シャープのテレビ「AQUOS(アクオス)」シリーズの名前をご存じの方は多いでしょう。シャープは特に液晶テレビを推進してきたメーカーですが、現在では有機ELテレビ・液晶テレビ双方に力を入れています。
なかでも特筆すべきは、量子ドット技術を採用した有機ELテレビ「QD-OLED」の存在です。日本国内の2025年モデルでいえば、量子ドット技術を盛り込んだ最新有機ELパネルで製品をリリースしたのはシャープだけ。発色のよい有機ELテレビを求めるユーザーは注目するとよいでしょう。
〈レビュー・監修〉ホームシアターコンシェルジュ 遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
シャープのテレビAQUOS(アクオス)には多くのラインアップ(シリーズ)が用意されています。まずはシリーズ間での違いはどこにあるかを解説します。
AQUOSの2025年主力モデルは、有機ELの3ライン(プレミアムグレードの「HS1」、ハイグレードの「HQ1」、スタンダードグレードの「HQ2」)とmini LED液晶3ライン(プレミアムグレードの「HP1」「HP2」、スタンダードグレードの「HV1」)です。
興味深いのは、かつての「AQUOS=液晶」というイメージと現在はまったく違っていて、有機ELとmini LED液晶の2つを軸足としてラインアップしていること。
しかも実際に視聴してみると、有機ELにせよ、液晶にせよ、少なくとも今回視聴したモデルのすべてに一貫したトーンの映像・音作りがありました。そのトーンとは、ひと言にすると、いたずらに「映える」仕掛けをせず実直に素の映像を見せているということです。
逆に言うと、「高価なモデルはズバ抜けていい代わりに、下位モデルはぜんぜんダメ」ということがなく、AQUOSならどのモデルを選んでもグレード(価格)に比例した満足度が得られます。
ここで紹介するモデルの画質調整を司る映像処理エンジンは「S6X」ないし「S6」で、主にパネルの違い、搭載スピーカーの違いが価格差となっていると見てよいでしょう。つまり、あとは画面サイズと予算で選べばよいというシンプルなラインアップです。
有機ELもmini LEDも、省エネ性能にすぐれていることが購入時のポイントになるかもしれません。自治体によっては基準を満たしたテレビ購入時に補助金が支給されることがあります。テレビの購入時にはチェックするとよいでしょう。
音質に関わる面を見ていくと、ここで紹介するモデルはすべてDolby Atmos(ドルビーアトモス)対応。高級ライン(「HS1」「HQ1」「HP1」シリーズ)では、画面下に正面向きで配置されたスピーカー2chと、画面上の20度傾斜したハイトスピーカー2chで構成されています。このおかげで、セリフが中央に定位し、後ろに回り込むサラウンド感を作るために位相をいじくり回しているような違和感がないのがうれしいところです。なお、「HQ2」「HP2」「HV1」シリーズはシンプルな2chベースの構成で、こちらも良好でした。
さらに、「目の付けどころがシャープ」な独自ポイントをいくつかあげておきます。
ゲーム用途を考慮して、あえて映像を小さく表示する機能も搭載。このときの映像は上下左右に移動可能です
AIを駆使した画質の自動調整機能では、精細感を上げるため画面全体を一律クッキリさせるのではなく、本来ピントが合うべき手前だけクッキリさせる「空間認識AI」を搭載。リアルタイムでの画像解析に留まらず、番組ジャンル情報があれば処理に反映させ、コンテンツが切り替わる際も、見ている人が気にならないよう画質を20秒ほどかけてじんわり変化させます。音声もジャンルによるAI判別が機能するほか、録画番組の2倍速(早見)再生時には聴き取りやすく調整します。
放送番組×録画番組などの組み合わせで同一画面上に表示できる2画面機能も便利。FPSなどのゲーム向けに画面の表示サイズをあえて縮小する機能も持っています。そのスケーリング機能を応用した、緊急速報などの情報表示エリアをカットしてコンテンツを全画面表示できる「L字カット再生」もユニークな提案です。
まずはシャープに限らない基本的なテレビの選び方を確認してみましょう。これから選ぶならば、4Kテレビを検討すべきです。そのうえで高画質を求めるならば55V型以上がおすすめ。小さいテレビが欲しい場合の有力候補は43V型、さらに小さいテレビならば4Kよりも解像度は下がりますが32V型がおすすめです。
部屋の広さや用途合ったサイズを選ぶのが基本ですが、サイズによって選べる製品が異なることに注意しましょう。
※データは2025年6月時点のもの
4Kテレビとは、水平(横)方向の解像度が4,000画素(実際には3,840)のテレビのこと。従来の一般製品で採用されていたフルHD(1,920×1,080)よりも約4倍細かく、高精細な映像を映し出せます。地デジ放送の解像度はHD(1,440×1,080)なので、4Kは必要ないと思われるかもしれません。それでもこれからテレビを購入するならば、4Kテレビがおすすめです。
その大きな理由は、42V型以上の最新テレビは、基本的にすべて4K解像度だから。あえて旧モデルなどの低解像度のテレビを選ぶ必要はありませんし、低解像度の大型テレビが安いということもありません。また、4K放送を見ないのであれば、専用アンテナの設置は不要です。
今やAmazonプライム・ビデオやNetflix、YouTubeなどでは4K解像度のコンテンツは珍しくありません。それらを100%楽しめるのが4Kテレビなのです。さらに、地デジ放送などHD以下の解像度コンテンツであっても、4Kテレビは映像の解像度を4Kに変換(アップコンバート/アップスケーリング)して高精細化します。
すぐれた映像処理能力を持っていることも4Kテレビのよいところ。4Kテレビに買い替えれば、何気なく見ていたいつものコンテンツをより楽しめるかもしれません。
今や42V型(インチ)以上のテレビは基本的に4K。どうしても小型がよいとき以外は、4Kテレビを前提として考えましょう。
テレビを選ぶときに真っ先に考えるのは、サイズのことではないでしょうか。
最新のテレビは画面周辺の額(ベゼル)が細くなっており、とても省スペース。もし10年ほど前のテレビからの買い替えならば、思っていたよりも大きなサイズが候補になるはずです。
具体的には、
・6畳ほどの部屋であれば43V型まで
・8〜10畳ほどの部屋であれば43〜60V型
・12畳以上の広い部屋出あれば60V型以上
がひとつの目安になるでしょう。
なお、サイズ選びには「適正視距離」から逆算するという考え方もあります。「適正視距離」とは、画面に近づいた場合にテレビのメッシュ状の画素が見えない(最短)距離のこと。たとえば、4Kテレビを視聴する位置が画面から1m程度の場合、55V型以上が「適正」となります。最も大きな没入感を得られる距離、ならびにサイズ選びの仕方とは言えるのですが、普段使いの距離としてはあまりに近くなります。推奨サイズも過度に大きくなりがちなため、実生活や部屋に合ったサイズから考えたが現実的でしょう。
「適正視距離」という考え方もありますが、この方法では想定視距離があまりに近く、推奨のテレビサイズは大きくなりがち。実生活や部屋にあった無理のないサイズを考えるほうが現実的でしょう。
※データは2025年6月時点のもの
部屋の広さ以外にも、テレビのサイズ選びで重要なことがあります。高画質・高音質のテレビを求めるならば、メーカーの主力と言える55V型以上のモデルがおすすめです。
テレビは年々大型化していて、現在メーカーの主力サイズは55V型と65V型。高画質モデルはそもそも55V型もしくは65V型以上のモデルしか展開されていないこともよくあります。50V型以下のサイズを検討すると選択肢が減ってしまうため、コストパフォーマンスと高画質を考えるなら、いちばん有力になるのが55V型以上のサイズです。
メーカーが力を入れているのは55V型と65V型。最高画質・音質のテレビを求めるならば55V型以上のサイズを選ぶ必要があります。
55V型が大きすぎると考える人にちょうどよいのが43V型の4Kテレビ。4K液晶テレビとしては最小サイズであり、選択肢が多く、価格もリーズナブルです。
40V型よりも小さなサイズのテレビは、解像度がフルHD(1,920×1,080)以下になることには注意が必要です。それでも小さなテレビが欲しいという人には32V型フルHD解像度のテレビがおすすめ。小型テレビのなかでは高画質を期待できるため、一人暮らし向けやサブテレビとして人気があります。
また、テレビのサイズが小さくても、録画やネット動画の再生機能など、できることには大きな差がないことがほとんど。価格を抑えたいという場合にも、4Kならば43V型、フルHDならば32V型がそれぞれ狙い目のサイズと言えます。
たとえば40V型テレビの場合、最高解像度は2K(フルHD)。少し大きめの43V型4Kテレビを選んだほうが、解像度が高く画質的に有利と言えます。
現在のテレビは、有機ELと液晶の大きく2つに分けられます。2つを分けるのは発光方式の違い。詳細はともかく、とにかく画質がよいテレビを求めるならば有機EL、コストパフォーマンスを求めるならば液晶を選ぶとよいでしょう。
有機ELテレビは総じて画質がよく、グレーではない黒らしい黒を再現できることが特徴です。正確な光の表現ができるため、映像に臨場感が出るのです。また、視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)ことも大きな特徴です。ひと昔前の有機ELテレビは液晶テレビよりも暗いと言われていましたが、最新モデルでは明るさに不足はなく、どのような環境でも使いやすいテレビだと言えます。
有機ELテレビの画質のよさは、主に黒の再現性、局所的な明るさのコントロール力にあります。この有機ELテレビのよさを100%生かすならば「部屋を暗くして」「映画を見る」とよいでしょう。
高画質テレビの最新技術として注目されているのがmini LEDバックライトを搭載した液晶テレビです。
有機ELテレビには「焼き付き」と呼ばれる現象(※)や寿命の面で心配する声もあります。そこで、価格的に有利な液晶テレビのなかで高画質を実現するための技術が注目されているのです。実際に、mini LEDバックライトを搭載した液晶テレビは、有機ELテレビよりも安い(一般の液晶テレビよりは高い)ことがほとんど。画質とコストのバランスがよい選択肢だと言えます。
※同じ画像を長時間表示し続けた場合、その部分に残像が生じたり、劣化が進行したりする症状のこと。最新製品での実使用上はそれほど気にする必要はありません。
液晶テレビは画面の裏に設置されたバックライト(光源)で映像の明暗を再現します。このバックライトを細かく区切り、エリアごとに別々に動かす(ローカルディミングする)ことで、コントラストの高い(明暗差がはっきりした)映像を表示できるのです。
mini LEDバックライトの分割エリア数は数百から数千。画素単位(4Kならば約800万画素)で光をコントロールする有機ELテレビには及びませんが、映像の明暗のより正確な再現性を期待できます。
最新のテレビでは、外付け(別売)HDDを接続すれば地デジなどの番組を録画できます。テレビ番組を録画する方法としてはDVD・ブルーレイレコーダーを使う方法もありますが、録画番組をディスクに残したり、DVDなどのディスクを再生したりという予定がないならば、テレビだけでも十分でしょう。
DVD・ブルーレイレコーダーを使わずに録画機能を充実させたい場合は、3チューナーを搭載したテレビがおすすめ。3チューナーのテレビならば、テレビと外付けHDDを接続するだけで2番組の同時録画(と同時の別番組視聴)が可能。録画したい番組が重なる場合でも困ることがありません。
最新のテレビは、基本的にほとんどがネット動画の視聴に対応しています。つまりDVDプレーヤーやFire TV Stick、Chromecastなどのストリーミング端末がなくても、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、YouTubeなどの動画を楽しめるということ。
上記3つはすべての製品が対応していると思って間違いありませんが、TVerやDAZNなどに対応しているかどうかは製品次第。リモコンにショートカットボタンを搭載していることもあるので、自分が利用するサービスに対応しているかどうか、リモコンにボタンがあるかどうか、確認するとよいでしょう。
一昔前はこうした製品を「スマートテレビ」と呼びましたが、今ではそう呼ぶことは少なくなりました。世の中のテレビほとんどが「スマートテレビ」化したからです。
ここからは、ホームシアターコンシェルジュ遠藤義人さんが実際に見て聴いて、“これは買い!”とおすすめする製品を紹介します。
・〈基準1〉放送番組やYouTubeの画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を自動調整や「標準」「スタンダード」などにして、放送番組やYouTubeを視聴。自然な補正や色再現ができているかをチェックしました。
・〈基準2〉映画の画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を映画再生向きの「映画」や「シネマ」などにして、Ultra HDブルーレイを中心に再生。4K解像度のコンテンツを自然な解像感、色再現で見せられるかをチェックしました。
・〈基準3〉視野角がすぐれているか
画面を斜めから見たときにも色が大きく変わらないかをチェックしました。視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)と、リビングルームなど広めの部屋でも使いやすいと言えます。
・〈基準4〉音質がすぐれているか
ニュースやドラマでの人の声が聴き取りやすいか、スポーツ中継や音楽ライブに臨場感があるか、映画での低音に迫力があるかをチェックしました。
・〈基準5〉操作性がすぐれているか
操作時の動作が機敏か、リモコンの利便性がよいか、インターフェイスは使いやすいかをチェックしました。
以下の表で紹介するテレビは、各シリーズの代表機種です。個別の製品紹介項目にそのシリーズにどのサイズが展開されているか、併記しています。シリーズによってサイズ展開が異なることに注意しましょう。
| 製品 価格.com最安価格 | 画像 | ショップリンク | 画面サイズ | 解像度 | 種類 | 地デジチューナー数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型 | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型 | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型 | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |

「部屋を暗くして映画を見るなら有機EL」という既定路線に留まらない、どんな状況でも使いやすい高画質を求めるならば、最高級有機ELテレビである「HS1」シリーズがおすすめ。シャープが「QD-OLED」第三世代と呼ぶ量子ドット有機ELパネルを搭載した最上位のプレミアムラインです。
量子ドット技術を搭載した新パネルは、「輝きが従来機に比べ約2倍アップ」(2024年の「QD-OLED」である「GS1」ライン比で)とのこと。この最新パネルのおかげで、明暗差だけでなく色表現にまで余裕を生んでいることが、どのソースを見てもわかります。
確認したのは65V型の「4T-C65HS1」。部屋を暗くして「映画」モードで見る映画の夜間戦闘シーンは、暗闇に浮かび上がる照明の輝きや閃光がクリアーなだけでなく、微妙な色の違いを描き分け、光の筋も飽和することなくシャープ。また、暗部もベタッと潰れてしまうことなく、絶望的な表情を見せる演者の暗い顔半分まできちっと描写します。
部屋を明るくして「AIオート」で見たバラエティやスポーツもとても明るく、有機ELが暗いというイメージは皆無。何を見ても抜けがよくクリアーで、赤や青の原色のみならず、微妙な肌色や紫のユニフォームまで偏りなく自然な色で描き、一切ストレスを感じません。
最近一部に見られる、“画質がすぐれない映像に対して強く補正を施しクッキリ滑らかにしてよく見せよう”とするという考え方とは逆の姿勢であることがはっきりとうかがえます。ノイズリダクションや動きの補正をあまり強く掛けていないのも個人的には好ましく、総じて“人にとって自然に見えるのはどういう処理か”を考えて作られているように感じました。
これは音質面でも同様で、“人にとって自然に聞こえるのはどういう処理か”を追究して作られていると感じます。画面上下のスピーカーで画面中央にファントム音像を作り出す(画面中央から音が出ているように感じられる)という考えが基本にあるようで、背面まで回り込むサラウンド音場を無理に作り出そうとしません。
確かに、Dolby Atmosの映画作品では画面上から音を放射するスピーカーが活躍し、ヘリの旋回音や銃撃の軌跡が縦横無尽に聴き取れますが、むしろテレビソースの大半を占める通常のスピーカーが真っ当なオーディオサウンドですばらしい。アコースティックギターのボディを叩く音、男性アナウンサーの太い声、背後にあるはずのスタジアムの歓声がナチュラルに広がるので、位相がグチャグチャしがちな低品位サウンドバーはまったく必要ないと思いました。

明るいリビングなどで総じて使いやすいのがこの「HP1」シリーズ。有機ELの「HS1」シリーズと双璧をなす液晶の最上位モデルだけあって、液晶らしい明るさと有機ELに近い色表現が印象的で、特に部屋を明るくして見る「AIオート」画質の万能ぶりに驚かされました。この下位モデルとして「HV1」シリーズがありますが、発表/発売直後とあって価格.com最安価格は高め。相対的に「HP1」はお買い得感のあるmini LEDバックライト搭載液晶テレビです。
パネルは量子ドット+mini LEDバックライトによるもので、エリアごとのバックライト制御をより緻密にしているのが進化ポイント。さらに「HP1」は低反射「N-Black Wideパネル」を採用し、視野角が広く、(液晶テレビとしては)斜めから見ても色が変わりにくいという特徴があります。このことは、量販店などで確認してもすぐにわかるでしょう。
確認したのは65V型の「4T-C65HP1」。部屋を暗くして見た映画作品の描写は、有機ELテレビ「HS1」には及ばないものの、暗部が白く浮いたり色がぼやけたりすることなく、クリアーで鮮やか。
もっとも、冒頭に記したとおり真骨頂はやはり明るい部屋で「AIオート」で見たバラエティやスポーツ中継、音楽番組など。明るい部分も色が“飛んで”しまわず、濃厚に出るあたりは吟味された絵作りであることをうかがわせます。
サウンド面では、画面下に正面に向いて配置されたスピーカーと画面上に20度傾斜して配置されたスピーカーが画面を挟み込むことで中央にファントム音場を作り出す(画面中央から音が出ているように感じられる)実直さが快感。男性アナウンサーの太い声がしっかり出て聴き取りやすく、Dolby Atmos音声の映画作品での旋回音や銃撃音も、「HS1」ほどではありませんが臨場感豊かでした。

大画面のmini LEDテレビを比較的安価に購入したいならば、「HV1」シリーズがおすすめ。「HV1」シリーズは、シャープのmini LEDバックライト搭載液晶テレビのスタンダードグレードモデル。確認したのは最大サイズの85V型「4T-C85HV1」ですが、75V型、65V型、55V型とサイズ展開が豊富です。
85V型は、一般住宅への搬入が可能なテレビのなかで最大級と言えるサイズ。視聴時は2mほどの距離で見たので、ほぼ視野角一杯の4K大画面です。近接視聴ゆえ細かいことが気になりましたが、もう少し距離を取れればまさにホームシアター感覚で映像が楽しめるでしょう。
プロジェクター+スクリーンとの違いは、液晶テレビらしい明るさ。上位モデル「HP1」「HP2」シリーズと比べると眩しさや色の鮮やかさでは及びませんが、むしろこれだけ画面が大きいのならば、少し薄いぐらいがちょうどよいかなとも思わせます。
予想以上によかったのが、部屋を暗くして見た映画。「映画」モードで見た夜間の戦闘シーンは、液晶っぽい黒浮きが少なく、明るいところを“飛ばす”こともありません。また、暗いところをしっかり見ようとする人の視覚特性を考慮した絶妙な塩梅で明暗と色の濃さをコントロールしています。先行して発売された「HP1」「HP2」シリーズのノウハウが生かされていると感じます。
「4T-C85HV1」のスピーカーシステムを見ると、アンプは総合出力40Wと控えめのシンプルな2.1ch仕様ですが、無理をしない自然な音作り。しっかりと戦闘シーンの衝撃音を再現してくれました。男性アナウンサーの声も、アコースティックギターの音色も中低域がしっかりとニュアンスを伝えます。
「HV1」シリーズは手の届きやすい大型mini LEDモデルとして企画されたものと考えられますが、「HP1」「HP2」シリーズよりも発売時期が遅く、10月23日時点の価格.com最安価格はやや割高に感じられます。一般的なテレビと同じように少しずつ市場価格が下がっていくと想定されるので、お買い得に質のよいmini LEDテレビを購入したいと考えるならば、価格.comで動向をチェックするとよいでしょう。
なお、明るさと色味、視野角の広さ、音の充実度は上位機種である「HP1」のほうが明らかに上でした。
おすすめとしてあげたほかにも、シャープには多彩なテレビがラインアップされています。主な製品のレビューも紹介しましょう。

確認したのは42V型の「4T-C42HQ2」。42V型は、4K有機ELテレビとしては最小サイズ。デスクトップでも利用できるサイズ感ですから、凝縮感あるデスクトップシアターも楽しめます。
「おすすめ」にあげなかったのは、サイズ比で考えると、やはりコストパフォーマンスがよいとは言いがたいから。42V型や48V型を選べるのはうれしいのですが、ボリュームゾーンである55V型と比べてそれほど安いわけではありません。また、42V型のみ「省エネ達成率」が100%に達していないことには留意しましょう。
それでもこの凝縮された高画質の魅力は大きく、「AIオート」モードで見る音楽番組では、照明、白い肌の血色の様子、ギターの震える弦の軌跡が明瞭。「映画」モードでは暗闇にうごめく戦闘員や銃撃の光跡、微妙な照明の色味も正確に描き分けます。近接して画面を見るゲームやアニメとも相性がよさそうです。このサイズなら上位モデルほどの輝度(明るさ)がなくても十分かもしれません。
スピーカーシステムはシンプルな2ch構成。画面上の設置されるハイトスピーカーはありませんが、だからこそ近接視聴でも両耳の間に定位が決まるデスクトップオーディオシステムにハマるとも言えます。基本的には、別途外付けスピーカーは不要でしょう。

「HP2」シリーズは、シャープのmini LEDバックライト搭載液晶テレビとしては高級ライン。小型の43V型、50V型をラインアップしていることが特徴です。55V型以上がラインアップされる「HP1」シリーズの小型モデルという位置づけとなります。
「HP1」と異なるのは、画面サイズのほか、パネルが低反射「N-Blackパネル」であることなど。「HP1」はより広視野角(斜めから見ても色が変わりにくい)な「N-Black Wide パネル」を搭載しています。また、スピーカーはやや簡素になっていて、ハイトスピーカーがないシンプルな2ch(+サブウーハー)構成です。
確認したのは、50V型の「4T-C50HP2」。スペックどおり、絵作りや音作りでは「HP1」シリーズとあまり変わりありません。「AIオート」モードの画質は明るく万能。基本的なレビュー内容は「HP1」の項目を参照いただいてかまいません。
ただ、やはり“Wideでない”パネルの差はやや気になりました。「HP2」は視野角が狭いわけでもないのですが、部屋を暗くしたときの映り込みがあるのです。また、「HP1」よりも画面が小さくなった分だけ凝縮感が出るかと期待しましたが、全体的にこぢんまりと感じてしまいました。
50V型は一定の需要があるボリュームゾーンひとつと思われますが、もし設置場所に余裕があるならば、もう少しだけ予算をとって55V型の「HP1」を検討することをおすすめします。
ここまでに紹介したシャープ以外にも、、国内外さまざまなメーカーがテレビを発売しています。できることがまったく違う、ということはありませんが、メーカーごとに個性があることは間違いありません。以下に主要メーカーの特徴を紹介しましょう。
TVS REGZAは、REGZA(レグザ)ブランドでテレビやブルーレイレコーダーなどを販売するメーカーです。かつては東芝映像ソリューションという名称でしたが、現在の社名はTVS REGZA。中国ハイセンスグループの傘下にありますが、環境に合わせて画質を常に最適化する「おまかせ」機能などは「東芝」から継承されています。高級モデルに搭載されている「タイムシフトマシン」(全録)機能もREGZAならでは。指定した放送チャンネルの番組をすべて録画できるというほかにない特徴を持っています。
ハイセンスグループはTVS REGZAの親会社にあたります。両社はテレビ作りで協業しており、ハイセンスの映像処理エンジンはTVS REGZAと共同開発されています。ハードウェアのベーシックな部分は共用と思われますが、REGZAとハイセンスはあくまで別ブランド。TVS REGZAは有機ELとmini LEDバックライト搭載液晶テレビ両方を展開するいっぽう、ハイセンスはmini LED“推し”。明るさを生かした自然な映像再現性が特徴で、質のよいmini LEDテレビが手ごろな価格で手に入ります。
総合家電メーカーパナソニックはVIERA(ビエラ)というブランド名でテレビを販売しています。プラズマテレビの時代から自発光デバイスにこだわり、高級モデルでは画質を追求してきたため、現在も最上位モデルは自発光デバイスの有機ELテレビ。暗室で映画を見るための「ディスプレイ」としても定評があります。2024年モデルからはOSにFire TVを搭載したことがトピック。Amazonプライム・ビデオなど、サブスクの動画サービスとの親和性が高いテレビをラインアップしています。
ソニーのテレビはBRAVIA(ブラビア)というブランドで展開されています。認知特性プロセッサー「XR」などの映像処理エンジンを搭載することが特徴で、再生する映像を分析しつつ、表示の最適化を図ります。安定した品質が魅力ですが、価格設定が高めではあります。また、液晶テレビ、有機ELテレビともにラインアップしていますが、日本での製品リリースは鈍化しており、他社比較で必ずしも「最新」仕様でないことには留意しましょう。
シャープも日本でおなじみのテレビメーカーのひとつです。テレビ向けの液晶パネル生産は終了しましたが、テレビの展開はしっかり継続しています。シャープの製品で注目したいのは有機ELテレビ。最上位モデルには、発色のよさが特徴の量子ドット技術を使った有機ELパネル「QD-OLED」を採用しているのです。このパネルで毎年最新製品をリリースしているのは、日本国内ではシャープだけです。
TCLは、中国を本拠とする総合家電メーカーです。日本での知名度は高くありませんが、グローバル市場を見れば日本発祥のメーカーよりも大手だと言えます。そのスケールメリットを生かした製品価格、関連会社で液晶・有機ELパネル製造も行う技術力がTCLの特徴。ハイセンス同様にmini LEDバックライトを搭載した大画面テレビを手の届きやすい価格で多数展開し、日本でも少しずつシェアを拡大しています。高コントラストの映像がほしいけれど、価格は抑えたい、という人が注目するとよいでしょう。
韓国のLGエレクトロニクスは、すでに日本でおなじみの家電メーカーになったと言ってよいでしょう。グループ会社にLGディスプレイという液晶・有機ELパネルのメーカーを持つメリットを生かし、最新仕様のパネルを製品化し続けています。特に力を入れているのは有機EL。テレビだけでなく、PCモニターでも多くの有機EL製品を展開するメーカーとして注目される存在です。チューナー部分が別体となった「トゥルーワイヤレス」テレビシリーズなど、独自の製品企画にも積極的なため、有機ELテレビを検討するならば一度ラインアップを確認してみるとよいでしょう。