最後に、今回取り上げた6モデルの特徴をまとめよう。あわせて、各モデルで利用できる純正レンズの数も参考として掲載しておく。
オリンパスのミラーレス一眼のフラッグシップモデルで、外観デザインや操作性にもこだわった高品位でコンパクトなカメラに仕上がっている。電子ビューファインダーも大きくて見やすい。オートフォーカスの合焦速度も速く、レスポンスにすぐれるのも特徴だ。本特集では触れなかったが、シャッタースピード4段分の補正効果を発揮する5軸手ぶれ補正機構をボディ内に搭載しており、オールドレンズを含めて、すべてのレンズで手ぶれを抑えて撮影ができるのも魅力だ。シャッタースピードは最速1/8000秒に対応している。オートフォーカス追従の連写性能は、最大約6.5コマ/秒。
画質面では、光学ローパスフィルターレス仕様の有効1628万画素・4/3型Live MOSセンサーを採用するなどして、高解像度な描写を実現。特に、画像周辺部でも解像感が高いのがポイント。周辺部の画質にすぐれるのは、APS-Cや35mmフルサイズと比べてセンサーサイズが小さいがゆえのメリットでもあるのだが、それを差し引いても、画面全体での均一感がすごい。画面全体で得られる解像感の高さは、今回取り上げた6モデルの中でもトップクラスだ。特に、キットレンズとして用意されている、高性能な標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」を使用したときの画質はすばらしい。
このように、「OM-D E-M1」は、これといった穴の見当たらない完成度の高いカメラとなっている。このカメラを選ぶうえで気になるのは、センサーサイズが小さいために、ボケの量が少ないことではないだろうか。この点については、確かに、35mmフルサイズセンサーやAPS-センサーを搭載する他の5モデルのほうが有利で、スペック的なボケ量ではやや見劣りする。しかし、オリンパスには、すばらしいボケ味が得られる、明るくて描写力の高いレンズが何本も用意されていることをお忘れなく。そうしたレンズを使用することで、APS-Cや35mmフルサイズにも負けない、ボケを生かした写真撮影を楽しめるはずだ。
「OM-D E-M1」の製品ラインアップ
「X-T1」は、いろいろと見どころの多いミラーレス一眼だ。大きな特徴となるのは、ファインダー倍率0.77倍、水平視野角31度という大きな見え方を実現した電子ビューファインダーを搭載していること。ファインダー倍率だけを見れば、35mmフルサイズセンサーを搭載するデジタル一眼レフを超えている。2014年6月28日時点で、ミラーレス一眼として最高スペックの電子ビューファインダーであることは間違いない。さらに、0.005秒という短い表示タイムラグを達成しているのもポイントで、撮影していて快適なだけでなく、撮影が楽しくなるようなファインダーに仕上がっている。像面位相差AFとコントラストAFを組み合わせたオートフォーカスもスピーディーで、撮影レスポンスにもすぐれている。オートフォーカス追従の連写性能は、約8コマ/秒だ。
さらに、画質性能も高く、非周期性の高い独自のカラーフィルター配列を採用するAPS-Cサイズの「X-Trans CMOS II」センサー(有効1630万画素、光学ローパスフィルターレス仕様)を採用し、ローパスフィルターなしでモアレや偽色の発生を抑え、すぐれた解像感が得られるようになっている。実際の画質は、ローパスレスらしいシャープな特性が得られることに加えて、富士フイルムらしい明るくて印象的な色描写と、高感度でもバランスのよい描写を実現していることもポイントだ。本特集の画質レビュー感度別編では、高感度で非常に良好な結果が得られた。
このほか、ボディ上面に、感度、ドライブモード、シャッタースピード、測光モード、露出補正を設定できる計5つのダイヤルを搭載するなど、マニュアル操作にこだわった設計になっているのも特徴。使ってみて、ダイレクトな操作ですばやく設定を変えられるのも便利だが、ボディ上面を見るだけで感度、シャッタースピード、露出補正の値を確認できるのも便利だと感じた。電源を入れていない状態でもこれらの設定を確認できるので、スナップ撮影では、あわてて撮ったときの設定ミスが少なくなると感じた。
性能、画質、操作性のあらゆる点においてハイレベルなミラーレス一眼に仕上がっていると評価したい。
「X-T1」の製品ラインアップ
有効約2430万画素の35mmフルサイズセンサーを搭載しながらも、ミラーレス一眼らしいコンパクトなボディを実現したモデル。最大のポイントは、コンパクトサイズで「35mmフルサイズの世界」を楽しめることだ。フルサイズらしいボケ味を生かした、立体感や空気感のある写真を撮れるのが魅力となっている。しかも、コストパフォーマンスが高い。価格.com最安価格(2014年6月25日時点)では、ボディ単体が11万円台、ズームレンズキットが13万円台となっている。フルサイズセンサー機としては破格のプライスだ。ただし、画質に徹底するのであれば、相応のレンズが必要になることは押さえておきたい。周辺部も含めて、このカメラでより高画質を狙うのであれば、「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」などの高性能レンズや単焦点レンズを選びたいところである。
性能面では、コントラストAFと像面位相差AFを組み合わせて高速オートフォーカスを実現しているのも見逃せない。1/8000秒の高速シャッターに対応しているのもポイントだ。操作性にも配慮されており、前後ダイヤルを使ってダイレクトに設定を変えながら撮影が行える。メニュー画面も、Aマウント採用の「α」シリーズと同じくタブから選べる仕様になっており、扱いやすい。電子ビューファインダーについては、「OM-D E-M1」や「X-T1」ほどのスペックではないが、明るくて見やすいファインダーに仕上がっている。オートフォーカス追従の連写性能は、速度優先連続撮影時で最高約5コマ/秒(※通常モードでは最高約2.5コマ/秒)。
繰り返しになるが、このモデルの最大の特徴は、35mmフルサイズセンサーを搭載する低価格でコンパクトなミラーレス一眼であるということ。「低価格な35mmフルサイズ機がほしい」のであれば、このモデルを選ぶのが最適ではないだろうか。
「α7」の製品ラインアップ
キヤノンのデジタル一眼レフ「EOS」シリーズの中級モデル。性能面で大きな特徴となっているのが、ライブビュー撮影時のオートフォーカス性能が高いことだ。CMOSセンサーの全有効画素が撮像と位相差AFの機能を兼ね備える、1画素2フォトダイオード構成の新構造「デュアルピクセルCMOS AF」を採用し、撮像面内の約80%(縦)×80%(横)という広いエリアにおいて、ライブビュー撮影時に、コントラストAFを使用せずに位相差AFだけで最終合焦まで行えるようになった。これにより、これまでデジタル一眼レフが苦手と言われていた、ライブビュー撮影時のオートフォーカス速度が飛躍的に向上している。本特集のオートフォーカス速度の検証動画でも、そのスピードは伝わるはずだ。さらに、自然な動きで撮影ができるように、動画撮影時には動画用にチューニングされたオートフォーカスを利用できるのも見逃せないポイント。静止画、動画の両方で、ライブビューでのオートフォーカス撮影に強いデジタル一眼レフとなっている。
もちろん、伝統の「EOS」シリーズの中級モデルらしく、基本性能の作り込みもしっかりとしている。画質面では、有効約2020万画素のCMOSセンサー(APS-Cサイズ)と映像エンジン「DIGIC 5+」を採用し、低感度から高感度まで安定した写りを実現。オールクロス仕様の19点AFセンサー、オートフォーカス追従で最高約7コマ/秒の連写性能、1/8000秒の高速シャッターにも対応している。視野率約98%という光学ファインダーのスペックがやや気になるところだが、それ以外のところでは、ミドルクラスのAPS-Cデジタル一眼レフとして高い性能を誇っている。
このデジタル一眼レフの魅力は、ライブビューでの高速オートフォーカスを実現したことで、光学ファインダーでの撮影とライブビュー撮影を使い分けられることではないだろうか。これまで、デジタル一眼レフのライブビューは、静止画撮影では、暗いところで活用するなどの補助的な役割を担っている印象があったが、「EOS 70D」では、そういうことはない。横開き式のバリアングル液晶モニターの採用もポイントで、ライブビュー撮影がやりやすいデジタル一眼レフとなっている。そのうえで、「EOS」シリーズらしい、安定した発色での高画質を楽しめるのである。
「EOS 70D」の製品ラインアップ
ニコン製デジタル一眼レフの中級モデル。画質面では、光学ローパスフィルターを用いない有効2410万画素のAPS-Cセンサーを採用し、高い解像力を実現している。本特集で掲載する作例を見ても、ローパスレス化によって、精細感のある描写が得られているのがわかる。本特集の画質レビューPart1では、低価格な標準ズームレンズ「AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II」でも、高い解像感が得られたのが驚きだった。「NIKKORレンズ」の性能の高さを感じた次第である。また、感度別の作例では、ディテール部に注目してほしい。輪郭強調を抑えた画像処理で、素直な仕上がりとなっている。このあたりは、ローパスレス化による細かいところの再現性の向上と、画像処理エンジン「EXPEED 3」による画像処理の巧みさを感じるところだ。
さらに、高速・高精度な51点AFシステムや、2016分割RGBセンサーなど、ニコン製デジタル一眼レフの高度な技術が満載で、デジタル一眼レフとしての基本性能が高いのも見逃せない特徴。光学ファインダーは、倍率約0.94倍(35mm判換算で約0.627倍)の視野率約100%ファインダーだ。デジタル一眼レフとしてのスペックが高いの魅力のカメラとなっている。。オートフォーカス追従の連写性能は、最高約6コマ/秒。機能面では、約7コマ/秒にスペックアップする連写と、ファインダー全域でオートフォーカスを使って撮影ができるクロップ撮影機能「対DX1.3×クロップ」がユニークだ。
「D7100」の直接的なライバルは、キヤノンの「EOS 70D」になるが、「EOS 70D」と比べての優位性は、視野率約100%の光学ファインダーを搭載していることと、光学ファインダー撮影時の位相差AFポイントが51点と多いことだ(「EOS 70D」は19点)だ。逆に、差があるのはライブビュー時のオートフォーカス速度である。両モデルのどちらを選ぶかの判断は難しいところがあるが、このあたりの違いを参考にしてもらえればと思う。
「D7100」の製品ラインアップ
PENTAXブランドの最上位モデルとなるAPS-Cデジタル一眼レフ。光学ローパスフィルターを用いない、有効約2400万画素のCMOSセンサーを採用し、高い解像感が得られるカメラとなっている。その効果は、本特集では、画質レビューPart3 感度別編(ISO100〜ISO800)で感じることができる。細部のコントラストが高く、無理に輪郭を強調しないで、キレのある描写が得られているのがポイントだ。使用したレンズ「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」の描写力が高いことも大きいのだろうが、画像処理エンジン「PRIME III」の性能も見逃せない部分だ。PENTAXは、従来より、ノイズ処理とシャープネス処理のバランスのよい画像処理で定評があるが、「K-3」でもそれは変わらない。APS-Cデジタル一眼レフとして非常に高い画質力を持つ1台となっている。
基本性能もすぐれており、倍率約0.95倍(35mm判換算で約0.633倍)で視野率約100%の光学ファインダーを搭載するほか、中央部25点がクロスタイプの27点AFシステムを採用。オートフォーカス追従での連写性能は、最高約8.3コマ/秒だ。さらに、磁力でセンサーを駆動して手ぶれを補正する独自機構「SR」をボディ内に搭載しており、オールドレンズでも手ぶれを抑えて撮影ができる。機能では、露光中にセンサーを微小駆動させることで偽色・モアレを軽減する「ローパスセレクター」という新機能に注目だ。
また、PENTAXのデジタル一眼レフは、他メーカーのモデルにはない面白いところが2つある。1つは、設定を細かく調整できることだ。画質設定のシャープネス設定を見ても、通常のシャープネスに加えて、輪郭を太くせずに解像感を上げる「ファインシャープネス」と、さらに繊細に処理をする「エクストラシャープネス」が用意されている。カメラ内の設定をいろいろと変えて楽しむことができるのだ。もう1つは、APS-C用のレンズのラインアップが豊富なことだ。特に、単焦点レンズが豊富で、レンズを選ぶ面白さも味わうことができる。
「PENTAX K-3」の製品ラインアップ
参考として、今回取り上げた6モデルそれぞれで利用できるメーカー純正レンズの現行ラインアップの本数を紹介しよう。ポイントは「最適化されているレンズが何本あるか」。ここで言う「最適化レンズ」とは、レンズの性能がフルに発揮されるかどうかということ。「OM-D E-M1」については、マイクロフォーサーズ用ではコントラストAF、フォーサーズ用では位相差AFを採用しており、マウントアダプターを使用することになるもの、フォーサーズ用レンズでも高速オートフォーカスで撮影できる。そのため、フォーサーズ用も最適化レンズとしてみなし、本数は18〜37本とした。また、「α7」は、APS-C用レンズはフォーマットが異なるため、最適化レンズからは除外している。ただし、「α7」は、マウントアダプターを使うことでAマウントのレンズも使用できるので、Aマウントの35mmフルサイズ対応を含めて、最適化レンズの本数は5〜25本とした。