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「Hidden LCD」採用でファインダー撮影に集中するスタイルを徹底追求

富士フイルム「X-Pro3」が正式発表! チタンボディを身にまとってさらに“深化”

2019年10月23日、富士フイルムからレンジファインダースタイルのミラーレス「X-Pro」シリーズの新モデル「X-Pro3」が発表になった。2019年9月20日に行われたイベント「X Summit SHIBUYA 2019」にて開発が発表されていた大注目のカメラだ。新製品説明会で得た情報をもとに特徴を見ていこう。

予告通り10月23日に発表されたX-Pro3。ブラック(左)のほか、より上質な塗装でキズが付きにくいDRブラック(デュラブラック、右)とDRシルバー(デュラシルバー、中央)も用意する

液晶を裏側に配置した斬新な「Hidden LCD」を採用

X-Pro3の開発発表の時点から物議をかもしているのが、同社が「Hidden LCD」と呼んでいる、液晶画面を裏側に配置した下開きのチルト式モニターだ。下方向に約180°回転するものの、左右方向への回転は不可で、液晶画面を表側にしてモニターを閉じることはできない。つまり、背面をモニター画面が覆う、一般的なデジタルカメラのようなスタイルでの撮影には対応していないのだ。

目線近くでカメラを構える場合はモニターを開き切ることでライブビュー映像を見ながら撮ることができるし、カメラを逆さに持つことでハイポジションでの撮影もできるが、これらの使い方はあまり現実的ではなく、「モニターを使う場合は90°近い角度まで動かしてウエストレベルで撮る」というのがHidden LCDの一般的な使い方になるだろう。このことからもわかるように、X-Pro3は、ファインダーを覗いて撮るスタイルを追求したカメラとなっている。

液晶が裏側にあるためモニターを閉じると、モニター非搭載のデジタルカメラのようになる

液晶が裏側にあるためモニターを閉じると、モニター非搭載のデジタルカメラのようになる

モニターを90°近い角度に動かすとウエストレベルで撮影がしやすくなる。モニターのスペックは3.0型で約162万ドット表示。新たにタッチパネルを搭載した

モニターを搭載しないデジタルカメラはこれまでもライカなどが商品化しているが、国内メーカーの富士フイルムの製品で、こうした思い切った仕様に舵を切ったのは驚きだ。富士フイルムはX-Pro3でHidden LCDを採用することに対しては社内でかなり議論をし、決定したとのこと。採用した理由は「撮影機会を逃さないことを徹底するため」だという。X-Pro3では、基本的にモニターを閉じた状態でのファインダー撮影になるため、「撮影した直後にモニターで結果を確認する」というデジタルカメラでは一般的な行為がやりにくい。撮影した写真をモニターでチェックできるのはデジタルカメラの大きな特徴ではあるが、いっぽうで、都度都度モニターを見ているとシャッターチャンスを逃すことにつながるし、結果を確認してから撮り直しができるという意識から緊張感のない撮影にもなりがち。「それならモニターの表示をオフにして使えばいい」という声も聞こえてきそうだが、富士フイルムはカメラのスタイルに徹底的にこだわるメーカーである。モニターをあえて物理的に使いにくくすることで、ファインダー撮影に徹底的に集中できるカメラに仕上げたのだ。

モニターを閉じた状態にするとX-Pro3はフィルムのレンジファインダーカメラのような見た目になる。富士フイルムはこれをうまく使ったギミックも用意しており、モニターの表側に、フィルムカメラのサブホルダーのようなデザインのサブ液晶(カラーメモリー液晶モニター)を搭載し、このサブ液晶に仕上がり設定の「フィルムシミュレーション」を写真フィルムのパッケージアイコンで表示できるようにしたのだ。写真フィルムの箱の一部を切り取ってホルダーに差し込んだように見えるのが懐かしくて面白い。メモリー液晶なので電源オフ時にもパッケージアイコンを表示した状態で使用できる。

写真フィルムのパッケージアイコンでフィルムシミュレーションを表示するサブ液晶を搭載。バックライトを搭載しているわけではないので画面自体はそれほど明るくなく、輝度の調整も不可能。シャッタースピードや絞り値などの撮影設定を表示するモードも用意されている

「アドバンスドハイブリッドビューファインダー」はOVF/EVFともに見やすく進化

ファインダー撮影を追求したカメラだけに、X-Pro3はファインダーの性能が大きく向上している。OVFとEVFをレバー操作で切り替えられる「アドバンスドハイブリッドビューファインダー」を継承しつつ、OVFは新規の光学設計を採用し、倍率の切り替えを止めて0.52倍に固定することで、視野率95%で水平視野角27°の広い視野を実現。従来よりもクリアーで歪みの少ない表示になったのも特徴だ。また、EVFは、液晶モニターから有機ELにデバイスを変更。約369万ドットの有機ELパネル(0.5型)を採用し、1500cd/m2の最高輝度と、1:5000の高コントラストを実現。sRGBの色域を97%カバーする広い色再現性も備わっている。

さらに、EVFの表示設定として「残像感低減」モードを新たに搭載。このモードは、100fpsの高速フレームレートに加えて、ブラックフレームを挿入することで、ちょうど液晶ディスプレイの倍速駆動のように200fps相当の滑らかな表示を実現するというもの。素早く動く被写体を追従撮影する場合などに威力を発揮する。

レンジファインダースタイルはそのままにOVFは視野率95%で水平視野角27°に進化。EVFは有機ELパネルを採用し、高コントラストで広色域になった

従来モデルとのファインダー/モニターのスペック比較

従来モデルとのファインダー/モニターのスペック比較

なお、一眼レフスタイルの「X-Tシリーズ」などはいち早く有機ELファインダーを実現したが、X-Proシリーズがこれまで有機ELパネルを使用しなかった(できなかった)のは、OVF上に表示するブライトフレームの輝度を確保できなかったことが大きな理由とのこと。デバイスの進化によって高輝度な有機ELパネルが増えたことで、X-Pro3ではX-Proシリーズとして初めての有機ELファインダーを実現できたという。

ちなみに、モニターを閉じた状態でも、ファインダー内で撮影画像を確認することは可能。ファインダーをEVFにしておけば、EVFで撮影画像を再生できるのはもちろんのこと、プレビュー表示をオンにすることで撮影後にすぐに結果を見ることもできる。OVF時も、EVF小窓を同時表示するエレクトロニックレンジファインダー(ERF)に撮影画像をプレビュー表示できるので、「ERFで大まかな結果を見ながらOVFで撮り続ける」といった使い方も可能だ。

チタンとマグネシウム合金を組み合わせた高剛性ボディを実現。デュラテクト処理を施したカラバリ2色も用意

X-Pro3はボディの作りにも注目してほしい。従来モデル以上に素材にこだわり、国内メーカーが手がけるミラーレスカメラとしては最高品質と言っていいほどの高品位なボディとなっているのだ。

大きなトピックとなるのは、ボディ外装の天面と底面に、富士フイルムのデジタルカメラとして初めて、軽量・高強度なチタンを採用したこと。さらに、フロントケースやリアケース、天面インナーなど内部フレームをすべてマグネシウム合金にすることで、高い堅牢性・剛性を実現しつつ総重量を抑えている。70か所にシーリングを施した防塵・防滴構造と-10℃の耐低温性能を備えつつ、ボディのサイズは140.5(幅)×82.8(高さ)×46.1(奥行)mmで、重量は約497g(バッテリー、 SDメモリーカード含む)と、従来モデル「X-Pro2」とほぼ変わらないサイズ・重量のボディに収まっている。

天面と底面にチタンを、そのほかの内部フレームにマグネシウム合金を採用

天面と底面にチタンを、そのほかの内部フレームにマグネシウム合金を採用

チタンは強度が高い分、成形が難しい素材だ。X-Proシリーズらしいディテールにこだわったデザインを実現するため、X-Pro3の製造では人間の手でも成形が行われる。そのため、出来上がったものを見比べると「同じものは2台とない」とのことだ

さらに見逃せないのは、これまでと同じ塗装(黒半艶塗装)のブラックカラーに加えて、より高い耐性を持つモデルとして、シチズン社の表面硬化技術「デュラテクト」を使った、より上質な塗装のDRブラック(デュラブラック)とDRシルバー(デュラシルバー)の2色をカラーバリエーションとして用意していること。DRブラックは、真空装置の中でガスをプラズマ化して科学反応をさせた後に素材の表面をコーディングする「DLC(Diamond Like Carbon)」を採用し、すりキズに強く、滑らかな触り心地を実現。DRシルバーは真空装置にガスを封入して熱処理を施すことで、素材にガスを浸透させて表面に硬化層を形成する「MRK」によって、特に打ちキズに強く、よりキズが付きにくいのが特徴だ。

富士フイルムの説明によると、ブラックカラーはこれまでと同様に、使い込むとどうしても表面にキズが付くこともあるが、ビンテージテイストのカメラになることを楽しんでほしいとのこと。DRブラックとDRシルバーについては、とにかくカメラにキズが付きにくいので、より上質な塗装をいつまでも楽しむことができるとのことだ。

DRブラックは表面にコーディング処理を施すことで、DRシルバーは表層の素材を改質する処理によって塗装の強度を向上している

新製品説明会では、カッターで底面を引っかく様子を撮影した動画をチェックできたが、ブラックカラーはキズが残るいっぽうで、デュラテクト採用モデルではまったくキズが付かないことを確認できた

X-Pro3のブラックカラーモデル

X-Pro3のブラックカラーモデル

ブラックカラーモデルの上面

ブラックカラーモデルの上面

こちらはDRブラックカラーモデル

こちらはDRブラックカラーモデル

DRシルバーカラーモデル

DRシルバーカラーモデル

AF低輝度限界など基本性能が向上。新フィルムシミュレーション「クラシックネガ」も追加に

最後に、上記で紹介した内容の以外でのX-Pro3の主な特徴を押さえておこう。

・撮像素子:第4世代の裏面照射型2610万画素「X-Trans CMOS 4」センサー
・画像処理エンジン:第4世代の「X-Processor 4」
・感度:ISO160〜12800(L 100、H 51200対応)
・シャッタータイムラグ:0.045秒(メカシャッター)、0.02秒(電子シャッター)
・連写:約11コマ/秒(メカシャッター)、約20コマ/秒(電子シャッター)、クロップで約30コマ/秒(電子シャッター)
・AFの低輝度限界:-6 EV
・動画撮影:DCI 4K/30p、4K/30p(いずれも連続最大約15分まで)
・撮影枚数:370枚(EVF使用時)
・新フィルムシミュレーションとして「クラシックネガ」を追加
・「グレイン・エフェクト」は強度と粒度の設定が可能に
・モノクロ調整は暖色系・寒色系に加えてマゼンタ系・グリーン系の調整も可能に
・「カラークロームエフェクト」に加えて、「カラークロームブルー」を搭載
・多重露出は最大9枚対応に
・その他追加機能:8/16bitのTIFF出力、フォーカスリミッター、HDR撮影(3枚合成の800%を追加)、フォーカスブラケット、クイックメニューの表示数(4/8/12/16)切り替え、USB Type-Cの採用

撮像素子と画像処理エンジンのデバイスは「X-T3」などほかの最新モデルと変わらないが、大きなところでは、AFの低輝度限界が-6EVにまで向上。フィルムシミュレーションにはカラーネガフィルムをもとに画質設計を行った「クラシックネガ」が追加された。グレイン・エフェクトやモノクロ調整の機能性が向上したほか、青空などブルー系の被写体に対して深みのある色再現が可能な「カラークロームブルー」も新たに搭載している。

撮影とは別の露出で位相差画素の読み出しを行うことで、-6EVの低輝度下でのAF合焦を実現

撮影とは別の露出で位相差画素の読み出しを行うことで、-6EVの低輝度下でのAF合焦を実現

フィルムシミュレーションにクラシックネガを追加。彩度が低くて高階調な色表現が得られるモードだ

フィルムシミュレーションにクラシックネガを追加。彩度が低くて高階調な色表現が得られるモードだ

フィルムのような粒状感を再現するグレイン・エフェクトは強度と粒度を調整できるようになった

フィルムのような粒状感を再現するグレイン・エフェクトは強度と粒度を調整できるようになった

モノクロ調整は暖色系・寒色系に加えてマゼンタ系・グリーン系の調整も可能になった

モノクロ調整は暖色系・寒色系に加えてマゼンタ系・グリーン系の調整も可能になった

ブルー系の被写体の色再現を強調するカラークロームブルーを新搭載

ブルー系の被写体の色再現を強調するカラークロームブルーを新搭載

従来モデルとの基本スペックの比較。約3年半ぶりのモデルチェックということで、細かいところを含めて性能が向上している

フィルムシミュレーションなどの機能の比較。X-Pro3は8/16bitのTIFF出力に対応するようになった(※富士フイルムのプレゼン資料内にX-Pro2に関するスペックで間違いがあったため、価格.comマガジン側の判断で画像を一部修正しています)

まとめ ファインダーで撮る喜びを感じる、唯一無二の高品位ミラーレス

X-Proシリーズはこれまでもファインダー撮影を重視したスタイルのカメラだったが、X-Pro3では液晶が裏側にあるHidden LCDの採用によって、そのスタイルがさらに“深化”した。少なくとも国内メーカーのミラーレスではこれまでになかった、独特のコンセプトで作られた非常に意欲的なカメラに仕上がっている。けっしてオールマイティーに使えるわけではなく、ストリートスナップやドキュメンタリーフォトに特化していて使い手を選ぶところはあるが、ファインダーで撮影する喜びを感じる高品位なカメラなのは間違いない。

発売はブラックが11月28日、DRブラックとDRシルバーが12月中旬。市場想定価格はブラックが214,500円前後、DRブラックとDRシルバーが239,500円前後(いずれも税別)となっている。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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