イベントレポート

「CEATEC JAPAN 2015」で見えた「3つのテレビ最新トレンド」

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ソニーや東芝が出展しない状況ではあったが、IT・エレクトロニクス関連の総合展示会「CEATEC JAPAN 2015」でのテレビ関連の展示をチェックする限り、「4K放送・配信」「HDR」「Ultra HD Blu-ray」の3つがテレビの大きなトレンドであることが見えた。それらは、本格的な4Kコンテンツ時代、さらには、従来以上の高画質化時代に突入することを感じさせるものである。順に紹介していこう。

4K放送がケーブルテレビでもスタート

4K放送・配信が進まない現状では4Kテレビは必要ない。そんなネガティブな声は、そろそろ古い意見になるかもしれない。2015年9月に日本でのサービスがスタートしたばかりの世界最大規模の映像配信サービス「Netflix」が4Kコンテンツを用意しているほか、国内の映像配信サービスも4K配信を始めている。コンテンツの数という点では、まだまだ多数派とは言えないが、4K映像を視聴する環境は、ここにきて急速に整いつつある。

そんな中、CEATEC JAPAN 2015では、NHK/JEITAのブースで、12月1日開局のケーブルテレビ業界共通の4K専門チャンネル「ケーブル4K」に関する展示があった。ケーブルテレビ総接続世帯のカバー率80%以上がこのチャンネルを採用する予定で、ケーブルテレビ局や番組供給会社が制作したコンテンツが放送されるという。視聴デモのほか、対応するSTBも多数展示されていた。

「ケーブル4K」のチャンネルの概要

「ケーブル4K」のチャンネルの概要

4K対応テレビ、4K対応STBを使っての視聴デモ

4K対応テレビ、4K対応STBを使っての視聴デモ

4K対応STBが並んでいた

4K対応STBが並んでいた

NHK/JEITAのブースでは、スカパー!4Kなど4K放送・配信に関する展示があった

NHK/JEITAのブースでは、スカパー!4Kなど4K放送・配信に関する展示があった

パナソニックのブース。4KアクトビラやYouTube、Netflix、ひかりTV 4Kといった4Kストリーミング配信に関する展示

4Kテレビの高画質化技術では「HDR」がメガトレンド

CEATEC JAPAN 2015では、4Kテレビの大きなトレンドである「HDR」に関するものが目を引いた。HDR対応のテレビ・ディスプレイがいくつか展示されていたほか、HDRの比較デモも用意されていた。

あらためてHDRについて簡単に解説しておこう。HDRとは、「High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)」の略で、映像に記録できる輝度情報の幅(ダイナミックレンジ)を拡張する技術である。テレビ・ディスプレイの画質では「解像度」と「色域」が話題になりがちだが、「ダイナミックレンジ」も重要なポイントだ。そもそも、現在のテレビ放送やブルーレイなどの映像コンテンツ(現行の色域規格「BT.709」を採用するもの)は、カメラが記録できるダイナミックレンジに対してレベルが抑えられており、圧縮する形で収録されている。その値は、およそ100nit(nitは明るさの単位)、それを超える値の輝度は、普通に映像を復元する形では表現できない。そのため、テレビメーカーは、最新の4Kテレビにおいて、ダイナミックレンジを復元する画像処理とバックライトの制御によって、高輝度側のレンジを再現しているのが現状だ。

テレビ側の性能(最大輝度)が向上するいっぽうで、映像コンテンツ側は古い規格のままになっており、新規格のHDRは、そのギャップを埋める規格とも言えるだろう。HDRでは、想定する最大輝度が100nitから10000nitに、従来のおよそ100倍にまで拡張されている。HDR対応のコンテンツとテレビを組み合わせることで、高輝度側の表現力が向上し、これまでは表現が難しかった明るい光源や反射光などの描き分けが可能になり、質感の向上が期待できるというわけだ。ちなみに、現行のダイナミックレンジ規格の映像は、HDRに対して「SDR」と呼ばれている。

CEATEC JAPAN 2015でのHDR関連の展示では、パナソニックが「HDR対応の高輝度次世代テレビ」として、65V型の4K液晶テレビを参考展示していた。

パナソニックの「HDR対応の高輝度次世代テレビ」。65V型の4K液晶テレビだ

パナソニックの「HDR対応の高輝度次世代テレビ」。65V型の4K液晶テレビだ

隠し球としてNHK/JEITAのブースで発見したのが、東芝の新型4Kテレビだ。モデル名は不明だが、65V型テレビで「2015年秋冬モデル」と書かれていた。HDR対応をうたうモデルであることは間違いない。

モデル名は公表されていなかったが、東芝の新型4Kテレビ(65V型)

モデル名は公表されていなかったが、東芝の新型4Kテレビ(65V型)

また、CEATEC JAPAN 2015の会場には、NHKがシャープと共同開発した「HDR対応85インチ8Kディスプレイ」や、シャープの8K液晶ディスプレイ「LV-85001」(85V型)といった、HDRに対応する8Kディスプレイも展示されていた。

NHK/JEITAのブースに展示されていた「HDR対応85インチ8Kディスプレイ」。シャープの8K液晶ディスプレイLV-85001とは微妙に仕様が異なっているとのこと

こちらは、シャープの8K液晶ディスプレイLV-85001(85V型)。10月30日発売で、市場想定価格は1,600万円前後

こちらは、シャープの8K液晶ディスプレイLV-85001(85V型)。10月30日発売で、市場想定価格は1,600万円前後

シャープのブースでは、HDR映像とSDR映像の比較デモが用意されていた

シャープのブースでは、HDR映像とSDR映像の比較デモが用意されていた

「Ultra HD Blu-ray」に対応するブルーレイレコーダーが製品化

次世代の4K Blu-ray規格と呼ばれている「Ultra HD Blu-ray」は、今のBlue-ray Disc規格の後継として2015年に規格化されたばかり。解像度、色域、ダイナミックレンジのすべてで新規格を取り入れた高画質ブルーレイだ。スペックは、ディスク容量が50/66GB(2層)、100GB(3層)、解像度が4K(3840×2160)、ビット深度が10bit、色域は広色域の「BT.2020」に対応する。先に紹介したHDRにも対応している。

対応製品としては、パナソニックから11月13日に発売になる「ブルーレイディーガ DMR-UBZ1」が世界初のモデルとなる。Ultra HD Blu-rayの再生に対応するだけでなく、画質・音質にこだわったディーガのフラッグシップモデルだ

Ultra HD Blu-ray対応のブルーレイディーガ DMR-UBZ1。市場想定価格は40万円前後となっている

Ultra HD Blu-ray対応のブルーレイディーガ DMR-UBZ1。市場想定価格は40万円前後となっている

パナソニックのブースでは、Ultra HD Blu-rayと従来のブルーレイの画質比較デモが用意されていた。Ultra HD Blu-rayの映像では、広色域対応による色の深さ、HDR対応によるハイライトの抜けのよさが感じられた

また、シャープのブースでも、Ultra HD Blu-ray再生対応のブルーレイレコーダーが参考出展されていた。実動するものではなく、発売や価格は未定とのこと。

シャープのUltra HD Blu-ray再生対応ブルーレイレコーダー(参考出展)。「AQUOS 4K RECORDER」と書かれている

真柄利行(編集部)
Writer
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣とこだわりを持っています。フォトグラファーとしても活動中。パソコンに関する経験も豊富で、パソコン本体だけでなく、Wi-Fiルーターやマウス、キーボードなど周辺機器の記事も手掛けています。
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