キヤノン「PowerShot G7 X」とソニーの「サイバーショット DSC-RX100M3」(以下、RX100 III)は、1インチ(1.0型)サイズの大型センサーを搭載する「1インチコンデジ」の人気モデル。価格.comマガジンでは、両モデルのスペックを比較したレポート記事を公開しているが、今回は、実機を使って両モデルの違いをさらに深堀り。画質と操作性を徹底比較した。
両モデルとも広角端の焦点距離は24mm(35mm判換算)。絞り値F8でパンフォーカス撮影した作例や、開放F1.8でのマクロ作例などを使って画質の傾向をレポートする。
以下に掲載する作例は、PowerShot G7 Xとサイバーショット DSC-RX100M3を使って、晴天下の屋外で同じ被写体をJPEG形式の最高画質で撮影したものになります。レンズの焦点距離は、35mm判換算で24mmの画角(広角端)。評価測光/マルチ測光(初期設定)を選択し、絞り優先AEでF値をF8に設定しました。掲載する作例は、露出補正で明るさを調整して撮影したものの中から、適正露出の範囲内で、かつ、できる限り両機種で露出差がないものを選択しています。
PowerShot G7 Xの設定は、記録画素数:ラージ(L)、圧縮率(画質):スーパーファイン、ホワイトバランス:オート、マイカラー:切、i-コントラスト(ダイナミックレンジ補正、暗部補正):OFF、高感度時NR:標準。サイバーショット DSC-RX100M3の設定は、画像サイズ:L:20M、画質:エクストラファイン、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー/オートHDR:切、高感度NR:標準です。ほぼ初期設定のままですが、サイバーショット DSC-RX100M3のDレンジオプティマイザーについては、初期設定のオートから切に変更しています。
※以下のサムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺960ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行なっていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
PowerShot G7 X
F8、1/500秒、ISO125、EV+0.3
撮影写真(5472×3648)
サイバーショット DSC-RX100M3
F8、1/400秒、ISO125、EV0.0
撮影写真(5472×3648)
※以下の画像は、撮影写真の一部分(それぞれの機種で300×300)をピクセル等倍で切り抜いたものになります。クリックすると、より大きなピクセル等倍の切り抜き画像(それぞれの機種で450×450)が開きます。
画像中央切り抜き(左:PowerShot G7 X、右:サイバーショット DSC-RX100M3)
画像周辺切り抜き(左:PowerShot G7 X、右:サイバーショット DSC-RX100M3)
両モデルとも、1インチ(1.0型)センサーを搭載し、PowerShot G7 Xは有効約2020万画素の裏面照射型CMOSセンサーを、RX100 IIIは有効約2010万画素の裏面照射型Exmor R CMOSセンサーを採用している。センサーのスペックは、有効2000万画素程度の裏面照射型の1インチセンサーでほぼ共通している。また、レンズ広角端の焦点距離は、両モデルとも24mm(35mm判換算の画角)。広角端の開放F値もF1.8で共通だ。さらに、広角端での最短撮影距離についても同じで、両モデルとも5cm(レンズ先端から)。このように、広角端での撮影については、共通点が多い2モデルとなっている。
上の作例は、絞りをF8まで絞って、広角端でパンフォーカス撮影したものになる。注目したいのは解像感と色描写。解像感については、画像処理の特徴の違いもあると思うが、RX100 IIIのほうがシャープ感が強い結果となった。ソフトウェア処理によるリンギング(擬似輪郭)が少なく、木の枝の細かいところまできっちりと描き切れている。好みの問題もあるかもしれないが、絞った状態で風景などの遠景を撮影する場合は、解像感についてはRX100 IIIが高くなる傾向にある。また、画像周辺の画質については、両モデルで大きな差は出なかった。ただ、明暗の輝度差がある部分だと、PowerShot G7 Xは、裏面照射型CMOSセンサー特有の輪郭がややにじむような描写になるのが気になった。
次に、色描写についてレポートしたい。上の作例は、オートホワイトバランスに設定して、青空の色が出やすい順光下で撮影したものになるが、全体の色味や、青空のグラデーションのつながり具合などをチェックすると、両モデルで違いが出ていて面白い。PowerShot G7 Xは、非常に抜けがよく、明るくて発色のよい感じに仕上がっている。RX100 IIIは、やや発色がおとなしく、青みの強い(シアンやマゼンタに寄った)色になっているのが特徴だ。さらに、青空のグラデーションを見てみると、PowerShot G7 Xのほうが、なめらかに表現されていることがわかる。比べると、RX100 IIIはややのっぺりとした感じだ。なお、掲載した作例以外にも、ややアンダー、ややオーバーに撮影したものでも比較してみたが、PowerShot G7 Xは、露出を変えても、ハイライトの抜けのよさを保ったまま中間調からシャドーの明るさが変わる傾向にあり、青空のグラデーションがうまく表現されるように感じた。いっぽうのRX100 IIIは、露出設定によって写真全体の明るさが変わる傾向にあり、青空のグラデーションについては、暗めにすると出てはくるのだが、全体の抜けが悪くなる。なお、RX100 IIIでは、白とび・黒つぶれを抑えて階調表現を調整する「Dレンジオプティマイザー」を初期設定のオートにしても撮影してみたが、このシーンにおいては、オフの写真と比べて、青空のグラデーションの出方に変化は見られなかった。
なお、今回は、他の作例においても、両モデルでできる限り露出差がない写真を掲載しているが、露出をそろえると、PowerShot G7 Xのほうがシャッタースピードが速くなることがほとんどとなった。PowerShot G7 Xのほうが実効感度が高い、もしくはRX100 IIIのほうが低いのかは判断できないが、ほぼ同じ有効画素数で同じサイズのセンサーを搭載している2機種としては、露出値の出方に違いがあるのは間違いない。
以下に掲載する作例は、PowerShot G7 Xとサイバーショット DSC-RX100M3を使って、同じ被写体をJPEG形式の最高画質で撮影したものになります。レンズの焦点距離は、35mm判換算で24mmの画角(広角端)。評価測光/マルチ測光(初期設定)を選択し、絞り優先AEでF値を開放F1.8に設定しました。掲載する作例は、露出補正で明るさを調整して撮影したものの中から、適正露出の範囲内で、かつ、できる限り両機種で露出差がないものを選択しています。
PowerShot G7 Xの設定は、記録画素数:ラージ(L)、圧縮率(画質):スーパーファイン、ホワイトバランス:オート、マイカラー:切、i-コントラスト(ダイナミックレンジ補正、暗部補正):OFF、高感度時NR:標準。サイバーショット DSC-RX100M3の設定は、画像サイズ:L:20M、画質:エクストラファイン、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、高感度NR:標準です。
※以下のサムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺960ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行なっていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
PowerShot G7 X
F1.8、1/250秒、ISO125、EV0.0
撮影写真(5472×3648)
サイバーショット DSC-RX100M3
F1.8、1/160秒、ISO125、EV-0.3
撮影写真(5472×3648)
※以下の画像は、撮影写真の一部分(それぞれの機種で300×300)をピクセル等倍で切り抜いたものになります。クリックすると、より大きなピクセル等倍の切り抜き画像(それぞれの機種で450×450)が開きます。
画像中央切り抜き(左:PowerShot G7 X、右:サイバーショット DSC-RX100M3)
画像周辺切り抜き(左:PowerShot G7 X、右:サイバーショット DSC-RX100M3)
こちらの作例は、開放F1.8に設定して広角端で撮影したものになる。ピントは、画像中央切り抜き部付近で合わせて、極端なパースが出ないように、レンズの中心に構図の中心が来るようにした。画質チェックの比較作例と撮影としてはやや厳しい条件ではあるが、両モデルとも、周辺で気になるようなゆがみはなく、描写が大きく流れるようなこともない。広角端で、しかも写りが甘くなる開放という条件を考慮すると、この結果は、期待以上と言っていいだろう。細かく見ると、「広角端24mm F8」の作例と同様、RX100 IIIのほうが解像感が高く、周辺の写りも良好ではあるが、これは、光学ズームの倍率の違いを差し引いて考えてほしい。PowerShot G7 Xは、35mm判換算で24mm〜100mmの画角に対応する光学4.2倍ズームレンズを、RX100 IIIは、35mm判換算で広角24mm〜望遠70mmの画角に対応する光学2.9倍ズームレンズを採用している。ズーム倍率が高いほうがレンズ設計が難しいことを考慮すると、絞り開放・広角端でパンフォーカス気味に撮影するのであれば、PowerShot G7 Xは十分な描写力を発揮すると評価したい。
色描写については、PowerShot G7 Xは、わずかにアンバーな感じで、自然な仕上がりだ。いっぽうのRX100 IIIは、やや青みの強い色となった。なお、この作例については、RX100 IIIの「Dレンジオプティマイザー」を、初期設定のオートのまま撮影している。オフでも撮影しているが、シャドー側が暗くなり、PowerShot G7 Xと比べて階調性が大きく異なる結果になったため、オート設定の作例を選択した。
以下に掲載する作例は、PowerShot G7 Xとサイバーショット DSC-RX100M3を使って、同じ被写体をJPEG形式の最高画質でマクロ撮影したものになります。レンズの焦点距離は、35mm判換算で24mmの画角(広角端)。評価測光/マルチ測光(初期設定)を選択し、絞り優先AEでF値を開放F1.8に設定しました。掲載する作例は、露出補正で明るさを調整して撮影したものの中から、適正露出の範囲内で、かつ、できる限り両機種で露出差がないものを選択しています。
PowerShot G7 Xの設定は、記録画素数:ラージ(L)、圧縮率(画質):スーパーファイン、ホワイトバランス:オート、マイカラー:切、i-コントラスト(ダイナミックレンジ補正、暗部補正):OFF、高感度時NR:標準。サイバーショット DSC-RX100M3の設定は、画像サイズ:L:20M、画質:エクストラファイン、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー/オートHDR:切、高感度NR:標準です。ほぼ初期設定のままですが、サイバーショット DSC-RX100M3のDレンジオプティマイザーについては、初期設定のオートから切に変更しています。
※以下のサムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺960ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行なっていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
PowerShot G7 X
F1.8、1/400秒、ISO125、EV+1.3
撮影写真(5472×3648)
サイバーショット DSC-RX100M3
F1.8、1/200秒、ISO125、EV+1.3
撮影写真(5472×3648)
※以下の画像は、撮影写真の一部分(それぞれの機種で300×300)をピクセル等倍で切り抜いたものになります。クリックすると、より大きなピクセル等倍の切り抜き画像(それぞれの機種で450×450)が開きます。
画像中央切り抜き(左:PowerShot G7 X、右:サイバーショット DSC-RX100M3)
開放F1.8の広角端でマクロ撮影したものになる。ピント位置は、最短撮影距離の5cm(レンズ先端から)付近。屋外の日陰で、被写体に直射日光が当たらない状況とした。結果は、両モデルで、写りに大きな違いが出た。ボケについては、PowerShot G7 Xのほうがわずかに色づきが少なく、なめらかな仕上がりになっているように感じる。いっぽう、RX100 IIIは、ボケはやや硬いものの、ピント面でシャープな描写が得られているのが特徴。PowerShot G7 Xは、広角端での撮影については、絞り開放で、かつ最短撮影距離に近づくほど、ピント面でソフトフォーカスがかかったような描写になることが多かった。被写体に光が当たっている状況では、それなりに解像感が出るのだが、光量が少ない状況だとこの傾向が強くなる。気になるようであれば、F2.8程度まで絞って撮影したいところだ。
また、この作例では、色味にも大きな違いが出た。他の作例と同様、オートホワイトバランスで撮影しているが、PowerShot G7 Xはわずかにアンバーで、RX100 IIIはシアン寄りの色になった。花の色の再現性を比較すると、PowerShot G7 Xのほうが自然な感じに仕上がっていると思う。