バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

ライダーの理想をかなえてくれるバイク! 一体感がたまらない新デザインのヤマハ「MT-09 ABS」

このエントリーをはてなブックマークに追加

2013年の発売以来、欧州を中心に世界各国で高い人気を得ているヤマハのストリート向けモデル「MT-09」。3気筒エンジンにスーパーモタードの要素を採り入れた足回り、ユニークなデザインなど個性的の強いモデルでありながら、その後1,000ccから125ccまで幅広い排気量に展開する「MT」シリーズの源流となったマシンだ。その「MT-09」が2017年2月にモデルチェンジした。位置付け的にはマイナーチェンジだが、デザインを一新し、新機能もプラスされるなど大きく手が加えられている。近年のバイクにしては短いスパンで大きな変更が行われたことからも、売れ行きが好調なモデルであることは間違いない。その人気の秘密を探ってみた。

基本構成はそのままに押し出しの強いデザインにチェンジ

今回のモデルチェンジで大きく変更されたのはデザイン。もともと個性的な外観ではあったが、フロントフェイスがより迫力あるものに一新され、リアのナンバープレートマウントも片持ち式に変更された。ハイパワーのマシンにアップライトなハンドルを装備し、有機的なデザインのライトを装着した形は“ストリートファイター”と呼ばれるジャンルのもの。「MT-09」は元来ストリート色の強いモデルではあるが、新型ではよりそのカラーが強く打ち出されたと言えるだろう。

なお、基本構成は初期型と変わっておらず、スーパーモタードの要素を組み込んだライディングポジションと足回りとなっている。一般的なネイキッド(カウルがない)バイクに比べると着座位置は前寄りで、サスペンションの動きはややソフトにセッティング。スーパーモタード向けのモデルはオフロード車をベースとしているため、ガソリンタンクの上に座るようなポジションとなり、サスペンションのストロークも長い。「MT-09 ABS」はスーパーモタード向けのマシンではないが、そのエッセンスを車体設計に生かすことでストリートでの扱いやすさを向上させることを狙っているようだ。

2013年に誕生した初期型「MT-09」

2013年に誕生した初期型「MT-09」

初期型と基本設計は同じながら、がらりと姿を変えた2017年発売の「MT-09 ABS」

デザインの工夫により、車体がコンパクトに見える。サイズは815(幅)×1,120(高さ)×2,075(長さ)mmで、車重は193kg

公道での目立ち度を増したフロントマスク。ヤマハでは「2眼デザイン」と呼んでおり、より有機的でアグレッシブな走りを想像させる雰囲気となった

通常時は2灯だが、ハイビームにすると4つのLEDが点く。写真ではわかりにくいが、ライト下部にはポジションランプもあり、ライトと一緒に点灯する

ヤマハ初の片持ち式を採用したナンバープレートホルダーは、デザイン的にもインパクトが強くなった。コンパクトなマッドガードも搭載され、泥除けとしても機能する

ナンバープレートがシート後端になくなったことで、シートまわりはスッキリとした。こうしたデザインもストリートファイターの文脈に沿ったものだ

タンクは大きめに見えるが下の部分がかなり絞り込まれており、またがると見た目以上にバイク全体が細身に感じる。シート幅や左右のステップ同士の間隔が狭く配置されていることも、スリムな印象に貢献

フロントタイヤは120/70ZR17で専用開発のラジアルタイヤを装備。ブレーキは剛性の高さに定評のあるラジアルマウントタイプのキャリパーを採用している。サスペンションもオンロードモデルとしては、よく動くセッティングだ

180/55ZR17サイズのリアのタイヤにはピンスライドタイプのシングルディスクのブレーキを搭載。リアサスはやややわらかめのセッティングとなっており、湾曲したスイングアームがデザイン上のいいアクセントとなっている

ここまでデザインを中心に見てきたが、マシンの性能を左右する動力についても触れておきたい。「MT-09 ABS」はこのクラスのバイクに多い4気筒エンジンではなく、「クロスプレーン・コンセプト」に基づいた3気筒エンジンが採用されている。「クロスプレーン」とは、もともとレース用の4気筒エンジンに採用されていた機構で、4気筒を不等間隔で爆発させることでトラクションを向上させていたもの。その特性を3気筒で再現した「MT-09 ABS」のエンジンは、4気筒に比べるとコンパクトでトラクション(エンジンの駆動力を路面に伝える能力)にすぐれる。

動力だけでなく、コンセプト的にもこのモデルの要となる845ccの3気筒エンジン。最高出力は116PS/10,000rpm、最大トルク87Nm/8,500rpmとなっており、今回のモデルチェンジで日本仕様も欧州と同じスペックに引き上げられた

このほか、走行モードの切り替えを行う「D-MODE」や、急にアクセルを開けた際にリアタイヤが空転するのを抑制する「トラクション・コントロール・システム(TCS)」といった先進機能が盛り込まれているのも「MT-09 ABS」の特徴。それにともない、スロットルも電子制御となっている。ストリート向けのモデルではあるが、レース向け車両に採用されるような先進機能が搭載されているのも人気の理由のひとつだろう。

「D-MODE」の切り替えは右手側のボタンで操作。もっともパワフルな「A」、標準的な「STD」、マイルドな「B」と、3つのモードに応じてエンジンパワーやアクセル操作へのレスポンスが変更できる

「トラクション・コントロール・システム(TCS)」の効き方は2段階とオフの3つに切り替え可能

「トラクション・コントロール・システム(TCS)」の効き方は2段階とオフの3つに切り替え可能

現在の走行モードやTCSの効き具合などは、マルチファンクションメーターで確認できる

現在の走行モードやTCSの効き具合などは、マルチファンクションメーターで確認できる

「MT-09 ABS」に乗って街中や高速道路をライディング!

ロードタイプのバイクとしてはかなり前方に座り、それでいてアップライトなハンドルで上体は起きているという独特のライディングポジションとなっている「MT-09 ABS」。「MT-09 ABS」と同じ「クロスプレーン・コンセプト」と呼ばれる845ccの3気筒エンジンを搭載したネイキッドスタイルの「XSR900」にも試乗したことがあるが、ライディングポジションの違いが走行感をどのように変えるのか、非常に楽しみだ。

なつかしさを感じさせる“バイクらしい”デザインの「XSR900」。タンクに長さがあり、着座位置はややうしろのほうとなる

バイクの向きが逆で申し訳ないが、「XSR900」と比べると「MT-09 ABS」は着座位置が前寄りになっていることがわかる。シートがこのクラスにしては細身なのと、サスペンションの沈み込みが大きいため足付きは良好

エンジンをかけ走行してみると、初めて乗るバイクなのに車体との一体感をすぐさま感じることができた。加速や減速、そしてコーナーリングでも、自分の体とバイクが一緒に動いていくような感覚がある。これは、まさに着座位置を前方に配したポジションのおかげ。バイクは車体の重心に近い部分に乗ることで一体感が増すことから、エンジンの上に座っているような「MT-09 ABS」では加減速でも体がうしろに置いていかれるような感覚がないのだ。この車体との一体感をもっとも強く感じたのは、街中のあまり速度が出ていないタイトなコーナーリング。ハイパワーなバイクで走っても特におもしろみのない何気ないカーブでも、マシンと一体となってバンクして曲がっていく感覚が得られる「MT-09 ABS」では楽しくてたまらなくなる。いっぽう、高速道路のカーブでは、バイクの重心と一緒に動いているような印象となるため、恐怖感を覚えずに済む。

ステップに足を乗せるとかなり膝が鋭角に曲がり、その感覚がレーシングマシンのようで何となく気分が盛り上がる。ハンドルはアップライトなので、上半身はラク。ハイパワーなバイクだが、街中の走行でも予想以上に取り回しやすい

街中の狭いカーブでも楽しく曲がれるのは、街乗りライダーにとってはうれしい

街中の狭いカーブでも楽しく曲がれるのは、街乗りライダーにとってはうれしい

走行中のシフト操作では、新しく追加 された機構「アシスト&スリッパー(A&S)クラッチ」と「クイック・シフト・システム(QSS)」の恩恵を得ることができた。クラッチ操作を軽くするとともに、シフトダウンした際に強いエンジンブレーキ作用でリアタイヤがホッピングするような挙動を抑制する「アシスト&スリッパー(A&S)クラッチ」と、シフトレバーの動きを感知し、噛み合っているギアの駆動トルクを瞬間的にキャンセルしてシフトアップ操作をサポートする「クイック・シフト・システム(QSS)」により、2,000rpm以上ならクラッチを切らずにシフトアップが可能に。シフト操作の頻度が減り、街乗りやツーリングでの疲労感がかなり軽減するほか、加速中の駆動力ロスが少ないので、より素早く車体をスピードに乗せることができる。

シフトレバーにつながっているのが「クイック・シフト・システム」のセンサー。「アシスト&スリッパー(A&S)クラッチ」は、左にあるクランクケースカバーの中に収まっている

エンジンパワーはもちろん十分。走行モードをもっともパワフルな「A」にすると、公道ではちょっと恐怖を覚えるくらいの加速を味わえた。試乗前に比較したいと記していた「XSR900」との走行感の違いであるが、「XSR900」では3気筒らしい低回転からのトルク感を強く得られたが、「MT-09 ABS」ではそれを感じず。その理由は、加速感が楽しくて、ついアクセルを開け気味で走ってしまうため低回転域で走行する時間が少ないからだ。「MT-09 ABS」は、エンジンのトルク感も含め、エンジンそのものより車体やライディングポジションについての印象が強く残るバイクだった。

試乗を終えて

過去にスーパーモタードの草レースに参加していたことがある筆者は、そのレースで感じた“バイクを自由に扱えるような感覚”を「MT-09 ABS」でも味わえるかもと期待していた。とはいえ、「MT-09 ABS」はオフロード走行するマシンではない。あくまでも、長めのサスペンションや前寄りの着座位置というスーパーモタードのテイストを取り入れたバイクであるため、オフロード車をベースとしたスーパーモタードマシンとは別物。一般的なスーパーモタードマシンではカーブの際、座る位置を移動させて車体を寝かせるような曲がり方をするが、「MT-09 ABS」で同じように行ってもそれほど楽しさは感じない。個人的には、速度のあまり出ないような街中のタイトなカーブではこうした曲がり方が向いていると思っていたので少々残念な気持ちになったが、「MT-09 ABS」の魅力は別のところにあった。バイクとの一体感だ。バイクと一体となって走ることは、ライダーの思い描く理想像のひとつ。その感覚を、ライダーのレベルを問わずに得ることができるのが「MT-09 ABS」が高い人気を博している理由だと言える。とにかく、コーナーを曲がる瞬間が理屈抜きに気持ちいい。リーンウィズ(車体と体が一緒に傾くような乗り方)でも予想以上によく曲がり、サスペンションもよく動くので、速度が乗っていなくてもノーズダイブ(前側のサスペンションが沈み、曲がりやすい状態)が起るのでスムーズ。別のカタチではあるが、試乗前に思い描いていた“バイクを自由に扱えるような感覚”はたしかにある! ハイパワーで心地よいエンジンを搭載したバイクと一体となって走る。これ以上の楽しみはなかなか見付けられそうもない。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
連載最新記事
連載記事一覧
2017.12.14 更新
ページトップへ戻る