イベントレポート
次世代ディスプレイ技術の実力は?

世界初披露のソニー直視型マイクロLEDディプレイ「Crystal LED」を見てきた

ソニーは業務用ディスプレイソリューションに関する展示会をメディア関係者に公開。世界初公開となる最新「Crystal LED」や、チューナーを搭載しないAndroid TV搭載4Kブラビア、業務用の4K SXRDレーザープロジェクターなどの実機を披露した。

オフィスや美術館、ショールーム、デザインの現場などで大画面・高画質ディスプレイの採用が進んでいるが、ソニーは高品位かつ多彩なディスプレイソリューションを展開することで、さまざまなビジネスシーンを支えている。近年は業務用ディプレイを扱う部門と民生用テレビなどの部門の融合を進めており、民生用技術を応用した業務用モデルの展開も隠れたテーマだったりもする。

展示会に先立って上映されたスライドのひとつ。ソニーにはデバイスの種類を問わずさまざまな大画面ソリューションを展開している

展示会に先立って上映されたスライドのひとつ。ソニーにはデバイスの種類を問わずさまざまな大画面ソリューションを展開している

世界初披露! 直視型マイクロLEDディプレイ「Crystal LED」がすごかった

今回の展示会の目玉製品となっていたのは、今年1月のプレス発表後、世界初披露となる直視型マイクロLEDディプレイ「Crystal LED」だ。直視型マイクロLEDディプレイ「Crystal LED」とは、施設展示やサイネージなどで用いられる、超大画面向けのソリューション。今年6月には東宝スタジオに8K/440型の「Crystal LED」を利用した、映画撮影用のバーチャル背景、バーチャルプロダクションシステムが採用されたことでも記憶に新しい。

今回世界初披露された直視型マイクロLEDディプレイ「Crystal LED」のC/Bシリーズは、その最新世代となるモデルだ。Cシリーズはコントラスト100万:1で黒の沈み込み重視、Bシリーズは1800cd/u(1.26mmピッチ)で輝度重視のシリーズとなる。たとえば美術館などの屋内展示や暗部の沈み込みのある画質を求める用途ではCシリーズ、外光の差し込むようなオフィスエントランスなどではBシリーズを想定している。両機種とも高画質エンジンはブラビアの信号処理技術をベースとした「X1 for Crystal LED」で、モーションフローによるフレーム補完によってなめらかな映像表示を可能としている。

直視型マイクロLEDディプレイ「Crystal LED」は、C/Bの2シリーズで展開

直視型マイクロLEDディプレイ「Crystal LED」は、C/Bの2シリーズで展開

「Crystal LED」は1.26mm、1.58mmの2種類のピッチサイズで展開されており、表示サイズ・解像度はキャビネットの組み上げる数によって決まる。出展されていた「Crystal LED」の実物はCシリーズ、Bシリーズとも1.26mmピッチのもので、キャビネットひとつあたりのサイズは27.5インチ。展示会では4×4の16個のキャビネットによる110型のフルHD仕様だった。これを8×8キャビネットの64個で構成すれば4K解像度、16×16に増やせば8K解像度にもなる。表示には別途コントローラーも必要で、1台で4Kまでのコントロールが可能だという。

左がコントラスト重視のCシリーズ、右が輝度重視のBシリーズ

左がコントラスト重視のCシリーズ、右が輝度重視のBシリーズ

「Crystal LED」実機を視聴していて驚いたのは“画質がしっかりとできあがっている”ということ。Cシリーズは夜景だけでなく屋内で撮影した映像も階調表現が優秀で、作品上映などに向いていると感じた。モーションフローで24コマ映像でもスムーズな表示が行われていたのも好印象だった。Bシリーズは1800cd/uという高輝度かつ広色域で、HDRらしい鮮やかな表現がすばらしくリアル。フルHDなので解像度は足りないはずなのだが、HDRの輝きの再現はそれすら補うインパクトがあった。

こちらはBシリーズが特徴を発揮しやすい高輝度・高コントラストな画質デモ

こちらはBシリーズが特徴を発揮しやすい高輝度・高コントラストな画質デモ

サイネージなどで活用されているディスプレイは輝度と視認性を重視しがちで、コントラストや色のバランスなどは二の次となっているケースが多いが、「Crystal LED」のデモ上映では、となりに設置していたソニーの4K/HDRの放送・映画向け有機ELマスターモニター「BVM-X300」とも近い画質傾向となっていた。担当に話を聞くと「Crystal LED」は「BVM-X300」と同じエンジニアによる画質調整が行われており、マスターモニター相当の画質を基準にチューニングを実施しているという。

夜景だけでなく、ハイコストラストな映像や風景を収めた映像などの多彩なコンテンツで「Crystal LED」の実力をデモしていた

夜景だけでなく、ハイコストラストな映像や風景を収めた映像などの多彩なコンテンツで「Crystal LED」の実力をデモしていた

試作段階ながら「Crystal LED」はデザインを始めさまざまな方面から評判がよいとのことで、その納入先には映画スタジオのソニー・ピクチャーズや、Netflixのラボなどマスターモニター級の高画質が前提となる環境も含まれる。本来の用途でいうと屋内外の展示やデザインの現場などに向けた「Crystal LED」のC/Bシリーズだが、映像制作環境にまでそのまま導入可能な画質水準というのは素直に驚きだ。

ちなみにキャビネットはファンレス設計で静かな上に、バックヤードも不要と省スペース

ちなみにキャビネットはファンレス設計で静かな上に、バックヤードも不要と省スペース

「Crystal LED」のプレスリリース時の参考価格は110インチフルHDの状態で約1900万円。法人向けの製品なので個人向けの販売予定はない。ただ、フルHDでも約1900万円にもなる「Crystal LED」を自宅に導入したい方は、会社を所有・経営されている立場の方も多いだろう。そうしたケースでは、会社名義の取り引きという形を取れば、購入も応相談とのこと。発売は2021年夏予定なので、自宅に欲しい人はご自身の会社を通して問い合わせてみるとよさそうだ。

テレビ放送を視聴しないで済む。法人向けのチューナーレス4Kブラビア

展示会には、6月に発表された法人向けの4Kブラビア、「BZ40J/BZ」、「BZ35J/BZ」、「BZ30J/BZ」シリーズも出展された。法人向けモデルなのでオフィスの会議室や商業施設、教育機関などを対象とした商品で、それぞれ民生用のX90J、X85J、X80Jがベース。最大の特徴はテレビ放送のチューナーを一切搭載しないチューナーレス仕様で、Andorid TVを搭載していること。画面下にSONYロゴがなく、横にプリントされているところも法人向けのニーズに応えている。

チューナーレスの法人向けブラビア「BZ35J/BZ」シリーズ

チューナーレスの法人向けブラビア「BZ35J/BZ」シリーズ

サイズ展開は民生用とは異なり「BZ40J/BZ」は100型の1機種で輝度600cd/u(ピーク輝度940cd/u)のハイスペックに、認知特性プロセッサーXRも搭載。「BZ40J/BZ」は50/43型、50型は570cd/u、43型は560cd/uと業務用としてはこちらもハイスペックだ。「BZ30J/BZ」は75/65/55/50/43/32型とサイズバリエーション豊富で、こちらは350cd/uと業務用エントリーラインを超える輝度を確保している。

VIPの会議室などを想定する100型の「BZ40J/BZ」

VIPの会議室などを想定する100型の「BZ40J/BZ」

豊富なサイズ展開が特徴の「BZ30J/BZ」シリーズ

豊富なサイズ展開が特徴の「BZ30J/BZ」シリーズ

打ち合わせスペースなどに向けた32型モデル

打ち合わせスペースなどに向けた32型モデル

また新製品ではないが会場では業務用8K/98型ブラビア「KJ-98Z9G/BZ」も展示されていた。こちらは4Kチューナーを2基搭載。8Kチューナーは非搭載の仕様で、やはり民生用の8K液晶「Z9H」(85型)とは仕様が異なる。

98型の業務用8Kブラビア「KJ-98Z9G/BZ」

98型の業務用8Kブラビア「KJ-98Z9G/BZ」

空間再現ディスプレイもビジネス向けに展開を加速

ソニーの裸眼3D技術、空間再現ディスプレイのビジネス向けモデル「ELF-SR1/BZ」も展示されていた。視聴者の顔を追尾して視点位置に合わせた高精細な裸眼立体視を実現する技術で、画面サイズは15.6型でパネルは4Kパネルで表示している。表示には別途コントローラーも必須だ。

ソニー空間再現ディスプレイのビジネス向けモデル「ELF-SR1/BZ」

ソニー空間再現ディスプレイのビジネス向けモデル「ELF-SR1/BZ」

見ている向きに応じて裸眼3Dの向きを追従。立体感ある映像を体験できた

見ている向きに応じて裸眼3Dの向きを追従。立体感ある映像を体験できた

すでに法人向けの導入が進められており、自動車メーカーや住宅メーカーなどの販促やプロモーションで導入されているほか、医療用CGという用途でも展開が始まっている。なお、7月17日からパシフィコ横浜で開催予定の「DinoScience 恐竜科学博」では、32型の空間再現ディスプレイも技術参考展示されるという。

10,000ルーメンの高輝度なのに小型で静か。業務用4Kレーザープロジェクター「VPL-GTZ380」

2021年1月に発売された4Kレーザープロジェクター「VPL-GTZ380」も実機が出展されていた。4K SXRDパネルを搭載した同社レーザープロジェクターの最上位モデルで、想定売価は約850万円。民生用として2016年に800万円(税別)で発売された「VPL-VW5000」の業務用モデルと呼ぶべきモデルだ。

4KレーザーSXRDプロジェクターの業務用モデル「VPL-GTZ380」も出展

4KレーザーSXRDプロジェクターの業務用モデル「VPL-GTZ380」も出展

10,000ルーメンの高輝度、DCI-P3/HDR対応の広色域性能、ネイティブ4K解像度、16,000:1のネイティブコントラストとハイスペックながら、同クラスの業務用プロジェクターとしては業界最小サイズの51kg。39dbという静音性も大きな特徴だ。

まぶしいほどの高輝度とネイティブ4Kの密度感が圧倒的

まぶしいほどの高輝度とネイティブ4Kの密度感が圧倒的

本体は10,000ルーメンクラスのプロジェクターで最小最軽量の51kg

本体は10,000ルーメンクラスのプロジェクターで最小最軽量の51kg

展示会場でデモ映像を視聴してみたが、フルスペックの10,000ルーメンで上映するとスクリーンを直視してもまぶしいほどの高輝度だった。色もビビッドで濃厚なため、プロジェクター投写ということ忘れるほどの迫力を再現していた。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る