手のひらにすっぽり収まってしまうほどコンパクトな「INSTAX Pal」
連載「今日も、カメラと一緒に」第10回は、富士フイルムの超小型カメラ「INSTAX Pal(インスタックス パル)」を“相棒”にお届けします。
「INSTAX Pal」は、本体からプリント機能を切り離して撮影に特化することで、「INSTAX “チェキ”」シリーズ史上最小サイズを実現した、ミニマルなデバイス。電源ボタンとシャッターボタンのみのシンプルな操作性で、撮ることをとことん楽しめるカメラです。
こんにちは、写真家の金森玲奈です。
この連載では、毎回違った相棒カメラ(とレンズ)で写真を撮りながら、私の写真への想いや写真を通した思い出などをお話しさせてもらっています。
今回の相棒は、コロンとした見た目がかわいくて使うほどに愛着がわいてくる、富士フイルムの超小型カメラ「INSTAX Pal」です。
このカメラを手に取ったときの第一印象は「小さくて何だかこぶたっぽい」というカメラに対してはちょっと失礼なものでした。ビジュアルに対しての率直な感想だったのですが、本体上部の電源スイッチを押したときの、何とも言いがたい脱力系な音が鳴き声のようにも思えて、だんだんカメラというより「こういう生き物」というように感じ始めたのです。
「INSTAX Pal」のサイズは42.3(幅)×44.4(高さ)×43(奥行)mmで、重量は約41g(記録メディア、ストラップを含まず)。本体上部に電源ボタン、背面にシャッターボタンが用意されています。レンズは35mm判換算で焦点距離16mm相当の広角レンズ。カメラの設定は専用アプリから行えます
「生き物」の印象がいっそう高まったのは、スマートフォンに「INSTAX Pal」専用のアプリをインストールして「カメラを登録する」という項目を見たとき。アプリ上でカメラのビジュアルがピョコピョコ動き回るのも生き物っぽさに拍車をかけていたのかもしれませんが、普段ならカメラの名称をそのまま入れるところを、このときはなぜか「名前」を考えている自分がいて、自然と「ぱるお」と登録していました。せっかくなので、今回の記事のみ、カメラの呼称は「ぱるお」でいきたいと思います。
アプリでカメラの名前を登録してから、「ぱるお」をカメラバッグに入れて近所に撮影に出かけました。
「ぱるお」は、シャッターボタンを押すだけの超シンプルな操作性を採用しています。その操作性を便利にサポートしてくれるのが、リング付きの付属ストラップ。このストラップをカメラに装着すれば、指輪のように指にリングを引っ掛けたまま、片手でシャッターボタンを押すことができます。片手で持ち歩いてそのまま手軽に撮影できるのがとても心地よかったです。
一度カメラバッグから「ぱるお」を取り出してからは、指に引っ掛けて握ったまま、一緒にサイクリングを楽しみました。
リング付きの付属ストラップは、リングが簡易的なファインダーのような役目も果たします
以下の写真は、道すがら出会った満開の桜を真下から撮影したものです。「ぱるお」はファインダーが付いていないので構図はあまり意識していませんでしたが、本体が軽いこともあって、思い切り手を伸ばして撮ることができ、手前に花が大胆に入ったダイナミックな写真に仕上がりました。
INSTAX Pal、F2.2、1/2000秒、ISO100
INSTAX Pal、F2.2、1/8000秒、ISO100
「ぱるお」の基本的な構図はスマートフォンと同じ縦なので、横位置で撮りたい場合は90度傾けて撮る必要がありますが、サイズが小さく、手のひらの中でコロッと転がすだけなので特に不便さは感じませんでした。
片手で簡単にシャッターが押せるので次男と私の手のツーショット写真もいい感じに撮れました
INSTAX Pal、F2.2、1/320秒、ISO100
「ぱるお」はモニターがないため、実際にどんな風に写っているのかをカメラ単体では確認できません。使い始めは「フィルムカメラのようだな」と、その手軽さを楽しんでいたのですが、ファインダーがないため、構図に関してはやはり思いどおりにいかない場面も多く、次第に「ちゃんと自分が残したいフレーミングで撮りたい」という思いが強くなってきました。
そこで満を持して? 使ったのが、「INSTAX Pal」専用のアプリです。専用アプリにはリモート撮影機能が備わっているため、スマートフォンの画面で構図を確認しながら撮ることができます。露出補正やエフェクトも追加できるので、通常のカメラに近い感覚で撮影を楽しめました。
専用アプリを介して撮影した写真たち。スマートフォン転送時にフレーム付きの画像として保存できます。撮影後にエフェクトを追加することも可能です
専用のスマホプリンターと組み合わせることでプリントを楽しめます
「ぱるお」との撮影をひと通り楽しんだ後は、お楽しみのプリントタイムです。スマホプリンター「INSTAX mini Link 2」を使ってチェキプリントしました。
「ぱるお」本体のモードを「Link」に切り替えるとダイレクトプリントもできますが、今回は、プリントしたい写真をじっくり選びたかったので、専用アプリを介してスマホにデータを転送し、写真を確認しながら印刷しました。
「INSTAX mini Link 2」は文庫本より少し小さいくらいの大きさです。持ち運びが苦にならないので、「ぱるお」とともに持ち運んで、場所を選ばずにプリントを楽しめると思います。
撮影からプリントまで、すべてがコンパクトなサイズ感で完結してくれるのが魅力
何気ない日常のワンシーンもチェキプリントすると特別感がいっそう高まります
専用アプリを使えば、文字やイラストなどを写真に合成することもできるので、ひと昔前のプリクラのような感覚で写真のデコレーションを楽しめます。もういい歳なので普段なら絶対やらないところですが、せっかくなので控え目なスタンプを押したものを記念に1枚プリントしてみました
今回使用した「ぱるお(INSTAX Pal)」は、カラフルでかわいい見た目やサイズ感だけを取ると、とてもカメラとは思えない個性的な存在です。もちろん、一般的なデジタルカメラと比較すると、画像そのものは決して高画質とは言えません。
それでも気負わずに写真が撮れる手軽さや、撮った後に簡単にプリントができること、それを誰かと共有する楽しさを含めて、今のカメラ業界が追い求める高画質路線とは一線を画した「写真そのものを楽しむ価値」を改めて感じました。アナログとデジタルのいいところをハイブリッドに楽しめる現代の小型カメラとして、たくさんの人に楽しんでもらいたいと思います。
さて、次の相棒と今度はどこへ行こう。