レビュー

シグマのハンディサイズ「500mm F5.6 DG DN OS」の価格は高い? それとも安い? 実力をチェック

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ソニー「α7R V」と組み合わせて「500mm F5.6 DG DN OS」をテストしました

ソニー「α7R V」と組み合わせて「500mm F5.6 DG DN OS」をテストしました

シグマ「500mm F5.6 DG DN OS | Sports」は、フルサイズミラーレスカメラ用の高性能な超望遠・単焦点レンズ(2024年3月14日発売)。ソニーEマウント用とLマウント用の2種類が用意されています。

大きな特徴は、焦点距離500mmの超望遠レンズながら小さくて軽いこと。大きく重いのが当たり前とされてきた超望遠の世界に、圧倒的な機動力をもたらしてくれる1本です。

2024年5月27日時点での価格.com最安価格は445,500円(ソニーEマウント、Lマウント用ともに)。高性能な超望遠レンズはこのくらいの価格帯が当たり前ですが、シグマのミラーレス用レンズとしては最も高額です。この価格を高いと見るか安いと見るか、実写を通して確認していきたいと思います。

大口径・望遠ズーム並みの小型・軽量ボディ

「500mm F5.6 DG DN OS」は、驚くほどの小型・軽量化を実現した高性能な超望遠・単焦点レンズです。ミラーレスカメラ用の500mm単焦点レンズは他社のラインアップになく比較しにくいですが、一般的な大口径・望遠ズームより少し大きくて重いくらいのサイズ感に収まっています。

「500mm F5.6 DG DN OS」のサイズ・重量
107.6(最大径)×236.6(全長)mm/1365g

「70-200mm F2.8 DG DN OS」のサイズ・重量(大口径・望遠ズームの参考)
90.6(最大径)×207.0(全長)mm/1335g
※いずれもソニーEマウント用

「ハンディサイズの500mm」との呼び名は本レンズの形容としてピッタリだと思います

「ハンディサイズの500mm」との呼び名は本レンズの形容としてピッタリだと思います

実際に手にしてみると、重量バランスがよいためか取り回しがとても良好で、重量以上に軽く感じます。シグマは本レンズを「ハンディサイズの500mm」とうたっていますが、それも決して大げさでないと思います。

ラッパのように先端が広がる独特な意匠がカッコイイ!と感じました

ラッパのように先端が広がる独特な意匠がカッコイイ!と感じました

操作性では、コンパクトな鏡筒ながら、最新のシグマレンズに採用されることが多い「絞りリング」をしっかりと搭載。絞りリングを「A」ポジションに固定できる「絞りリングロックスイッチ」や、クリックの有無を切り替えられる「絞りリングクリックスイッチ」も備わっています。

「絞りリング」を搭載。使い勝手にすぐれ、動画撮影でも活躍してくれます

「絞りリング」を搭載。使い勝手にすぐれ、動画撮影でも活躍してくれます

絞りリング関連以外のスイッチ・ボタン類として、鏡筒左側に「フォーカスモード切換えスイッチ」「フォーカスリミッタースイッチ」「OSスイッチ」「カスタムモードスイッチ」を用意。鏡筒先端付近の3か所(上下左)には「AFロックボタン」が装備されています。上位クラスのレンズらしく、使い勝手に配慮して豊富に取り揃えられていますね。

豊富なボタン・スイッチ類を備えるのは本レンズが上位クラスのレンズである証し

豊富なボタン・スイッチ類を備えるのは本レンズが上位クラスのレンズである証し

レンズに搭載される三脚座は、アルカスイス互換で「SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports」と共通仕様の「TS-151」。ヘキサゴンレンチを使って着脱するタイプです。三脚座を固定するリングは、ノブを緩めることで上下左右に位置を回転可能。90度ごとにクリックがあるので正位置がわかりやすいです。

三脚座は着脱式でアルカスイス互換。上下左右、自由に回転できます

三脚座は着脱式でアルカスイス互換。上下左右、自由に回転できます

付属のレンズフードは、先端部にキズ防止用のラバーが装着されたかぶせ式の「LH1034-02」。ハンディサイズをうたうレンズではありますが、かぶせ式フードを装着すると本格的な超望遠レンズらしい風格が出ます。

かぶせ式のレンズフード「LH1034-02」が付属します

かぶせ式のレンズフード「LH1034-02」が付属します

小柄な見た目からは想像できない高い解像性能

「500mm F5.6 DG DN OS」を試写し始めてすぐに感じたのが、「おいおい、これは解像性能がやたらよくないか!」というものでした。合焦部が切れ込むようにシャープなのはシグマらしい部分ではありますが、ハンディサイズをうたう500mmレンズですので、そこまで高解像とは思っておらず、大変驚かされました。

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/1000秒、ISO400、+1.0EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、30.4MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/1000秒、ISO400、+1.0EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、30.4MB)

この解像性能の高さを伝える作例として撮影したのが以下の写真です。絞り開放のF5.6で撮ってみました。画面全域ですばらしい解像感を感じられます。解像感の高さは中心から画面の周辺にまで均質に及んでいて、隅でようやくわずかな低下を感じる程度。絞り開放から完全に実用できる、非常にすぐれた光学性能といって問題ないでしょう。

絞り開放F5.6で撮影

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/100秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、58.5MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/100秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、58.5MB)

500mmの画角とその応用を考える

シグマは「TC-1411」(1.4倍)と「TC-2011」(2.0倍)という2種類のテレコンバーターを用意していますが、これらはLマウント用で、ソニーEマウント用には対応していません。

それでは、「500mm F5.6 DG DN OS」を使って、焦点距離500mmでも届かない被写体をさらに大きく写したい場合はどうすればよいのでしょうか? ひとつの対策としては、フルサイズミラーレスをAPS-Cサイズで使う、つまり1.5倍にクロップして撮影する方法があげられると思います。

この方法のよいところは、クロップした画面を電子ビューファインダー(EVF)や背面モニターの表示サイズいっぱいで確認できるところ。撮った画像をトリミングするよりも、ピント確認をより正確に確認できますし、何よりフレーミングと構図決定がやりやすくなります。

以下の2枚の作例は、フルサイズとAPS-Cサイズで野鳥(カワセミ)を撮り比べたものです。頑張ってカワセミが近づいてくれるのを待ちましたが、フルサイズの画角ではそれほど大きく写せませんでした。しかし、APS-Cサイズのクロップ撮影に切り替えることで、焦点距離750mm相当で切り取ることができ、カワセミをずっと大きく写せました。それにともない構図にも必然性が生まれました。

フルサイズで撮影

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/100秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、37.1MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/100秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、37.1MB)

クロップ(APS-Cサイズ)で撮影

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm(750mm相当)、F5.6、1/100秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(6240×4160、16.1MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm(750mm相当)、F5.6、1/100秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6240×4160、16.1MB)

もうひとつ野鳥を被写体にした撮影例をご覧ください。

以下の2枚の作例は、ありがたいことに、偶然にも至近距離まで近寄ってくれたモズです。フルサイズの画角でも、それなりに写真として画にできました。でも、鳥を撮るならもう少し大きく撮りたいというのが本音です。そこでAPS-Cサイズでクロップ撮影してみたところ、さらにモズを大きく撮ることができました。

フルサイズで撮影

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F8.0、1/500秒、ISO640、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、37.1MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F8.0、1/500秒、ISO640、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、37.1MB)

クロップ(APS-Cサイズ)で撮影

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm(750mm相当)、F8.0、1/500秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(6240×4160、17.0MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm(750mm相当)、F8.0、1/500秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6240×4160、17.0MB)

先ほど、カワセミの作例の解説で、「クロップ撮影で構図に必然性が生じた」とお伝えしましたが、モズの作例でも同様です。構図をまとめるには、被写体のサイズと、周囲の環境との関係性やバランスが重要ですので、やはり撮影後にトリミングするよりもクロップ撮影で、その場で構図を決定できたほうが写真としての説得力が上がると思います。

クロップ撮影は、ライブビュー映像を見ながら撮れるミラーレスでこそ便利に使える手段ですので、どんどん活用していきたいものです。画面の中央部を切り取るため、レンズの描写性能のよい部分を使えるのもクロップ撮影のポイントとしてお伝えしておきます。

そのほかの特徴を作例で紹介

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/500秒、ISO320、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、39.4MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/500秒、ISO320、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、39.4MB)

ムクドリと春の花との組み合わせが気持ちよく感じたので、手持ちで撮ってみました。目についたものにすぐにレンズを向けられる、この自由度の高さこそがコンパクトな本レンズの本領でしょう。携帯していても持ち重りすることはなく、そのくせファインダーを覗くと500mmの世界なのですからビックリしてしまいます。

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F8.0、1/500秒、ISO400、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、36.9MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F8.0、1/500秒、ISO400、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、36.9MB)

雨上がりに群生するハルニレの花を撮りました。本レンズは本当にすぐれた光学性能を持っており、色収差などはまったく見られません。ピントの合った花弁が切れ込むようにシャープに写っていることにほれぼれとしてしまいます。よく見ると小さな虫が映り込んでいて、それもキッチリ解像していることにまたビックリ。

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F8.0、1/125秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、28.8MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F8.0、1/125秒、ISO100、+0.7EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、28.8MB)

本レンズは最新のアルゴリズムを採用した手ブレ補正「OS2」を搭載しており、その補正効果は最大で5.0段分とのこと。超望遠レンズの手持ち撮影ではとても心強い機能で、1/500秒以下の遅いシャッタースピードでも、よく手ブレを防いでくれました。

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/400秒、ISO400、+1.3EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、34.9MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/400秒、ISO400、+1.3EV、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、34.9MB)

ボケ味もなかなかに良好です。ピントを合わせたユキヤナギの後ろには、またたくさんのユキヤナギが密集といった、いかにも盛大に2線ボケが発生しそうな背景でも、ボケ味は素直に溶け込んでいるので、主要被写体をじゃますることがありませんでした。

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/500秒、ISO160、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、39.5MB)

α7R V、500mm F5.6 DG DN OS、500mm、F5.6、1/500秒、ISO160、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、39.5MB)

本レンズは独自開発のリニアモーターを採用しており、AFは速くて正確で静かです。焦点距離500mmともなると、ピント合わせは非常にシビアになるものですが、狙ったところに素早くピントが合うので苦労はありません。今回、鳥を撮るときは、ソニー「α7R V」の被写体検出AFを使用していますが、その場合も高精度に鳥の瞳にピントを合わせてくれました。ボディ側との連携も万全のようです。

まとめ 価格の価値は十分! 大砲レンズユーザーにとってはむしろ“安い”

「500mm F5.6 DG DN OS」は高性能な超望遠レンズとは思えないほどの小型・軽量で、「ミラーレスとの相性がすばらしくよい」と感じた今回の試写でした。被写体を求めて動き回り、可能であれば手持ちのまま撮影してチャンスをものにしたい、野鳥や飛行機の撮影にうってつけのレンズだと思います。

そして、これまた小柄なレンズとは思えないほどすぐれた描写性能にも大いに感心させられました。絞り開放を使う機会が必然的に多くなる超望遠撮影で、この高画質には頼もしさを覚えます。

価格.com最安価格(2024年5月27日時点)で445,500円という価格だけ見ると高く感じるかもしれません。確かに安い製品ではありませんが、実際に使ってみて価格の価値は十分すぎるくらいにあると感じました。

性能は間違いなく「大砲」と呼ばれる大きな超望遠レンズに匹敵し、運用上のメリットにいたっては完全に超えています。撮影していて、ハンディな見た目に(いい意味で)何度もだまされました。ほかにはないこの特徴を踏まえると、100万円をゆうに超える大柄な超望遠レンズを使い倒している人にとっては、むしろ“安い”と感じるかもしれません。

なお、シグマによると、本レンズは生産が追いつかないくらいのオーダーが入っていて、製品が手元に届くまでに時間がかかる状況とのこと。今回試してみて、そこまで人気を集めるのもうなずけるし、待ってでも欲しいレンズだと感じました。

曽根原 昇
Writer
曽根原 昇
信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。
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真柄利行(編集部)
Editor
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣とこだわりを持っています。フォトグラファーとしても活動中。パソコンに関する経験も豊富で、パソコン本体だけでなく、Wi-Fiルーターやマウス、キーボードなど周辺機器の記事も手掛けています。
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