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「最新ミラーレスのAF使いこなし術」をプロが徹底解説! これさえ押さえておけば万全

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AF(オートフォーカス)は近年、カメラメーカー各社が特に力を入れて開発しており、ひと昔前と比べて目を見張る進化を遂げている。そのいっぽうで、多機能化が進んだこともあって、AFのどの機能が本当に便利なのか把握しにくい面もある。本記事では、最新ミラーレスカメラ3機種を使って、「ミラーレス時代のAF使いこなし術」を解説してみたいと思う。

今回の撮影で使用した3機種。右からソニー「α7R V」、OMデジタルソリューションズの「OM SYSTEM OM-1」、そしてキヤノン「EOS R6 Mark II」。AFに定評のある3機種をピックアップした

今回の撮影で使用した3機種。右からソニー「α7R V」、OMデジタルソリューションズの「OM SYSTEM OM-1」、そしてキヤノン「EOS R6 Mark II」。AFに定評のある3機種をピックアップした

画作りの根本を変えたミラーレスのAF

冒頭でも述べたようにAFの進化は著しい。特に一眼カメラの主流が一眼レフからミラーレスに移行して以降、高度なAI技術を用いた被写体検出機能やトラッキング機能がAFの利便性を押し上げてきた。特に象徴的なのが瞳を検出してピントを合わせる瞳AF。最新ミラーレスでは人物を被写体にする際に欠かせない機能だ。

筆者はポートレートを撮ることが多いのだが、ミラーレスの瞳AFは性能が非常に高く、画作りや撮影スタイルの根本を変える要素となった。どれだけ浅い被写界深度でもピンボケすることなく、瞳にピントを合わせてくれるのがすばらしい。瞳にピントが合っていない失敗写真がなくなり(減ったのではなく、なくなった)、絞りを開けることを躊躇しなくなった。ダイナミックな背景ボケを積極的に活用できるようになったのは非常に大きい。

F2の絞り開放で撮影。瞳AFによって、浅い被写界深度を利用するための労力が省かれ、被写体と対峙することに集中できるようになったEOS R6 Mark II、RF28-70mm F2 L USM、33mm、絞り優先AE、F2、1/2500秒、ISO200、+1EV、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート

F2の絞り開放で撮影。瞳AFによって、浅い被写界深度を利用するための労力が省かれ、被写体と対峙することに集中できるようになった
EOS R6 Mark II、RF28-70mm F2 L USM、33mm、絞り優先AE、F2、1/2500秒、ISO200、+1EV、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート

今回使用したミラーレスについて

では、ここで今回使用したミラーレス3機種についてAF機能を中心に解説していこう。

ソニー「α7R V」

まずは、ソニーの高画素フルサイズ機「α7R V」だ。2022年11月の発売で、有効約6100万画素の高画素センサーを搭載しているのが特徴。今回の3機種の中では最も高画素だ。高画質を維持しながら高いAF性能を備えたハイスペックな1台である。

「α7R V」と「FE 24-105mm F4 G OSS」の組み合わせ。サイズは約131.3(幅)×96.9(高さ)×82.4(奥行)mmで、重量は約723g(バッテリー、カードを含む)

「α7R V」と「FE 24-105mm F4 G OSS」の組み合わせ。サイズは約131.3(幅)×96.9(高さ)×82.4(奥行)mmで、重量は約723g(バッテリー、カードを含む)

「α7R V」は、新開発のAIプロセッシングユニットを搭載した次世代AFシステムを採用している。被写体認識性能が大幅に向上したことで、従来モデルに比べて、人物の瞳の認識精度が60%、動物に対する認識性能も40%アップしているという。トラッキングも開始からより正確に被写体をとらえることが可能だ。撮像領域の約79%のエリアに、最大693点の像面位相差AF点を高密度に配置し、認識した被写体をピンポイントで精度高く捕捉できる。AF低輝度限界は-4EV。連写性能はメカシャッターで最高約10コマ/秒だ。

検出できる被写体は「人物」「動物/鳥」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」の7項目。から選択できる。画面内右の矢印の表示に従うと、そのまま各項目内で詳細設定が可能だ

検出できる被写体は「人物」「動物/鳥」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」の7項目。から選択できる。画面内右の矢印の表示に従うと、そのまま各項目内で詳細設定が可能だ

「動物/鳥」内の項目。認識部位やトラッキングの乗り移り範囲、認識感度などを、被写体に合わせて細かく設定できる

「動物/鳥」内の項目。認識部位やトラッキングの乗り移り範囲、認識感度などを、被写体に合わせて細かく設定できる

個人の顔を登録し、優先的に認識してピントを合わせることも可能だ

個人の顔を登録し、優先的に認識してピントを合わせることも可能だ

キヤノン「EOS R6 Mark II」

次にキヤノンの「EOS R6 Mark II」を紹介しよう。こちらは有効約2420万画素のフルサイズ機で、キヤノンのラインアップの中ではスタンダードモデルに位置付けられている。

「EOS R6 Mark II」と「RF24-105mm F4 L IS USM」の組み合わせ。サイズは約138.4(幅)×98.4(高さ)×88.4(奥行)mmで、重量は約670g(バッテリー、カードを含む)

「EOS R6 Mark II」と「RF24-105mm F4 L IS USM」の組み合わせ。サイズは約138.4(幅)×98.4(高さ)×88.4(奥行)mmで、重量は約670g(バッテリー、カードを含む)

「EOS R6 Mark II」の魅力は、「デュアルピクセルCMOS AF II」と「EOS iTR AF X」というキヤノン独自の新型AFシステムを搭載していること。画面の広範囲で高精度な被写体検出機能とトラッキング性能を利用できるのが大きな特徴だ。画面全域(横:最大約100%×縦:最大約100%)で測距を行い、最大1053分割の細密化した測距エリアでより精度の高いAFを実現している。自らを“トラッキングフルサイズ”と名乗るだけの説得力あるスペックだ。AF低輝度限界も-6.5EVと高性能。連写性能は電子シャッターで最高約40コマ/秒と高速だ。

検出できる被写体は「自動」「人物」「動物優先」「乗り物優先」「なし」の5項目から選択できる。具体的に検出できる被写体は人物/犬/猫/鳥/馬/車/バイク/鉄道/飛行機と多彩だ。検出被写体をカメラが判断する「自動」が搭載されているのも特徴。これもとても便利な項目だ

検出できる被写体は「自動」「人物」「動物優先」「乗り物優先」「なし」の5項目から選択できる。具体的に検出できる被写体は人物/犬/猫/鳥/馬/車/バイク/鉄道/飛行機と多彩だ。検出被写体をカメラが判断する「自動」が搭載されているのも特徴。これもとても便利な項目だ

「瞳検出」の画面。今回紹介する3機種に関しては、いずれも右目、左目優先の設定が可能。昨今は、瞳が検出できなくても顔や頭部などから人物を検出できる機能を標準搭載した機種も増えている

「瞳検出」の画面。今回紹介する3機種に関しては、いずれも右目、左目優先の設定が可能。昨今は、瞳が検出できなくても顔や頭部などから人物を検出できる機能を標準搭載した機種も増えている

OMデジタルソリューションズ「OM SYSTEM OM-1」

最後に、OMデジタルソリューションズの「OM SYSTEM OM-1」(以下、「OM-1」)を紹介しよう。同社のマイクロフォーサーズ機のフラッグシップモデルで、有効約2037万画素の撮像素子を採用している。

「OM-1」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」の組み合わせ。サイズは約134.8(幅)×91.6(高さ)×72.7(奥行)mmで、重量は約599g(バッテリー、カードを含む)

「OM-1」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」の組み合わせ。サイズは約134.8(幅)×91.6(高さ)×72.7(奥行)mmで、重量は約599g(バッテリー、カードを含む)

「OM-1」の魅力は、小型・軽量ボディの中に高機能なAFシステムを採用していることだ。裏面照射積層型Live MOSセンサーによる1053点のオールクロス像面位相差クアッドピクセルAF方式を採用するうえ、高性能な画像処理エンジン「TruePic X」によって高速かつ高精度に被写体を認識できる。AF低輝度限界も驚きの-8EVを実現している。連写速度がAF/AE追従で最高約50コマ/秒というのも魅力だ。

検出できる被写体は「人物」「車/オートバイ」「飛行機/ヘリコプター」「電車/汽車」「鳥」「犬/猫」の6項目から選択できる。人物(顔/瞳)に関しては、「OFF」を選択すると利用可能になる

検出できる被写体は「人物」「車/オートバイ」「飛行機/ヘリコプター」「電車/汽車」「鳥」「犬/猫」の6項目から選択できる。人物(顔/瞳)に関しては、「OFF」を選択すると利用可能になる

AFターゲットは範囲やステップ量を指定して、4種類までカスタム登録できる。よく撮影する被写体の大きさや動きに応じてカスタマイズできるのがうれしい。この機能は「EOS R6 Mark II」にも搭載されている

AFターゲットは範囲やステップ量を指定して、4種類までカスタム登録できる。よく撮影する被写体の大きさや動きに応じてカスタマイズできるのがうれしい。この機能は「EOS R6 Mark II」にも搭載されている

「OM-1」を含む「OM-SYSTEM」のカメラには「星空AF」というユニークな機能も。微小な星にも自動でピントを合わせてくれる

「OM-1」を含む「OM-SYSTEM」のカメラには「星空AF」というユニークな機能も。微小な星にも自動でピントを合わせてくれる

これら3機種の特徴を見て、いずれも優秀なAFシステムを持っていることは理解いただけたかと思う。ただ、うっすら想像できるかもしれないが、どれもAFに関する機能は非常に多く、そして設定できる(しないといけない)項目数も多い。それゆえ、メニューは複雑化しており、利用が必須とも言える有益なAF機能が見落とされてしまうこともあるだろう。

以下に紹介するAFの使いこなし術は、最新ミラーレスの多くが搭載する一般的なAF機能の中から特に実践的なものを抽出した。ぜひご一読いただき、より快適なAF撮影を楽しんでほしい。

使いこなし術1 動く被写体には“広く”、狙いが明確なシーンでは“狭く”がおすすめ

フォーカスエリアとは、実際にピント合わせを行う対象エリアを指す。ソニーではフォーカスエリア、OMデジタルソリューションズではAFターゲット、キヤノンではAFエリアと呼び、メーカーでそれぞれ言い方が異なる。

フォーカスエリアは、撮影する被写体に合わせてサイズや位置を変更できる。また、「OM-1」や「EOS R6 Mark II」のように、エリアの大きさをカスタマイズできる機種もある。

もちろん被写体やシーンによるのだが、傾向として、フォーカスエリアは動き回る被写体には広く、静止した被写体にはピントを合わせたいポイントに応じて狭くするのがおすすめだ。AF方式は、主に静止した被写体向けのシングルAF(キヤノンはONE SHOT)と、動く被写体向けのコンティニュアスAF(キヤノンはSERVO)に大別できるが、動き回る被写体はコンティニュアスAFを使おう。

「EOS R6 Mark II」で撮影。瞳AFを利用して撮る際などは、フォーカスエリアは全域でOK。構図の制約なく、撮影に集中できるEOS R6 Mark II、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、絞り優先AE、F4、1/4000秒、ISO800、+0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート

「EOS R6 Mark II」で撮影。瞳AFを利用して撮る際などは、フォーカスエリアは全域でOK。構図の制約なく、撮影に集中できるEOS R6 Mark II、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、絞り優先AE、F4、1/4000秒、ISO800、+0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート

「OM-1」で撮影。遠景の自然風景などは少しフォーカスエリアを狭め、いちばん見せたいポイントでピント合わせをするのもおすすめだ。ここでも画面中央付近の紅葉でピント合わせを行っているOM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、38mm、絞り優先AE、F8、1/80秒、ISO250、-0.7EV、ホワイトバランス:曇天、ピクチャーモード:i-Finish撮影写真(5184×3888、13.1MB)

「OM-1」で撮影。遠景の自然風景などは少しフォーカスエリアを狭め、いちばん見せたいポイントでピント合わせをするのもおすすめだ。ここでも画面中央付近の紅葉でピント合わせを行っている
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、38mm、絞り優先AE、F8、1/80秒、ISO250、-0.7EV、ホワイトバランス:曇天、ピクチャーモード:i-Finish
撮影写真(5184×3888、13.1MB)

使いこなし術2 トラッキング機能を使い倒そう

トラッキング(追尾)機能は、一度ピントを合わせた被写体を自動で追い続けながらピントを合わせ続けてくれるAF機能だ。基本的に、コンティニュアスAF使用時にのみ適用できる。トラッキングの開始は、フォーカスエリアで指定する方法や、タッチ操作で指定する方法がある。

「α7R V」の設定画面。トラッキングはフォーカスエリアの項目内から選択できる

「α7R V」の設定画面。トラッキングはフォーカスエリアの項目内から選択できる

「EOS R6 Mark II」の設定画面。メニュー内でも設定できるが(「サーボAF中の全域トラッキング」を「する」に変更する)、撮影画面上で項目を選択・変更される「クイック設定」を使えば、INFOボタンでトラッキングの切り替えが簡単に行える

「EOS R6 Mark II」の設定画面。メニュー内でも設定できるが(「サーボAF中の全域トラッキング」を「する」に変更する)、撮影画面上で項目を選択・変更される「クイック設定」を使えば、INFOボタンでトラッキングの切り替えが簡単に行える

「OM-1」の設定画面。AF方式の項目内から選択できる。TRの表示がトラッキングを意味する

「OM-1」の設定画面。AF方式の項目内から選択できる。TRの表示がトラッキングを意味する

トラッキング機能は動く被写体を撮るときに効果的だが、スナップ撮影などの静止した被写体を写す際にも大変重宝する。シングルAFでは、構図を決め、そのうえでピントを合わせることになるが、もしピントを合わせたい被写体が決まっているならば、トラッキング機能を用いることで、ピント合わせと構図の決定を同時並行に行えるからだ。

ピントを合わせたい被写体をまずトラッキング機能で指定すれば、あとは構図を変えても、シャッターボタン半押し中は常に追尾しながらその被写体にピントを合わせ続けてくれる。

なお、トラッキングしたいポイントをフォーカスエリアで指定する場合、小さなフォーカスエリアを使って指定するのがおすすめだ。あまりフォーカスエリアが広いと、狙いどおりのポイントを指定できなかった場合に、結局タッチ操作で指定することになる。

「α7R V」には「押す間トラッキング」という機能があり、これを登録したボタンを押している間は、一時的にフォーカスエリアがトラッキングに切り替わる。シングルAF中であっても、瞬時にトラッキングを適用できるのが便利だ。ここでは、背面右上のAELボタンに「押す間トラッキング」を割り当ててみた。後述するAF-ONボタンに割り当てても面白い。なお、「EOS R6 Mark II」も「サーボAF中の全域トラッキング」を各ボタンに割り当てることができる。ぜひ、カスタマイズしてみよう

「α7R V」には「押す間トラッキング」という機能があり、これを登録したボタンを押している間は、一時的にフォーカスエリアがトラッキングに切り替わる。シングルAF中であっても、瞬時にトラッキングを適用できるのが便利だ。ここでは、背面右上のAELボタンに「押す間トラッキング」を割り当ててみた。後述するAF-ONボタンに割り当てても面白い。なお、「EOS R6 Mark II」も「サーボAF中の全域トラッキング」を各ボタンに割り当てることができる。ぜひ、カスタマイズしてみよう

「α7R V」を使い、認識対象を「動物/鳥」に設定し、フォーカスエリアを「トラッキング:ワイド」にして撮影。手前のガチョウにしっかりピントを合わせてくれた。トラッキング機能は、被写体検出機能と組み合わせて用いるのがおすすめだ。安定感のある追尾を粘り強く実行してくれるα7R V、FE 24-105mm F4 G OSS、105mm、絞り優先AE、F4、1/125秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、32.9MB)

「α7R V」を使い、認識対象を「動物/鳥」に設定し、フォーカスエリアを「トラッキング:ワイド」にして撮影。手前のガチョウにしっかりピントを合わせてくれた。トラッキング機能は、被写体検出機能と組み合わせて用いるのがおすすめだ。安定感のある追尾を粘り強く実行してくれる
α7R V、FE 24-105mm F4 G OSS、105mm、絞り優先AE、F4、1/125秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、32.9MB)

使いこなし術3 親指AFを使ってみよう

親指AFとは、AF動作とシャッター操作を別々に行う撮影テクニックのこと。具体的には、背面のAF-ONボタンでAFを動作させ、シャッターボタンはシャッターを切るためだけに使用する(※設定次第でAF-ONボタン以外でも可能)。AF-ONボタンを親指で操作するため、この名がついた。親指AFを利用するには、シャッターボタンからはAFの機能を無効にする必要があるのも押さえておきたいポイントだ。

「α7R V」のAF-ONボタン。今回の3機種はすべて、親指で操作しやすいように背面のこの位置に配置されている

「α7R V」のAF-ONボタン。今回の3機種はすべて、親指で操作しやすいように背面のこの位置に配置されている

親指AFを利用するには、シャッターボタンからAFの機能を無効にしておく必要がある。これは「α7R V」の設定画面だが、「OM-1」はAFの項目内から変更できる。キヤノンの場合、ボタンカスタマイズから設定していくので注意しよう

親指AFを利用するには、シャッターボタンからAFの機能を無効にしておく必要がある。これは「α7R V」の設定画面だが、「OM-1」はAFの項目内から変更できる。キヤノンの場合、ボタンカスタマイズから設定していくので注意しよう

親指AFが有効なのは、まず、動きの速い被写体を撮りたいときだ。ピントを合わせる動作とシャッターを切る動作を分けられるため、たとえば、コンティニュアスAFを利用しながらも、軽快にどんどんシャッターを切ることができる。

フォーカスを気軽にロックできるのもポイントだ。MFに切り替えるまでもなく、AF-ONボタンから指を離せばピント位置が固定できる。同じ構図で何枚も写真を撮るようなシーンや、置きピン、三脚を使って撮影を行うようなシーンで非常に重宝する。

こうした動体の撮影にも親指AFは大変重宝する。特に連写機能を使わず1枚撮影でシャッターチャンスを狙いたいときなどは便利。確実にシャッターが切れるα7R V、FE 24-105mm F4 G OSS、24mm、マニュアル、F5.6、1/2000秒、ISO500、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV撮影写真(9504×6336、51.1MB)

こうした動体の撮影にも親指AFは大変重宝する。特に連写機能を使わず1枚撮影でシャッターチャンスを狙いたいときなどは便利。確実にシャッターが切れる
α7R V、FE 24-105mm F4 G OSS、24mm、マニュアル、F5.6、1/2000秒、ISO500、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV
撮影写真(9504×6336、51.1MB)

使いこなし術4 タッチ&ドラッグAFをうまく使いこなそう

タッチ&ドラッグAFは、ファインダーを覗きながら、画面をタッチしたりドラッグしたりすることでフォーカスエリアの位置を変更できる機能だ。より直感的に操作できるのが大きな魅力。狙ったところにピントが合っていないときなどに、臨機応変にピント位置を修正できて重宝する。

筆者はタッチ&ドラッグAFを愛用している。フォーカスエリアをスポットにしていて手動で移動するのが面倒なときや、オールエリアにしていてピントが思わぬところに合ってしまう場面などで、とっさにファインダーを見ながら操作できるのでありがたい。基本的に初期設定では無効になっている機能なので注意したい。

なお、「タッチ&ドラッグAF」はキヤノンの呼び方で、ソニーは「タッチパッド」、OMデジタルソリューションズは「AFターゲットパッド」と、メーカーによって名称が異なっている。

背面モニターは真っ黒なままだが、指でなぞるとフォーカスエリアがそれに合わせて移動し、ファインダーから確認できる仕組みだ

背面モニターは真っ黒なままだが、指でなぞるとフォーカスエリアがそれに合わせて移動し、ファインダーから確認できる仕組みだ

「EOS R6 Mark II」のタッチ&ドラッグAFの設定画面。キヤノンでは位置指定やタッチ領域なども自分好みに設定できる

「EOS R6 Mark II」のタッチ&ドラッグAFの設定画面。キヤノンでは位置指定やタッチ領域なども自分好みに設定できる

タッチ&ドラッグAFを利用して「EOS R6 Mark II」で撮影。こうした花などの静物のスナップにもタッチ&ドラッグAFはとても便利。ファインダーを覗きながら、タッチAFを利用している感覚で撮影できるEOS R6 Mark II、RF24-105mm F4 L IS USM、67mm、絞り優先AE、F4、1/400秒、ISO400、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景撮影写真(4000×6000、5.5MB)

タッチ&ドラッグAFを利用して「EOS R6 Mark II」で撮影。こうした花などの静物のスナップにもタッチ&ドラッグAFはとても便利。ファインダーを覗きながら、タッチAFを利用している感覚で撮影できる
EOS R6 Mark II、RF24-105mm F4 L IS USM、67mm、絞り優先AE、F4、1/400秒、ISO400、-0.3EV、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(4000×6000、5.5MB)

使いこなし術5 追従性などの特性を自分好みに調整しよう

コンティニュアスAFやトラッキング機能を利用する際、狙う被写体やシーンに応じて、追従性の度合いや範囲を調整することができる。メーカーによってその内容は異なるが、多くはどのくらい粘って特定の被写体を追従し続けるか、または、フォーカスエリアから被写体が外れた場合、どのくらいの範囲まで追従を継続するか、などが決められる。

複数の人たちが動き回るようなスポーツの撮影や、野鳥や動物の群れを撮影する際、または手前に余計なものが入りやすい場面などで効果を発揮する。これはいわば、コンティニュアスAFやトラッキングの性格を自分好みにカスタマイズする作業だ。撮影スタイルに合わせて調整してみよう。

「EOS R6 Mark II」の設定画面。この項目では、追尾している被写体からほかの被写体への乗り移りやすさを調整できる

「EOS R6 Mark II」の設定画面。この項目では、追尾している被写体からほかの被写体への乗り移りやすさを調整できる

「EOS R6 Mark II」の設定画面。「サーボAF特性」ではシーンに応じてサーボAFの内容を選択できる。被写体追従特性とは被写体がフォーカスエリアから外れたときのAFの動作を調整できる機能だ。ここでは、速度変化に対する追従性の度合いも変更できる

「EOS R6 Mark II」の設定画面。「サーボAF特性」ではシーンに応じてサーボAFの内容を選択できる。被写体追従特性とは被写体がフォーカスエリアから外れたときのAFの動作を調整できる機能だ。ここでは、速度変化に対する追従性の度合いも変更できる

被写体検出を電車に設定して「OM-1」で撮影。「OM-1」には「C-AF追従感度」という項目で、被写体への追従性を5段階から設定できる。ここでは単一で走り去る電車の撮影なので標準的な0を選んでいるOM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、31mm、シャッター優先AE、F4、1/2000秒、ISO640、-0.3EV、ホワイトバランス:晴天、ピクチャーモード:トイフォトIII撮影写真(5184×3888、12.4MB)

被写体検出を電車に設定して「OM-1」で撮影。「OM-1」には「C-AF追従感度」という項目で、被写体への追従性を5段階から設定できる。ここでは単一で走り去る電車の撮影なので標準的な0を選んでいる
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、31mm、シャッター優先AE、F4、1/2000秒、ISO640、-0.3EV、ホワイトバランス:晴天、ピクチャーモード:トイフォトIII
撮影写真(5184×3888、12.4MB)

使いこなし術6 併用機能をうまく活用しよう

機種によっては、シングルAFとコンティニュアスAFの動作をカメラ側が自動で切り替えてくれるオートモードを搭載している。静止した被写体と動く被写体を同時に撮るような場面で特に有効なのでぜひ使ってみてほしい。今回の3機種では「α7R V」と「EOS R6 Mark II」が搭載している。

上級者向けとしては、AFとMFの併用機能(フルタイムMF)も押さえておこう。基本的には、AFでピントを合わせた後にシームレスにMFを利用できる機能のことで、AFで狙った位置にピントが合わなかった場合にMFで微調整できるのが便利だ。マクロ撮影などシビアなピント合わせが要求される場面で効果を発揮する機能である。

「α7R V」の設定画面。「AF制御自動切換」に設定すると、シングルAFとコンティニュアスAFを自動で切り替えながら撮影できるようになる。「DMF」に設定すると、AFでピントを合わせた後に、手動でピントを微調整できる

「α7R V」の設定画面。「AF制御自動切換」に設定すると、シングルAFとコンティニュアスAFを自動で切り替えながら撮影できるようになる。「DMF」に設定すると、AFでピントを合わせた後に、手動でピントを微調整できる

「α7R V」で撮影。写真だけを見ると、シングルAFで撮影できそうに見えるが、かえでは風になびいていて、実はコンティニュアスAFが有効な場面。こうしたときも自動切り替えモードを利用していると、被写体に合わせてカメラが自動でAF方式を最適なものに合わせてくれるα7R V、FE 24-105mm F4 G OSS、105mm、マニュアル、F5.6、1/2000秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV撮影写真(9504×6336、36.6MB)

「α7R V」で撮影。写真だけを見ると、シングルAFで撮影できそうに見えるが、かえでは風になびいていて、実はコンティニュアスAFが有効な場面。こうしたときも自動切り替えモードを利用していると、被写体に合わせてカメラが自動でAF方式を最適なものに合わせてくれる
α7R V、FE 24-105mm F4 G OSS、105mm、マニュアル、F5.6、1/2000秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV
撮影写真(9504×6336、36.6MB)

「EOS R6 Mark II」の設定画面。MF操作時に拡大表示するかどうかなどフルタイムMF時の動作を設定できる

「EOS R6 Mark II」の設定画面。MF操作時に拡大表示するかどうかなどフルタイムMF時の動作を設定できる

「OM-1」の設定画面。AFとMFを併用するかは「AF+MF」の項目で決定する

「OM-1」の設定画面。AFとMFを併用するかは「AF+MF」の項目で決定する

使いこなし術7 AFの操作性を自分好みにカスタマイズしよう

最新ミラーレスのAF機能は、細かい操作性をカスタマイズすることができる。たとえば、フォーカスエリアや被写体検出機能では、利用機会の少ない項目を非表示にできる。項目数を減らすことで、設定がより素早く行えるというわけだ。

ほかにも、AF利用時の画面内の表示方法を変更することも可能。具体的には、トラッキング中、画面内に表示される枠や、被写体を認識した際に表示される認識枠などの表示/非表示を選択できる。表示が目障りで、撮影に集中しづらいときは設定を変更してみよう。もちろんメーカーや機種によっても設定できる項目は異なるので、ぜひ自分のカメラで確認してみてほしい。

「OM-1」の設定画面。「AFターゲットモード設定」では、選択できるAFターゲットの種類を変更できる。普段利用しないモードは選択肢から外すことで、より設定がよりスムーズに行えるようになる

「OM-1」の設定画面。「AFターゲットモード設定」では、選択できるAFターゲットの種類を変更できる。普段利用しないモードは選択肢から外すことで、より設定がよりスムーズに行えるようになる

「OM-1」は、フォーカスエリアを表示したり、ピントが合焦した際のターゲット枠を表示したりといった選択が可能。かなり細かく見え方を変更できる

「OM-1」は、フォーカスエリアを表示したり、ピントが合焦した際のターゲット枠を表示したりといった選択が可能。かなり細かく見え方を変更できる

フォーカスエリアの移動を循環させることも可能。端にあるフォーカスエリアを反対側の端に移動できるのが便利だ。この機能も大抵の機種に搭載されている。これは「OM-1」の設定画面

フォーカスエリアの移動を循環させることも可能。端にあるフォーカスエリアを反対側の端に移動できるのが便利だ。この機能も大抵の機種に搭載されている。これは「OM-1」の設定画面

使いこなし術8 カスタムモードを活用しよう

ここまでを見て明らかなように、AF機能は被写体や自分の撮影スタイルに合わせて、さまざまにカスタマイズが可能だ。動く被写体を撮る場合は、ここに連写機能やシャッター速度といったシャッターチャンスに関わる要素も加わってくる。

そういった意味では、お気に入りの設定や組み合わせは、カスタムモードに登録しておくといいだろう。AF機能はかなり込み入っている。カスタムモードにあらかじめ登録しておくことで、急に被写体が現れても、焦らず落ち着いて最良のAF設定で撮影に臨むことができる。

「OM-1」では、モードダイヤルに4つのカスタムモードが用意されている

「OM-1」では、モードダイヤルに4つのカスタムモードが用意されている

野鳥が飛ぶ姿を「OM-1」で撮影。撮影後にカメラ内でクロップした。こうした突然のシーンもカスタムモードを活用すれば、落ち着いて撮影に臨めるOM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、100mm、絞り優先AE、F4、1/4000秒、ISO200、-0.7EV、ホワイトバランス:日陰、ピクチャーモード:i-Finish撮影写真(2560×1920、3.6MB)

野鳥が飛ぶ姿を「OM-1」で撮影。撮影後にカメラ内でクロップした。こうした突然のシーンもカスタムモードを活用すれば、落ち着いて撮影に臨める
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、100mm、絞り優先AE、F4、1/4000秒、ISO200、-0.7EV、ホワイトバランス:日陰、ピクチャーモード:i-Finish
撮影写真(2560×1920、3.6MB)

まとめ 撮影スタイルに合わせて機能をうまくピックアップしよう

冒頭で申し上げたように、最新ミラーレスのAFは非常に多機能で、正直わかりにくい面もある。今回紹介した3機種の中では、「EOS R6 Mark II」が最もシンプルな操作性を持っているように思う。シンプルでありながら、しっかりAFを効かせてくれる安定感がある。

いっぽうで、細かい設定を自分好みに行えるのは「α7R V」だろうか。6000万画素を超えるフルサイズ機としてここまでのAF機能を備えているのは本当にすばらしい。トラッキングの粘り強さはファインダーを通じて目を見張るほどだった。

「OM-1」は小型・軽量ボディがやはり大きな魅力で、気軽にテンポよく動体に挑めるのが最大の魅力だろう。星空AFなど特定の被写体に特化した機能も非常にすぐれている。

AFは、これからも技術面で伸びしろのある分野だ。すべてを網羅する必要はないが、自分の撮影スタイルに合わせて機能をうまくピックアップして使いこなしていきたい。

なお、今回はAFがテーマだったので触れていないが、最近はどのカメラも、自分でピント合わせを行うMFのサポート機能が充実している。折を見て、MFの使いこなし術も解説したいと思う。

河野鉄平
Writer
河野鉄平
フォトグラファー。写真家テラウチマサト氏に師事後、2003年独立。ポートレートを中心に活動。2022年1月に新著『上手い写真は構図が9割』(玄光社)発売。ポーラミュージアムアネックス(2015年/銀座)など写真展も多数。Profoto公認トレーナー。
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真柄利行(編集部)
Editor
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣とこだわりを持っています。フォトグラファーとしても活動中。パソコンに関する経験も豊富で、パソコン本体だけでなく、Wi-Fiルーターやマウス、キーボードなど周辺機器の記事も手掛けています。
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