最新レンズなのにオールドテイストが楽しめる「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」。フルサイズ一眼レフカメラ「PENTAX K-1 Mark II/K-1」用の新しいカスタムイメージ「Gold」との相性も抜群です
リコーイメージングからワクワクする個性派レンズが発売されました。往年のオールドレンズで見られる虹色のフレアをKマウントのAFレンズで再現した「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」です。今回は、レトロな描写が楽しい本レンズの魅力をご紹介します。
「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」は、フィルムカメラ時代から30年の長きに渡って愛されてきた標準レンズの銘玉「smc PENTAX-FA 50mm F1.4」をベースに開発されています。
最大の特徴は、意図的に虹色フレアを発現させるチューニングが施されていること。
虹色フレアを発生させる条件は「逆光時の絞り開放」です。絞りをF2以上に絞ると虹色フレアは消えます。さらに絞り込むと、シャープな中に味わい深い余韻を感じさせるフィルムライクな写りに。円形絞りによって美しい玉ボケを楽しめるのも魅力で、1本でいろいろな描写を楽しめるのが面白いです。
「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」はコンパクトな設計で重量は約216g。レンズ構成は6群7枚。シンプルなフォーカスリングですが、しっかりとしたトルク感があるのでMF撮影時にストレスなくピント合わせに集中できます
現代のKマウントカメラでAFを使用できる点は、オールドレンズのような描写を備えた本レンズにとって非常に大きなアドバンテージです。シンプルでコンパクトなレンズ設計と、MF時のフォーカスリングの滑らかな動きは、他社のミラーレスカメラを使う人にも訴求できると思います。
「PENTAX K-1 Mark II/K-1」では、ボディ側でAFとMFの切り替えが行えます
なお、開放F1.4の大口径なので、日中に虹色フレアを楽しもうとして絞り開放にするとシャッタースピードが足りなくなる可能性があります。そのため、減光とともに撮影者の目を守り、カメラ内部の破損を防ぐために4段分のNDフィルター(ND16)が同梱されているのですが、これはうれしい気づかいですね。
左から「smc PENTAX-FA 50mm F1.4」、「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」、「HD PENTAX-FA 50mm F1.4」
リコーイメージングは、「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」の姉妹レンズとして、マルチコーティングを施した「HD PENTAX-FA 50mm F1.4」も発売しています。こちらは、“HD”の名称からもわかるように、コントラストが高くヌケのよい描写が特徴です。
両レンズの外観は共通していて、ベースとなる「smc PENTAX-FA 50mm F1.4」とほぼ同じです。フィルム一眼レフ時代のクラシカルなデザインを採用している点が、リコーイメージングのデジタル対応レンズの中では異色の存在と言えるかもしれませんね。
左から「smc PENTAX-FA 50mm F1.4」、「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」、「HD PENTAX-FA 50mm F1.4」。レンズを並べて撮影しているときに、コーティングの違いが色ではっきりとわかるのに驚きました
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/2000秒、+1.3EV、ISO100、カスタムイメージ:Gold
撮影写真(7360×4912、8.8MB)
「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」は、前項でも軽く触れましたが、逆光時の絞り開放で撮影した場合に虹色フレアが発生します。
虹色を帯びたリング状のフレアはとても美しく、目の前のシーンをより印象的に写してくれます。特に、日中に太陽をフレーミングした完全逆光条件で撮影するとより虹色がくっきりと写ります。逆光時は露出がアンダー目になるので、プラスに露出補正をするのが虹色フレアを引き立てるポイントです。
また、前述したとおり撮影者の目を保護する意味でもNDフィルターの使用をおすすめしますが、どうしてもピント合わせが難しい場合などはフィルターなしで撮影することも可能です。ただし、その場合に光学ファインダーで太陽などの強い光源を覗くのは危険ですので、太陽を正面からフレーミングするときなどはライブビューでの撮影を徹底してほしいと思います。
ちなみに、画面がクロップされるAPS-Cモデルのカメラの場合、虹色フレアが出にくい傾向があります。フルサイズ一眼レフ「PENTAX K-1 Mark II/K-1」で本領を発揮するレンズと言えるでしょう。
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/125秒、ISO400、+1EV、カスタムイメージ:リバーサルフィルム
手持ち花火でも虹色フレアが出現!
撮影写真(7360×4912、14.2MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/30秒、ISO100、+1EV、カスタムイメージ:Gold
撮影写真(7360×4912、10.3MB)
「Gold」は、「PENTAX K-1 Mark II/K-1」向けの新しいカスタムイメージです。その特徴は、「シャドー部が青みを帯び、ハイライト部に向かって黄色みを帯びていく色味」とのこと。
どこか遠い夏の記憶を想起させる「Gold」の世界を、「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」で撮り下ろした写真と動画でご覧ください。
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/60秒、ISO100、+1.3EV、カスタムイメージ:Gold
江の島のお土産物屋さんの店先に並んだ貝殻
撮影写真(7360×4912、9.0MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/400秒、ISO100、+0.3EV、カスタムイメージ:Gold
食品サンプルでも美味しそうな「きんめ鯛」の煮付け
撮影写真(7360×4912、10.1MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/1600秒、ISO100、+0.7EV、カスタムイメージ:Gold
ラブラブな鳩をこっそり隠し撮り
撮影写真(7360×4912、10.6MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/1000秒、ISO100、カスタムイメージ:Gold
撮影写真(7360×4912、10.3MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/200秒、ISO100、カスタムイメージ:Gold
海の家の土台に射し込む夕日がとてもきれいでした
撮影写真(7360×4912、13.0MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/6400秒、ISO100、+1.3EV、カスタムイメージ:Gold
自撮りに夢中な女子たちを虹色フレアに閉じ込めて
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/2500秒、ISO100、+1.7EV、カスタムイメージ:Gold
撮影写真(7360×4912、8.3MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/200秒、ISO100、+1EV、カスタムイメージ:Gold
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/125秒、ISO100、+1EV、カスタムイメージ:Gold
撮影写真(7360×4912、7.7MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/1000秒、ISO100、+3.3EV、カスタムイメージ:Gold
撮影写真(7360×4912、9.6MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/80秒、ISO100、+0.7EV、カスタムイメージ:Gold
母特製のシソジュース
撮影写真(7360×4912、8.2MB)
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、カスタムイメージ:Gold、iMovieで編集
フィルムを交換する感覚で画作りを変えられるペンタックスの「カスタムイメージ」は、最新の「Gold」以外にも魅力的なものがたくさんあります。パラメーターを変更することで自分だけのイメージを作り上げることも可能。今回使用した「Gold」は、2023年9月4日現在では「PENTAX K-1 Mark II/K-1」のみに対応していますが、ファームウェアのアップデートでほかのモデルにも搭載されることを期待したいですね
※2023年9月7日、ファームウェアアップデートで「PENTAX K-3 Mark III」と「PENTAX KF」に「Gold」が追加されました
PENTAX K-1 Mark II、smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic、F1.4、1/125秒、ISO400、+1.3EV、カスタムイメージ:Gold
撮影写真(7360×4912、14.1MB)
レンズの進化の過程で、フレアやゴーストは性能の良し悪しを判断する材料としてあまり好意的にとらえられることはなく、各カメラメーカーは、いかにフレア・ゴーストを抑えるかに心血を注いできました。
ですが、ユーザー目線で見たとき、このやわらかな光のリングは思い出のワンシーンにきらめきとトキメキをプラスしてくれる存在として、そばにいてほしい名脇役のような役目を持っているように思います。
「smc PENTAX-FA 50mm F1.4 Classic」は、特徴的な虹色フレアを際立たせるために、コーティングが調整されています。単にフレアを残すのではなく、オールドレンズでは補正しきれないオーバー気味の露出時のゴーストや色かぶりを抑えながら、虹色フレアの再現性を高めているという凝りようです。オールドレンズのような描写ながら、このレンズでしか味わえないような、きれいな虹色フレアが楽しめます。
そして、何と言ってもAFに対応しているのがポイントです。スナップ撮影を楽しむ人にとって非常に魅力的な、唯一無二のレンズと言えると思います。
また、同時発売の「HD PENTAX-FA 50mm F1.4」は、やわらかな描写やボケ味は生かしつつ、最新の「HDコーティング」を採用したことで逆光時のフレアやゴーストを抑えたクリアな描写が特徴のレンズです。
それぞれのよさが光る、この2つのレンズの写りの違いをぜひ試してもらえたらと思います。
金森玲奈 公式Webページ/SNSアカウント
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Twitter:@kanamorireina
写真家。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務などを経て2011年からフリーランスとして活動を開始。怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。