ニコンは2024年11月7日、ミラーレスカメラ「Zシリーズ」のエントリーモデル「Z50II」を発表した。従来モデル「Z50」から約5年ぶりのリニューアルということで、あらゆる点で大幅な進化を遂げている。主な特徴をまとめよう。
「Zシリーズ」の新しいエントリーモデル「Z50II」
■製品ラインアップ/直販価格(税込)
ボディ単体 145,200円
16-50 VR レンズキット 166,100円
18-140 VR レンズキット 199,100円
ダブルズームキット 198,000円
発売日:2024年12月13日
予約販売受付:2024年11月12日10時より
「Z50II」の性能面では、フラッグシップモデル「Z9」と同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載することで、AFや連写などの使い勝手が大きく向上したのがトピックだ。
AFは、被写体検出がアップデートされ、「Z9」などと同様、9種類(人物/犬/猫/鳥/車/バイク/自転車/列車/飛行機)の被写体に対応。9種類の中から特定の被写体を選択できるほか、不特定の被写体を撮る場合に便利なオート設定も用意されている。
さらに、指定した被写体を高精度に追尾する「3D-トラッキング」は追従性が向上。被写体の動きや構図に合わせてカメラがAFモード(AF-S/AF-C)を自動で設定する「AF-A」の性能が向上したのもポイントで、被写体の小さな動きにも反応してAF-Cに切り替わるようになったとのことだ。
「Z9」など上位モデルと同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載
連写はメカシャッター時で最高約11コマ/秒、電子シャッター時で最高約15コマ/秒。上位モデルに搭載されてきたJPEGでの高速連写機能「ハイスピードフレームキャプチャー+」が追加されており、この機能を利用した際は、フル画素/フル画角で最高約30コマ/秒の超高速連写が可能だ。シャッターボタンを押し込む前(最大1秒前)の画像を記録できる「プリキャプチャー」にも対応している。
撮像素子は、従来モデル「Z50」と同じ有効2088万画素のCMOSセンサー(DXフォーマット/APS-Cサイズ)
ガイドナンバー約7の内蔵フラッシュを搭載
「Z50II」ならではの特徴として押さえておきたいのが、充実した撮影機能。特に、DXフォーマット(APS-Cモデル)機として初めて独自のクラウドサービス「Nikon Imaging Cloud」との連携に対応しているのがポイントだ。
「Nikon Imaging Cloud」の目玉機能は、色味や明るさ、コントラストなどを調整した画作りをレシピとして保存できる「イメージングレシピ」。自分好みのレシピを作成して撮影を楽しめるうえ、著名なクリエイターが監修したレシピ(無料)をカメラに取り込んで使用することが可能だ。
さらに、仕上がり設定「ピクチャーコントロール」をワンステップで切り替えられる「ピクチャーコントロールボタン」を新たに搭載するのも特徴。よく使う項目だけを表示できるように、「ピクチャーコントロール」の絞り込み機能も追加された。細かいところでは、オート撮影モードでも「ピクチャーコントロール」を変更できるようになった。「ピクチャーコントロール」は、最新の「ディープトーンモノクローム」「リッチトーンポートレート」など11種類に対応している。
ボディ上面。メインコマンドダイヤルの近くに「ピクチャーコントロールボタン」が新設された。オート撮影モードでも「ピクチャーコントロール」を変更できる
画質面では、「EXPEED 7」の採用によって高感度耐性が向上。常用の最高感度は従来モデルと同じISO51200だが、従来以上に、高感度でもノイズを抑えながらより解像感のある画質が得られるようになったとのことだ。
ニコンのカメラは、エントリー向けでも使いやすさにこだわって設計されている。「Z50II」にもその思想はしっかりと受け継がれており、上位モデル譲りの操作性を取り入れることで、従来モデル以上に撮影しやすいカメラに進化している。
そのこだわりが詰まっているのがグリップだ。ボディのサイズを抑えながら、深くて握りやすい形状を追求することで、安定したホールド感が得られるようになっている。
深くて握りやすい形状のグリップを採用
ボディ周りでは電子ビューファインダー(EVF)の形状にも注目してほしい。従来モデルよりも接眼部分の出っ張りを抑えた新しいデザインを採用している。この工夫によって、従来よりもカバンやケースからカメラを取り出しやすくなったという。
出っ張りを抑えた新しい形状のファインダー接眼部分
EVFの性能も向上しており、従来モデルの倍となる最高1000カンデラの高輝度を実現。ビーチなど屋外の明るい場所でも被写体をしっかりと確認しながら撮ることができる。倍率約0.68倍(35mm判換算)、アイポイント19.5mmというスペックは従来モデルと同等だ。
使いやすさの点では、「EXPEED 7」の採用によって、起動時間を約0.5秒(従来モデルの約半分)に短縮したのもポイントである。
背面。フォーカスポイントをダイレクトに操作できるサブセレクターはさすがに用意されていないものの、基本的には上位モデルのボタンレイアウトを継承。エントリーモデルながら、各所にシーリングを施すことで防塵・防滴に配慮したボディに仕上がっている
液晶モニターは3.2型(104万ドット)のバリアングル液晶
このほか、ユーザーインターフェイス関連では、静止画撮影時の縦向き表示に対応。カメラを縦位置にして撮影すると、モニターやEVFの表示情報、メニュー画面が自動で縦向きに切り替わるようになった。
サイズは127(幅)×96.8(高さ)×66.5(奥行)mmで、重量は約550g(バッテリー/メモリーカードを含む、ボディキャップを除く)。グリップを含めて全体的にボディが少し大きくなったこともあって、従来モデルと比べると約100g重くなっている。
底面
動画撮影は、5.6Kオーバーサンプリング(DXフォーマット時)での4K UHD(3840×2160)/30p記録が可能。4K UHD/60p記録も選択できる。Log撮影(N-Log)とHLG撮影にも対応している。
ユニークなのは、画面手前の被写体に優先してピントを合わせる「商品レビューモード」をニコンのカメラとして初めて搭載していること。録画ボタンを押してから撮影開始までの間隔を2秒/10秒から選択できる「動画セルフタイマー」機能も追加されている。動画撮影時の電子手ブレ補正の性能も強化された。
このほか、フルHDで2倍まで拡大できる「ハイレゾズーム」など上位モデルと同等の機能を搭載。パソコンやスマートフォンと接続することでWebカメラとして利用できるUSBストリーミング(UVC/UAC規格)にも対応している。
左側面のインターフェイス。マイク入力、ヘッドホン出力(リモートコード対応)、HDMI端子(Type D)、USB Type-C端子が備わっている
付属バッテリーは「EN-EL25a」。撮影可能コマ数は最大約250コマ(モニターのみの表示、パワーセーブ・静止画モードがオンの場合)
「Z9」と同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載し、AFと連写が向上。多彩な撮影が楽しめるように「イメージングレシピ」に対応。深くて握りやすい形状を追求したグリップに代表されるこだわりの操作性。こうした特徴を見ると、「Z50II」は、ニコンの工夫が随所に詰まった魅力的なエントリーモデルと評せるだろう。
単に上位モデルの性能・機能を継承しているのではなく、このカメラならではの作り込みや機能を搭載しているのが面白い。ニコンのカメラとしては、オート撮影モードで仕上がり設定「ピクチャーコントロール」を選択できるようになったのは大きな改良点である。
製品ラインアップと直販価格は以下のとおり。約5年前に登場した従来モデルと比べると2万円ほど価格が上昇しているが、カメラとしての性能向上と昨今の経済状況を加味すると、むしろ「お買い得のあるカメラ」と言えるのではないだろうか。
■製品ラインアップ/直販価格(税込)
ボディ単体 145,200円
16-50 VR レンズキット 166,100円
18-140 VR レンズキット 199,100円
ダブルズームキット 198,000円
発売日:2024年12月13日
予約販売受付:2024年11月12日10時より