ソニーは2021年10月21日(現地時間)、フルサイズミラーレスカメラの新モデル「α7 IV」を海外で発表した。北米では2012年12月の発売予定で、価格(ボディ単体)は約2500米ドル。国内での発売は検討中とのことだが、注目度の高いモデルということで、その特徴を紹介しよう。
海外で発表された新モデルα7 IV。北米では12月の発売が予定されている
α7 IVは、ソニーのフルサイズミラーレスの中ではスタンダードモデルとなる“無印α7”シリーズの4世代目。2018年3月に発売になった先代の「α7 III」は、ソニーとしては“ベーシックモデル”の位置付けでリリースされ、最高約10コマ/秒の高速連写や、上位モデルゆずりの高性能AFなど、ベーシックという言葉を超えるハイスペックを実現し、高い人気を集めた。発売から3年半が経過した現在でも、価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの売れ筋ランキングでは上位に位置するロングセラーとなっている。
α7 IVは、そんなα7 IIIの後継ということで、カメラファンにとっては、従来からの進化点とあわせて、ソニーの方向性を示すモデルとしても注目される存在だ。α7 IVの海外製品ページでのキャッチコピーは「Beyond basic. For a new generation of imagemakers.」。α7 IIIと同じような立ち位置で、これまでの基準を上書きするモデルとしてリリースされるようだ。
最大の見どころは、α7 III以上に、動画撮影に力を入れたカメラになっていること。撮像素子に、新開発となる、有効約3300万画素の裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサーを搭載し、「α1」や「α7S III」にも採用された、最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」を組み合わせることで、静止画撮影と動画撮影の両方でスペックアップを実現している。
有効約3300万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用
静止画撮影では、画素数がアップしながらも、α7 IIIと同じく常用でISO100〜51200の感度に対応。拡張設定で下限ISO50まで、上限ISO204800まで設定できる。ダイナミックレンジは15ストップで、こちらもα7 IIIと同じスペックだ。10bitのHEIF形式の記録に対応するほか、RAWは圧縮RAW、非圧縮RAWのほか、ロスレス圧縮RAWにも対応するようになった。新しい仕上がり設定「クリエイティブルック」はα1やα7S IIIと同様、全10種類に対応。「VLOGCAM ZV-E10」などに搭載された「美肌効果」機能なども備わっている。
AFシステムは、759点(位相差AF)/ 425点(コントラストAF)の測距点を持ち、画面の94%をカバーする「ファストハイブリッドAF」。BIONZ XRの高い処理性能によって「リアルタイム瞳AF」と「リアルタイムトラッキング」の機能が向上しており、「リアルタイム瞳AF」は検出精度がα7 IIIと比べて30%向上したとのこと。動物と鳥を含めて、動画撮影時の「リアルタイム瞳AF」も可能となった。低輝度限界はα7 IIIの-3EVから-4EV(いずれもF2.0レンズ使用)に向上している。
759点の位相差AFに対応するAFシステムを搭載
連写はα7 IIIと同じく最高約10コマ/秒。ただし、非圧縮RAW、および非圧縮RAW+JPEG記録時は最高約6コマ/秒となる(※ロスレス圧縮RAW時のスペックは現時点では不明)。バッファメモリーの容量増加などによって連写の持続性が向上しており、最大撮影可能枚数は、ほとんどの記録モードでは1000枚以上となっている(※非圧縮RAW+JPEG記録時のみ828枚)。
ボディ内5軸手ブレ補正は、α7 IIIの5.0段分から5.5段分に補正効果が向上
動画撮影は、Super 35mm(APS-Cサイズ)での4K/60p記録が可能。4K/30p 24p時は、フル画角での7Kオーバーサンプリングによって、より高品位な映像を記録できる。フルHD/120p記録も可能だ。また、α7S IIIと同様、XAVC S-I形式やXAVC HS形式に対応しており、XAVC S-Iでは10bit 4:2:2サンプリングでの4K記録が可能となっている。AFは、先述のとおり、動画でも人物/動物/鳥の「リアルタイム瞳AF」を利用できるようになった。
4K/30p 24p記録時は7Kオーバーサンプリングに対応
また、S-Log3に加えて、α1やα7S IIIと同様、肌の色をシネマチックに表現するルック「S-Cinetone」も搭載。15+ストップのワイドダイナミックレンジが特徴のS-Log3の利用も可能だ。このほか、動画撮影用の機能として、「αシリーズ」初となるブリージング補正機能や、被写界深度を可視化する「フォーカスマップ」機能、より強力に手ブレを補正する「アクティブモード」なども搭載している。
操作性では、液晶モニターがバリアングルになるなど、動画撮影を意識した仕様を取り入れているのがポイント。静止画撮影、動画撮影、S&Qの各モードを専用ダイヤルで切り替えられるようになり、メニュー/ファンクションメニューも静止画撮影と動画撮影で分けられている。従来の露出補正ダイヤルは汎用的なダイヤルとなり、機能を割り当てられるようになった。
バリアングル方式の3.0型タッチパネル液晶モニター(約103万ドット)を採用
静止画撮影、動画撮影、S&Qを切り替えられる専用ダイヤルを搭載
従来の露出補正ダイヤルは、機能を割り当てられる汎用ダイヤルになった
約368万ドットの電子ビューファインダーを採用。倍率は0.78倍で、アイポイントは23mm。120fps表示にも対応
ネットワーク機能はBluetoothの常時接続や5GHz Wi-Fiに対応するようになった。USB Type-CはUSB 3.2 Gen2(10Gbps)で、4K/15pやフルHD/60pなどに対応するライブストリーミング機能を利用できる
以上、駆け足でα7 IVの特徴を見てきたが、従来以上に動画撮影に注力したカメラであることが伝わっただろうか。海外のリリースページを見ると、α7 IVは「a hybrid still and video camera」と紹介されており、静止画撮影と動画撮影のハイブリッドを狙ったモデルであることがわかる。ソニーの考える、フルサイズミラーレスの新しい“ベーシック”は「静止画撮影と動画撮影を高いレベルで組み合わせたカメラ」ということなのだろう。最近の動画撮影の盛り上がりをいち早く商品に反映しているソニーらしい展開と言える。
従来モデルのα7 IIIは、フルサイズミラーレスの基準を底上げしたモデルと言っても過言ではないくらいのインパクトを残したカメラで、さすがにそれに比べると話題性は低いかもしれない。だが、それでも新開発の有効約3300万画素センサーと最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」の組み合わせによる性能向上は、静止画撮影重視のユーザーでも注目に値するはずだ。
なお、ソニーの場合、海外で新製品が発表になると、それほど間を置かずに国内発売の詳細が出るのだが、今回のα7 IVについては「国内でも発売を検討中」というリリースにとどまっている。国内では取り扱わないということはないはずなので、少し遅くなるかもしれないが、正式な発表を待ちたい。
カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。