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ニコン「Z 9」の進化が止まらない! ファームウェアVer.3.00の新機能を全チェック

ニコンは2022年10月25日、同社一眼カメラのフラッグシップモデル「Z 9」の最新ファームウェアVer3.00を公開した。2022年4月20日公開のVer2.00に続く2回目のメジャーアップデートだ。静止画撮影や動画撮影、AF、操作性の全方位で、さらなる進化を遂げている。その内容を詳しく紹介しよう。

圧倒的な高性能を誇る、ニコンのフラッグシップモデル「Z 9」

圧倒的な高性能を誇る、ニコンのフラッグシップモデル「Z 9」

ファームウェアアップデートでポテンシャルを引き出す

「Z 9」は、9種類の多彩な被写体検出機能や、最高約20コマ/秒の高速連写、約11MP時で最高約120コマ/秒の超高速連写、最長125分の8K UHD/30p動画記録など、ニコン史上最強の性能を持つフルサイズミラーレスだ。

カメラとして革新的なのは、高速読み出しが可能な有効4571万画素の積層型CMOSセンサーと、従来比で約10倍の高速処理性能を持つ画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載しつつ、メカシャッターレス構造を採用したこと。これによって圧倒的なハイスペックを実現しているのである。

積層型CMOSセンサーと画像処理エンジン「EXPEED 7」の組み合わせで高速処理を実現

積層型CMOSセンサーと画像処理エンジン「EXPEED 7」の組み合わせで高速処理を実現

「Z 9」のハードウェアは非常に性能が高く、2021年12月の発売当初から、「ハードウェアの性能にまだまだ余裕がある」と言われていた。発売時点では、ポテンシャルをすべて発揮していたわけではないのだ。

事実、最初の大型アップデートなったファームウェアVer.2.00では、シャッターボタンを全押しから最大1秒間さかのぼって記録できる「プリキャプチャ」や、ファインダーの120fps高速表示、8.3K/60pなどのカメラ内RAW動画記録、8Kオーバーサンプリングによる4K UHD/60p動画記録など大幅な機能強化を実現。その後も、Ver2.10で静止画撮影の「高周波フリッカー低減」機能を実装した。ユーザーの声を拾う形で細かい操作設定も改善しており、発売当初からは別モノと言っても大げさではないくらいの進化を遂げている。

そして今回、2回目のメジャーアップデートとなるファームウェアVer3.00が公開された。今回も、細かい点を含めると、その進化点・改善点は多岐にわたる。「そこまでやるか」と思うくらいの充実した内容だ。

以下に、「静止画撮影」「動画撮影」「AF」「操作性」の4つに分けて、ファームウェアVer3.00の進化点・改善点をまとめよう。ニコンファンや「Z 9」ユーザーでなくても、その内容をチェックしておいて損はないはずだ。

Ver3.00の進化点・改善点 静止画撮影

「ハイスピードフレームキャプチャ+」に約60コマ/秒設定を追加

JPEG記録の超高速連写機能「ハイスピードフレームキャプチャ+」に、DXフォーマットでの約60コマ/秒連写設定[C60]が追加された。この設定は、約30コマ/秒設定の[C30]以上の高速連写が可能で、常に被写体の動きが表示・更新される「Real-live Viewfinder」の60fps表示とマッチするのがポイント。[C30]よりも滑らかなファインダー表示で被写体を追うことができる。

約60コマ/秒設定の[C60]を追加

約60コマ/秒設定の[C60]を追加

[C60]の追加により、「ハイスピードフレームキャプチャ+」は以下の3つの設定を選択できるようになった。

・[C120] 約120コマ/秒連写、撮像範囲FX、画像モード:NORMAL、画像サイズ:S
・[C60] 約60コマ/秒連写、撮像範囲DX、画像モード:NORMAL、画像サイズ:L
・[C30] 約30コマ/秒連写、撮像範囲FX/DX、画像モード:NORMAL、画像サイズ:L

なお、[C60]は「プリキャプチャ」機能でも利用可能で、カスタムメニューd4の「C30/
C120記録設定」は、名称が「プリキャプチャ記録設定」に変更された。また、[C120]に選択しているときにDXレンズを装着した場合、従来は自動的に[C30]が設定されたが、Ver3.00では[C60]に変更されている。

連写画像のグループ再生設定

連写画像をグループとして扱う機能が強化され、再生メニューに「グループ再生の設定」が追加された。以下の3つの機能を設定できる。

サブセレクターで先頭画像表示
サブセレクターの左右操作で各グループの先頭画像のみを選択・表示し、上下操作でグループ内の画像を順次表示する機能

自動連続再生
グループ内の画像を自動で連続再生する機能

サムネイルのグループ表示
サムネイル表示をグループ化する機能

よりスピーディーな画像確認と一括操作が行えるように、グループ再生機能が強化された

よりスピーディーな画像確認と一括操作が行えるように、グループ再生機能が強化された

高周波フリッカー低減の改善

従来バージョンではカスタムボタンにのみ割り当てることができた「高周波フリッカー低減」が、静止画撮影メニューに追加された。

静止画撮影メニューに「高周波フリッカー低減」を追加

静止画撮影メニューに「高周波フリッカー低減」を追加

あわせて、カスタムメニューb7「絞り値変化時の露出維持」で「ISO感度」を選んでいる場合にも、高周波フリッカー低減を併用可能に。ライブビューの拡大表示画面に、露出情報(シャッタースピード、絞り値、感度)を表示するようになったのも改善点で、フリッカーが出ないシャッタースピードを探すうえで拡大表示を便利に使えるようになった。

拡大表示画面に露出情報(シャッタースピード、絞り値、感度)が表示されるようになった

拡大表示画面に露出情報(シャッタースピード、絞り値、感度)が表示されるようになった

Ver3.00の進化点・改善点 動画撮影

「ハイレゾズーム」の追加

動画撮影の新機能として、レンズの望遠端を超えるズーミングが可能な「ハイレゾズーム」が追加された。4K動画撮影時には4Kの解像感を保ったまま最大2倍のズーミングに対応する。

動画撮影メニューに新機能「ハイレゾズーム」を追加

動画撮影メニューに新機能「ハイレゾズーム」を追加

カスタムメニューg8「ハイレゾズーム速度」で3段階のズーム速度設定が可能

カスタムメニューg8「ハイレゾズーム速度」で3段階のズーム速度設定が可能

この機能は、電子ズームやクロップとは異なり、解像感が落ちないのがポイント。滑らかな動きのズーム動作で、ズーム速度は「高速」、「中速」(初期設定)、「低速」の3段階から選択できる。ズーム操作はマルチセレクターか、機能を割り当てたボタン/リングで行える。

「ハイレゾズーム」が利用できる条件は以下のとおり。

・撮像範囲設定:FX
・動画記録ファイル形式:ProRes 422 HQ10-bit(MOV)、H.265 10-bit(MOV)、H.265 8-bit
(MOV)、H.264 8-bit(MP4) ※RAW動画は無効
・動画サイズ/フレームレート:3840×2160/30p〜24p、1920×1080/120p〜24p
※このほか、「ハイレゾズーム」利用時は電子手ブレがオフに、AFエリアモードは「ワイドエリアAF(L)」に設定される

「ハイレゾズーム」のズームイン/ズームアウトを使って撮影した動画。「高速」「中速」「低速」の3段階のズーム速度設定を試している。使用したレンズは「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」

動画撮影時の高周波フリッカー低減に対応

従来は静止画撮影時のみの機能だった「高周波フリッカー低減」が、動画撮影時にも利用できるようになった。静止画撮影と同様、動画撮影メニューの1機能として追加されている。

動画撮影メニューに「高周波フリッカー低減」を追加

動画撮影メニューに「高周波フリッカー低減」を追加

リモコンによるタイムコードの同期機能の追加

動画撮影メニュー「タイムコード」「タイムコードの起点」に「リモコンからのリセット」を追加。この機能を使えば、別売オプションのリモコン「WR-T10」を用いて、複数台の「Z 9」のタイムコードを一致させられる。

「UltraSync BLUE」に対応

ネットワークメニューに「ATOMOS AirGluBT設定」を追加。Bluetooth経由で複数のデバイスとタイムコードを同期できる、Atomos社のアクセサリー「UltraSync BLUE」の利用に対応する。ミラーレスカメラとしては初対応だ。

Ver3.00の進化点・改善点 オートフォーカス

AF低輝度限界が0.5EV向上

-6.5EV(スターライトビュー有効時:-8.5EV)だったAFの低輝度限界が、ファームウェアVer.3.00では、-7EV(スターライトビュー有効時:-9EV)に向上した。

AF精度の向上

低輝度下や低コントラスト時など幅広いシーンでAF精度が向上。暗いシーンでのAFのバラツキを低減している。

背景張り付きの改善

ファームウェアVer.2.10でも対応した、ピントが背景に張り付いて戻らない現象をさらに改善。「3D-トラッキング」設定時、オートエリアAF/ワイドエリアAF設定時(人物、動物、乗り物を検出している場合)の動作を見直している。

「3D-トラッキング」使用時の横切り被写体に対するピント乗り移り対策

「3D-トラッキング」使用時に、被写体の手前を横切る障害物に対してピントが移動しにくくなった。

「3D-トラッキング」使用時の動物に対するAF追従性の向上

「3D-トラッキング」使用時に、被写体検出を「動物」に設定した際の被写体捕捉・追尾性能が向上している。

動画撮影時に「フリッカー低減」を設定している場合のAF低輝度性能の向上

AF露出制御の最適化により、AF低輝度性能が向上。改善された「動画フリッカー低減」と「画像サイズ/フレームレート」の設定は以下のとおり。

50Hz:4K/120p、4K/60p、2K/120p、2K/60p、2K/30p
60Hz:4K/100p、4K/50p、2K/100p、2K/50p、2K/25p、2K/24p

「3D-トラッキング」使用時のフォーカスポイント表示色の変更

カスタムメニューa11「フォーカスポイント表示」に「3D-トラッキング時の表示色」が追加された。「3D-トラッキング」のフォーカスポイントの色を「白」と「赤」から選べる。

「3D-トラッキング時の表示色」として「赤」を選択できるようになった

「3D-トラッキング時の表示色」として「赤」を選択できるようになった

Ver3.00の進化点・改善点 操作性

カスタムボタンの追加・機能拡充

カスタムボタンとして機能する操作系に、DISPボタン、感度ボタン、露出補正ボタン、動画撮影ボタン、縦位置感度ボタンが追加された。ボタンに割り当てられる機能も拡充され、「FX/DX切り換え」「静止画フリッカー低減」「リモートカメラの優先接続」「ライブビュー情報表示の切り換え」などを選択できるようになった。

DISPボタンなどがカスタムボタンとして設定可能に

DISPボタンなどがカスタムボタンとして設定可能に

割り当てられる機能に、ボタンを押すとFXとDXで撮像範囲を切り替える「FX/DX切り換え」などを追加

割り当てられる機能に、ボタンを押すとFXとDXで撮像範囲を切り替える「FX/DX切り換え」などを追加

ビューモード「撮影設定を優先」にフラッシュ使用時の設定を追加

カスタムメニューd9「ビューモード設定(静止画Lv)」の「撮影設定を優先」に、「フラッシュ使用時を含む」と「フラッシュ使用時を含まない」の設定が追加され、スピードライト使用時に撮影設定反映動作を維持するか、維持しないかを選べるようになった。

スピードライト使用時の動作を選択できるように、「撮影設定を優先」の機能が改善された

スピードライト使用時の動作を選択できるように、「撮影設定を優先」の機能が改善された

「フラッシュ使用時を含む」を選ぶと、スピードライトが発光可能な状態でも色味や露出などの撮影設定をライブビューに反映する。フラッシュの影響を受けない背景に露出を合わせたい場合などに便利な設定だ。

「フラッシュ使用時を含まない」を選ぶと、フラッシュが発光可能な状態では撮影設定を反映せず、見やすい明るさでライブビューを表示する。

撮影タイミング表示「Type A」への自動切り替え設定の追加

カスタムメニューd14「撮影タイミング表示」に、「Type A自動切り換え秒時」を追加。この項目は、1/200〜1/6秒の間で設定した値よりもシャッタースピードが遅くなった場合に、撮影タイミングの表示方法を自動的に「Type A」(※シャッターが切れたときに画面を暗くする設定)に切り替えるというもの。低速シャッタースピードで流し撮りをする際に、レリーズタイミングであえて画面を暗くすることで、被写体を追いやすくするのが狙いだ。

低速シャッタースピードでの流し撮り時に便利な「Type A自動切り換え秒時」を追加

低速シャッタースピードでの流し撮り時に便利な「Type A自動切り換え秒時」を追加

「画像サイズ(DX)」の追加

静止画撮影メニューの「画像サイズ」を「画像サイズ設定」に変更し、「画像サイズ(DX)の適用」と「画像サイズ(DX)」を項目に追加。これによって、撮像範囲にDXを選択したときの画像サイズを個別に設定できるようになった。たとえば、FXはサイズM(25.6M)、DXはサイズL(19.4M)といった運用が可能だ。

DX選択時の画像サイズを個別に設定できるようになった

DX選択時の画像サイズを個別に設定できるようになった

従来の「ファインダー優先」の動作を再設定

モニターモードの「ファインダー優先」が、顔を近付けたときにだけファインダーが点灯する「ファインダー優先1」と、電源オン時やシャッターボタン半押し時などにもファインダーが数秒間点灯する「ファインダー優先2」から選べるようになった。これは、ファームウェアVer.2.00で動作を変更した「ファインダー優先」を「ファインダー優先2」とし、従来の動作を「ファインダー優先1」に再設定したものになる。

フォーカスシフト撮影に「フォーカス位置の自動リセット」を追加

フォーカスシフトの撮影終了時に、撮影開始時のフォーカス位置に戻す「フォーカス位置の自動リセット」が追加された。

フォーカスシフト撮影の項目に「フォーカス位置の自動リセット」を追加

フォーカスシフト撮影の項目に「フォーカス位置の自動リセット」を追加

このほか、ファームウェアVer.3.00では以下の内容も更新されている。

・CFexpressカードの物理フォーマットに対応
・再生モード時の「縦位置情報表示」に対応
・再生情報表示の改善(新たに「ファイル情報」を追加)
・「モニターの明るさ」に設定拡張(Lo 1、Lo 2、Hi 1、Hi 2)を追加
・ホワイトバランス「プリセットマニュアル」で撮影した画像の再生時に色温度表示を追加
・撮影画面カスタマイズに「中央部重点測光範囲」を追加
・MF以外のフォーカスモードでのフォーカスピーキング、フォーカスエイド、フォーカス距離指標の表示に対応。フォーカス距離指標の表示時間の変更
・静止画撮影のサイレントモード時、ならびに動画撮影時のMFの応答性の向上
・連動レリーズ接続時に撮影画面に状態を表示する機能を追加。「ネットワークメニュー」の「カメラと接続」の「リモートカメラリスト」内の表示の改善
・FTPサーバー接続時に撮影画面に状態を表示する機能を追加
・FTPSプロトコルに対応

カスタムメニューd18「撮影画面カスタマイズ(画像モニター)」とd19「撮影画面カスタマイズ(ファインダー)」で画面に表示する項目として「中央部重点測光範囲」が追加された

カスタムメニューd18「撮影画面カスタマイズ(画像モニター)」とd19「撮影画面カスタマイズ(ファインダー)」で画面に表示する項目として「中央部重点測光範囲」が追加された

まとめ 進化し続ける最高性能モデル。今後のファームウェアアップデートにも期待

「Z 9」のファームウェアVer.3.00は、「ハイスピードフレームキャプチャ+」の約60コマ/秒設定や、動画撮影時の「ハイレゾズーム」などが大きな進化点。従来の「ファインダー優先」の動作を再設定するなど、ユーザーの使いやすいと判断する機能を積極的に取り入れているのも特徴だ。

発売から約1年が経過しても、「Z 9」は、フルサイズミラーレスとして最高性能を誇る1台であることは変わらない。ファームウェアVer.3.00でさらに進化した本モデルを手に入れて、最先端の機能を存分に味わってほしい。

なお、ニコンによると、「Z 9」については今後もファームウェアアップデートを計画しているとのこと。まだ進化する余地を残しているのがすごい。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。

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