レビュー
タムロンのEマウント用“大三元レンズ”が完成

こんな望遠ズームを待っていた! タムロン「70-180mm F/2.8 Di III VXD」ファーストインプレッション

大口径の望遠ズームレンズは大きくて重い。そんな印象を覆す新モデル「70-180mm F/2.8 Di III VXD(Model A056)」がタムロンから2020年5月14日に発売になる。ソニーEマウント用のフルサイズ対応・望遠ズームレンズで、ズーム全域で開放F2.8通しの明るさながら重量810gの小型・軽量化を実現したのが大きな特徴だ。この注目レンズを発売前にいち早く試すことができたのでファーストインプレッションをお届けしよう。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で不要不急の外出自粛が呼びかけられる中での試用のため短時間での撮影にはなったが、このレンズの魅力を存分に感じることができた。

高性能な望遠ズームレンズとしては非常にコンパクトな70-180mm F/2.8 Di III VXD。今回、ソニーのフルサイズミラーレス「α7 III」と組み合わせて試用した

クラス最軽量ボディにタムロン初のリニアモーターを搭載。光学性能にもすぐれる

70-180mm F/2.8 Di III VXDは、ソニーEマウント用のフルサイズ対応・開放F2.8通しの望遠ズームレンズ。タムロンが手がけるEマウント用の大口径ズームレンズとしては、2018年5月発売の標準ズームレンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD(Model A036)」、2019年7月発売の広角ズームレンズ「17-28mm F/2.8 Di III RXD (Model A046)」に続く3本目だ。本レンズの登場によって、広角17mmから望遠180mmまで開放F2.8で撮影できる、タムロンのEマウント用“大三元レンズ”が揃ったことになる。

先に発売された広角ズームレンズや標準ズームレンズと同様、70-180mm F/2.8 Di III VXDも徹底的な小型・軽量化が図られている。開放F2.8通しの望遠ズームレンズは70〜200mmの焦点距離をカバーするものが多いが、本レンズは望遠端を180mmとしたうえで、全長可変式ズーム機構の採用や手ブレ補正機構の省略などによって大幅な小型・軽量化を実現。サイズは81(最大径)×149(長さ)mmで、重量は810g。望遠端が180mmに抑えられているものの、フルサイズ対応と開放F2.8通しの両方を満たすAF対応の望遠ズームレンズとして重量が1kgを切るのは世界初だ。

長さだけでなく口径も抑えられており、フィルター径は17-28mm F/2.8 Di III RXD、28-75mm F/2.8 Di III RXDと同じ67mm。また、Di IIIシリーズの他モデルと同様、AF/MFの切り替えスイッチは省略されている

ズームは繰り出し式で、望遠端での全長はおよそ178mm

ズームは繰り出し式で、望遠端での全長はおよそ178mm

コンパクトな鏡筒ながら性能に妥協はなく、AF駆動には、タムロンとしては初となるリニアモーターフォーカス機構「VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)」を採用。静粛性・俊敏性にすぐれたリニアモーターを使用し、0.005mm単位で位置精度を確保することで、タムロン史上最高レベルの高速・高精度AFを実現したとしている。動体に対する追従性も大幅に向上しているとのこと。近接から遠景までの高い描写性能を確保するため、2基のVXDを高度に電子制御するフローティングシステムを採用したのも見逃せない点だ。

レンズ構成は14群19枚で、XLD(eXtra Low Dispersion)レンズ、LD(Low Dispersion)レンズ、GM(ガラスモールド非球面)レンズ、複合非球面レンズといった特殊硝材を贅沢に使用。画面全域で色収差を抑制し、高い解像力を実現したという。ヌケがよくクリアな写りのため、ゴーストやフレアの発生を抑える「BBAR-G2 (Broad-Band Anti-Reflection Generation 2)」コーティングも採用した。絞り羽根は9枚円形絞り。

XLDレンズとLDレンズを計6枚、GMレンズと複合非球面レンズを計3枚使用する14群19枚のレンズ構成を採用

XLDレンズとLDレンズを計6枚、GMレンズと複合非球面レンズを計3枚使用する14群19枚のレンズ構成を採用

タムロンが公開しているMTF曲線図。コントラスト、解像力ともに十分なスペックを持っていることがわかる

タムロンが公開しているMTF曲線図。コントラスト、解像力ともに十分なスペックを持っていることがわかる

近接撮影に強いのも特徴で、70〜180mmのズーム全域で0.85mの最短撮影距離を実現。加えて、MF時には広角端70mmで最短撮影距離が0.27m(最大撮影倍率1:2)にまで短くなるのも見逃せない。周辺部の画質が低下するものの、画面の中心付近に被写体を配置して周辺のボケや流れを生かしたハーフマクロ撮影を楽しめるようになっている。

このほか、鏡筒の可動部や接合部などに防滴用のシーリングを配した簡易防滴構造を採用。レンズ最前面には撥水性・撥油性にすぐれたフッ素化合物による防汚コートが施されている。ファストハイブリットAFや瞳AF、ダイレクトマニュアルフォーカス(DMF)、カメラ内レンズ補正(周辺光量、倍率色収差、歪曲収差)、カメラによるレンズ本体ファームウェアアップデートといった、ソニーEマウントミラーレスの機能にも対応しており、純正レンズと変わらない使い方が可能となっている。

広角端70mmでズーム位置を固定できるズームロック機構を装備。レンズマウント部近くには、最近のタムロンレンズではおなじみとなったルミナスゴールドのブランドリングが施されている

専用の花型フード「HA056」が付属する

専用の花型フード「HA056」が付属する

70-180mm F/2.8 Di III VXDのAF速度を動画でチェック

被写体距離0.9〜3mの間にある複数の被写体に対してランダムにAFを合わせてみた。前半はAF-S、後半はAF-C(AF被写体追従感度:3)でのテストになる。3m付近から最短撮影距離付近の0.9mまで戻す際にわずかにレスポンスが低下することがあるものの、AF-S/AF-Cとも非常に高速に動作している。駆動音も小さく静粛性の高さも伝わるはずだ。

実写作例

※以下に掲載する作例は、α7 IIIと70-180mm F/2.8 Di III VXDを組み合わせてJPEG形式の最高画質(エクストラファイン)で撮影したものになります。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、70mm、F6.3、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、12.7MB)

70-180mm F/2.8 Di III VXDはズーム全域で解像力にすぐれたレンズだ。この作例は広角端70mm/絞り値F6.3で撮っているが、撮影写真をチェックすると細かいディテールまで描き切れていることが伝わるはずだ。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、85mm、F18、1/60秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(4000×6000、13.7MB)

背景に余計な被写体が入らないように撮影位置と焦点距離を調整しながら撮影した作例。F18まで絞ることで手前から奥の被写体までピントが来るようにした。自然な発色で、手前の被写体の質感や青空のグラデーションがうまく再現できている。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、100mm、F14、1/80秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、16.4MB)

焦点距離100mmで逆光をテストしてみた。さすがに太陽など強い光源が入るとゴースト・フレアが発生することがあるが、この作例のように光線を切るようにして光芒を出す場合は目立つような出方はしない。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、135mm、F2.8、1/1600秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、13.5MB)

70-180mm F/2.8 Di III VXDを試用してみて驚いたのがAF性能の高さだ。動作音はほとんど発生せず、被写体への食いつきがよく、追従性も高い。タムロンの望遠ズームレンズとしては間違いなくナンバーワンのAF性能だ。さすがに最短撮影距離付近から遠景(またはその逆)に一気にフォーカシングする場合はレスポンスは低下するが、純正レンズと勝負できる性能だと思う。この作例では、風ではためく鯉のぼりをAF-Cで連写撮影しているが、鯉のぼりが並んだ瞬間を確実に押さえることができた。背景の玉ボケ部分で縁取りや年輪ボケが見られるのが気になるかもしれないが、ほかの作例ではこういった描写は見られない。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、180mm、F4、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、12.1MB)

前後ボケを狙って望遠端180mmで撮影した作例。絞り値はF4に設定した。アウトフォーカス部の滲み方が滑らかで、硬い感じがしないのがいい。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、180mm、F2.8、1/200秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、10.6MB)

焦点距離180mmの最短撮影距離付近にて開放で撮影したもの。ピント位置はシャープで、前後のボケも自然だ。70-180mm F/2.8 Di III VXDはズーム全域で最短撮影距離0.85mを実現しており、特に望遠側において被写体との距離が短いと感じる場合でもピントを合わせて撮ることができる。距離感に悩まずに撮れるのが使いやすい。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、180mm、F2.8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(4000×6000、9.9MB)

望遠端180mm/開放F2.8で撮影した人物作例。直線が多くてうるさくなりそうな背景だが、輪郭の色付きを抑えた良質なボケが得られた。ピント位置がとてもシャープなこともあってか、大口径の望遠レンズ特有の被写体が浮き上がるような写真に仕上がった。また、この作例では瞳AFを利用したが、瞬時に瞳を見つけて追従し続けてくれたことも付け加えておこう。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、180mm、F2.8、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(4000×6000、10.5MB)

こちらも望遠端180mm/開放F2.8の設定で、瞳AFを使って撮影したもの。若干の周辺光量落ちと口径食が見られるものの、大口径の望遠ズームレンズらしい大きなボケのある写真になった。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、70mm、F2.8、1/2500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、9.0MB)

MFに設定して広角端70mm/最短撮影距離0.27mの近接撮影を試してみた。この作例は開放で撮っているため全体的にソフトフォーカスがかかったような感じになっているが、これはこれでおもしろい描写だ。

α7 III、70-180mm F/2.8 Di III VXD、70mm、F8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、9.0MB)

こちらもMFにて広角端70mm/最短撮影距離0.27mで撮影した1枚。MF時の近接撮影の場合、周辺部の画質が低下する点には注意が必要だが、絞ることで画像中央部はシャープな描写になる。この写真は絞り値F8にしているがピント位置では高い解像感が得られている。

まとめ 小型・軽量ながらAFと画質はハイレベル。はじめての大口径・望遠ズームにもピッタリ

クラス最軽量の小型・軽量な鏡筒に、タムロン初のリニアモーターフォーカス機構、妥協のない光学性能、MFでの近接撮影機能と、70-180mm F/2.8 Di III VXDは見どころの多いレンズだ。その分、期待値も高いというものだが、今回の試用では期待を上回る性能を発揮してくれた。AFは驚くくらい高速になっており、瞳AFを含めてソニーのフルサイズミラーレスのAF性能を生かしてレスポンスよく撮影ができると感じた。画質もJPEG撮って出しで撮ってみて気になったのは開放付近での周辺光量落ちくらいで、ズーム全域で開放からシャープでボケ質も滑らかでいい。解像力とボケのバランスの取れた、タムロンらしい写りを楽しめる1本だと思う。

手に持った時のサイズ感は開放F4通しの“小三元”望遠ズームレンズに近く、スペックを考慮するととても持ち運びやすい。ボディ内手ブレ補正を搭載するソニーのミラーレスを所有している人(もしくは購入を検討している人)で、「200mm/F2.8」のスペックにこだわらないのであれば、選択肢に入れておいて損はない。特に、これまで大きさや重さがネックで開放F2.8通しの望遠ズームレンズを選べなかった人に注目してほしい製品だ。

また、すでに広角ズームレンズ17-28mm F/2.8 Di III RXDと標準ズームレンズ28-75mm F/2.8 Di III RXDを持っている人は、70-180mm F/2.8 Di III VXDもぜひ手に入れてタムロンのEマウント用大三元レンズをコンプリートしてほしい。これら3本のレンズの総重量は1780gで大三元レンズとしては驚異的な軽さだ。フィルター径も67mmで揃っているのでキャップやフィルターを共用できて使いやすい。3本セットで使うことでより高いパフォーマンスを発揮するはずだ。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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