選び方・特集
MMカートリッジとMCカートリッジ全11モデルを紹介

アナログレコードをさらに楽しむカートリッジ交換の魅力と注目モデル聴き比べ

アナログレコードをさらに楽しむカートリッジ交換の魅力と注目モデル聴き比べ

いま、アナログレコードが大いに盛り上がっていることは、皆さんもすでにご承知のことと思う。

デジタル音声とは趣の異なる耳馴染みのよい自然なサウンドはもちろんのこと、針で溝をトレースして音を拾い上げる機械的な興味深さ、30cm×30cmサイズという大柄なジャケットなど、アナログレコードならではの魅力がいくつもあって、それらが音楽ファンに見直されている、といった状況だ。

さらに、アナログレコードの再生にはとても興味深い特徴がある。それは、部品交換やセッティングの変更で、音色傾向がからりと変わってしまうことだ。カートリッジと呼ばれる針先部分やそれを固定するヘッドシェル、カートリッジを固定するアーム部分、フォノイコライザーと呼ばれる専用アンプなど、ちょっとした製品を交換するだけでも、音はガラリと変わるし、オーディオボードやインシュレーターなどを使って設置をしっかり行うと、それだけで音質が向上する場合もある。

以前は、そういった変化に敏感な部分がマニア心をくすぐると同時に、敷居の高さにもつながっていた。しかしながら昨今の(高級モデルを除く)アナログプレーヤーは、安定した音質をキープしてくれる製品も数多く、昔ほどの気難しさはほとんど感じない。かえって、いろいろなパーツを積極的に交換して、音質を自分好みに変えていく楽しみが広がっていたりする。

なかでも音質の変化度が大きい製品が、カートリッジだ。こちらを交換することで音がガラリと変わるし、すべての製品が別の音をしているという、とてもおもしろい状況になっている。また、カートリッジにはMMとMC、2つの主流タイプがあって、どちらかを選ぶかでも音の雰囲気がガラリと変わっていく。アナログプレーヤーに内蔵されているフォノイコライザーは基本MMのみの対応だが、こちらをオフにしつつMC対応の単体フォノイコライザー製品を接続し、MCタイプのカートリッジに交換することで、表現のきめ細やかさが格段に向上した、まったく新しい音の世界が広がったりする。実際、筆者は10年に満たない浅い歴史のアナログレコードファンだが(過去の取材で相当の金額を投入しないと満足できないことがわかりずいぶん長い間躊躇していた)、それでもすっかりハマってしまい、手頃な製品がメインながらも20あまりのカートリッジが手元にあったりする。なかなかに、楽しい趣味なのだ。

ということで、今回はカートリッジ交換が初めてという人にもおすすめできる、定番製品や人気モデルをメインに紹介していこう。なお、今回の取材には、Technics「SL-1200MK7」を使用した。それ以外のプレーヤーでは多少音色傾向が変わってくるが、個々のカートリッジの特徴は十分把握できると思う。ぜひ、参考にして欲しい。

今回はカートリッジ交換が初めてという人にもおすすめできる、定番製品や人気モデルをメインに紹介する

今回はカートリッジ交換が初めてという人にもおすすめできる、定番製品や人気モデルをメインに紹介する

MMカートリッジ

MMカートリッジといえばOrtofonとShure、そしてオーディオテクニカ(同社の場合は独自のVM方式を採用しているがMMと互換性がある)の3社が世界的にも有名だったが、Shureは残念ながらカートリッジ事業から撤退してしまったので、現在は2大メーカー体制といっていい状況になっている。価格も手頃な製品が揃い、フォノイコライザーも純正そのままが使えるため、カートリッジ交換がしやすい方式となっている。

オーディオテクニカ「AT-VM95E/H」

オーディオテクニカ「AT-VM95E/H」

オーディオテクニカ「AT-VM95E/H」

オーディオテクニカ製カートリッジのなかでも、スタンダードモデルに位置し、長い期間にわたって人気を保ち続けているのが「VM95」シリーズだ。その最新モデルである「AT-VM95E/H」(ヘッドシェル付)は、オーディオテクニカ独自の機構であるVM方式を踏襲しつつ、針先も変わらず接合楕円針をチョイス。それでいて、出力電圧やダイナミックレンジ、周波数特性などを向上させたブラッシュアップモデルとなっているのが特徴だ。

手元に所有していた旧タイプと比較しつつ、実際のサウンドを聴いてみると、確かに音がクリアになったというか、フォーカス感の高まったサウンドに変化している。持ち前のメリハリのよさが、さらに高まってくれたようにも感じる。それでいて、ボーカルの歌声は自然。S/Nがよくなった、情報量が増えたのかもしれない。旧モデルとの差はわずかだが、好ましい変化だ。

また、「VM95」シリーズと針先の互換性があり、上位機種用に交換することもできる点もうれしい。価格も手頃なので、音の基準とするカートリッジとして、ひとつ手に入れておいてもよさそうだ。

オーディオテクニカ「VM750SH」

オーディオテクニカ「VM750SH」

オーディオテクニカ「VM750SH」

2つのメインボディと7つの針先(モノラルを除く)を自由に組み合わせることができる、とてもユニークなコンセプトのシリーズ。そのなかで、今回取り上げるのが「VM750SH」だ。こちら、アルミ合金ボディと無垢シバタ針が組み合わされたもの。加えて、軽量化を追求したアルミ・テーパーパイプ・カンチレバーや発電効率を高めるパラトロイダルコイル、クロストーク改善のためのセンターシールドプレートなど、細部にわたってさまざまな技術が投入されている。

そのサウンドは、解像感の高さ、音数の多さが魅力。人の声がとても表情豊かになって、付帯しているエコー成分などもしっかりと届いてきてくれる。おかけで、音場的な広がり感が大きくスムーズだ。なお、低域はやや強め、高域も煌びやかと、メリハリのハッキリしたサウンドキャラクターも持ち合わせている。

Ortofon「2M Blue」

Ortofon「2M Blue」

Ortofon「2M Blue」

カートリッジ界のもうひとつの雄、Ortofonも豊富なバリエーションのカートリッジをラインアップしているが、MMタイプのスタンダードといえるのがこの「2M」シリーズだ。そのなかでもおすすめはこの「2M Blue」。価格的には下から2番目に位置するモデルで、コストパフォーマンスと音質が巧みに両立しているのが魅力となっている。また四角四面なデザインの多い一般的なカートリッジとは異なり、スタイリッシュな独特のデザインを採用している点にも興味が引かれる。針先は、楕円無垢ダイヤモンドを採用している。

そのサウンドは、ひとことで表すならば晴れやかで明るいキャラクター。ほんの少し中域強めの傾向があり、おかげで歌声が活き活きとしている。アコースティック楽器を多用する演奏ともマッチングがよいので、ジャズやボーカル系をよく聴く人と相性がよさそうだ。

Ortofon「Concorde 40 Anniversary」

Ortofon「Concorde 40 Anniversary」

Ortofon「Concorde 40 Anniversary」

名前の通り、飛行機の先端のように尖った超絶個性派デザインを採用するカートリッジ。元々リスニング用として開発されたものだが、現在はDJ用としても有名となっている。

今回紹介する「Concorde 40 Anniversary」は、その40周年を記念して発売されたモデル(ちなみにこちら、リスニング用として開発されているためDJプレイには向かない)。押し出しの強い、パワフルなサウンドが特徴で、それでいて細部のニュアンスもしっかりと拾い上げてくれる、質の高さを持ち合わせている。現代音楽、新盤のレコードを中心に楽しんでいる人に、ぜひチェックして欲しい製品だ。

GRADO「DJ200i」

GRADO「DJ200i」

GRADO「DJ200i」

ヘッドホンとアナログ・カートリッジをラインアップしている北米メーカー、GRADOのDJ向けカートリッジ。DJプレイが可能な高耐久モデルだが、音質的にも魅力があり、リスニング用としても活用されている。針先は、長円ダイヤモンドを採用する。

エネルギッシュでパワフルなサウンドが特徴。ボーカル、特に男性ボーカルが魅力的で、スティングなどは大人っぽい歌声を楽しむことができる。サックスも、芯のしっかりした、高域が煌びやかな音色で、ノリの演奏を聴かせてくれた。解像感は価格相応ながら、音楽の楽しさは十分に伝わってくる。なかなかに魅力的な製品だ。

SHELTER「Model 201」

SHELTER「Model 201」

SHELTER「Model 201」

高級カートリッジをメインに展開し、アナログレコードマニアの間で高い人気を誇る日本メーカー、SHELTER。同ブランドがラインアップする唯一のMMカートリッジがこの「Model 201」だ。

MMカートリッジにありがちな高域のピーク感を抑え、聴き心地のよさを追求したという製品だけあって、そのサウンドは絶品。アナログレコードのよさを存分に感じられるサウンドキャラクターで、解像感もしっかりしたレベルが確保されており、セパレーションも良好。自然な音場空間の、聴き心地のよいサウンドを聴かせてくれる。高フォーカスを信条とした「SL-1200MK7」のキャラクターとはやや趣がズレるが、もう少し緊張感を弱めたやさしい音にしたい人にはピッタリかもしれない。いずれにしても、この音質がこの価格で手に入るのはうれしいかぎり。コストパフォーマンスのとても高い製品だ。

MCカートリッジ

ニュアンス表現のきめ細やかさで、MMカートリッジに対して圧倒的なアドバンテージを持つのがMCカートリッジだ。高価な製品が増えてくる上、単体フォノイコライザーなども用意しなければならないため多少コストはかさんでくるが、その音を聴けばどうしても欲しくなる魅力を持ち合わせている。今回は、定番モデルを中心に4モデルを紹介させていただこう。

なお、単体フォノイコライザーはCambridge Audio「DUO」を借用して試聴した。こちら、3万円前後の価格ながらMM/MCに両対応。どちらのカートリッジも手軽に楽しめる製品となっている。音質面でも、十分以上のクオリティを有するハイコスパな製品だ。

フォノイコライザーはCambridge Audio「DUO」を組み合わせて試聴した

フォノイコライザーはCambridge Audio「DUO」を組み合わせて試聴した

Ortofon「MC-Q5」

Ortofon「MC-Q5」

Ortofon「MC-Q5」

Ortofonには「MC Cadenza」シリーズや「SPU」シリーズなど、有名なMCカートリッジが多数あるが、コストパフォーマンスにすぐれた、幅広いユーザーにおすすめできる製品も用意されている。それが「MC-Q」シリーズだ。

なかでも、今回取り上げる「MC-Q5」は、MC-Qシリーズのなかでもスタンダードクラスに位置するモデルで、3万円という価格が付けられている。

そのサウンドは、圧倒的な情報量の多さが魅力。オーケストラを聴くと、すべてのパート1人1人の演奏が細部までフォーカスできそうなくらい、細やかなニュアンスが、しかもちゃんとセパレートされて伝わってくる。MCカートリッジのメリットがしっかりと伝わってくる、質のよい製品だ。加えて、0.5mVというMCカートリッジとしては高めの出力電圧もあってか、エネルギッシュな表現も得意としている。とても良質な製品だ。

DENON「DL-103」

DENON「DL-103」

DENON「DL-103」

NHKとの共同開発によって1964年に発表、以来55年以上にわたって作り続けられている定番中の定番モデルがこの「DL-103」だ。NHKと共同開発という生い立ちからわかる通り、元々は放送局用に作られた製品だが、そのうちリスニング用としても人気が高まり、結果として半世紀以上の長きにわたる超ロングセラーモデルとなった。

そのサウンドは、いい意味でノンジャンルの傾向を持つ。音楽ジャンルを選ばない、とてもオーソドックスなサウンドだ。とはいえ、決しておもしろみのない音ではなく、大人っぽい女性ボーカルは一歩前に出てきたかのような確かな存在感を持ち、締まりのあるキックドラムがノリのよいグルーヴを感じさせてくれたりと、聴かせ方のツボを心得た、生き生きとしたサウンドを楽しませてくれる。再生環境のSNを顕著に反映してくれるため、プレーヤーの設置等でかなりの追い込みが必要だが、それを苦労とは思わない、魅力的なサウンドだ。

GRADO「Statement Sonata 2」

GRADO「Statement Sonata 2」

GRADO「Statement Sonata 2」

GRADOは希有なことに、ウッド素材の本体を持つカートリッジを主力としてラインアップしており、MMとして「リファレンス」シリーズを、MCとして「ステートメント」シリーズを展開。どちらも、幅広いラインアップを取り揃えている。なかでもこの「Statement Sonata 2」は、スタンダードクラスに位置するモデルで、良質なサウンドとコストのバランスが絶妙な点に注目が集まっている。また、1.0mVという、MCとしてはかなりの高出力を持ち合わせている点も特徴といえる。

今回試聴したカートリッジのなかでも、最もやさしく、最も心地よい音を聴かせてくれたのがこちら。特に女性ボーカルは、豊かな付帯音を持つ、美しい響きの歌声を聴かせてくれた。いっぽうで、SN感については(同シリーズ上位モデルにくらべて)それほど高くない傾向にあり、プレーヤーのセッティング次第でもっとよくなっていきそう。じっくりと向き合えば期待にしっかり応えてくれそうな、懐の深い製品だと思う。

オーディオテクニカ「AT-OC9XML」「AT-OC9XSL」

オーディオテクニカ「AT-OC9XML」

オーディオテクニカ「AT-OC9XML」

オーディオテクニカ「AT-OC9XSL」

オーディオテクニカ「AT-OC9XSL」

オーディオテクニカの人気ミドルクラスMCカートリッジ、「OC9」シリーズの最新モデル。針先違いで5モデルのラインアップが用意されている。いずれも良サウンドを楽しませてくれるが、特に注目したいのがボロンカンチレバーとマイクロリニア針を組み合わせた「AT-OC9XML」と、ボロンカンチレバーと無垢特殊ラインコンタクト針を搭載した最上位モデル「AT-OC9XSL」だ。

まず「AT-OC9XML」は、ボロンカンチレバーによる恩恵もあってか、繊細な表現をしっかりと拾い上げ、フォーカス感の高い、それでいてとても自然な音色のサウンドを楽しませてくれる。それでいて、低域のフォーカス感はしっかりと確保されているため、グルーヴ感も高い。いっぽうの「AT-OC9XSL」は、さらに解像感が上がったうえ、奥行き方向の厚みが増した空間表現によって、音場のリアルさが格段によくなってくれる。旧モデル「AT-OC9/III」を所有している筆者は「AT-OC9XSL」への買い換え(買い足し!?)を検討したいところだが、3万円という価格差を考えると、多くの人は「AT-OC9XML」に落ち着きそうではある。

【番外編】Art Vinyl「PLAY & DISPLAY」

Art Vinyの「PLAY & DISPLAY」

Art Vinyl「PLAY & DISPLAY」

アナログレコードのもうひとつの楽しみが、インパクトのあるジャケットデザインだ。写真に絵画にイラストと、凝ったデザインのものも多く、お気に入りは1枚2枚といわず、壁一面に飾ってしまいたくなる。

しかしながら、壁掛けタイプのLPジャケットホルダーは、簡単に中身が取り出せず不便だったりする。何かいいものがないかな、と思っていた時に出会ったのがArt Vinylの「PLAY & DISPLAY」だ。

こちらの製品、製品上部を一押しするだけで簡単に開いてくれるため(しかも斜めの状態でホールドする)、アナログレコードが取り出しやすい。おかげで、“飾る用”として同じレコードを何枚も買う必要がなくなるので、ありがたいかぎりだ。

大判でインパクトのあるアナログレコードのジャケットをおしゃれに飾るだけじゃなく、簡単に取り出して楽しめる実用性も兼ね備えているアイテムだ

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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