向上しているうえ、選択肢が豊富でどれを選べばよいのか迷う人も少なくないはず。ここでは、有機ELテレビの基本的な特徴や選び方、そしておすすめ製品を紹介します。価格.comの人気製品を実際に見て、聴いて「これは買い!」という製品を選出したので、ぜひ購入の参考にしてみてください。
〈レビュー・監修〉ホームシアターコンシェルジュ 遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
【価格.comマガジンがおすすめする理由】
1.明るく鮮やかなだけでない高画質であらゆるコンテンツを楽しめる
2.自然な立体感のある音質が臨場感を高めてくれる
3.指定した6chをすべて録画する「全録」機能を使える
【ただし、こんな人には向きません】
1.録画機能が不要な人
2.50V型以下の小型や70V型以上の大型モデルが欲しい人
有機ELテレビのなかで、今最もおすすめなのがTVS REGZA「X9(X9900R)」シリーズ。最新パネルの余裕ある体力をREGZAならではの匠の絵作りで生かし切った高画質モデルであるにもかかわらず、価格も非常に抑えられているからです。
性能を大幅に向上させた最新有機ELパネルを投入してきた各社のフラッグシップ(最上位)モデルの中で、REGZA「X9(X9900R)」シリーズはただ「明るい」「色鮮やか」というだけでなく、ていねいな暗部表現や、正確な色の描き分けが印象的でした。
それは、Ultra HDブルーレイのような高画質4K映像のみならず、地上波テレビ放送のような映像コンテンツでも一貫しています。必ずしも高画質ではないコンテンツでも補正しすぎることなくていねいな表現なのです。特に部屋を暗くして見る映画は、シーンごとの主題を明確にするようなリアリズムに溢れ、「映画は(プロジェクターと)スクリーンでなくちゃ」という人に対しても説得力があります。
サウンドでも、コンテンツの大半を占めるであろう2chステレオを大切にしつつ、Dolby Atmos処理がていねい。男性アナウンサーの太い声や音程の低い楽器のビートが聴き取りやすく、スタジアムの歓声やアクション映画の飛び交う銃撃といった立体感も自然に描きます。
加えてテレビ放送の指定した6chを「全録」(まるごと録画)できる「タイムシフトマシン」機能も内蔵しており、ネット動画のようにテレビ放送を検索して視聴できます。
画質・音質・使い勝手の全部入りと言える内容で、価格は戦略的と言える安さ。比較的手ごろな価格で購入できることも大きなポイントです。
現在のテレビは、有機ELと液晶の大きく2つに分けられます。2つを分けるのは発光方式の違い。有機ELテレビでは画素の1つひとつ(4Kテレビならば約800万画素)すべてが個別に自発光するため、映像の明るさや色を細かくコントロールできます。
詳細はともかく、有機ELテレビは、とにかく画質がよいテレビを求める人向けの製品なのです。
その最大のメリットは、グレーではない黒らしい黒を再現できること。正確な光の表現ができるため、映像に臨場感が出るのです。また、視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)ことも大きな特徴です。ひと昔前の有機ELテレビは液晶テレビよりも暗いと言われていましたが、最新モデルでは明るさに不足はなく、どのような環境でも使いやすいテレビだと言えます。
ちなみに、画質のよい液晶テレビとして注目されるmini LEDバックライト搭載液晶テレビは数百から数千のエリアを個別にコントロールし、高画質を目指しています。このことからも、有機ELのコントロールの細かさが文字どおり「ケタ違い」であることがわかります
最新有機ELテレビは明るく視野角が広いため、どのような環境でも使いやすいと言えます。ただし、有機ELならではの画質を100%生かしたいならば、「部屋を暗くして」「映画を見る」とよいでしょう。
上記のとおり、価格で言えば有機ELテレビよりも一般的な液晶テレビのほうが有利です。それでは有機ELテレビは「コストパフォーマンスが悪い」テレビなのでしょうか? もちろん、そうではありません。有機ELテレビには高級液晶テレビでも実現できない表現力があるからです。パフォーマンスが上がる分、価格も高くなりがち、ということは覚えておきたいポイントです。
また、有機ELテレビと高級液晶テレビを比べた場合、価格(と消費電力)で逆転現象が起こることもあります。ソニーの最高級mini LED液晶テレビ「BRAVIA9(XR90)」シリーズと、TVS REGZAの最高級有機ELテレビ「X9(X9900R)」シリーズおよびスタンダード有機ELテレビ「X8(X8900R)」シリーズを比べてみましょう。同じ65V型でも圧倒的に高価なのは液晶テレビの「BRAVIA9」シリーズです。
有機ELテレビは総じて高価ではありますが、有機EL=コスパが悪いというものでもないのです。
2025年11月13日時点の価格.com最安価格を比較。同サイズで比べるとTVS REGZAの最高級有機ELテレビ「65X9900R」よりもソニーの液晶テレビ「K-65XR90」のほうが高価でした
まずは基本的な有機ELテレビの選び方を紹介します。有機ELテレビは液晶テレビに比べてサイズの選択肢が少なく、最小サイズは42V型。これより小型モデルは現在の市場には存在しません。また、すべての有機ELテレビはいわゆる4Kテレビ。中〜大型サイズの高画質テレビが欲しい、という人が検討すべきだと言えます。
まず確認しておきたいのは、有機ELテレビのサイズは液晶テレビよりも限られていること。2025年時点で言えば最小サイズは42V型で、その上は48、55、65、77、83、97V型が販売されています。最新モデルはすべて高解像度な4Kテレビです。
ボリュームゾーンは55と65V型。77V型以上は極端に高価になるため、コストパフォーマンスがよいとは言えません。有機ELテレビの高画質をどうしても77V型以上の大画面で楽しみたい、と考える強い動機がある人向けの高級品です。
比較的小型モデルである42、48V型も55や65V型と比べるとやはり割高。こちらもどうしても大型テレビが置けない人向けの趣味性の高い製品だと言えます。
有機ELテレビのサイズは55と65V型が主力。そもそもこの2サイズしか展開していない製品もありますし、それ以外のサイズはどうしても割高になることには注意しましょう。
上記のとおり、有機ELテレビのサイズ展開は限られています。そのうえで、部屋のサイズに合ったテレビの大きさを検討してみましょう。
最新のテレビは画面周辺の額(ベゼル)が細くなっており、とても省スペース。もし10年ほど前のテレビからの買い替えならば、思っていたよりも大きなサイズが候補になるはずです。このことは液晶テレビ・有機ELテレビで共通しています。
具体的には、
・6畳ほどの部屋であれば43V型まで
・8〜10畳ほどの部屋であれば43〜60V型
・12畳以上の広い部屋であれば60V型以上
がひとつの目安になるでしょう。
テレビのサイズ選びには「適正視距離」から逆算するという考え方もあります。これは、画面に近づいた場合にテレビのメッシュ状の画素が見えない(最短)距離のこと。たとえば、4Kテレビを視聴する位置が画面から1m程度の場合、55V型以上が「適正」となります。
最も大きな没入感を得られる距離、ならびにサイズ選びの方法とは言えるのですが、普段使いの距離としてはあまりに近くなります。推奨サイズも過度に大きくなりがちなため、実生活や部屋に合ったサイズから考えたほうが現実的でしょう。
最新のテレビでは、外付け(別売)HDDを接続すれば地デジなどの番組を録画できます。テレビ番組を録画する方法としてはDVD・ブルーレイレコーダーを使う方法もありますが、録画番組をディスクに残したり、DVDなどのディスクを再生したりという予定がないならば、テレビだけでも十分でしょう。
DVD・ブルーレイレコーダーを使わずに録画機能を充実させたい場合は、3チューナーを搭載したテレビがおすすめ。3チューナーのテレビならば、テレビと外付けHDDを接続するだけで2番組の同時録画(と同時の別番組視聴)が可能。録画したい番組が重なる場合でも困ることがありません。
最新のテレビは、基本的にほとんどがネット動画の視聴に対応しています。つまりDVDプレーヤーやFire TV Stick、Chromecastなどのストリーミング端末がなくても、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、YouTubeなどの動画を楽しめるということ。
上記3つはすべての製品が対応していると思って間違いありませんが、TVerやDAZNなどに対応しているかどうかは製品次第。リモコンにショートカットボタンを搭載していることもあるので、自分が利用するサービスに対応しているかどうか、リモコンにボタンがあるかどうか、確認するとよいでしょう。
ひと昔前はこうした製品を「スマートテレビ」と呼びましたが、今ではそう呼ぶことは少なくなりました。世の中のテレビほとんどが「スマートテレビ」化したからです。
ここからは、ホームシアターコンシェルジュ遠藤義人さんが実際に見て聴いて、“これは買い!”とおすすめする製品を紹介します。
・〈基準1〉放送番組やYouTubeの画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を自動調整や「標準」「スタンダード」などにして、放送番組やYouTubeを視聴。自然な補正や色再現ができているかをチェックしました。
・〈基準2〉映画の画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を映画再生向きの「映画」や「シネマ」などにして、Ultra HDブルーレイを中心に再生。4K解像度のコンテンツを自然な解像感、色再現で見せられるかをチェックしました。
・〈基準3〉視野角がすぐれているか
画面を斜めから見たときにも色が大きく変わらないかをチェックしました。視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)と、リビングルームなど広めの部屋でも使いやすいと言えます。
・〈基準4〉音質がすぐれているか
ニュースやドラマでの人の声が聴き取りやすいか、スポーツ中継や音楽ライブに臨場感があるか、映画での低音に迫力があるかをチェックしました。
・〈基準5〉操作性がすぐれているか
操作時の動作が機敏か、リモコンの利便性がよいか、インターフェイスは使いやすいかをチェックしました。
以下の表で紹介するテレビは、各シリーズの代表機種です。個別の製品紹介項目にそのシリーズにどのサイズが展開されているか、併記しています。シリーズによってサイズ展開が異なることに注意しましょう。
| 製品 価格.com最安価格 | 画像 | ショップリンク | 画面サイズ | 解像度 | 種類 | 地デジチューナー数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 9(全録対応) |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場 | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | 楽天市場 | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 42V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |

有機ELテレビの中でも、画質・音質の完成度の高さとコストパフォーマンスで圧倒したのがTVS REGZA「X9(X9900R)」シリーズ。REGZA(レグザ)ブランドにおける2025年モデルのフラッグシップ(最上位)モデルです。暗い部屋で「映画」をとことん楽しむなら、これ一択と言いたいテレビがこれ。
「X9」シリーズの特徴は、映像の暗部が徐々に黒く沈んでいくときに最後の最後まで“潰して”しまわず粘りきる、絶妙な調光カーブを描いていること。「テレビでホームシアターを名乗ってほしくない」と思っている人にも一度体験してほしい絵作りでした。
さらに、主題(テーマ)に対して背景のピントをあえてぼかしたはずの(被写界深度が浅い)絵なら、ちゃんと作品の狙いが、詳らかに把握できるのです。たとえば、明るく広い緑溢れる庭全体を映した映像では、家族の順風満帆を示しているように見えて、手前の日陰がその後の暗転していく人生を予感させたり、心ときめく2人にだけ目が行くような衣装のテクスチャーを明確に区別したり、顔の陰影やフォーカスを極端に浅くし細かく揺り動かすことで演者の心理的動揺を表現したりと、映画言語で入念にコントロールされた映画ならではの感性領域にまで踏み込んでいます。これは数値の測定だけで果たせるものではなく、映像芸術の官能評価ができるエンジニアがいなければ果たせない業と言えるでしょう。
音質は、Dolby Atmos再生時に自然な臨場感があることはもちろん、一般的なステレオ(2ch)放送でも、位相がピッタリ合って男性アナウンサーの太い声も豊かかつ自然に聴かせてくれます。サウンドバーがなくてもストレスを感じることはないでしょう。
加えて指定した6chを「全録」できる「タイムシフトマシン」も内蔵しており、ネット動画と同じようにテレビ番組を「見たいときに見る」こともできます。まさに隙がない「ベストバイ」と言えるテレビ。実際に見てみると、画質・音質・使い勝手の全部入りでこの値付けは安すぎるのではないかと感じられるほどです。

シャープ「HS1」シリーズも、REGZA「X9」シリーズに劣らず非常にすばらしい画質です。「HS1」シリーズは、シャープが第三世代「QD-OLED」と呼ぶ量子ドット有機ELパネルを搭載した最上位のプレミアムライン。「部屋を暗くして映画を見るなら有機EL」という先入観を覆す明るさ、鮮やかさが魅力で、比較的明るい部屋でも映画を楽しみたいという人におすすめです。
部屋を暗くして「映画」モードで見る映画の夜間戦闘シーンなら、暗闇に浮かび上がる光がクリアーなだけでなく、微妙な色の違いもシャープ。暗部もベタッと潰れてしまうことなく粘るので、絶望する演者の暗い顔半分まできちっと描写します。部屋を明るくして「AIオート」で見たバラエティやスポーツもとても明るく、何を見てもヌケがよくクリアー。赤や青の原色のみならず、微妙な肌のトーンや紫のユニフォームまで偏りなく自然な色で描くため、内容に集中できます。
シャープの絵作りは、“クッキリ滑らかにしてパッと見の印象を重視して強く補正をかける”考え方とは逆で、“自然に見えるように過補正しない”ことがポリシー。それを如実に物語るのが、空間全体を分析し手前だけをクッキリさせる「空間認識AI」と、暗部で人の視覚特性に応じて明るさと色が出るよう粘る表現力(ガンマカーブ)です。この相関関係を追究した成果は、心地よい画質だけでなく省エネにも生かされているという一石二鳥。
音質も、“人にとって自然に聞こえるのはどういう処理か”を追究して作られていると感じました。画面下のステレオスピーカーと画面上のステレオスピーカーで画面中央にファントム音場を作り出すという考えが基本にあり、無理に背面まで回り込むようなサラウンド音場を作り出そうとしないのが好印象です。

映画の世界にどっぷりと浸れる、画質と音質にすぐれた有機ELテレビが欲しいならば、最高の画質・音質を目指したLGエレクトロニクスのフラッグシップ(最上位)モデル「G5」シリーズがおすすめ。
画質は堂々としていて、有機ELのリーダーであり続けてきた、LGエレクトロニクスの矜持をまざまざと見せつけるよう。
明るい部屋で映像モードを「標準」とすると、赤いドレスはコッテリと濃厚に再現されます。地デジ番組のような元々高画質とは言えない映像でも、ノイズ感少なく、しかも過補正なく、ひたすら上品に処理しています。
真骨頂は部屋の照明を落として使う「FILMMAKER MODE」。映画を見るときに映像モードにこれを選ぶだけで、圧倒的な映画体験が得られます。夜間の戦闘シーンなどは、目が慣れてくると街灯の光や銃撃の閃光1つひとつの点と線、ブルーからオレンジまでの微妙な色の違いまでが詳らかに確認でき、まるでみずから戦闘に参加しているかのよう。アクションゲームをするユーザーなら、さぞ没入感を得られることでしょう。
また、地デジ番組のような高画質とは言えない映像でも、ノイズ感少なく、しかも過補正なく、ひたすら上品に処理しています。
サウンド面も「上品」。バーチャル「11.1.2ch」の立体音響(実際の搭載スピーカーは4.2ch分)を再現すると謳いながらも、これ見よがしな包まれ感や押し出し感は皆無。むしろ、拍子抜けするほど自然に、映像コンテンツに寄り添います。
スポーツ中継ではスタジアムの歓声に適度に包まれながらもアナウンスや解説が聴き取りやすいし、アクション映画では重低音で地響きを起こすのではなく映像とシンクロした適切な効果音として情報を伝えてくれます。
独特なジェスチャー操作を行える「マジックリモコン」とAI機能は好みが分かれそうです。量販店などで体験してみるとよいでしょう。

「タイムシフトマシン」(指定した6チャンネルの「全録」機能)が不要の方にとって、最もお買い得でコストパフォーマンスが高いと言えるのが、有機ELテレビのスタンダードモデル「X8(X8900R)」シリーズです。高級液晶テレビ並みの価格で高画質有機ELテレビが手にできるわけで、お値打ち以外のなにものでもありません。
同社有機ELテレビの高級モデル「X9(X9900R)」シリーズとの最大の違いは、パネル自体がワンランク下がるのと、「タイムシフトマシン」が非搭載であること。スピーカーシステムもシンプルで、比べるとやや広がりが乏しい印象はありますが、基本音質には遜色ありません。
まったく隙のない官能表現を見せる「X9(X9900R)」の前ではあれこれ注文を付けたくもなりますが、スタンダードな有機ELパネルの基礎体力を最大限生かした素直な表現力はさすがのひと言。人肌の血の通った顔色や化粧のノリ、衣装の素材感、ギターの弦の震えや照明に反射するボディの光や細かい傷跡までが明瞭で、テロップや斜め線の描写も安定してこなします。スポーツ中継では選手の背後の芝がザラザラと破綻しませんし、映画では夜間の戦闘シーンでも街灯や光線の色の違いをきちんと描き分けます。
サウンドは、「X9(X9900R)」シリーズと比べると、若干低音域が軽いものの、ステレオ(左右2chスピーカー)を大事にした位相が揃った落ち着きのあるバランスのよさで聞かせます。

コストパフォーマンスの高い有機ELテレビを狙っているならば、LGエレクトロニクスのスタンダードモデル「C5」シリーズもおすすめ。有機ELテレビとしては“小型”の42V型が選べることもうれしいポイントです。2024年モデル「C4」シリーズの動向から推察すると、2025年末から価格.com最安価格がこなれてくると見込まれます。
LGエレクトロニクスの上位グレード品である「G5」シリーズと比べても、絵作り(画質)の方向性自体に大きな違いはなく、パネルの性能に応じて「身の丈に合った」正確な再現を求める人にぴったり。ことさら高性能をアピールすることなく、正確に再現しようという上品さが「C5」シリーズにも通底しています。
明るい環境で映像モード「標準」を試すと、スタジオ出演者を血色よく再現します。女性の白い手に血が通い健康的なトーンです。もっとも、地デジ放送番組のような解像感のない映像のスケーリング(解像度変換表示)の点では、「G5」シリーズとの落差を感じました。映像がパン(カメラの横移動)する際の斜め線の処理(家具のエッジ、弦の震え、白黒の鍵盤の処理など)に際して、ややぎくしゃくしたシーンが見受けられました。
「FILMMAKER MODE」で見る映画作品では、黒がしっかり沈み、暗いシーンでも色数が豊富。まさに映画館で見るかのように、暗闇に青やオレンジの閃光だけが横切る世界観を堪能できます。
スピーカーシステムを比べると、「G5」シリーズよりも小規模にまとめられています。実際に聴いた印象としては、やや高音域がキツいかと感じる場面があるぐらいで、さほど格差はありませんでした。スタジアムの歓声も、野太い男性の声もテレビとしては十分で、ミリタリーアクション映画においても戦車のキャタピラー音や爆撃音も「G5」シリーズに遜色ないのは、AIによるバーチャル立体音響処理のおかげでしょう。

シャープのAQUOS「HQ2」シリーズも、貴重な42V型有機ELを擁するおすすめモデル。小型モデルを選べば、凝縮感あるデスクトップシアターが楽しめます。
凝縮された高画質の魅力は大きく、「AIオート」モードで見る音楽番組では、照明、白い肌の血色の様子、ギターの震える弦の軌跡が明瞭。「映画」モードでは暗闇にうごめく戦闘員や銃撃の光跡、微妙な照明の色味も正確に描き分けます。近接して画面を見るゲームやアニメとも相性がよさそうです。上位グレード「HS1」シリーズほどの明るさは望めませんが、42V型や48V型であれば、それほどの輝度(明るさ)がなくても十分かもしれません。
スピーカーシステムはシンプルな2ch構成。画面上の設置されるハイトスピーカーはありませんが、だからこそ近接視聴でも両耳の間に定位が決まるデスクトップオーディオシステムにハマるとも言えます。基本的には、別途外付けスピーカーは不要でしょう。

ブルーレイやNetflixなどで高画質な映画を中心に楽しむならば、ナチュラル画質のソニー「BRAVIA 8(XR80)」シリーズがおすすめ。ソニーの有機ELテレビとしては量子ドット技術(サムスンディスプレイ製のパネル)を使った高級モデル「A95L」シリーズもあり、こちらはスタンダードグレード品と言えます。
「BRAVIA 8(XR80)」シリーズの特徴は、作品性に寄り添った自然な見せ方をすること。さすが関連会社にソニー・ピクチャーズ エンタテインメントを擁するだけのことはあると感じさせてくれます。たとえば暗いシーンの暗い部分もペタッと潰れたり、作品性に無関係なシーンで物影がガサガサ動いたりという不自然さがなく、色味も含めてナチュラルに表現しました。
部屋の照明を落とし、暗いシーンが多い映画作品を見るというシチュエーションにおいては、陰影のグラデーションやハッとするアイキャッチ中心に表現に余裕があります。この有機ELならではの再現性には、「BRAVIA 9(XR90)」シリーズを含む最新液晶テレビをもってしてもかないません。
音質はソニーの最上位モデルとして位置づけられる液晶テレビ「BRAVIA 9(XR90)」シリーズほどではないものの、中音域中心に充実した音作りで手堅くまとまっています。最新パネルを搭載した他社モデルと比較すると絶対的な輝度感がそれほどでもないのがネックですが、そこはソニーブランド。バランスのよい色作りは納得です。

“有機ELは暗い”という固定観念を覆すほど発光効率を向上させたパナソニック最上モデルの有機ELテレビです。まぶしいほどの明るさを実現したほか、特に赤の発色が際立つ「プライマリーRGBタンデム」の特徴がそのまま映像として表れています。
ドレスの赤の鮮やかさとドレープによって影になるボルドー色のコントラストが、地デジのような情報量が少ない画質でも明瞭。動きの速い映像では、人物の輪郭と背景が、ガサつくことなくクリアーです。全体的に、パナソニックにしてはかなりクッキリハッキリ系に振った“大冒険”をしていると感じました。
画質とともに“大冒険”なのが、サウンド。正面を向く新ユニット「フロントパワースピーカー」が画面下にずらり並ぶほか、両サイドに新ワイドスピーカー、背面には上向きにイネーブルドスピーカーを左右の間隔を広げて贅沢に配置。Dolby Atmos音声はもちろん、一般的なステレオ音源までもアップミックスして立体音響を形成します。
アクション映画では複雑な音が飛び交うさまがクリアーで、包み込むような臨場感と空間の広がりも豊か。バーチャルっぽい不自然さもありません。スポーツ中継で、スタジアムの歓声が「わあっ!」と広がるダイナミズムは随一でした。
ここまですばらしいと欲も出て、男声のセリフやナレーションにもう少し厚みが欲しくもなりました。しかし、テレビ単体の音質としては立派。本体を包み込むファブリックに光る「テクニクス」バッジは伊達でないなと感心しました。
国内外でさまざまなメーカーのテレビは、できることがまったく違うということはありません。いっぽうでメーカーごとにしっかりと個性を持っていることも確か。以下に主要メーカーの特徴を紹介しましょう。有機EL/液晶を問わないおすすめ製品をピックアップした記事、液晶テレビのおすすめ製品に特化した記事もありますので、ぜひ参考にしてください。
TVS REGZAは、REGZA(レグザ)ブランドでテレビやブルーレイレコーダーなどを販売するメーカーです。かつては東芝映像ソリューションという名称でしたが、現在の社名はTVS REGZA。中国ハイセンスグループの傘下にありますが、環境に合わせて画質を常に最適化する「おまかせ」機能などは「東芝」から継承されています。高級モデルに搭載されている「タイムシフトマシン」(全録)機能もREGZAならでは。指定した放送チャンネルの番組をすべて録画できるというほかにない特徴を持っています。
ハイセンスグループはTVS REGZAの親会社にあたります。両社はテレビ作りで協業しており、ハイセンスの映像処理エンジンはTVS REGZAと共同開発されています。ハードウェアのベーシックな部分は共用と思われますが、REGZAとハイセンスはあくまで別ブランド。TVS REGZAは有機ELとmini LEDバックライト搭載液晶テレビ両方を展開するいっぽう、ハイセンスはmini LED“推し”。明るさを生かした自然な映像再現性が特徴で、質のよいmini LEDテレビが手ごろな価格で手に入ります。
総合家電メーカーパナソニックはVIERA(ビエラ)というブランド名でテレビを販売しています。プラズマテレビの時代から自発光デバイスにこだわり、高級モデルでは画質を追求してきたため、現在も最上位モデルは自発光デバイスの有機ELテレビ。暗室で映画を見るための「ディスプレイ」としても定評があります。2024年モデルからはOSにFire TVを搭載したことがトピック。Amazonプライム・ビデオなど、サブスクの動画サービスとの親和性が高いテレビをラインアップしています。
ソニーのテレビはBRAVIA(ブラビア)というブランドで展開されています。認知特性プロセッサー「XR」などの映像処理エンジンを搭載することが特徴で、再生する映像を分析しつつ、表示の最適化を図ります。安定した品質が魅力ですが、価格設定が高めではあります。また、液晶テレビ、有機ELテレビともにラインアップしていますが、日本での製品リリースは鈍化しており、他社比較で必ずしも「最新」仕様でないことには留意しましょう。
シャープも日本でおなじみのテレビメーカーのひとつです。テレビ向けの液晶パネル生産は終了しましたが、テレビの展開はしっかり継続しています。シャープの製品で注目したいのは有機ELテレビ。最上位モデルには、発色のよさが特徴の量子ドット技術を使った有機ELパネル「QD-OLED」を採用しているのです。このパネルで毎年最新製品をリリースしているのは、日本国内ではシャープだけです。
TCLは、中国を本拠とする総合家電メーカーです。日本での知名度は高くありませんが、グローバル市場を見れば日本発祥のメーカーよりも大手だと言えます。そのスケールメリットを生かした製品価格、関連会社で液晶・有機ELパネル製造も行う技術力がTCLの特徴。ハイセンス同様にmini LEDバックライトを搭載した大画面テレビを手の届きやすい価格で多数展開し、日本でも少しずつシェアを拡大しています。高コントラストの映像がほしいけれど、価格は抑えたい、という人が注目するとよいでしょう。
韓国のLGエレクトロニクスは、すでに日本でおなじみの家電メーカーになったと言ってよいでしょう。グループ会社にLGディスプレイという液晶・有機ELパネルのメーカーを持つメリットを生かし、最新仕様のパネルを製品化し続けています。特に力を入れているのは有機EL。テレビだけでなく、PCモニターでも多くの有機EL製品を展開するメーカーとして注目される存在です。チューナー部分が別体となった「トゥルーワイヤレス」テレビシリーズなど、独自の製品企画にも積極的なため、有機ELテレビを検討するならば一度ラインアップを確認してみるとよいでしょう。
一般的な使い方をするならば、過度に心配する必要はありません。同じ映像を長時間表示し続けると、その跡が残ってしまう現象を「焼き付き」と言います。最新の有機ELテレビではしっかり「焼き付き」対策(人が認知できないレベルで画素をわずかにずらす、ロゴを検知して明るさを調整するなど)がされています。
ただし、原理的なリスクはゼロではありません。ゲームのステータス表示やテレビ局のロゴマークなど、まったく動かない同じ映像を一日中表示し続けるような使い方は避けたほうが安心ではあります。
製品や個体次第ですが、液晶テレビとあまり変わらないと考えてよいでしょう。「有機ELパネルの寿命」とは、「輝度が半減するまでの時間」を目安とすることが多く、メーカーによれば、最大10万時間にも及ぶとされることもあります。あくまで最大値ではありますが、1日10時間使うとすると、10万時間に達するには約27年が必要です。
実際は、27年を待たずにパネル以外のパーツに不具合が出る可能性が高く、液晶パネルと有機ELパネルの寿命自体を比べることにあまり意味がなくなってきています。
なお、「有機ELパネルの寿命」を3万時間からとする説もあります。1日10時間テレビを使用すると、3万時間に達するのにかかる時間は約8年。特別短いということはなく、ちょうどテレビの買い替えサイクルにかかるタイミングと言えるのではないでしょうか。
問題ありません。テレビの新製品は毎年、主に夏から秋にかけて発売されるのが一般的です。そのタイミングが、1つ前のモデル(型落ち)が値下がりするタイミングでもあります。発売されたばかりの高価な新製品よりもコストパフォーマンスが高い場合があるため、よい選択肢と言えます。
ただし、デジタルAV機器であるテレビは、基本的には「最新が最良」であることが多いと心得ましょう。有機ELパネルが刷新されるなどのタイミングは必ず存在し、輝度(映像の明るさ)や視野角の広さ(斜めから見たときも色が変わらないこと)などの基礎的な能力に差がある場合もあります。
ありますが、おすすめはしません。テレビ放送を受信できないチューナーレステレビは、機能が制限されている分価格が安いことが特徴です。有機ELのチューナーレステレビも発売されてはいるのですが、価格的なメリットはないと言ってよい状態です。
予算を抑えたい場合はここで紹介したメーカー品の「型落ち」モデルなどを狙うとよいでしょう。
スポーツやゲームなど、素早い動きのある映像・コンテンツに向いています。応答速度が速いことも有機ELテレビの特徴です。動きがボケた感じが少なく、映像がクッキリと映し出される有機ELテレビはスポーツ中継などにも強いと言えます。また、最新モデルは120Hzや144Hzなどの高速信号入力に対応したものがほとんど。高速応答が求められる最新ゲームにも向いていると言えます。