レビュー

ソニー「α6700」実力診断 これならフルサイズでなくてもいい?

ソニー「α6700」は、APS-Cサイズの撮像素子を採用するミラーレスカメラの上位モデル。2023年7月28日の発売以降、高い人気をキープしており、9月4日時点での価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングは3位だ。実際に使ってみて、その人気の理由を探った。

「αシリーズ」の最新技術を多数搭載する「α6700」。APS-Cミラーレスらしくボディはコンパクトだ。そのサイズは約122(幅)×69.0(高さ)×75.1(奥行)mmで、重量は約493g(バッテリーとメモリーカードを含む)

「αシリーズ」の最新技術を多数搭載する「α6700」。APS-Cミラーレスらしくボディはコンパクトだ。そのサイズは約122(幅)×69.0(高さ)×75.1(奥行)mmで、重量は約493g(バッテリーとメモリーカードを含む)

APS-Cミラーレスとして最高峰のAFを実現

「α6700」は、裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサー(有効画素数:最大約2600万画素)と画像処理エンジン「BIONZ XR」に加えて、最新のフルサイズミラーレス譲りの機能をいくつも搭載し、全方位で進化している。

そのなかで、実際に使ってみて最もインパクトを感じたのがAFの進化。高画素フルサイズミラーレス「α7R V」などに採用された「AIプロセッシングユニット」によって、被写体認識AFの使い勝手が大きく向上している。

以下に掲載する動画は、ダンスを踊る人物と、素早く移動する小動物(プレーリードッグ)に対して「α6700」の被写体認識AFが動作する様子を記録したもの。一度とらえた被写体を粘り強く追尾していることがわかるはずだ。

人物はカメラまかせのAFで撮影。小動物(プレーリードッグ)は、追尾する被写体を画面上で指定する「リアルタイムトラッキング」を働かせている。いずれも、素早く動く被写体に対して、瞳や胴体を認識しながらピントを合わせて続けていることがわかる

被写体認識の精度・追従性は「α7R V」と比べてもそん色ない印象。2023年9月4日時点で、APS-Cミラーレスとして最高性能のAFを搭載するカメラのひとつと言っていいだろう。

認識できる被写体は、「人物」「動物/鳥」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」の計7種類

認識できる被写体は、「人物」「動物/鳥」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」の計7種類

被写体ごとにトラッキング時の乗り移り範囲や維持特性、認識感度、認識部位を細かく設定できる(内容は被写体によって異なる)

被写体ごとにトラッキング時の乗り移り範囲や維持特性、認識感度、認識部位を細かく設定できる(内容は被写体によって異なる)

選択できる被写体を制限する「認識対象切換設定」という機能が用意されている。この機能をうまく活用することで、ボタン/ダイヤル操作時にスムーズに被写体認識の設定を変更できる

選択できる被写体を制限する「認識対象切換設定」という機能が用意されている。この機能をうまく活用することで、ボタン/ダイヤル操作時にスムーズに被写体認識の設定を変更できる

動体撮影の観点で少し気になったのが連写速度。積層型センサーではないため、連写性能は最高約11コマ/秒に抑えられている。他メーカーでは電子シャッター時に最高で約40コマ〜30コマ/秒の超高速連写に対応するモデルがあるので、比べるとスピードは物足りない。

ただし、UHS-II対応のSDメモリーカードスロットを採用したことで、JPEGのLサイズ/エクストラファインで143枚、Lサイズ/ファインで1000枚以上の連写が可能。Lサイズ/エクストラファインでも約13秒連写が持続するので、JPEG撮影であれば実用的には十分に動体撮影に対応できると言える。

ドライブモードがHi+時に最高約11コマ/秒の連写が可能

ドライブモードがHi+時に最高約11コマ/秒の連写が可能

AF撮影中にフォーカスリング操作で一時的にMFに切り替えられる「フルタイムDMF」にも対応するようになった

AF撮影中にフォーカスリング操作で一時的にMFに切り替えられる「フルタイムDMF」にも対応するようになった

明るく見やすいファインダーに改善。グリップやダイヤルの操作性も向上

「α6700」は操作性もかなりよくなっている。

特によくなったと感じたのが電子ビューファインダー(EVF)だ。約236万ドットで倍率約1.07倍(35 mm判換算約0.70倍)というスペックは従来モデルと変わらないが、輝度が2倍に向上したことで、明るくクリアな見え方に。光学系では、「αシリーズ」のフルサイズミラーレスと同様、ツァイス「T*(ティースター)コーティング」を採用するようになった。

輝度が2倍に向上したファインダーを採用

輝度が2倍に向上したファインダーを採用

従来の「α6000シリーズ」と比べて厚みのあるグリップになり、ホールディング性が改善されたのもポイントだ。

今回、新しい望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」を使って撮影してみたが、それほど力を入れてカメラをホールドしなくても、安定した構えでシャッターを切ることができた。小型ボディだが、ある程度大きなレンズを装着した場合でも撮影しやすいカメラだと思う。

より深く握れるようになったグリップ

より深く握れるようになったグリップ

新しい望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」を装着してもしっかりとしたホールド感が得られた

新しい望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」を装着してもしっかりとしたホールド感が得られた

細かい操作性では、従来モデルにはなかった前ダイヤルを搭載したのがトピック。前後ダイヤルと背面のコントロールホイールの、計3つの操作系を使って、絞り値/シャッタースピード/感度/露出補正といった露出に関係する値をダイレクトに調整できるようになったのが便利だ(※それ以外の機能も割り当てられる)。

前ダイヤルを新たに搭載

前ダイヤルを新たに搭載

ダイヤル・ホイール系の操作が3つになり、露出を決定する操作の自由度が上がった。この画面では、前ダイヤルに露出補正、後ダイヤルに絞り値/シャッタースピード、コントロールホイールに感度を割り当てている

ダイヤル・ホイール系の操作が3つになり、露出を決定する操作の自由度が上がった。この画面では、前ダイヤルに露出補正、後ダイヤルに絞り値/シャッタースピード、コントロールホイールに感度を割り当てている

操作性ではもうひとつ、静止画撮影/動画撮影/S&Qモードの切り替えがダイヤルになったのも見逃せない。しかも、静止画撮影と動画撮影で絞り値やシャッタースピードなどの設定値を別々にできるので、静止画と動画を切り替えながらの撮影がとてもスムーズに行えるようになった。静止画/動画のハイブリッド機として使いたい人にとってこの機能はとてもありがたい。

静止画撮影/動画撮影/S&Qモードを切り替えられるダイヤルを新設

静止画撮影/動画撮影/S&Qモードを切り替えられるダイヤルを新設

静止画撮影と動画撮影で設定を独立させることが可能。独立できる項目として、絞り値、シャッタースピード、感度、露出補正、測光モード、ホワイトバランス、ピクチャープロファイル、フォーカスモードを選択できる

静止画撮影と動画撮影で設定を独立させることが可能。独立できる項目として、絞り値、シャッタースピード、感度、露出補正、測光モード、ホワイトバランス、ピクチャープロファイル、フォーカスモードを選択できる

「αシリーズ」のほかの最新モデルと同じ撮影画面を採用。ドライブモード、フォーカスエリア、ホワイトバランスなどタッチ操作で選択できるアイコンも用意されている

「αシリーズ」のほかの最新モデルと同じ撮影画面を採用。ドライブモード、フォーカスエリア、ホワイトバランスなどタッチ操作で選択できるアイコンも用意されている

背面モニターは、タッチパネル対応の3.0型バリアングル液晶(約103万ドット)

背面モニターは、タッチパネル対応の3.0型バリアングル液晶(約103万ドット)

インターフェイスとして、HDMIマイクロ端子(タイプD)、USB Type-C端子(USB 3.2 Gen1対応)、ヘッドホン端子、マイク端子を搭載。USB端子はUSB PDによる高速充電に対応している。記録メディアはUHS-II対応のSDメモリーカードでシングルスロット仕様

インターフェイスとして、HDMIマイクロ端子(タイプD)、USB Type-C端子(USB 3.2 Gen1対応)、ヘッドホン端子、マイク端子を搭載。USB端子はUSB PDによる高速充電に対応している。記録メディアはUHS-II対応のSDメモリーカードでシングルスロット仕様

仕上がり設定は最新の「クリエイティブルック」に変更されている

仕上がり設定は最新の「クリエイティブルック」に変更されている

4K/60p、4K/120pに対応するなど動画撮影も充実

「α6700」は動画撮影機能も向上。4K動画撮影機として、ひと通りの機能性を搭載するようになった。

全画素読み出しの6Kオーバーサンプリングでの4K/60p記録に対応するうえ、約38%画角がクロップされるものの4K/120p記録も可能。「S&Qモード」では4Kで最大5倍のスローモーション映像の記録が行える。

4Kでも最高120fpsに対応。24p記録時は5倍のスローモーション効果が得られる

4Kでも最高120fpsに対応。24p記録時は5倍のスローモーション効果が得られる

さらに、動画撮影専用の強力な手ブレ補正「アクティブモード」にも対応。画角が少し狭くなるのと、カメラ本体とレンズが協調することでより大きなブレを補正できる。協調制御には非対応なものの、歩き撮り時などに威力を発揮するモードだ。

豊かな中間色と自然な肌色が特徴のルック「S-Cinetone」も利用できる

豊かな中間色と自然な肌色が特徴のルック「S-Cinetone」も利用できる

対応レンズ使用時にフォーカス移動による画角変動を抑える「ブリージング補正」に対応

対応レンズ使用時にフォーカス移動による画角変動を抑える「ブリージング補正」に対応

動画撮影で1点注意したいのは、コンパクトボディのため致し方ないのだが、4K動画撮影時にボディが熱を持ってしまって10〜15分くらいで本体の電源が切れてしまうこと(※電源が切れる時間は気温にも左右されます)。これを防ぐには、「自動電源オフ温度」という設定を「高」にしておこう。こうすることで、ボディの温度が高くなっても動画を継続して撮ることができる。

ちなみに、「自動電源オフ温度」を「高」にすると、連続動画撮影時間はHD記録時で約120分 4K記録時で約30分に延びる。

動画を撮影する機会が多いなら「自動電源オフ温度」は「高」に設定しておこう

動画を撮影する機会が多いなら「自動電源オフ温度」は「高」に設定しておこう

実写作例

α6700、FE 70-200mm F4 Macro G OSS II、200mm(35mm判換算300mm相当)、F4、1/640秒、ISO2500、+0.7EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:Lv5、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)撮影写真(6192×4128、15.3MB)

α6700、FE 70-200mm F4 Macro G OSS II、200mm(35mm判換算300mm相当)、F4、1/640秒、ISO2500、+0.7EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:Lv5、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)
撮影写真(6192×4128、15.3MB)

α6700、FE 70-200mm F4 Macro G OSS II+SEL20TC(2倍テレコンバーター)、400mm(35mm判換算600mm相当)、F8、1/200秒、ISO4000、+0.7EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:Lv5、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)撮影写真(6192×4128、14.5MB)

α6700、FE 70-200mm F4 Macro G OSS II+SEL20TC(2倍テレコンバーター)、400mm(35mm判換算600mm相当)、F8、1/200秒、ISO4000、+0.7EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:Lv5、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)
撮影写真(6192×4128、14.5MB)

α6700、FE 70-200mm F4 Macro G OSS II、200mm(35mm判換算300mm相当)、F4、1/800秒、ISO4000、+0.7EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:Lv5、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)撮影写真(6192×4128、17.2MB)

α6700、FE 70-200mm F4 Macro G OSS II、200mm(35mm判換算300mm相当)、F4、1/800秒、ISO4000、+0.7EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:Lv5、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)
撮影写真(6192×4128、17.2MB)

α6700、E 18-135mm F3.5-5.6 OSS、135mm(35mm判換算202.5mm相当)、F5.6、1/4000秒、ISO1600、+1.0EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)撮影写真(6192×4128、14.1MB)

α6700、E 18-135mm F3.5-5.6 OSS、135mm(35mm判換算202.5mm相当)、F5.6、1/4000秒、ISO1600、+1.0EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)
撮影写真(6192×4128、14.1MB)

α6700、E 11mm F1.8、11mm(35mm判換算16mm相当)、F16、1/100秒、ISO100、+1.0EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)撮影写真(6192×4128、19.1MB)

α6700、E 11mm F1.8、11mm(35mm判換算16mm相当)、F16、1/100秒、ISO100、+1.0EV、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG(エクストラファイン)
撮影写真(6192×4128、19.1MB)

まとめ フルサイズに代わる選択肢として注目してほしい存在

「α6700」は、2019年11月発売の従来モデル「α6600」から約4年が経過していることもあって、その進化は多岐にわたる。AFや動画撮影など、4年の間にフルサイズミラーレスで培ってきた技術が“全部入り”と言ってもいいくらい、惜しげもなく投入されており、「αシリーズ」のAPS-Cミラーレスとして間違いなくナンバーワンの完成度を誇っている。

特に印象に残ったのはやはりAFだ。被写体の食い付き・追従性ともに非常にハイレベルで、AFの基本的な性能は、「αシリーズ」の「α7R V」など最新のフルサイズミラーレスとそん色ない。

操作性で、AFフレームをダイレクトに移動できるマルチセレクターが背面に用意されていないのは残念だが、使っていて、それ以外にこれといった不満は感じなかった。本格的な動体撮影に対応できる高性能な一眼カメラを探しているけど、「フルサイズは少し重い」と感じている人に注目してほしいカメラである。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。

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