ソニーは2022年6月10日、4K有機EL・4K液晶ブラビア(BRAVIA)の2022年モデルを発表した。昨年から展開している、認知特性プロセッサー「XR」を搭載した最上位ライン「BRAVIA XR」には、新モデルを含む5シリーズを展開。新構造の有機ELパネルを採用したフラッグシップ4K有機ELテレビやMini LEDバックライトのフラッグシップ4K液晶テレビなど、高画質テレビの基準を塗り替える高画質ハイエンドモデルや、パーソナルユースにも最適な42V型の小型有機ELテレビなど、フルラインアップを取り揃えた。4K/120p入力の下位モデル展開、Google TVプラットフォームの採用、主要機種でハンズフリー音声操作に対応するなど、機能面も大きく拡充されている。
ブラビア2022年モデルで最大の画面サイズとなる85V型「XRJ-85X95K」
4K有機ELテレビには新構造の有機ELパネルを採用したモデルも新たに投入
小型の4K有機ELテレビのラインアップもさらに拡充。48V型に加え、新たに42V型モデルも登場
本稿では、4K有機EL・4K液晶ブラビア2022年モデルを2021年の旧モデルと対応関係を押さえつつ紹介していこう。
【4K有機ELテレビラインアップ】
■A95Kシリーズ(新規追加の4K有機ELテレビフラッグシップモデル)
XRJ-65A95K(65V型、7月発売、市場想定価格66万円前後)
XRJ-55A95K(55V型、7月発売、市場想定価格47.3万円前後)
■A90Kシリーズ(旧A90Jシリーズ相当)
XRJ-48A90K(48V型、8月発売、市場想定価格31.9万円前後)
XRJ-42A90K(42V型、8月発売、市場想定価格30.8万円前後)
■A80Kシリーズ(旧A80Jシリーズ相当)
XRJ-77A80K(77V型、8月発売、市場想定価格77万円前後)
XRJ-65A80K(65V型、8月発売、市場想定価格50.6万円前後)
XRJ-55A80K(55V型、8月発売、市場想定価格37.4万円前後)
【4K液晶テレビラインアップ】
■X95Kシリーズ(旧X95Jシリーズ相当、なお一部X95Jは継続販売)
XRJ-85X95K(85V型、8月発売、市場想定価格93.5万円前後)
XRJ-75X95K(75V型、9月発売、市場想定価格79.2万円前後)
XRJ-65X95K(65V型、9月発売、市場想定価格52.8万円前後)
■X90Kシリーズ(旧X90Jシリーズ相当)
XRJ-85X90K(85V型、10月発売、市場想定価格50.6万円前後)
XRJ-75X90K(75V型、9月発売、市場想定価格40.7万円前後)
XRJ-65X90K(65V型、8月発売、市場想定価格30.8万円前後)
XRJ-55X90K(55V型、8月発売、市場想定価格27.5万円前後)
XRJ-50X90K(50V型、11月発売、市場想定価格20.9万円前後)
■X85Kシリーズ(旧X85Jシリーズ相当)
KJ-55X85K(55V型、10月発売、市場想定価格20.9万円前後)
KJ-50X85K(50V型、10月発売、市場想定価格18.7万円前後)
KJ-43X85K(43V型、10月発売、市場想定価格17.6万円前後)
■X80Kシリーズ(旧X8000Hシリーズ相当)
KJ-75X80K(75V型、8月発売、市場想定価格28.6万円前後)
KJ-65X80K(65V型、8月発売、市場想定価格22万円前後)
KJ-55X80K(55V型、10月発売、市場想定価格18.2万円前後)
KJ-50X80K(50V型、7月発売、市場想定価格15.4万円前後)
KJ-43X80K(43V型、7月発売、市場想定価格13.8万円前後)
■X80WKシリーズ(旧X80Jシリーズ相当)
KJ-75X80WK(75V型、8月発売、市場想定価格26.4万円前後)
KJ-65X80WK(65V型、8月発売、市場想定価格19.8万円前後)
KJ-55X80WK(55V型、10月発売、市場想定価格17.1万円前後)
KJ-50X80WK(50V型、7月発売、市場想定価格14.3万円前後)
KJ-43X80WK(43V型、7月発売、市場想定価格12.7万円前後)
ブラビア2022年のラインアップの中でも目玉機種となるのが、4K有機ELテレビのフラッグシップモデル「A95K」シリーズだ。画面サイズは、65/55V型の2サイズ展開となる。
最大の進化ポイントは、新構造の有機ELパネル「QD-OLED」を搭載していること。ソニー公式の情報ではないが、「QD-OLED」の開発元は韓国サムスン。「A95K」シリーズのみ、有機ELパネルのサプライヤーがRGBWの画素を特徴とするLGディスプレイから、サムスンの「QD-OLED」に切り替わったということだ。
新構造の有機ELパネル「QD-OLED」を搭載した「A95K」シリーズ
2022年1月にラスベガスで開催された「CES 2022」での出展情報などを元に解説すると、「QD-OLED」はサムスンが開発した有機ELパネルだ。有機ELパネルとしても表示方法が独特で、有機ELの素子は青色の単色。量子ドット(Quantum Dot)技術を用いることで、青色から赤と緑の色を作り出す。量子ドット技術は液晶テレビで採用例があるとおり、高純度の色変換が可能なので、技術のかけ合わせによって高画質の有機ELテレビになるというわけだ。「A95K」シリーズは、この「QD-OLED」に認知特性プロセッサー「XR」を組み合わせ、広色域を実現する「XR Triluminos Max」を新たに搭載。従来の有機ELテレビ以上の広色域を特徴としている。
青色素子からの光を量子ドット(Quantum Dot)技術で変換することでRGBを取り出す「QD-OLED」に認知特性プロセッサー「XR」を組み合わせ、広色域を実現する「XR Triluminos Max」
「QD-OLED」を搭載した「A95K」シリーズと、従来型のOLEDを搭載した「A90K」シリーズを横並びで視聴させてもらったが、赤色の深みや純度がハッキリと向上していることが見て取れた。また、有機ELパネル構造の違いや、高コントラスト化技術「XR OLED Contrast Pro」により、従来の有機ELテレビ以上に輝度感が出ていたのも好印象だ。「A95K」シリーズは、最高画質を追い求めるユーザーにぜひ注目してもらいたい1台だ。
「A95K」シリーズ(左)と「A90J」シリーズ(右)の比較。従来の有機ELと比べて輝度が高く、高輝度でも色抜けなくキレイに発色している
「A95K」シリーズ(左)と「A90J」シリーズ(右)の比較。白粉や紅の自然な発色が見事だ
純度の高い色鮮やかな朱色がしっかりと再現できているのは「QD-OLED」ならでは
このほか、「A95K」シリーズは、2022年のブラビアで追加される専用のカメラアクセサリー「BRAVIA CAM」に対応しているのもポイントだ。「BRAVIA CAM」の機能は大きく分けて2つある。ひとつは高画質に向けた機能で、「BRAVIA CAM」を通して視聴位置を認識、画面の明るさ、音のL/Rバランス、ボリュームなどを自動で調整してくれるというもの。もうひとつは、手のひらを使ってテレビを遠隔操作できる「ジェスチャーコントロール」、Google Duoによるビデオ通話、自動省エネモードなどといったUX機能だ。「A95K」シリーズは、「BRAVIA CAM」を標準で付属する唯一のシリーズとなっており、購入した直後からこれらの機能を利用することができるという。
「A95K」シリーズは「BRAVIA CAM」が標準で付属。マグネット式で簡単に取り付けできる
「BRAVIA CAM」を接続することで、さまざまな機能を利用できるようになる
ゲーミング関連の機能は、4K/120p入力、VRR、ALLMに対応。PlayStation5との連携機能「Perfect for PlayStation5」の認定モデルにもなっている。サウンドについては、画面を振動させて音を鳴らす「Acoustic Surface Audio+」を引き続き採用。本体デザインは、スタンド設置、壁寄せ設置どちらでも使えるデュアルスタイルを採用し、さまざまな設置シーンに対応できるようになっている。
台座部分を前方に取り付けることで、壁寄せ設置も可能なデュアルスタイルを採用
4K有機ELテレビには、「QD-OLED」を搭載した「A95K」シリーズ以外にも、RGBWの画素からなる従来型のOLEDを搭載した「A90K」シリーズと「A80K」シリーズが投入される。
4K有機ELブラビアとして上位から2番目にあたる「A90K」シリーズは、サイズ展開が48/42V型しか存在しないことに注意してほしい。小型で高画質ということでゲーマーやプライベートルーム需要で昨年来人気の48V型に加え、今年はさらにコンパクトな42V型を初投入。新サイズだけあり、上位モデル扱いで登場となったようだ。「A80K」シリーズは実質的に有機ELのスタンダードにあたるモデルで、77/65/55V型の3サイズを展開している。
48/42V型の2サイズで展開する「A90K」シリーズ
「A80K」シリーズは実質的に有機ELのスタンダードにあたるモデル
両シリーズとも、高画質の技術としては認知特性プロセッサー「XR」に加えて、高コントラスト技術「XR OLED Contrast Pro」を搭載。有機ELパネルの信号の分析だけでなく、温度分布センサーを活用した映像解析処理で高コントラスト化の処理を行う「XR OLED Contrast Pro」は、これまで上位モデルにのみ搭載されていた技術だが、2022年モデルは4K有機ELテレビ全モデルに導入された形だ。特に「A80K」に「XR OLED Contrast Pro」が搭載されたところは注目で、昨年上位モデルとして展開していた「A90J」シリーズに近い仕様に引き上げられている。
高コントラスト技術「XR OLED Contrast Pro」。2022年モデルは4K有機ELテレビ全モデルに導入された
ゲーミング関連の機能は、フラッグシップモデルの「A95K」シリーズと同じく4K/120p入力、VRR、ALLMに対応。「Perfect for PlayStation5」の認定モデルという点も同じだ。サウンドについては、画面を振動させて音を鳴らす「Acoustic Surface Audio+」で、「A90K」シリーズは2.1ch 25W、「A80K」シリーズは3.2chで50W(77型のみ60W)という仕様だ。
ズラリと並んだ大画面モデルの中にデモ機が置かれていた「A90K」シリーズは、48V/42V型という小型サイズがなんともかわいらしい。画面は小さめでも画面輝度や漆黒の再現性はしっかりと4K有機ELテレビとして仕上がっており、認知特性プロセッサー「XR」搭載とスペック面も文句なし。2種類の設置方法を選べるので、デスクの上にポンと置いてゲーミング用途で導入しても面白そう。「A80K」シリーズは、有機ELのスタンダードモデルと呼ぶにはもったいない高画質で、価格次第ではかなり競争力のあるモデルとなりそうだ。
「A90K」シリーズの42V型。小型モデルだが、4K有機ELテレビらしいコントラスト性能をしっかりと発揮している
「A90K」シリーズはスタンドを変更することで、2種類の設置スタイルを選べる点もうれしいところ
2021年の4K有機ELテレビのトップモデル「A90J」シリーズ(左)と比べてもそん色ない画質を実現している「A80K」シリーズ(右)。4K有機ELテレビのスタンダードモデルとしては十分過ぎるほど高画質だ
なお、先に紹介した「A95K」シリーズだけでなく、「A90K」シリーズや「A80K」シリーズを含め、2022年に登場するブラビアの全シリーズで、オプションのカメラアクセサリー「BRAVIA CAM」対応となっている。利用できる機能は「A95K」シリーズと同じく視聴位置に合わせた画音質の最適化(A95K/A80K/A90K/X95K/X90Kのみ)やUX機能の追加だが、「BRAVIA CAM」そのものは別売り(8月発売、市場想定価格2.4万円前後)扱いで、接続方法もUSBとなっている。今後はシリーズを通した共通機能となっていくのだろう。
「A95K」シリーズ以外の2022年に登場するブラビアは、外付け式の「BRAVIA CAM」に対応
2022年のソニーブラビアの4K液晶テレビは、「BRAVIA XR」ラインの2シリーズを含む多彩なラインアップを展開する。なかでも、フラッグシップとして85/75/65V型の大画面サイズをカバーする「X95K」シリーズには注目だ。最大の特徴は、各社4K液晶テレビの上位モデルで採用を進めるMini LEDバックライトを搭載したことだ。
最大85V型の画面サイズを展開する「X95K」シリーズ
75/65V型も展開。広視野角技術「X-Wide Angle」で視野角も確保
ソニーによると、通常の1/100サイズのMini LEDを敷き詰めているそうで、画面全体の輝度の向上とともに光の分散を抑えられるところがメリット。ブラビアと言えば、バックライト駆動技術と精緻な部分駆動に定評があるが、Mini LEDバックライトでバックライトの分割制御数を引き上げるとともに、部分単位での輝度コントロールを組み合わせることでコントラスト性能を飛躍的に高めたそうで、「XR Backlight Master Drive」という機能名が与えられている。ちなみに、ソニーの液晶テレビには、暗部の電流を明部に集中させ明るさを高める機能の効果の高さと、その精度を表す独自指標「XR Contrast Booster」というものがあるが、「X95K」シリーズは15相当となっている。
従来型の直下型LEDバックライト搭載モデル(左)とMini LEDバックライト搭載の「X95K」シリーズ(右)の比較。明暗差が大きいシーンでも、明部の輪郭がにじむことなくしっかりと再現されていることがわかる
「X95K」シリーズは、認知特性プロセッサー「XR」はもちろん、広色域技術の「XR Triluminos Pro」、そして広視野角技術「X-Wide Angle」も搭載する4K液晶テレビとしては最上位スペック。実際にデモ機で映像をチェックしてみたが、大画面・高輝度・広視野角がしっかりと揃った高画質に仕上がっていた。
液晶テレビらしい明るい画面で、精細感もしっかりと出ているのがわかる
ゲーミング関連は4K/120p入力、VRR、ALLMに対応。サウンドについては、背面上部に独自の「サウンドポジショニング トゥイーター」を備えた「Acoustic Multi-Audio」で2.2ch 60W仕様だ。本体スタンドは、スタンダード、内ポジション、ハイポジションの3通りの設定が可能な「3Wayスタンド」を採用する。
ミドル〜エントリークラスの4K液晶テレビには、「X90K」シリーズ、「X85K」シリーズ、「X80/X80WK」シリーズが投入される。
4K液晶テレビのミドルクラスとなる「X90K」シリーズは、85/75/65/55/50V型の幅広い画面サイズを展開。認知特性プロセッサー「XR」、「XR Contrast Booster」で10相当となるコントラスト性能(50V型のみ5相当)、広色域技術「XR Triluminos Pro」が揃い、120Hzパネルで動画応答性を高める「XR Motion Clarity」も搭載するなど、なかなかのハイスペック仕様だ。「X95K」シリーズとの違いは、Mini LEDバックライトではなく通常の直下型LEDバックライトであることと、広視野角技術「X-Wide Angle」を搭載していないというところ。サウンドは「Acoustic Multi-Audio」で、2ch 30W仕様(50V型のみ20W)だ。
4K液晶テレビのミドルクラスとなる「X90K」シリーズ
4K液晶テレビのスタンダードモデルとなるのが「X85K」シリーズで、55/50/43V型と中型の画面サイズでの展開となる。このグレードから認知特性プロセッサー「XR」搭載ではなくなり、目立った高画質機能は“XR”が付いていない広色域技術「Triluminos Pro」のみ。ただし、120Hzの倍速パネルは搭載していて、「X85K」シリーズまでは4K/120p入力、VRR、ALLMのゲーミング機能が揃う。サウンドは、ブラビアとしてスタンダードの「X-Balanced Speaker」を採用。
4K液晶テレビのエントリーモデルとなるのが「X80J/X80WK」シリーズで、どちらも75/65/55/50/43V型の幅広い画面サイズを展開する。両シリーズの違いは、ハンズフリー音声通話のあり/なしと、「X80K」シリーズのみ高級感あるスタンドを採用している点。画質面の設計はスタンダードで、広色域技術は「Triluminos Pro」で、サウンドは「X-Balanced Speaker」となる。60Hzの等倍パネルのため、4K/120Hz入力などには非対応だが、Google TVなどのネット機能は上位機種と共通なので、ブラビアのエンタメ機能をより安価で手軽に楽しめるモデルとして注目されそうだ。
4K液晶テレビのエントリーモデル「X80J」シリーズ。75V型の大画面モデルでも28.6万円前後という手の届きやすい価格が魅力のシリーズだ
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。