レビュー
撮影したら、ハンドルをグルグル回してすぐ現像

インスタントトイカメラ「Pixtoss(ピックトス)」が教えてくれた“うまく撮れない”おもしろさ

スマートフォンのカメラ性能が飛躍的に進化したことで、いつでも、誰でも、実景に近い高精細な写真を撮影できるようになった今の時代。キレイに撮れるのはもはや当たり前で、最近では、SNSにアップする写真の色調を崩したり、モノクロにしたりと、あえて画質を落として個性的な写真に仕上げるのがトレンドとなっている。そこで注目したいのが、タカラトミーのインスタントトイカメラ「Pixtoss(ピックトス)」。シャッターレバーをガシャンと押し、ハンドルを回すだけで“エモい”フィルム写真が撮れたり、撮れなかったり……。そんな、アナログならではの“きまぐれ”が楽しめるアイテムだ。

ガシャンと撮って、手動で現像

「Pixtoss」は、近距離撮影専用のインスタントトイカメラで、富士フイルムのインスタントカメラ「インスタックスミニ」(チェキ)用フィルムをセットし、レンズ横のシャッターレバーを押すことで撮影できる。シャッターを押したら、本体底面のハンドルをグルグルグル。こうすると本体側面からフィルムが排出される仕組みで、少しずつ像が浮かび上がり、約90秒で現像が完了する。

カラーバリエーションは、「MILK WHITE」「PEACH PINK」「SODA BLUE」の3色。「PEACH PINK」「SODA BLUE」は2020年4月28日に発売される予定だ。「白飛びカットフィルター」を兼ねたレンズキャップと、取扱説明書が同梱されている

シンプルな構造のトイカメラらしく、絞りやシャッタースピードを調節する機能はなく、装備するのは電池駆動のフラッシュのみ。付属のレンズキャップが「白飛びカットフィルター」を兼ねており、フラッシュのあり/なし、そして「白飛びカットフィルター」の装着/非装着の組み合わせでおおまかに露出を調節する。1枚のフィルムに2回もしくは複数回の画像を重ね写し込めるので、多重露光も簡単だ。

インスタントカメラの代名詞である「チェキ」は、露出を調節できたり、モニターを見ながら何度でも撮影できるモデルがラインアップされていたりと、「キレイに撮る」ことを主眼に進化を続けているが、「Pixtoss」は違う。シャッタースピードは1/80秒の固定で、露出補正もおおざっぱ。おまけにフィルムの排出(現像)も手動で行うなど、お世辞にも「キレイに撮れるカメラ」とは言えないのだ。

志向するのはあくまでも、「アナログらしいおもしろさ」。そういう意味では、トイカメラの王道である「ロモグラフィー」とコンセプトは似ていて、「どんな風に映っているかわからないドキドキ感」や、「撮影する楽しさ」を体験することができる。撮影した写真をすぐに手に取れるインスタントカメラの即時性と、トイカメラの偶発性の両方が楽しめる、ちょうど、「チェキ」と「ロモグラフィー」の中間の立ち位置にあるカメラというわけだ。

本体サイズは約146(幅)×67(奥行)×90(高さ)mm、重さは約275g。コンパクトとは言い難いサイズだが、この少し大ぶりなフォルムがどこか愛らしい。それなりに厚みがある分、しっかりと握り込み、安定してホールドできる印象だ

レンズの焦点距離は45.5mm(35mm換算25.5mm)とやや広角で、絞り値はF11。適正撮影距離は0.5〜1m、フラッシュ有効範囲は0.5〜0.8mとなっている。レンズが広角なので、2〜3人でのセルフィ―も楽しむことができ、レンズの下にセルフィ―用のミラーを装備する

本体背面左側にファインダー、その下にフラッシュのスイッチ、残りのフィルム数を確認できるフィルムカウンターを備える。レンズとファインダーの位置が異なるので、ファインダーでのぞく像と撮影する像がズレる、いわゆる「パララックス」が生じる。どの程度ズレるのか、これは何度か撮影して感覚をつかんでいくしかないが、これもまたアナログならではの“あいまいさ”として、ポジティブにとらえたい

シャッターレバーを押したら、本体底面のハンドルを回してフィルムを排出する。仕上がりの不確実性や偶発性を楽しんでもらおうと、あえて現像にムラが出る、手動でのフィルム排出を採用したのだろう

晴天の屋外や、明るすぎる屋内での撮影時には「白飛びカットフィルター」の装着が推奨されている

晴天の屋外や、明るすぎる屋内での撮影時には「白飛びカットフィルター」の装着が推奨されている

別売の「Pixtoss 専用カラーフィルターセット」(ショコラオレンジ、ベリーピンク、ミントグリーン)をレンズにかぶせれば、写真の雰囲気を変えることができ、さまざまなバリエーションの撮影が楽しめる

想像以上に難しい、でも、楽しい

さっそく「Pixtoss」を携え、日常のさまざまなシーンを切り取ってみよう。準備はシンプルで、本体側面に単4電池2本(別売)、そして本体背面に「インスタックスミニ」(チェキ)用フィルム(別売)をセットするだけ。あとはあれこれ設定に悩まず、ファインダーをのぞいて構図を決め、シャッターレバーを下ろせばいい。簡単だ。

本体に単4電池2本とフィルムをセットしたら、準備完了。早速撮影を開始しよう

本体に単4電池2本とフィルムをセットしたら、準備完了。早速撮影を開始しよう

屋内外で料理や花、人物などを気の向くままに撮影してみた感想は、「想像以上に難しい」。屋内ではフラッシュを使用しないと露出アンダーでかなり暗く、晴天の屋外では、「白飛びカットフィルター」を装着しないと露出オーバーでほぼ真っ白な写真に仕上がってしまう。狙った被写体がピンボケすることもしばしばだし、パララックスにもなかなか慣れない。これは手なづけるのに苦労しそうである。

が、しかしだ。「ああ、これでもまだちょっと暗かったか」「もう少し被写体から離れないとピントが合わないのか」などと、ぶつぶつとつぶやきながら撮影を続けているうちに、はたと気が付いた。「なかなかうまく撮れない」のが楽しいのだ。1+1=2、というように、頭の中で数値化して「うまく撮れる方程式」を導き出せるのなら話は簡単だが、それには不確実な要素が多すぎる。だからシャッターを切るたびに蓄積されていく、「こういう時はこういう写真が撮れた」という経験と感覚を少しずつ積み重ねながら、ああでもない、こうでもないと試行錯誤する。それが不思議と楽しい。ロジックが通用しない撮影の難しさや、再現性がない写真の仕上がり。これこそが“エモさ”の正体なのかもしれない。

まずはレストランで料理を撮影。照明が点いた店内は決して暗くなかったのだが、フラッシュを使用しても周辺は暗く落ちている。料理の不鮮明な描写を含め、予想もしない仕上がりとなるのがおもしろい

続いて、晴天の屋外でポートレートを試してみる。「白飛びカットフィルター」を使わずに撮影したところ、露出オーバーで真っ白になってしまったので、あわてて「白飛びカットフィルター」を装着。仕上がったのがこちらの写真だ。暗部がザラつきながらも粘り、なんとか潰れずにニュアンスを残しているのは感材を用いるフィルムカメラならでは。日常の何気ないワンシーンだが、どこかノスタルジックな1枚となった

セルフィ―の注意点は、自分の顔の位置が写真の下側に写りやすいこと。これはセルフィ―用のミラーがレンズの下に配置されているためで、カメラの位置を少し下げて撮影するとちょうどいい構図になる

近距離撮影専用とはいうものの、遠景がまったく撮れないかというと、そんなこともない。おそらく被写界深度が約1m〜∞に設定されているのだろう、「白飛びカットフィルター」を装着し、部屋のベランダから恵比寿の街並みを撮影したところ、ビルやマンションの造形はそれなりに描写できた(やや露出オーバーだが)

カラーフィルターを使うと独特の雰囲気に。「ミントグリーン」のフィルターはやや露出オーバーで褪色が見られたので、それを踏まえて撮影環境を選ぶとよさそうだ。左上から時計回りに「白飛びカットフィルター」「ショコラオレンジ」「ミントグリーン」「ベリーピンク」

シャッターレバーを押した後、フィルムを排出せずにもう1度シャッターレバーを押すことで2枚の写真を重ねられる多重露光にも挑戦してみよう。地面に映った影を撮影し、フィルムを排出せずに植物を撮影。影のシルエットに植物が重なったアーティスティックな仕上がりに、思わず「お〜!」と感嘆の声が漏れた

気がつくと、「手放せないカメラ」になっている

デジタルカメラやスマートフォンで撮影する写真は、各種設定を調節することで仕上がりを自在にコントロールできる。こう撮れば、こう写る、という具合に。しかし、「Pixtoss」ではそれが難しい。もちろん、撮影を重ねていけばある程度コツはつかめてくるが、初めのうちは、誰もが「失敗」を繰り返すことになるだろう。ファインダーで構図を検討する段階から、撮影、そして現像まで、不確実な要素が多すぎるためだ。それゆえに、写真の仕上がりに占める偶発性の割合はおのずと高くなるが、その偶発性はときに、“エモさ”を生み出すとっておきのスパイスにもなる。そして、長い時間をかけてカメラと向き合い、その偶発性さえもコントロールできるようになった時、「Pixtoss」はきっと手放せないものになっているに違いない。

毛利真大

毛利真大

編プロでの広告制作、雑誌編集を経てフリーライター/エディターに。家電をはじめ、自動車、ファッション、ビジネス関連など幅広い分野で活動。86年、秋田県出身。「大曲の花火」とグミをこよなく愛する。

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