レンズのスペックにあわせて、3モデルは、ボディのサイズ・重量にも違いがある。と書くと、「倍率の高いズームレンズを採用するほうがボディが大きい」と思うかもしれないが、そうではないのが面白いところ。
比較すると、もっともズーム倍率の高いG3 Xが、もっともコンパクトなボディになっている。コンパクトなうえに軽量化も実現しており、他の2モデルより約80〜100gも軽い。後述する外付けの電子ビューファインダー「EVF-DC1」(重量約43g)を装着した状態でも、G3 Xがもっとも軽いシステムとなる。これは、新開発となる6群ズーム構成を採用し、レンズ自体をコンパクトに設計できているのが大きい。しかも、高精度な段合わせ構造の採用や、ラバー素材の使用などにより、キヤノン製デジタル一眼レフ「EOS 70D」レベルの防塵・防滴構造を実現しているのも高ポイント。なお、RX10とRX10 IIのボディデザインに違いはなく、サイズ・重量も同一となっている。
なお、上の表では、防塵・防滴の対応で、G3 Xを「○」、RX10とRX10 IIを「△」とした。G3 Xを「○」にした理由は、公式の製品ページにおいて、「短時間の小雨程度の環境下で使用可能であることを確認」と表記されているほか、防塵・防滴構造についてくわしい説明があったため。RX10とRX10 IIについては、メーカー取材を通じて、「防塵・防滴に配慮した設計」であることは確認できたが、公式ページなどには明記されていないため「△」とした。
今回取り上げた4機種の中で、もっともコンパクトなボディとなるG3 X。独立した露出補正ダイヤルを搭載するほか、レンズ部に、マニュアルの操作リング(スムーズリング)を装備する。操作系がボディ右側に集中しているのも特徴だ
FZ1000は、ミラーレス一眼カメラ「LUMIX G」シリーズの上位モデルと同様、ドライブモードダイヤルを装備。露出補正は、後ダイヤルをプッシュして行うようになっている。レンズ部には、マニュアルの操作リング(マニュアルリング)を装備
RX10とRX10 IIのボディデザインは同一(写真はRX10 II)。レンズ部に、マニュアルの操作リング(マニュアルリング)に加えて、絞りリングを搭載するのが、他の2モデルとは異なるところだ。さらに、上面には、露出補正ダイヤルのほか、各種撮影情報を表示する液晶パネルも備わっている
背面モニターは、G3 Xが、約162万ドットという高精細モニターを採用しているほか、唯一、タッチパネルに対応している。タッチ操作でのピント合わせ(タッチフォーカス)が行えるのは、使い勝手のうえで大きなポイントになるはずだ。
G3 Xは、4機種の中で唯一、タッチパネル液晶を採用。約162万ドットという高精細化を実現しているのも、他機種にはない特徴となる
FZ1000は、4機種の中で唯一のバリアングル(横開き)モニターとなる
RX10とRX10 IIは、約122.9万ドットの3.0型チルトモニターを採用
電子ビューファインダーは、G3 Xのみ、アクセサリーシューへの外付け対応(別売りのオプション対応)で、他の3機種は内蔵となっている。「使わないときに外しておける」ことにメリットがあると判断すれば、外付け対応は逆にありがたい。ただ、電子ビューファインダーがシューに装着されると、フラッシュなどのオプションが利用できなくなる点には留意しておきたい。
G3 Xには、別売りオプションとして、外付けの電子ビューファインダー「EVF-DC1」が用意されている。「PowerShot G1 X Mark II」や「EOS M3」にも装着できるファインダーだ
基本機能の違いでは、動画撮影に注目したい。FZ1000とRX10 IIは、4K動画の記録に対応している。より多機能なのはRX10 IIで、画素加算のない全画素読み出しでの4K記録に対応。24pでの4K記録なども可能で、2015年7月7日時点では、レンズ一体型のデジタルカメラとして最高レベルの動画撮影機能を搭載する1台となっている。
さらに、RX10 IIは、メモリー一体積層型CMOSセンサーの高速読み出しによって、最大960fps(最大40倍)のスーパースローモーション撮影も実現。記録形式はXAVC Sで、1920×1080記録(※センサー読み出しの有効画素数は異なる)が可能だ。撮影のフレームレート(960fps/480fps/240fps)、センサー読み出しの有効画素数、記録フォーマット(60p/30p/24p)を選んで、本格的なスーパースローモーション撮影が可能となっている。さらに、MOVIEボタンを押してから記録する「スタートトリガー」に加えて、MOVIEボタンを押した瞬間から時間をさかのぼって記録する「エンドトリガー」も用意されているのが便利なところだ。
RX10 IIは、XAVC S形式での4K記録に対応(左)。最大960fpsのスーパースローモーション撮影も可能だ(右)
最後に、各モデルが搭載する、その他の注目機能をまとめておこう。
G3 Xの撮影機能では、天体撮影用の「星空モード」を搭載しているのがユニーク。自動で長秒撮影を実行する「星空夜景」、星空を連続撮影して1枚の画像にする「星空軌跡」、連続撮影した画像をつなぎあわせて動画にする「星空インターバル動画」を選択することができる。操作系では、カメラが自動でズームイン・ズームアウトを行い、被写体の大きさをキープしながら撮影してくれる「フレーミングアシスト」が便利だ。このほか、キヤノン製コンパクトカメラとして初めて、バルブ撮影に対応するのもトピック。
FZ1000は、カメラ内での編集機能に注目で、今回紹介する4モデルの中で唯一、カメラ内RAW現像に対応。撮影した4K動画の1コマを800万画素の静止画として切り出す機能も搭載している。パナソニックが「4K PHOTO」として売り出している独自機能だ。フィルター撮影機能も充実しており、22種類の豊富な効果を選択できる「クリエイティブコントロール」が用意されているほか、パノラマ撮影でも18種類のフィルター効果を選べるようになっている。
RX10は、2013年11月発売の旧モデルということもあって、機能面での目新しさはそれほどないが、13種類の効果を選べる「ピクチャーエフェクト」や「スイングパノラマ」といったソニー独自の撮影機能がひととおり搭載されている。
RX10 IIは、先述したメモリー一体1.0型積層型CMOSセンサーの採用によって、多彩な機能を実現している。なかでも注目なのが、最高1/32000秒という超高速な電子シャッターを実現していること。しかも、動体歪みの少ない撮影が可能なのがポイント。一般的に電子シャッターの場合、CMOSセンサーの特性上、動体撮影時に歪み(画素を順番に読み出していくローリングシャッター方式では、センサーのスキャン速度よりも速く動く被写体を撮影すると、被写体が歪んで写ってしまう)が発生してしまうが、RX10 IIでは、従来の5倍以上の高速スキャンが可能になり、電子シャッターでの歪みを低減している。さらに、動画撮影中に、高精細な静止画(約1700万画素、16:9)を記録するデュアル記録も可能となっている。
2015年7月7日時点の価格.com最安価格を見ると、G3 Xが9万円台、FZ1000が6万円台、RX10が10万円台、RX10 IIが15万円台となっており、機種によって価格差がある状況だ。なお、G3 Xには、5000台限定で外付け電子ビューファインダーが同梱するEVFキットが用意されている。価格は、ボディ単品にプラス5,000円程度。EVF-DC1単品の価格が18,000円程度(2015年7月7日時点での価格.com最安価格)であることを考慮すると、お買い得なキットとなっている。
望遠600mm対応でコンパクトボディが魅力のG3 X、4K動画撮影対応でコストパフォーマンスにすぐれるFZ1000。開放F2.8通しの大口径レンズを採用するRX10、4K動画撮影対応で、スーパースローモーション撮影や超高速撮影も可能なRX10 IIと、それぞれにキャラクターが異なっているのが面白いところだ。