富士フイルム「Xシリーズ」のミラーレス一眼カメラのフラッグシップモデルがついにリニューアルになる。2012年2月発売の「FUJIFILM X-Pro1」の後継モデル「X-Pro2」が発表になった。発売は2016年2月18日。ボディ単体のみのラインアップで市場想定価格は20万円前後(税別)。APS-Cミラーレスとしては高額な製品だが、約4年ぶりのリニューアルということで画質や操作性など多くの点が進化し、Xシリーズ史上最高の画質と機動性をうたう高性能なカメラになっている。発表当日に開催された製品説明会での情報を交えながら、このカメラの特徴を紹介しよう。
ファン待望のレンジファインダースタイルの新フラッシップ「FUJIFILM X-Pro2」。デザインは従来モデルX-Pro1のシルエットを継承している
富士フイルムのXシリーズの最大の魅力は「画質」にあると言っていいだろう。階調性と色再現性にすぐれた画質はXシリーズならでは。その画質にほれ込んでXシリーズを使っているという方も多いはずだ。さらに高感度性能も高く、ノイズを抑えつつも解像感のある画質を実現しているのも特徴である。
X-Pro2は、こうした定評のある画質を生み出す撮像素子と画像処理エンジンを刷新。新しい世代の撮像素子&エンジンを採用することで、Xシリーズ史上最高画質を実現したとアピールしている。
撮像素子にはXシリーズでは最高画素となる有効約2430万画素の新開発APS-Cセンサー「X-Trans CMOS III」(光学ローパスフィルターレス仕様)を搭載。ローパスレスでもモアレ・偽色を抑えられる、富士フイルム独自のカラーフィルター配列「X-Transカラーフィルター」を継承しつつ、X-Pro1の有効約1630万画素から画素数アップを実現している。さらに、画像処理エンジンも新開発の「X-Processor Pro」を採用。画素数は約1.5倍増えたもの、信号処理技術の改善によってノイズは従来よりも抑えられており、感度は常用でISO200〜ISO12800に対応する(拡張でISO100/ISO25600/ISO51200に対応)。
有効約2430万画素の新開発APS-Cセンサー「X-Trans CMOS III」と新画像処理エンジン「X-Processor Pro」
富士フイルムが感度別の画質・ノイズ性能(解像力とSN)を検証した結果のグラフ。X-Pro2は一眼レフスタイルのフラッグシップ「FUJIFILM X-T1」以上で、36M画素のフルサイズ機と互角の性能を持つとし、実際の画素数を上回る解像力を実現したとアピールした
さらに、新しいセンサーとエンジンは、従来モデルを大きく上回る高速処理を実現しているのも特徴だ。新センサーは従来よりも約3.6倍高速な読み出し速度を実現。新エンジンは、従来比で約4倍の処理速度を誇る。これにより、EVFのライブビューの表示スピードは従来の54fpsから最速85fpsに向上し、動体撮影時の残像現象を低減。レリーズ後のブラックアウト時間も従来モデルの約半分(約150ms)に短縮した。さらに、AF速度0.06秒、起動時間0.4秒、撮影間隔0.25秒、シャッタータイムラグ0.05秒のハイレスポンスをうたう。ロスレス圧縮でのRAWファイル記録にも対応するようになった。
センサーの配線をアルミから銅に変更したことで高速読み出しを実現
X-Trans CMOS IIIは従来のX-Trans CMOS IIと比べて約3.6倍の高速読み出しが可能。読み出し速度は33.3fpsとなる
X-Processor ProはEXR Processor Pro IIと比べて処理速度が約4倍向上している。処理速度は480M pix/sとなっている
「PROVIA/スタンダード」や「Velvia/ビビッド」「ASTIA/ソフト」といった写真フィルムの名前を冠した設定が用意される「フィルムシミュレーション」。富士フイルムのデジタルカメラにしかない仕上がり機能だが、X-Pro2には、世界最高水準の粒状性と豊かな階調を持つ白黒フィルムのモード「ACROS」が新たに加わった。従来のモノクロモードを凌駕するなめらかな階調や、引き締まった黒のモノクロ表現が得られるとしている。
さらに、センサーとエンジンの刷新により、X-Pro2では、フィルムシュミレーション全体に細かいチューニングが施されているという。再現性は従来と変わらないが、たとえばVelviaでは、従来は彩度が高すぎて露出にシビアになるところがあったところを改良。赤や青などで色飽和しないような処理を行うようになっているという。また、細かいところではX-Pro2はトーン設定で「+4」を選択できるようになった。
ACROSと従来のモノクロモードのトーンカーブを比較。ACROSはシャドーを少し持ち上げ、中間調からはコントラストを高める設定になっているとのこと
ACROSはカラーフィルターを組み合わせることが可能
フィルム写真が持つ独特の粒状感を再現する新機能「グレイン・エフェクト」が追加されたのもトピックだ。強と弱の2段階の効果を設定でき、すべてのフィルムシミュレーションで併用可能だ。主にプリント時に、フィルム写真のような効果を手軽に再現することができるという。
銀塩プリント風のテイストを楽しめるグレイン・エフェクト。強と弱を設定できる
なお、ACROSとグレイン・エフェクトについては、高速処理が可能な新しいセンサーとエンジンの組み合わせだから実現できた設定・機能とのこと。センサーレベルでの信号処理と、複雑な画像処理を高速に行う必要があるため、従来のエンジンを搭載するモデルでは処理に時間がかかるため搭載は難しいとのことだ。説明会では富士フイルム担当者から「現時点ではX-T1などへの機能追加は行えない」という回答を得ている。
従来モデルX-Pro1では、電子ビューファインダー(EVF)と光学ファインダー(OVF)を切り替えて利用できる画期的な「ハイブリッドビューファインダー」が注目を集めたが、X-Pro2でもこの仕組みは継承。「FUJIFILM X100T」で採用された、光学ファインダー上にEVFの小窓を同時表示する「エレクトロニックレンジファインダー(ERF)」が追加され、3種類のファインダー表示を選択できる「アドバンストハイブリッドマルチビューファインダー」に進化している。
EVFとOVFに加えて、EVFの小窓を同時表示するエレクトロニックレンジファインダー(ERF)が追加された。視度補正ダイヤルも新たに搭載する
EVF時に切り替えレバーを右に引くとOVFに切り替わる。もう一度引くとEVFに戻る。また、OVF選択時にレバーを左に押すとERFに切り替わる。なお、ERFは、NDフィルターを挿入して右下に小窓が表示される
EVFは、約236万ドットの液晶パネル(0.48型)を採用。先にも述べたように、ファインダー映像の表示速度は最速85fpsに向上し、レリーズ後のブラックアウト時間も約150msに短縮。レスポンスにすぐれるEVFに進化している。ファインダー倍率は0.59倍(35mm判換算50mmレンズ、無限遠)。
X-Pro2は3種類のパワーマネジメントモードを搭載。ハイパフォーマンス時に最速85fps表示が可能だ
OVFは、X-Pro1をベースに新設計。レンズの焦点距離に応じてファインダー倍率が自動で変わる「マルチマグニフィケーション」機能が追加されたほか、撮影範囲を示すブライトフレームは、最望遠側の表示領域が従来の焦点距離60mmから焦点距離140mmまで拡大。レンズを交換することなく各焦点距離の画角を確認できる「ブライトフレームシミュレーション」機能も追加されている。撮影範囲フレーム視野率は約92% ファインダー倍率は約0.36倍/約0.60倍。
MF撮影をサポートする「被写界深度スケール」は、従来のピクセル基準に加えて、フィルム基準表示の選択が可能になった。このフィルム基準とは、プリントによる写真鑑賞を前提にしたもので、「フィルム写真と同様の被写界深度の感覚で使うことができる」ことをウリにしている。
ERFの小窓は、「視野率100%」「2.5倍拡大」「6倍拡大」の3通りで表示が可能。ピントエリアを拡大するだけでなく、視野率100%表示を確認できるのがポイントで、フレーム外の状況を見ながら、より厳密なフレーミングや仕上がりの確認などを行える。また、MFアシストの併用も可能で、OVFモードでのMFもサポートする。
このほか、光学設計の改良により、アイポイントは従来の14mmから16mmに延長。視度調整も可能になった。
焦点距離の画角を確認できるブライトフレームシミュレーション
ERFでは、「視野率100%」「2.5倍拡大」「6倍拡大」の3通りの表示を選択可能。被写界深度スケールでは「フィルム基準」を利用できるというこだわりよう
デジタルスプリットイメージはカラー表示に進化した