2018年10月にミラーレスカメラシステム「EOS Rシリーズ」が登場してから約6年。2024年7月17日、キヤノンは「EOS Rシリーズ」初のフラッグシップモデル「EOS R1」を発表した。ミラーレスのフラッグシップ機としてはソニー、ニコンから少し遅れての登場だが、 “1”の型番にふさわしい、プロ向けの高性能カメラに仕上がっている。ここでは、「EOS R1」の注目すべきトピックとして4つの進化点を紹介しよう。
EOS R1
予約開始日:2024年7月23日午前10時
発売日:2024年11月
直販価格:1,089,000円(税込)
キヤノンの新しいフラッグシップモデル「EOS R1」
キヤノンのフラッグシップ機といえば、報道やスポーツなどプロカメラマンのニーズを満たす“道具”として、50年以上にわたって確固たる地位を築いている。厳しい環境での使用に耐えうる高い信頼性を確保しつつ、キヤノンが持つ最先端の技術を惜しげもなく投入することで、その時代における最高峰のAF、連写性能、操作性を実現してきた高性能なカメラだ。「EOSシリーズ」のキーコンセプト「快速・快適・高画質」を最大化する製品であり、一眼カメラ全体の性能を底上げする存在でもある。
今回発表された「EOS R1」は、ミラーレス「EOS Rシリーズ」初のフラッグシップモデル。ついにキヤノンもフラッグシップ機を一眼レフからミラーレスに置き換えるということで、これまでのフラッグシップ機と同等かそれ以上と言ってもよいくらいの、非常に充実した内容のカメラに仕上がっている。
特に押さえておきたいのは、新しいエンジンシステム「Accelerated Capture」を採用していること。高速読み出しが可能なフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー(最大約2420万画素)と最新の映像エンジン「DIGIC X」に加えて、AF/AE検出などの解析処理を行うもうひとつの映像エンジン「DIGIC Accelerator」を搭載することで、「EOSシリーズ」史上最もパワフルなシステムを実現しているという。
新開発のフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー(最大約2420万画素)を採用
AF/AE検出などの解析処理を行う「DIGIC Accelerator」を新搭載
「EOS R1」は、新しいエンジンシステム「Accelerated Capture」によって、これまで以上に大量のデータを高速にキャプチャー・解析できるようになり、あらゆる点が大幅に進化している。
なかでも注目したいのが、「EOS Rシリーズ」史上最高のAFシステムだ。トラッキング性能、被写体検出性能などの強化とあわせて、縦線/横線検出のクロスAFに対応するようになったのが大きなポイント。全画素が撮像面位相差AFと撮像の機能を兼ねるキヤノン独自の「デュアルピクセルCMOS AF」としては初めてのクロスAF対応だ(※従来は縦線検出のみ)。フォトダイオードの配列を見直すことで、トラッキング中でも最大約100%×100%の全エリアでクロスAFを実現している。
縦線検出と横線検出が可能なクロスAFに対応
クロスAFのメリットは、あらゆる状況で被写体の捕捉精度が向上すること。被写体の模様や遮へい物の影響が抑えられるため、粘り強くピントを合わせられる。たとえば、野鳥が羽を伸ばして横長になる飛翔シーンや、バレーボールなどのスポーツにおいて被写体の顔に網の細い線が被るようなシーンでも、これまで以上に安定したAF撮影が可能だという。
AF関連では「アクション優先」という新機能が追加された。特定の動きをする被写体を認識してAFフレームを移動させる機能だ。サッカー、バスケットボール、バレーボールの3競技を選択できる
瞳の動きでAF操作が行える「視線入力」を搭載。センサーの高画素化や光源LEDの増加、フレームレートの向上(最高約60fps)などによって、「EOS R3」よりも動作の安定性が高まっている
素早く動く被写体の一瞬の動きや表情を確実に記録するには、AFとともに連写性能も重要だ。
「EOS R1」は、電子シャッター時に最高約40コマ/秒の超高速連写を実現している(※メカシャッター時は最高約12コマ/秒)。最高約40コマ/秒という速度自体は、「EOS R6 Mark II」など「EOS Rシリーズ」の他モデルでも対応しているのだが、「EOS R1」はさすがにフラッグシップだけあって連写の持続性が異なる。メカシャッター時のスペックにはなるが、RAW+JPEGラージ記録で1000枚以上の連続撮影可能枚数が可能だ。
電子シャッターでの「高速連続撮影+」時に最高約40コマ/秒連写が可能
ドライブモードごとにコマ速を細かく設定することが可能。たとえば、「高速連続撮影+」では40/30/20/15/12/10/7.5/5/3コマから選べる
さらに、電子シャッター撮影時に気になるローリングシャッター歪みも極限まで低減。新しいエンジンシステム「Accelerated Capture」によって、「EOS-1D X Mark III」のメカシャッターと同等レベルにまで動体歪みを抑えているという。電子シャッターのシンクロ速度が1/320秒ということからも、撮像素子の読み出し速度がかなり高速化していることが読み取れる。
キヤノンのミラーレスとしては初めてCFexpress Type Bメモリーカードのデュアルスロットを採用
「EOS R1」の操作性では電子ビューファインダー(EVF)に注目してほしい。
約944万ドット(0.64型)の高精細な有機ELデバイスを採用するうえ、新規設計の光学系を組み合わせることで、約0.9倍のファインダー倍率を達成。最高輝度も向上しており、晴天下のビーチや雪原など明るい環境下でも黒つぶれや白飛びを抑制できる。リフレッシュレートは最高119.88fps。こうしたスペックを確認するだけでも、「EOS Rシリーズ」史上最高のファインダーに仕上がっていることが伝わることだろう。
約944万ドット/倍率0.9倍の高性能EVFを搭載
光学系の一部を密閉構造にすることで防曇性能を高めている
「視線入力」に対応した大型アイカップ「ER-iE」が別売オプションとして用意される
動画撮影は6K/60p RAWのカメラ内部記録に対応
ボディ前面にタリーランプを搭載
縦位置のINFOボタンなどフラッグシップモデルらしい充実した操作性を採用
上面には、「EOS R3」にはなかったWBボタンが追加されている
外装カバーの合わせ部にシーリング部材を組み込むなどして防塵・防滴構造を実現。ボディの信頼性・耐久性は「EOS-1D X Mark III」と同等とのこと
左側面のインターフェイス部。HDMI Type-A端子やEthernet用RJ-45端子、シンクロ端子などが備わっている
「EOS R1」は、キヤノンの新しいフラッグシップモデルとして、プロが求めるスピード、操作性、信頼性に徹底的にこだわって設計されている。特に、有効画素数を最大約2420万画素に抑えることで、新しいエンジンシステム「Accelerated Capture」のパワーを最大限に引き出し、「EOS Rシリーズ」史上最高のAF性能と連写性能を実現している点に注目してほしい。
6K/60p RAW動画を記録できるなど動画撮影機能も高いレベルにあるが、このカメラは、やはり、動体の静止画撮影で真価を発揮すると言える。キヤノンオンラインショップの直販価格は1,089,000円(税込)と非常に高額なので、おいそれと購入できるものではないが、本格的な動体撮影を通して作品作りに真剣に取り組んでいる人で、今使っているカメラのAF速度・精度に不満を持っていたり、もっと高速な連写性能を求めていたりするのであれば、「EOS R1」はその高い要求に応えてくれることだろう。