音楽ファンやプロのアーティストなども愛用している、ゼンハイザーのオープンエアー型ヘッドホン。なかでも600番台のナンバーを冠した「HD 600」シリーズは、いずれも“名機”と呼ばれるほどで、オープンエアー型ヘッドホンのベンチマークにもなっている。
そんな「HD 600」シリーズの現行モデルで一番新しいのが、2017年に「HD650」の後継モデルとして投入された「HD 660S」だが、この「HD 660S」の正統後継モデルとなる「HD 660S2」がついに発表された。
ゼンハイザーのオープンエアー型ヘッドホン最新モデル「HD 660S2」。発売は2023年2月21日。価格はオープンプライスとなっており、市場想定価格は96,800円前後だ
1997年発売の「HD600」から続くシリーズ共通の特徴的な意匠を受け継ぎつつも、ブロンズのロゴをあしらったプレミアム感のあるデザインへと変更された「HD 660S2」。サウンドについては、既存の「HD 660S」を愛用するユーザーから低域をもう少し上げてほしいという要望が上がっていたそうで、その要望に応える形で、「HD 660S」に豊かな低域をプラスし、さらに深みのあるものへと昇華させたそうだ。
ひと目で「HD 600」シリーズとわかる特徴的なハウジングのメッシュ。ブラックカラーにブロンズのロゴをあしらい、とても高級感のあるデザインだ。イヤーパッドはソフトパッドとベロアを組み合わせたものを採用。ケーブルを除く重量は約260gだ
この低音域の高い再現性を実現するため、「HD 660S2」では自社開発の42mm径ダイナミック型ドライバーの最適化をさらに押し進めたという。具体的には、振動板にラミネート加工を行った Duo Fol テクノロジー振動板を採用。ラミネートの厚みや形状を調整することで柔軟性を大きく向上させたという。
低音域は楽曲再生においてエネルギーがもっとも大きいが、振動板が固いとコイルのエネルギーに反発し、低域が控えめになり、低周波数帯域での歪みにもつながるという。特に開放型ヘッドホンの場合、密閉型ヘッドホンに比べて減衰が大きく、振動板を大きく動かす必要があり、「HD 660S2」では柔軟性をもたせて可動域をアップさせるというアプローチを採用したそうだ。
「HD 660S2」のヘッドホン部分分解図。ドライバーユニットは、口径こそ「HD660S」と同じ42mmだが、振動板などを大きくブラッシュアップしたという
さらに、アルミボイスコイル部分に関しても改良を実施。「HD 660S」でもアルミボイスコイルを採用していたが、「HD 660S2」ではコイル巻線をさらに細いものへと変更、巻き数を増やしつつ重量を10%ほど軽量化することでマグネットパフォーマンスを向上させたという。クリアなインパルスレスポンスにより、ハキハキとした低域を感じられるようになったほか、振動板の柔軟性向上による高域の振幅に対する追従性向上も相まって、高域の繊細な音の再現性もアップしているという。
アルミボイスコイルは、コイル巻線をさらに細いものへと変更。音質優先のためにこだわりや技術を詰め込んだことで組み立て難易度が高くなってしまったが、アイルランドファクトリーの高いクオリティで製品化を実現したという
以下のグラフは、「HD 660S2」と「HD 660S」の周波数帯域を比較したものだが、ドライバーユニットの改良による効果がしっかりと見てとれる。特に低域については、“豊かな低域をプラスし、さらに深みのあるものへと昇華させた”という言葉どおり、20Hzの周波数帯域において音圧レベルが2倍(6dB)になるなど、「HD 660S」から大きな進化を遂げている。高域についても、高域の凸凹をさらに抑え、よりなめらかになっていることがおわかりいただけるはずだ。
白色の線が「HD 660S2」、灰色の線が「HD 660S」の周波数帯域を示したもの。20-200Hzの低域部分だけでなく、5kHz以上の高域においても全体的にピークを抑えたスムーズな仕上がりになっている
ゼンハイザーのオープンエアー型ヘッドホンのそれぞれの特徴をまとめた表。「HD 660S2」は、「HD 600」シリーズならではのウォーム系の特性を受け継ぎつつ、解像感や低域の再現性を高めたモデルという立ち位置だ
ちなみに、「HD 660S」ではハイレゾDAPなどのポータブルオーディオ機器との連携を想定して150Ωへとローインピーダンス化されていたが、今回発表された「HD 660S2」は、「HD600」や「HD650」と同じ300Ωとなっている。「HD 660S2」のパフォーマンスを余すことなく引き出すのであれば、ドライブ力のある据え置きのヘッドホンアンプを組み合わせたほうがよさそうだ。なお、「HD 660S2」の登場により、今後「HD 660S」は徐々に市場からフェードアウトするとのこと。「HD 660S」をポータブルDAPと組み合わせて使いたいという人は、早めにゲットしておいたほうがよいかもしれない。
「HD 660S2」のポテンシャルをしっかりと引き出すのなら、ドライブ力のある据え置きのヘッドホンアンプとの組み合わせを検討しておきたい
PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。