キヤノン「RF28-70mm F2.8 IS STM」は、2024年9月に発売された、RFマウント用のフルサイズ対応・大口径標準ズームレンズ。広角端の焦点距離を28mmと控えめに設計していることもあって、非常にコンパクトに仕上げられているのが大きな特徴です。
2024年12月16日時点での価格.com最安価格は169,000円程度。キヤノンのフルサイズ対応・大口径標準ズームは高性能ブランド「Lレンズ」であることが多いのですが、本レンズはそうではないこともあって、比較的お求めやすい価格に設定されています。
「Lレンズ」ではないものの、侮ることのできない性能を持つと言われる本レンズ。その実力を確認していきましょう。
フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5 Mark II」と組み合わせて「RF28-70mm F2.8 IS STM」を試用しました
「RF28-70mm F2.8 IS STM」は、開放F2.8通しの大口径と小型・軽量化の両立を目指して設計された新しいタイプの標準ズームです。そのサイズは 約76.5(最大径)×92.2(全長、収納時)mm で、重量は約495g。同じRFマウントの「RF24-70mm F2.8 L IS USM」と比べるとその差は一目瞭然です。
RF28-70mm F2.8 IS STM
約76.5(最大径)×92.2(全長、収納時)mm /約495g
RF24-70mm F2.8 L IS USM
約88.5(最大径)×125.7(全長)mm/重量約900g
左が「RF28-70mm F2.8 IS STM」で、右が「RF24-70mm F2.8 L IS USM」。サイズ感の違いは歴然です
「RF28-70mm F2.8 IS STMは、広角端の焦点距離が28mmに抑えられているものの、全長が10cmを切る(約92.2mm)というのは驚異的な小型・軽量化に成功していると言ってよいでしょう。ただし、本レンズは沈胴式を採用しているため、広角端(28mm)時は約112.4mm、望遠端(70mm)時は約138.9mmまで全長が伸びます。沈胴式としては極端に繰り出すわけではないのですが、収納時と使用時でレンズの全長が変わる点は知っておいてほしいです。
広角端(28mm)時のレンズの長さは約112.4mm
望遠端(70mm)時のレンズの長さは約138.9mm
「RF28-70mm F2.8 IS STM」の操作性はシンプルで、リングは、「RFレンズ」ならではの「フォーカス/コントロールリング」とズームリングを搭載しています。「フォーカス/コントロールリング」は、フォーカスリングとしてはもちろん、感度や露出補正などの機能を割り当てた「コントロールリング」としても利用可能です。
レンズ先端から「フォーカス/コントロールリング」とズームリングの順でリング類が並びます
スイッチ類は「フォーカスモード/コントロール切り換えスイッチ」と「手ブレ補正スイッチ」の2つ。「フォーカスモード/コントロール切り換えスイッチ」は「フォーカス/コントロールリング」の機能を設定するためのもので、AF/CONTROL/MFを選択できます。CONTROLを選択すると「コントロールリング」として動作するようになります。
鏡筒左手側の「フォーカスモード/コントロール切り換えスイッチ」と「手ブレ補正スイッチ」
対応するレンズフードは「EW-73D」。ロックスイッチを備えた作りのよいレンズフードですが、残念ながら別売り品です。ゴーストやフレアの発生を抑えるためにも、ぜひ用意したいアクセサリーです。
対応するレンズフードは「EW-73D」。別売り品です
ここからは、「RF28-70mm F2.8 IS STM」の解像性能を確認していきたいと思います。今回は、広角端の焦点距離こそ異なりますが、同じくキヤノン製の大口径・標準ズーム「RF24-70mm F2.8 L IS USM」と比較してみました。高性能で知られる「Lレンズ」との比較ですので、「RF28-70mm F2.8 IS STM」がどこまで迫れるのかに注目してください。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、28mm、F2.8、1/320秒、ISO100、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、30.0MB)
EOS R5 Mark II、RF24-70mm F2.8 L IS USM、28mm、F2.8、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、32.1MB)
焦点距離28mmの絞り開放で撮り比べてみました。「RF28-70mm F2.8 IS STM」は画面全体ですばらしい解像感が得られており、特に画面中心付近での高い解像性能は「Lレンズ」に勝るとも劣らないほどの優秀さです。ただし、周辺付近では、わずかではありますが中心付近に比べてやや解像感の低下が見られます。
いっぽうの「RF24-70mm F2.8 L IS USM」は、結果としては、画面中心付近の描写性能は「RF28-70mm F2.8 IS STM」とおおむね同程度。さらにその高い描写性能は周辺でも維持され、画面全体で安定的に高画質を実現しているというものでした。ここはさすが、キヤノンの誇る「Lレンズ」だけあります。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、70mm、F2.8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、30.4MB)
EOS R5 Mark II、RF24-70mm F2.8 L IS USM、70mm、F2.8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、28.2MB)
続いて、望遠端(70mm)/絞り開放での比較を見ていきましょう。「RF28-70mm F2.8 IS STM」は望遠端も非常に高画質で、コントラスト、シャープネスとも画面全体で安定しています。本レンズは「Lレンズ」ではありませんが、それに匹敵するほどの高画質を実現していることがよく理解できる1枚になりました。
「RF24-70mm F2.8 L IS USM」も、さすが「Lレンズ」だけあって確かな描写性能と言いたいところですが……、「RF28-70mm F2.8 IS STM」に比べると、明らかに解像感が低くなっている印象を受けます。確かに合焦マークを確認していましたがわずかにピントを外していたのか、それともレンズの個体差によるものなのかわかりませんが、悪くはなくとも「Lレンズ」らしくない結果となってしまいました。
「Lレンズ」である「RF24-70mm F2.8 L IS USM」の撮影結果に釈然としないものがあったものの、少なくとも「RF28-70mm F2.8 IS STM」の描写性能が非常に優秀であることは確実です。広角端28mm、望遠端70mmとも、解像性能に関しては「Lレンズ」と比べても、まったくそん色のないレベルにあると考えて問題はないと思います。
ただ、「RF24-70mm F2.8 L IS USM」に対して、「RF28-70mm F2.8 IS STM」は、広角端28mm時、望遠端70mm時とも、画角がわずかに狭くなっていることが少し気になります。おそらくは、ボディ内で歪曲収差をデジタル的に補正している影響ではないかと考えられます。こうしたことは本レンズがコンパクト性を追求していることによるものでしょう。
昨今の標準ズームは、被写体に寄って大きく写すことができる近接撮影性能にすぐれたものが多いです。「RF28-70mm F2.8 IS STM」の近接撮影性能がどれほどのものか確認してみました。
「RF28-70mm F2.8 IS STM」の広角端28mmでの最短撮影距離はAF時で0.27m、MF時で0.24m。いずれも大口径・標準ズームとしては最短撮影距離がかなり短く、背景を広く取り入れながら被写体を大きく写すことができます。特にMF時の最短撮影距離が0.24mなのはすばらしく、面倒でもフォーカスモードをMFにしてワイドマクロ的な撮影を楽しみたくなります。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、28mm、F2.8、1/320秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、フォーカスモード:MF
撮影写真(8192×5464、13.0MB)
望遠端70mmの最短撮影距離は公表されていませんが、広角端よりは離れて撮る必要がありました。また、望遠端ではAF時とMF時で最短撮影距離の違いはないようです。ただし、「RF28-70mm F2.8 IS STM」の撮影倍率はこの望遠端時に最大の0.24倍となります(AF時、MF時とも)。被写体をより大きく写して大口径ならではの大きなボケのなかに浮かび上がらせたいという場合は、望遠端での撮影が有効と言えるでしょう。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、70mm、F2.8、1/320秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、フォーカスモード:MF
撮影写真(8192×5464、13.2MB)
キヤノンはAFモーターの開発力が非常に高いメーカーです。「RF28-70mm F2.8 IS STM」にはステッピングモーター(STM)が採用されていますが、磁気センサーを搭載し、モーターの回転数を上げるとともにフィードバック制御を採用することで、高速なAFが実現されているとのこと。実際使ってみて、確かに高速かつ高精度で、静かなAF駆動であることを実感できました。もちろん、被写体検出機能にも対応しているので、不規則に動く猫の瞳を素早くとらえることができました。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、70mm、F2.8、1/640秒、ISO400、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、18.2MB)
「Lレンズ」ではないズームレンズなのに、うれしくなってしまうほど高画質であるところは、前述のとおり本レンズの大きな特徴です。絞り開放のF2.8でも高画質を楽しめますが、F5.6以上に絞れば画面の隅々にいたるまで、さらにとぎすまされた高い解像感を味わえます。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、70mm、F5.6、1/100秒、ISO100、-1.0EV、ホワイトバランス:日陰、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、31.4MB)
解像性能だけでなく、ボケ味も良好なのが本レンズの特徴。開放F2.8の大口径ズームですので、自然でやわらかいボケ味を存分に楽しめます。高い解像性能と良好なボケ味の両立というのは、本来とても難しいことのはずですが、本レンズでは、さらにコンパクト性と低価格を兼ね備えているのが魅力的です。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、70mm、F2.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、15.8MB)
逆光耐性も優秀で、画面内に太陽のような強い光源が入っても、ゴーストやフレアなどを効果的に抑制してくれます。ただし、広角端側では画面内に入らないような位置からの、ギリギリの位置からの有害光の影響を受けることもあるため、別売りのレンズフードはぜひ用意したいです。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、70mm、F5.6、1/2500秒、ISO100、-2.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、14.9MB)
今回試用してみて、コンパクト性を重視した大口径・標準ズームが、これほど取り回しにすぐれているとは思いませんでした。それでいて、高画質でボケも美しいときたものですから、使う側としては最大限の納得を感じずにいられません。ミラーレスカメラの仕様に最適化された、今時の高性能ズームレンズはこれだ! という気持ちになります。
EOS R5 Mark II、RF28-70mm F2.8 IS STM、70mm、F5.6、1/320秒、ISO100、-1.0EV、ホワイトバランス:日陰、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、25.2MB)
「RF28-70mm F2.8 IS STM」の魅力は、キヤノンの高性能ライン「Lレンズ」ではないものの、それに匹敵、あるいはそれ以上の描写性能を持った、高画質な大口径・標準ズームであるところです。
広角端の焦点距離を28mmにするという英断があってのことなのか、圧倒的なコンパクト性に加え、高い解像性能に自然なボケ味を兼ね備えた優秀さは、まさに「今時のミラーレス用の大口径・標準ズーム」として誇るべきものがあると思います。
最新設計の大口径標準ズームとして、「Lレンズ」とそうでないレンズの、垣根を越えてしまう、いい意味で危険なレンズと言えるかもしれません。今後、多くのキヤノンユーザーに受け入れられていくことでしょう。実際、じわじわと人気が高まっていて、価格.com「レンズ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングは2024年12月16日時点で15位まで上昇しています。