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「α7 III」ユーザーにとって「α7 IV」は“買い”か? 発売前ファーストインプレッション

ソニーは2021年12月2日、海外でリリースしていたフルサイズミラーレスカメラの新モデル「α7 IV」の国内発売を正式に発表した。ボディ単体は2021年12月17日の発売が予定されている(レンズキットは2022年春以降の発売予定)。“無印α7”シリーズの4世代目で、静止画撮影と動画撮影の両方で大きな進化を遂げている注目モデルだ。本記事では、短い時間ではあるが発売前の「α7 IV」のベータ機に触れることができたので、ファーストインプレッションをお届けしよう。

国内発売が発表された「α7 IV」。ボディ単体は12月17日の発売予定

国内発売が発表された「α7 IV」。ボディ単体は12月17日の発売予定

静止画と動画のハイブリッドを狙った、進化した“ベーシックモデル”

「α7 IV」のコンセプトや主な特徴は、海外発表時に公開したニュース記事で紹介しているため、詳細はそちらをご覧いただきたい。主なスペックについては以下に簡単にまとめておく。

「α7 IV」の主なスペック
・新開発の有効約3300万画素・裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサー
・最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」
・感度(静止画):ISO100〜51200(拡張設定で下限ISO50まで、上限ISO204800まで)
・全10種類の仕上がり設定「クリエイティブルック」
・10bitのHEIF形式の記録に対応。RAWは圧縮RAW、非圧縮RAW、ロスレス圧縮RAWに対応
・759点(位相差AF)/ 425点(コントラストAF)の「ファストハイブリッドAF」
・人物/動物/鳥の「リアルタイム瞳AF」(静止画、動画とも対応)
・AF低輝度限界:-4EV(F2.0レンズ使用)
・5.5段分の補正効果を持つボディ内5軸手ブレ補正
・連写速度:最高約10コマ/秒
・バリアングル式の3.0型タッチパネル液晶モニター(約103万ドット)
・約368万ドットの電子ビューファインダー(倍率は0.78倍、120fps表示対応)
・CFexpress Type A(SLOT1)対応のデュアルカードスロット
・Super 35mm(APS-Cサイズ)での4K/60p動画記録に対応
・10bit 4:2:2サンプリングでの4K記録が可能
・より強力に手ブレを補正する動画撮影用の「アクティブモード」
・ブリージング補正、「フォーカスマップ」など動画撮影用の新機能
・4K/15pやフルHD/60pなどに対応するライブストリーミング機能

「α7 IV」は、従来モデル「α7 III」と同様、 ソニーの中ではフルサイズミラーレスの“ベーシックモデル”に位置付けられている。新開発の有効約3300万画素センサーを採用したほか、進化したAFシステム、充実した動画撮影機能などを搭載し、ソニーは、静止画撮影と動画撮影の両方で高いレベルを実現したハイブリッドモデルであることをアピールしている。

「α7 III」ではチルト式だった液晶モニターは、横開きのバリアングル式に変更になった。好みの分かれるところだが、動画撮影を行うならバリアングル式のほうが便利なのは間違いない。また、液晶画面が横3:縦2表示になったのも変更点だ

「α7 III」ではチルト式だった液晶モニターは、横開きのバリアングル式に変更になった。好みの分かれるところだが、動画撮影を行うならバリアングル式のほうが便利なのは間違いない。また、液晶画面が横3:縦2表示になったのも変更点だ

グリップのホールド感が向上。EVFも見やすく進化

ここからは、「α7 IV」のベータ機に触れてみての印象をいくつかレポートする。

まず、「α7 III」から大きく変更になった操作性について紹介しよう。液晶モニターがチルト式からバリアングル式になったのがわかりやすいトピックだが、これ以外にも多くの改善が見られる。

大きなところではグリップの形状が変更になり、従来よりも握りやすくなった。「α7シリーズ」は世代を重ねるごとにグリップを見直しており、「α7 IV」は最新世代らしく、より大きくて深い形状になっている。グリップとレンズのクリアランスが改善されたわけではないものの、フィット感がよく、それほど指に力を入れなくてもしっかりとホールドできる印象。筆者の場合、「α7 III」を長時間ホールドしていると中指や薬指が痛くなることがあったが、「α7 IV」では解消されているように感じた。

より大きくて深い形状になったグリップ。従来モデル以上にしっかりと握ることができる

より大きくて深い形状になったグリップ。従来モデル以上にしっかりと握ることができる

電子ビューファインダー(EVF)は、解像度が約236万ドットから約368万ドットに向上。倍率は0.78倍で「α7 III」と変わらないが、120fps表示に対応しており、より滑らかな表示が可能となっている。実際の見えもよくなっており、「α7 III」ではチラつきがやや目立つことがあったが、「α7 IV」では改善。最新のフルサイズミラーレスとして着実な進歩が見られると感じた次第だ。

120fps表示対応で約368万ドットのEVFを採用。ボタン類はより大きく押しやすい形状になった

120fps表示対応で約368万ドットのEVFを採用。ボタン類はより大きく押しやすい形状になった

従来モデルの露出補正ダイヤルが汎用的なダイヤルになったのも操作性の変更点で、ダイヤルには好みの機能を割り当てられるようになっている。カスタムキー/ダイヤル設定は静止画撮影と動画撮影で別々に登録できるうえ、Mモードとその他モードでダイヤル/ホイールの機能を分けられるのも便利なところだ。

上面右端にあった露出補正ダイヤルは汎用ダイヤルになり、機能を割り当てられるようになった

上面右端にあった露出補正ダイヤルは汎用ダイヤルになり、機能を割り当てられるようになった

カスタムキー/ダイヤル設定は静止画撮影と動画撮影で個別に登録できる

カスタムキー/ダイヤル設定は静止画撮影と動画撮影で個別に登録できる

ダイヤル/ホイールの設定画面。Mモードとその他モードを分けて設定できる

ダイヤル/ホイールの設定画面。Mモードとその他モードを分けて設定できる

モードダイヤルと同軸の位置に、静止画撮影/動画撮影/S&Qを切り替えられる専用ダイヤルを新たに搭載

モードダイヤルと同軸の位置に、静止画撮影/動画撮影/S&Qを切り替えられる専用ダイヤルを新たに搭載

上位モデルから細かい機能性を継承。「αシリーズ」初の「フォーカスマップ」なども搭載

「α7 III」ユーザーの目線で見ると、「α7 IV」は、上位モデルのいいところを取り入れることで機能性も大幅に向上している。

細かい改善は多岐にわたるが、うれしいのは、「α1」などと同様、電源オフ時にシャッターを閉じられるようになったこと。「α7 III」ではセンサーへのゴミの付着に悩まされることもあるので、少しでも付着を防げるようになったのはありがたい。

「電源OFF時のシャッター」の設定を「入」にすることで、電源をオフにするとシャッターが閉じるようになる

「電源OFF時のシャッター」の設定を「入」にすることで、電源をオフにするとシャッターが閉じるようになる

待望の機能追加となるのが、ロスレス圧縮RAW記録への対応だ。残念ながら、RAW記録で最高約10コマ/秒の連写が可能なのは圧縮RAW時で、ロスレス圧縮RAWならびに非圧縮RAWだと速度が低下するものの(※非圧縮RAW時で最高約6コマ/秒)、画質劣化が少なく高い圧縮率でRAW記録ができるようになったのはポイントが高い。また、CFexpress Type Aカード使用時の連写の持続性の高さも特筆すべき点だ。最大撮影可能枚数は、ほとんどの記録モードにおいて1000枚以上で、特にJPEG記録時は「ほぼ無限」の連写が可能となっている。

CFexpress Type A/SD(UHS-II)カード対応のSLOT1、SD(UHS-II)カード対応のSLOT2のデュアルカードスロットを採用

CFexpress Type A/SD(UHS-II)カード対応のSLOT1、SD(UHS-II)カード対応のSLOT2のデュアルカードスロットを採用

このほか、「α1」と同じく、より柔軟性の高い記録メディアの振り分け設定が可能なのも押さえておきたいポイント。振り分け記録時に、2つのカードスロットに対して、ファイル形式、RAW記録方式、JPEG画質、JPEGサイズを細かく設定できるようになった。たとえば、RAW+JPEG記録を活用するハイアマチュアユーザーだと、「撮影後にRAW現像で仕上げるのでJPEGは確認用のサムネイルとして記録できればよい」という人も少なくないと思うが、この場合、より高速なCFexpress Type Aカード対応のSLOT1はRAW記録に、SLOT2はJPEG記録の「LIGHT」画質に設定することで、よりレスポンスよく撮影し、写真の選定もスムーズに行えるようになる。

デュアルカードスロットへの振り分け記録を細かく設定することが可能。JPEG記録は、よりデータ量の少ない「LIGHT」を選択できるようになった

デュアルカードスロットへの振り分け記録を細かく設定することが可能。JPEG記録は、よりデータ量の少ない「LIGHT」を選択できるようになった

動画撮影機能も大幅に強化されているが、機能面で便利そうだと感じたのが、被写界深度を可視化する「フォーカスマップ」機能だ。この機能を使うと、動画撮影時の画面上で被写界深度外の前方を赤色、後方を青色で表示してくれる。MFでのフォーカス送りなどで活用できる機能だ。ブリージング補正機能と同様、「αシリーズ」としては初搭載となっている。

「フォーカスマップ」を利用している画面。被写界深度外の前方は赤色、後方は青色で表示される

「フォーカスマップ」を利用している画面。被写界深度外の前方は赤色、後方は青色で表示される

ボディ左側面のインターフェイス類。HDMI端子が標準サイズのタイプAになった

ボディ左側面のインターフェイス類。HDMI端子が標準サイズのタイプAになった

ショルダーストラップ取り付け部は、動画撮影に配慮して、カメラに当たって音が出ない形状になっている

ショルダーストラップ取り付け部は、動画撮影に配慮して、カメラに当たって音が出ない形状になっている

まとめ 静止画撮影メインでも「α7 III」から買い替える価値のあるモデル

従来モデルの「α7 III」は、フルサイズミラーレスのスタンダードモデルとしては非常に完成度の高いカメラだ。さすがに最新モデルと比べると分が悪いところがあるものの、発売から3年半以上が経過した現在でも、静止画撮影については十分な性能を持っていると言える。そのため、「α7 IVへの買い替えは見送る」と考えている「α7 III」ユーザーもいることだろう。

筆者もそう考えている(いた)ひとりだが、今回短い時間ではあるが「α7 IV」に触れてみて、考えが変わった。グリップの形状や細かい機能性など、スペックではわからない部分で、「α7 III」で気になるところを潰している印象で、使い勝手が大幅によくなっているのだ。「α7 III」ユーザーだからこそわかる進化を遂げており、静止画撮影メインのユーザーであっても、「α7 III」から買い替える価値のあるモデルだと感じている。

「α7 IV」の市場想定価格は、ボディ単体が330,000円前後、標準ズームレンズ「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」付属のレンズキットが350,000円前後(いずれも税込)。「α7 III」の発売登場と比べると8万円ほど高くなっているが、性能・機能の向上を考慮すると妥当な価格設定ではないだろうか。ボディ単体は2021年12月17日の発売が予定されている。レンズキットについては現時点では発売時期は未定で、2022年春以降になるとアナウンスされている。

なお、今回の試用では細かいところを試せなかったためAFについては触れなかったが、従来モデルから大幅な進化を遂げているのは間違いのないところ。後日公開予定の、製品版のレビューで詳しく紹介する予定だ。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。

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