曽根原ラボ

もはや標準装備!? 「手ブレ補正機能」の種類と効果をおさらいしよう

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知っているとタメになるカメラ関連情報をお伝えする連載「曽根原ラボ」。第12回のテーマは、最新のミラーレスカメラの多くが搭載している「手ブレ補正機能」です。

写真撮影の3大失敗(露出、ピンボケ、手ブレ)のひとつである手ブレを軽減してくれる手ブレ補正機能ですが、その種類や効果を意識せずに使っている人も多いかもしれません。今回はそこのところをしっかりおさらいしてみましょう。

手ブレ補正機能を搭載したカメラ・レンズなら、遅いシャッタースピードでも手ブレの影響を抑えて撮影できます。夜景や屋内など暗いところで絶大な効果を発揮する機能ですね

手ブレ補正機能を搭載したカメラ・レンズなら、遅いシャッタースピードでも手ブレの影響を抑えて撮影できます。夜景や屋内など暗いところで絶大な効果を発揮する機能ですね

そもそも手ブレとは? どのくらいのシャッタースピードで発生する?

写真撮影での手ブレは、カメラを手で持ちながらシャッターを切るときに、カメラが不用意に動いてしまうことを言います。

手ブレが発生すると、ブレの量にもよりますが、写真の解像感が低下し、鮮鋭性がなくなってしまいます。これだとカメラやレンズの本来の性能が発揮されず、もったいないですね。

手ブレの影響を抑えるには、
1.最低限のシャッタースピードを確保する
2.手ブレ補正機能を利用する
3.三脚(や一脚)を利用する
の3つが考えられます。

本記事では「2.手ブレ補正機能を利用する」を掘り下げますが、その前に、「1.最低限のシャッタースピードを確保する」についても少し解説しておきましょう。

手持ち撮影で手ブレの影響を抑えられる基準値としてよく紹介されるのが、「1/焦点距離(35mm判換算) 秒」のシャッタースピードです。この基準値よりもシャッタースピードが遅くなると手ブレが発生すると言われています。

この基準値で見ると、フルサイズ機の場合、焦点距離200mmのレンズなら1/200秒未満、焦点距離50mmのレンズなら1/50秒未満のシャッタースピードだと手ブレが起こりやすいと言えます。

もちろん、これは使っているカメラやレンズの仕様によって変わりますし、撮影者自身の「腕前」によっても違ってきますが、「1/焦点距離(35mm判換算) 秒」を境にして手ブレ発生の頻度が上がるのは間違いありません。手ブレ写真が多いため過去に「手ブレ王」と呼ばれていた筆者も、経験上そのように感じています。

光学式手ブレ補正は「レンズ内」「ボディ内」「シンクロ補正」の3種類

写真撮影において手ブレはやっかいな存在ですが、それを検知・補正する手ブレ補正機能があれば、高い確率で手ブレの影響を抑えて撮れます。手ブレ補正機能は光学式と電子式があって、光学式は大きく以下の3種類に分けられます。

レンズ内手ブレ補正

ジャイロ機構を持ったレンズユニットがブレを打ち消すように動くことで手ブレを補正する仕組みです。光学式の手ブレ補正機能としては歴史が古く、フィルムカメラ時代から続く長年の実績があります。

この方式は、レンズの特性に合わせて効果的に手ブレを補正してくれるのが大きなメリット。どちらかというと望遠撮影で効果を発揮します。当然ですが、そのレンズでしか動作しません。

レンズ内手ブレ補正機構「VR」を搭載した、ニコンの「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」

レンズ内手ブレ補正機構「VR」を搭載した、ニコンの「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」

ボディ内手ブレ補正

カメラ内の撮像素子が、ブレを打ち消すようにシフトすることで手ブレを補正する方式です。フィルムカメラでは考えられないデジタルカメラならではの機構と言えます。

そのメリットは、基本的に装着したレンズすべてで手ブレを抑えられること。レンズ側では対応できない回転ブレを補正できるのが特徴で、どちらかというと広角側の撮影で効果を発揮します。デメリットとしては、レンズごとに特化した補正効果を発揮できないところでしょうか。

撮像素子が上下左右にシフトすることで手ブレを軽減する、カメラ内蔵の光学式手ブレ補正機能。最近では、角度ブレに加えてシフトブレと回転ブレも補正してくれる5軸手ブレ補正が主流です

撮像素子が上下左右にシフトすることで手ブレを軽減する、カメラ内蔵の光学式手ブレ補正機能。最近では、角度ブレに加えてシフトブレと回転ブレも補正してくれる5軸手ブレ補正が主流です

シンクロ手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正とレンズ内手ブレ補正が協調する機能で、一般的には「シンクロ補正」と呼ばれています。2つの手ブレ補正機能のメリットを保ちながら動作するのが特徴で、基本的に、それぞれ単体で利用するよりも補正効果は向上します。広角から望遠まで幅広く安定した性能を発揮する「今どきの手ブレ補正」と言えるでしょう。

注意したいのは、カメラ側とレンズ側の両方がシンクロ補正に対応している必要があること。どちらかが非対応の場合、協調制御は行われません。現在は、ニコン、キヤノン、ソニー、富士フイルム、OMデジタルソリューションズ、パナソニックといったメーカーが、最新のミラーレスカメラとレンズでこの方式を積極的に採用しています。

シンクロ補正は、レンズ側とボディ側の手ブレ補正機能が連動して動作します。画像は、ニコンのフルサイズミラーレスカメラ「Z 8」と望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」を組み合わせた例

シンクロ補正は、レンズ側とボディ側の手ブレ補正機能が連動して動作します。画像は、ニコンのフルサイズミラーレスカメラ「Z 8」と望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」を組み合わせた例

なお、電子式の手ブレ補正機能は、撮像素子がとらえる範囲の一部をトリミングしながら電子的に補正するのが特徴。主に動画撮影で利用される機能で、画角が狭くなるのがデメリットです。今回は、光学式の手ブレ補正機能に絞って話を進めます。

「シンクロ補正」はどのくらい効果を発揮する?

続いて、ニコンのミラーレスを使って、手ブレ補正機能の効果を検証していきます。

まずは、最も高い補正効果が得られるシンクロ補正から見ていきましょう。ニコンは「シンクロVR」と呼んでいますね。「Z 8」と「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」の組み合わせで試してみました。

「シンクロVR」の設定はボディ側で行います。「Z 8」と「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」の組み合わせでは、ボディ側/レンズ側のどちらかに機能を限定することはできず、常に「シンクロVR」で動作します

「シンクロVR」の設定はボディ側で行います。「Z 8」と「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」の組み合わせでは、ボディ側/レンズ側のどちらかに機能を限定することはできず、常に「シンクロVR」で動作します

「シンクロVR」は本当に効果的なのか? 実際に試してみます

「シンクロVR」は本当に効果的なのか? 実際に試してみます

ニコンによると、「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」単体での手ブレ補正効果は最大5.5段分。これを「Z 8」と組み合わせて「シンクロVR」で動作させると最大6.0段分(いずれも望遠端200mm時)にまで向上するとのことです。

あれ? 5.5段分が6.0段分に? 意外に補正段数が上がらないですね。これは実際に撮影して効果のほどを確認してみたいところです。

焦点距離200mmですので、一般的に言われる手ブレが発生しない限界のシャッタースピードは1/200秒。そこから6.0段分ですので、厳密に見ると1/3.125秒まで効果を期待できることになります。1/3秒から1/4秒の間ですので、1/3秒で手ブレを抑えられれば期待以上と考えてよいかもしれません。

シャッタースピード1/4秒での撮影

まずは、シャッタースピード1/4秒での撮影です。結果は5回撮影して4回で完全に手ブレを防げました。残り1回の画像も拡大するとブレがわかる程度です。撮影中も「今のはブレなく撮れたはず!」という手応えが感じられました。80%の成功率ですので、十分に効果があるとみなしてよいと思います。

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F4、1/4秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8256×5504、17.5MB)

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F4、1/4秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8256×5504、17.5MB)

シャッタースピード1/3秒での撮影

次は、シャッタースピード1/3秒での撮影です。結果は5回撮影して2回で完全に手ブレの影響のない写真が撮れました。残り3回の画像も拡大しない限りはブレているように見えませんが、今回は厳しく判定しています。

成功率は40%にとどまりましたが、有効4571万画素の「Z 8」でこの結果なら立派と言えるのではないでしょうか。最大6.0段分の手ブレ補正効果という公表値は十分に信頼できます。

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F4、1/3秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8256×5504、17.6MB)

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F4、1/3秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8256×5504、17.6MB)

シャッタースピード1/2秒での撮影

さらに進めて、シャッタースピード1/2秒での撮影です。公表されている手ブレ補正効果の最大値を超えていますが、結果は5回撮影して2回で成功。成功率40%ですので1/3秒の場合と並びました(1/3秒の成功率の低さは筆者の腕が悪いからかもしれません……。)。

1/2秒という遅いシャッタースピードでも手ブレ補正効果を期待できるのはすごいことです。

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F5、1/2秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8256×5504、16.9MB)

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F5、1/2秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8256×5504、16.9MB)

シャッタースピード1秒での撮影

さすがに難しいだろうと思いつつ、シャッタースピード1秒で撮影してみました。結果は5回撮影して1回だけ成功。一応成功率は20%ですが、毎度の撮影でこの結果を出せるかというと、それはあまりにもあやしいです。

これはさすがに手ブレ補正効果を期待すべきではないですね。ただ、同じ手持ち撮影でも、柱に寄りかかったり、しゃがんで立て膝をついたりして体を安定させる工夫をすれば、1秒のスローシャッターでも成功率は上がると思います。

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F7.1、1秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8256×5504、16.9MB)

Z 8、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S、200mm、F7.1、1秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8256×5504、16.9MB)

以上、ニコンの「シンクロVR」で試した限りでは、公表どおりの手ブレ補正効果を発揮してくれたうえに、それを超える遅いシャッタースピードでも結構な歩留まりで手ブレを防いでくれることがわかりました。補正効果の公表値はあくまで数値でしかなく、いつでも同じ結果を出せるというわけではありませんが、シンクロ補正の性能の高さはお伝えできたかと思います。

レンズ内手ブレ補正のみだと結果はどうなる?

次に、レンズ内手ブレ補正機能のみで撮影した場合の効果を見ていきましょう。シンクロ補正とどのくらい違うのか? 気になるところだと思います。

検証用の機材として、ニコンのAPS-Cミラーレス「Z 50」と、APS-C用の望遠ズームレンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」を使用しました。「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」は、最大5.0段分(望遠端250mm時)のレンズ内手ブレ補正機能を搭載しています。

近ごろは少数派になりつつありますが、「Z 50」のように、ボディ内手ブレ補正機能を持たないことでサイズと価格を抑えたモデルも人気が高いです。こうしたカメラでは、「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」のようにレンズ内手ブレ補正機能を備えたものと組み合わせたいところですね。

「Z 50」と「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」の組み合わせ。本レンズは最大5.0段分のレンズ内手ブレ補正機能を搭載しています

「Z 50」と「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」の組み合わせ。本レンズは最大5.0段分のレンズ内手ブレ補正機能を搭載しています

撮影は、「シンクロVR」での検証(焦点距離200mm)と比較しやすいように、レンズの焦点距離を135mm(35mm判換算で焦点距離202mm相当)に設定しました。最大5.0段分の補正効果は望遠端でのスペックですので、中間の焦点距離ではそこまで性能が出ないかもしれませんが、5.0段分で計算すると、レンズの焦点距離135mmでは1/6秒から1/8秒の間のシャッタースピードで手ブレ補正効果を期待できることになります。

「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」を使って撮影

Z 50、NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR、135mm(35mm判換算202mm相当)、F5.3、1/8秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(5568×3712、7.2MB)

Z 50、NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR、135mm(35mm判換算202mm相当)、F5.3、1/8秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、7.2MB)

1/8秒のシャッタースピードで撮影した結果は、5回の撮影で2回の成功でした。成功率は40%ですので、まあまあ信頼できる範囲と言えると思います。ここまでは先に紹介した「シンクロVR」とそれほど変わらない結果です。

しかし、1/8秒より遅い1/6秒のシャッタースピードになると、途端に手ブレ補正効果が得られなくなるのが、「シンクロVR」との違いでした。あくまで、筆者が個人的に試した今回だけの結果ではありますが、公表されている補正効果の限界まではそれなりに期待できるものの、それよりも遅いシャッタースピードに対しては「伸びしろ」が少ないという印象です。

レンズ内手ブレ補正機能でも十分な効果が期待できる、けれど安心感や信頼性においてはシンクロ補正に及ばないといったところでしょうか。

まとめ あるのとないのとで大きな違いを生む機能

手ブレ補正機能の種類と効果についてご理解いただけたでしょうか? 今回はシンクロ補正を中心に検証してみましたが、手ブレ補正機能が使えると、実際の撮影でこのうえない安心感をもたらしてくれます。あるのとないのとで大きな違いを生むのが手ブレ補正機能だと思います。

普段意識せずにシャープでスッキリとした写真が撮れているとしたら、それは知らない間に働いてくれた手ブレ補正機能のおかげかもしれません。ここで今一度、ご自身が使う機材の手ブレ補正機能の種類と、その性能の限界を理解しておけば、今後の撮影において役に立つのではないかと思います。

曽根原 昇
Writer
曽根原 昇
信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。
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真柄利行(編集部)
Editor
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣とこだわりを持っています。フォトグラファーとしても活動中。パソコンに関する経験も豊富で、パソコン本体だけでなく、Wi-Fiルーターやマウス、キーボードなど周辺機器の記事も手掛けています。
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