ソニーから開放F2通しの標準ズームレンズ「FE 28-70mm F2 GM」が2024年12月13日に発売された。小型・軽量を実現した大口径ズームとして注目度の高い1 本だ。今回は、本レンズの魅力を開放F2.8通しの「FE 24-70mm F2.8 GM」と比較しながらレビューしていく。
「FE 28-70mm F2 GM」に同梱されるレンズフードは花形バヨネット式。カメラは有効約6100万画素のフルサイズミラーレス「α7R V」を使用した
掲載する写真作例について
※写真はすべてJPEG形式の最高画質(エクストラファイン)で撮影。倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オートに設定しています。
ソニーからまた意欲的なレンズが登場した。広角から中望遠までのズーム全域を「F2」という明るい開放絞り値で撮影できる「FE 28-70mm F2 GM」である。2025年1月13日現在、開放F2通しの標準ズームは、本レンズを除くとキヤノンの「RF28-70mm F2 L USM」(2018年12月発売)のみ。これだけでも、本レンズのユニークさが伝わるだろう。
描写力に関しては、後述の作例で確認していただこうと思うが、まずはそのフォルムを見ていこう。ある意味、本レンズ最大の魅力は、この個性的なスペックを約918gという1kgを切る重量と、92.9(最大径)× 139.8(全長)mm(フィルター径は86mm)というコンパクトなサイズで実現していることにある。最高峰の「G Master」レンズらしく操作性も申し分ない仕上がりだ。
レンズフードなしの状態。重量は約918g、サイズは92.9(最大径)× 139.8(全長)mm。開放F2通しであることを考慮すると軽くてコンパクト。ここは非常に大きな強みだ
レンズ側で絞りの調整ができる絞りリングを搭載。カメラ側で調整する場合には「A」に合わせる。「A」と「A以外」を誤操作しないようにする「アイリスロックスイッチ」も搭載されている。好きな機能を割り当てられる「フォーカスホールドボタン」は2か所にあって、縦位置と横位置に対応する
レンズ右側面に、ズームリングの回転の重さを調整できる「ズーム操作感切り換えスイッチ」と、絞りリングのクリック音をなくすことができる「絞りリングクリック切り換えスイッチ」が用意されている
レンズフードは小窓付き。フィルター操作も簡単に行える。ちなみにレンズフードのほか、ソフトケースも付属する
開放F2.8通しの標準ズームと比較してみよう。左が「FE 28-70mm F2 GM」で、右が「FE 24-70mm F2.8 GM」。「FE 28-70mm F2 GM」のほうが厚みはあるものの際立って大きいという印象はない
上から見たところ。最大径は「FE 28-70mm F2 GM」のほうが92.9mmで大きく見える。「FE 24-70mm F2.8 GM」の重量は約886gで、サイズは87.6(最大径)×136(全長)mmだ
本レンズの重量は、それ自体決して軽くはない。しかし、このクラス(開放F2通し)の標準ズームとしては驚くべき軽量感だ。開放F2.8通しの標準ズームと同じように使用できるのがすばらしい。
ここからは、作例を交えながら「FE 28-70mm F2 GM」の描写力を見ていこう。やはり気になるのは開放F2付近の画質だろう。本レンズはプロ向けの最高峰「G Master」の称号を与えられたレンズで、それだけで期待感が高まる。
以下の3枚は開放F2で撮影したものだが、ピントの合った部分はシャープで眠たさはない。前後のボケも滑らかで非常にやわらかい。F2ならでは独特の立体感が表現されている。
広角端28mmで撮影。造花の質感がしっかり伝わる。広角側はダイナミックなボケとともに開放感のある描写が楽しめる
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、F2、1/500秒、ISO100、+0.7EV、WB:オート、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
撮影写真(9504×6336、37.2MB)
望遠端70mmで撮影。イチョウの落ち葉で前後ボケを作った。ピントの合った部分とボケた部分のメリハリがいい
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、70mm、F2、1/8000秒、ISO100、-0.3EV、WB:オート、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
撮影写真(9504×6336、40.7MB)
やや弱めの逆光シーン。フレアやゴーストも良好に抑制してくれている。レンズフードの効果も大きいところだ
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、44mm、F2、1/4000秒、ISO100、-0.7EV、WB:太陽光、クリエイティブルック:ST、歪曲収差:オフ
撮影写真(9504×6336、41.5MB)
続いて、開放F2の描写力を接写でも確認してみよう。本レンズはズーム全域で最短撮影距離0.38m、最大撮影倍率0.23倍となっている。
ぐっと寄るとピントの合った輪郭部にやや眠さが生じるものの、許容範囲ではないだろうか
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、70mm、F2、1/6400秒、ISO100、-0.3EV、WB:オート、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
撮影写真(9504×6336、32.4MB)
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、70mm、F2、1/6400秒、ISO100、-0.3EV、WB:オート、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
撮影写真(9504×6336、37.9MB)
F8まで絞ってみた。画面周辺まで非常に高い解像感ですばらしい。このあたりの安定感はさすがといったところ
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、F8、1/200秒、ISO100、-0.7EV、WB:太陽光、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
撮影写真(6336×9504、58.5MB)
「FE 28-70mm F2 GM」の購入を検討する際、どうしても開放F2.8通しの標準ズーム「FE 24-70mm F2.8 GM」が比較対象になる。28mm端でF2通しと24mm端でF2.8通し。携行性や価格なども含めて総合的に判断する必要があり、ここはとても悩ましい。ただ、軸になるのはやはり全域でF2という明るさに利便性をどこまで感じられるかだ。
以下の2枚は、最短撮影距離まで被写体に近づき、広角端/絞り開放で撮影したものだ。当然ながら28-70mm/F2と24-70mm/F2.8では作れる画が変わる。どちらがいい悪いではなく、どちらを自分が選択したいかだろう。
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、F2、1/1000秒、ISO100、-0.7EV、WB:オート、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
撮影写真(9504×6336、38.1MB)
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM、24mm、F2.8、1/640秒、ISO100、-0.7EV、WB:オート、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
撮影写真(9504×6336、37.4MB)
焦点距離については、28mmと24mmは4mmの違いでしかないが、広角側の4mmの差は画角に大きな違いを生む。下の作例のような景観撮影が必須の場合、正直なところ「FE 28-70mm F2 GM」の1本では心許ない。この場合、広角ズームも携行できるのが理想だし、そのほうが安心できる。
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、F8、1/400秒、ISO100、-0.7EV、WB:太陽光、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM、24mm、F8、1/400秒、ISO100、-0.7EV、WB:太陽光、クリエイティブルック:VV2、歪曲収差:オート
レンズ交換の手間を省きながら、明るい絞り値をズーム全域で利用できるのも「FE 28-70mm F2 GM」の魅力のひとつだ。そういった意味では、ポートレートのなかでもウエディングや七五三、ファミリーフォトなど、直感的に焦点距離や絞り値を変更しながら撮影することの多い場面で本レンズは大変重宝する。通常の標準ズームではなかなか演出できないボケ味とともにドラマチックな描写が行える。
滑らかなボケとともに広角側で背景を広めに入れ込んで撮影した。やや暗めの室内でも開放絞り値の明るさがシャッター速度を稼いでくれる。こうしたシーンも、ズームで最適な切り取り方を直感的に探りながら浅い被写界深度で描写できる
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、31mm、F2、1/125秒、ISO100、+0.3EV、WB:オート、クリエイティブルック:PT、歪曲収差:オフ
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、F2、1/50秒、ISO100、+1.0EV、WB:オート、クリエイティブルック:PT、歪曲収差:オフ
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、F2、1/250秒、ISO100、+1.0EV、WB:オート、クリエイティブルック:PT、歪曲収差:オフ
撮影写真(9504×6336、27.5MB)
28mmで撮影。人物撮影の場合、広角端28mmは背景の要素をバランスよく入れ込むことができ、扱いやすい焦点距離だ。これを開放F2の大きなボケで表現できるのがいい
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、絞り優先オート、F2、1/500秒、ISO100、-0.3EV、WB:オート、クリエイティブルック:FL、歪曲収差:オフ
50mmで撮影。背景の玉ボケも美しい
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、50mm、F2、1/1250秒、ISO100、WB:オート、クリエイティブルック:PT、歪曲収差:オフ
α7R V、FE 28-70mm F2 GM、28mm、F2、1/640秒、ISO100、WB:オート、クリエイティブルック:VV、歪曲収差:オフ
「FE 28-70mm F2 GM」を使ってみて、率直にすばらしいと感じたのはその軽量コンパクトなフォルムだ。もっと正確に言えば、開放F2.8通しの標準ズームを携帯している感覚で用いることができることに感動した。
そもそも開放F2通しの標準ズームは携行性に難がある。本来このクラスのレンズはフットワーク重視の人物撮影で重宝すると考えている。そういった意味では、あまり重いとそれだけでパフォーマンスは落ちるし、長時間の撮影には不向きとなる。「FE 28-70mm F2 GM」は単にスペック偏重なのではなく、フォトグラファーの撮影スタイルに寄り添うように操作性がすぐれていて好感が持てる。
ちなみに、今回比較で使用した「FE 24-70mm F2.8 GM」には後継機となる「FE 24-70mm F2.8 GM II」があり、こちらは重量が約695g、サイズが87.8(最大径)×119.9(全長)mmと、他社製品を含め開放F2.8通しの標準ズーム全般を見ても軽量コンパクトな作りだ。ソニーの標準ズームのラインアップは非常にレベルが高い。28-70mm/F2と24-70mm/F2.8、どれにすべきか……(あるいは、両方行ってしまうか…)、やはり悩ましいのである。
「FE 28-70mm F2 GM」の価格.com最安価格は42万円台(2025年1月13日時点)でそれなりの価格だが、標準ズームの既存イメージを覆す潜在能力を持っている。“標準ズームはつまらない”と考えている人にこそ使ってもらいたい1本だ。