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ニコンの新しいフラッグシップモデル「Z 9」速攻徹底解説!

ニコンは2021年10月28日21時、同社一眼カメラの新しいフラッグシップモデルとなるフルサイズミラーレスカメラ「Z 9」を正式に発表した。「Zマウント」を採用する初のフラッグシップモデルで、2021年3月の開発発表では、「静止画・動画ともに過去最高の性能を発揮することを目指す」としていたが、その言葉の通り、あらゆる点で従来のフラッグシップモデル「D6」を超える高性能を実現したモンスターマシンに仕上がっている。本記事では、外観画像やAFの動作を記録した動画、実写作例などを交えながら、この注目製品の特徴をいち早く紹介しよう。

※本記事で使用したZ 9は開発中のベータ機です。製品版とは仕様が異なる場合がありますのでご了承ください。

フラッグシップモデルらしく、縦位置グリップ一体型ボディを採用したZ 9(装着しているレンズは絞り開放F2.8通しの標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」)。本体サイズは約149(幅)×149.5(高さ)×90.5(奥行)mmで、重量は約1340g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)。D6と比べると体積で約20%の小型化を実現している

フラッグシップモデルらしく、縦位置グリップ一体型ボディを採用したZ 9(装着しているレンズは絞り開放F2.8通しの標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」)。本体サイズは約149(幅)×149.5(高さ)×90.5(奥行)mmで、重量は約1340g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)。D6と比べると体積で約20%の小型化を実現している

「最先端デバイス×メカシャッターレス」で飛躍的な性能向上を実現

ニコンのフラッグシップモデルは、報道やスポーツなどのプロから長年にわたって絶大な信頼を得ている、一眼カメラの頂点に位置する特別なカメラだ。プロだけでなくハイアマチュアからも選ばれる存在で、数あるカメラの中でも最も注目度の高い製品の1つである。

今回正式に発表になったZ 9は、ニコンのミラーレスとしては初となるフラッグシップモデル。ニコンが一眼レフではなくミラーレスをフラッグシップに位置付ける意味は大きく、一眼レフを超える高性能を実現することを宿命付けられた、ニコンにとってターニングポイントとなる、非常に重要なカメラとなっている。

そのスペックは、AF、連写、動画撮影などあらゆる点で期待を上回るものになっている。各機能の詳細は次項目以降で詳しく紹介するが、最先端のデバイスに思い切った構造を組み合わせることで、高速性を中心に圧倒的な高性能を実現している。

デジタルカメラにとって最も重要なデバイスの1つである撮像素子には、新開発となる有効4571万画素の積層型CMOSセンサーを採用。積層部に大容量メモリーと高速処理回路を多数配置することで、有効4575万画素のフルサイズミラーレス「Z 7II」と比べて約12倍の高速静止画読み出しを達成した超高性能センサーだ。さらに、画像処理エンジンには最新の「EXPEED 7」を採用。こちらも従来比で約10倍の高速処理を実現している。ニコンのフラッグシップモデルにふさわしく、最先端の撮像素子と画像処理エンジンを惜しげもなく投入してきた形だ。

新開発となる有効4571万画素の積層型CMOSセンサーと、最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載

新開発となる有効4571万画素の積層型CMOSセンサーと、最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載

高速書き込みが可能なCFexpress(TypeB)カードのダブルスロットを採用。XQDカードの使用にも対応している

高速書き込みが可能なCFexpress(TypeB)カードのダブルスロットを採用。XQDカードの使用にも対応している

思い切った構造というのは、ニコンFXフォーマットのカメラとして初めて、メカシャッターを用いない、完全電子シャッターを採用したことだ。ニコンの一眼カメラといえば、高精度かつ高耐久なメカ部分に特徴があると考えている人も多いと思うので、ニコンとしてはやはりかなり思い切った仕様を採用したと言えよう。Z 9は、「最先端デバイス×メカシャッターレス」によって、これまでニコンのミラーレスではネガティブに捉えられることもあったAFや連写などで飛躍的な性能向上を達成しているのだ。また、シャッター耐久を気にせずに大量に撮影ができるのもメカシャッターレスのメリットとしている。シャッタースピードも、メカシャッターの上限1/8000秒を超えて、1/32000〜30秒(Mモード時は900秒まで延長可能)に対応するようになった。

電子シャッターでの撮影だと、ローリングシャッターによる歪みの発生が気になるところだが、ニコンによると、Z 9の撮像素子は世界最速(※2021年10月28日現在、30MP以上のミラーレスにおいて)のスキャンレートを実現しており、ローリングシャッター歪みを気にすることなく使用できるとのこと。フラッシュ同調シャッタースピードのスペックを見ても、「1/250秒または1/200秒以下の低速シャッタースピードで同調(1/200〜1/250秒はガイドナンバーが減少)。1/8000秒までのシャッタースピードでオートFPハイスピードシンクロ可能」となっており、かなり高速なスキャンレートであることが読み取れる。実際にZ 9のベータ機で、動く被写体をカメラを振りながら追尾撮影してみたが、気になるような歪みはまったく発生しなかった。

なお、ニコンによると開発がスタートした当初からメカシャッターレスにすることを決めていたわけではなく、開発を進める中で、この高性能な撮像素子ならメカシャッターをなくしても問題ないと判断したとのことだ。

感度は常用でISO64〜25600、拡張でISO32相当までの減感とISO102400相当までの増感に対応。なお、メニュー画面のデザインもリニューアルされていて、感度自動制御など選択肢がオン・オフのみの機能の多くは、マルチセレクターの右を押すか、タッチ操作でオン・オフが切り替わる仕様になった。また、メニュー画面はサブセレクターでも移動できるようになっている

感度は常用でISO64〜25600、拡張でISO32相当までの減感とISO102400相当までの増感に対応。なお、メニュー画面のデザインもリニューアルされていて、感度自動制御など選択肢がオン・オフのみの機能の多くは、マルチセレクターの右を押すか、タッチ操作でオン・オフが切り替わる仕様になった。また、メニュー画面はサブセレクターでも移動できるようになっている

Z 9とあわせて発表になった超望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」を組み合わせたイメージ。今回はこの新レンズを使用してAFの動作などをチェックしている

Z 9とあわせて発表になった超望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」を組み合わせたイメージ。今回はこの新レンズを使用してAFの動作などをチェックしている

動体の補足・追尾性能が大きく向上した超高性能AFを実現

Z 9の特徴の中で特に注目したいのがAFだ。これまでニコンのミラーレスに対して「動体に対するAFの追従性がもうひとつ」という印象を持っていた人もいるかもしれないが、その印象を覆す進化を遂げている。これまでは従来のフラッグシップモデルD6が「ニコン史上最強のAF性能」を謳っていたが、Z 9のAFは、間違いなくD6を上回る内容になっている。

世界最多となる9種類の被写体検出が可能

Z 9は被写体検出機能が大幅に強化されていて、ディープラーニング技術を用いて開発した高度なアルゴリズムによって、人物、動物3種類(犬、猫、鳥)、乗り物5種類(車、飛行機、列車、バイク、自転車)の計9種類の検出が可能になった。ニコンによると9種類の検出は2021年10月28日時点でミラーレスとして世界最多である。

人物は顔、瞳に加えて頭部と胴体の検出に対応し、逆さまの状態でも検出可能。動物(犬、猫、鳥)は、頭部、瞳、全身に対応している。飛行機は、大きさによって機体全体、機首部分、コクピットの3種類を検出する。

被写体検出機能の動作を動画でチェック

Z 9の被写体検出機能の動作を外部レコーダーで記録した動画。人物、動物(猫)、動物(鳥)、乗り物(飛行機)、乗り物(列車)の順にテストしている。使用したレンズは新しい超望遠ズームレンズNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S。AFエリアモードは「オートエリアAF」、被写体検出は「オート」の設定とした。簡単なテストになるが、被写体の検出率がとても高く、すばやく動く被写体でもしっかりと追尾していることがわかるはずだ。なお、列車については前面のみの検出となっているようだ

性能の高さを感じさせるのが、人物、動物、乗り物のすべての被写体を同時に検出できること。被写体検出を「オート」に設定すると、計9種類の被写体を同時検出し、被写体の大きさ、位置、デフォーカスなどさまざまな情報から総合的に主要被写体を自動で選択してくれるのだ。撮影する被写体にあわせて検出対象を切り替える必要がないのが便利なところで、AFエリアモードが「オートエリアAF」の場合は、マルチセレクターの操作でピントを合わせたい被写体を選ぶこともできる。

AFエリアモード/被写体検出はiメニューの同じ項目内で設定することが可能(上段がAFエリアモード、下段が被写体検出)。被写体検出は「ワイドエリアAF(S、L)」「s」「オートエリアAF」で利用できる。計9種類の被写体を同時検出する「オート」設定も用意されている

AFエリアモード/被写体検出はiメニューの同じ項目内で設定することが可能(上段がAFエリアモード、下段が被写体検出)。被写体検出は「ワイドエリアAF(S、L)」「s」「オートエリアAF」で利用できる。計9種類の被写体を同時検出する「オート」設定も用意されている

複数の被写体(車と飛行機)を同時に検出している状態の画面。主要被写体(車)の白い枠の左側に矢印が出ていて、グレーの枠で表示されているもうひとつの被写体(飛行機)を選択することが可能となっている

複数の被写体(車と飛行機)を同時に検出している状態の画面。主要被写体(車)の白い枠の左側に矢印が出ていて、グレーの枠で表示されているもうひとつの被写体(飛行機)を選択することが可能となっている

ニコンのミラーレスとして初めて「3D-トラッキング」を搭載

Z 9のAFでは、指定した被写体の色や形を読み取って高度に追尾する「3D-トラッキング」を、「Zシリーズ」として初めて搭載するのもトピックだ。「3D-トラッキング」はニコンの中上級一眼レフに搭載されていて、その追尾性能の高さでユーザーから評価されている機能。ニコンファンにとって待望のAF機能がミラーレスでも使えるようになったのだ。

Z 9の「3D-トラッキング」は、被写体検出機能と連携するようになっていて、AF枠が被写体から多少ずれていてもカメラ側で捕捉してくれるのが便利。以下にその動作を記録した動画を掲載するので、追従性の高さをチェックしてほしい。

「3D-トラッキング」の動作を動画でチェック

着陸態勢に入った飛行機を被写体に、「3D-トラッキング」で追尾する様子を外部レコーダーで記録した動画。こちらもレンズにはNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sを使用している。被写体検出機能との組み合わせによって、手前に障害物があっても被写体を認識し続けており、非常に高精度に追尾できていることがわかるはずだ。着陸後に滑走路をタキシングする状態になっても追尾し続けているのがすごい

Z 9の「3D-トラッキング」は被写体検出と組み合わせて使用できる。なお、この設定画面は、iメニューのAFエリアモード/被写体検出の項目上にカーソルを置いてコマンドダイヤルで操作している時の画面。項目上にカーソルを置くと、メインコマンドダイヤルでAFエリアモードを、サブコマンドダイヤルで被写体検出を変更できるのが便利だ

Z 9の「3D-トラッキング」は被写体検出と組み合わせて使用できる。なお、この設定画面は、iメニューのAFエリアモード/被写体検出の項目上にカーソルを置いてコマンドダイヤルで操作している時の画面。項目上にカーソルを置くと、メインコマンドダイヤルでAFエリアモードを、サブコマンドダイヤルで被写体検出を変更できるのが便利だ

「D6」を上回るAF追従性能

先に掲載したAF動作の動画を見てもわかるように、Z 9はAF追従性能そのものが大きく底上げされている。これは、高度な被写体検出機能と合わせて、連写中の正確な処理を可能にするAF演算の高速化や、距離情報を1コマごとに伝達するZマウントシステムの高速通信によって、AF全体の追従性能が向上していることが大きい。ニコンは、Z 9のAF追従性能はD6を上回るとしているが、実際に使ってみてもそう感じた次第だ。

特に進化を実感できるのが「オートエリアAF」。「オートエリアAF」のフォーカスポイント数はZ 7IIの81点から405点にアップしており、より小さな被写体の追尾性能が向上。多彩な被写体検出機能や「3D-トラッキング」の利用が可能になったうえ、被写体選択のアルゴリズムも大幅に改善しており、狙った被写体を捉えて離さないAFとなっている。

「オートエリアAF」はフォーカスポイント数が81点から405点になり、小さな被写体に対する追尾性能が向上している

「オートエリアAF」はフォーカスポイント数が81点から405点になり、小さな被写体に対する追尾性能が向上している

フォーカスポイントから被写体が一時的に外れても周辺のポイントからの情報を利用してピントを合わせる「ダイナミックAF」は、D6同等の「S サイズ」、Z 7IIと同等の「Mサイズ」、さらに大きい「Lサイズ」の3種類から選択可能になった。この画像は「S サイズ」を選択している時の撮影画面

フォーカスポイントから被写体が一時的に外れても周辺のポイントからの情報を利用してピントを合わせる「ダイナミックAF」は、D6同等の「S サイズ」、Z 7IIと同等の「Mサイズ」、さらに大きい「Lサイズ」の3種類から選択可能になった。この画像は「S サイズ」を選択している時の撮影画面

Fの低輝度限界は-6.5EV(f/1.2レンズ使用時)。画面を明るくして暗い場所でもピントを合いやすくする「スターライトビュー」をオンにした場合は-8.5EVに向上する

Fの低輝度限界は-6.5EV(f/1.2レンズ使用時)。画面を明るくして暗い場所でもピントを合いやすくする「スターライトビュー」をオンにした場合は-8.5EVに向上する

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