バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
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バイクに乗り始めた頃を思いだす! 3気筒エンジンが楽しいヤマハ「XSR900」

トルク感とリニアな回転上昇を両立した“クロスプレーン・コンセプト”と呼ばれる3気筒エンジンを搭載したヤマハ「XSR900」。オーソドックスなネイキッドスタイルだが懐古趣味なモデルではなく、随所に最新の技術や設計思想を組み込んだ“ネオレトロ”の流れをくんでいる。そんなXSR900をストリートに連れ出し、走りや乗り心地を確かめてみた。

サイズは815(幅)×1,140(高さ)×2,070(長さ)mmで、車量は195kg

サイズは815(幅)×1,140(高さ)×2,070(長さ)mmで、車量は195kg

レトロなボディに搭載される先進テクノロジー

XSR900の魅力を作り出す最大のポイントは、“クロスプレーン・コンセプト”にもとづく3気筒エンジンだろう。クロスプレーンとは、本来4気筒エンジンの4つの燃焼室を不等間隔で爆発させる構造とした時のクランク(ピストンの動きを円運動に変換するパーツ)の形状に由来する名称で、トラクション(エンジンの駆動力を路面に伝える能力)にすぐれることからレーシングマシンに採用されていた技術。そのトラクションのよさを3気筒で再現したのが、XSR900に搭載されているエンジンだ。このエンジンを含め、フレームや足回りなどの基本構造は、2014年に発売され今もなお高い人気を誇るスポーツマルチバイク「MT-09」と共通。ほかにも、スイッチでエンジン特性を切り替えできる「D-MODE」(走行モード切替システム)といったMT-09の精良な部分を受け継いでいる。

MT-09のプラットフォームを踏襲したXSR900だが、見た目はまったく別物。MT-09はオンロードとオフロードを自由に走れる“スーパーモタード”テイストのハンドリングや外観、よく動くサスペンションなど“キャラの立った”モデルのため、好みが分かれる部分があった。そこで、一般的なオンロードバイクに慣れたライダーにも違和感のないマシンを目指したのがXSR900だ。ライディングポジションやデザインを見直し、サスペンションのセッティングも硬めにすることで、より多くのライダーに受け入れられやすいキャラクターとなった。

3気筒エンジンの魅力を世に知らしめた立役者といえるMT-09。スーパーモタードのデザインやポジションを取り入れた個性の強いモデルだ

XSR900は、オーセンティックな懐かしさを感じる仕上がり。曲線を描くタンクが目を引くデザインで、ややゴツさを感じるエンジンやフレームはブラックアウトされている

MT-09を踏襲した構造にくわえ、XSR900には進化した「トラクションコントロールシステム(TCS)」や「A&Sクラッチ(アシスト&スリッパークラッチ)」が搭載された。TCSとはアクセルを開けた際に後輪の空転を抑制する機能で、MT-09をベースにしたツーリングモデル「MT-09トレーサー」にも備えられていたが、XSR900ではモード数が1つ増え、3モードから選べるように。いっぽうA&Sクラッチは、シフトダウン時にエンジン回転を合わせられなかった際に起こる、後輪がロックしたり跳ねたりする挙動を抑え、クラッチ操作も軽くしてくれる装置だ。TCSとA&Sクラッチにより、ライディングの安心感と快適性が高まった。

水冷直列3気筒エンジン(845cc)の最高出力は81kW(110ps)/9,000rpmで、最大トルクは88Nm(9kgf・m)/8,500rpm

D-MODEのスイッチは、右側のハンドル近くに装備。標準的な出力感の「STD」モードのほか、穏やかな走行になる「B」モード、レスポンスが鋭くなりパワー感も増す「A」モードを、気分や走行状況に応じて切り替えできる

左手側にあるTCSの切り替えスイッチでは、「1(弱)」「2(強)」「OFF」で制御できる。ちなみに、「OFF」が新しく搭載されたモード

ダブルディスクのフロントブレーキには、ラジアルマウントキャリパーを採用。ABSも装備されている。タイヤサイズは120/70の17インチ

迫力ある180/55サイズのリアタイヤ。ブレーキはシングルディスクでABSを搭載

迫力ある180/55サイズのリアタイヤ。ブレーキはシングルディスクでABSを搭載

フロントフォークは41mm径の倒立式。基本構造はMT-09と共通だが、バネレートと減衰力がともに高められておりMT-09に比べると硬めで沈み込みが少ない

オーソドックスなパイプハンドルにメーターが配置されたシンプルなコクピット。D-MODEの走行モードやTCSの効きはメーターパネルに表示される

スイングアームに直付けのように見えるリアサスペンションだが、リンク式となっている

スイングアームに直付けのように見えるリアサスペンションだが、リンク式となっている

アルミ製のカバーで左右から覆い、黒い樹脂パーツでつなぎ合わせたタンクは、デザインのキーポイントの1つ。ヘアライン加工を一度施してから塗装するという手間がかけられている

トルク感にシビれる! 走行レポート

なめらかに回る4気筒エンジンと車体を押し出すようなトルク感が魅力の2気筒エンジン、その両者の“いいとこ取り”をうたう3気筒エンジンを搭載したXSR900は街乗りを始めとする日常的なシーンに活躍するはず。そこで、一般道を中心に、街中から都市部の高速道路、軽めのワインディングなどを走行してみた。ライダーが安心して走りを楽しめるようにするためのD-MODEやTCS、A&Sクラッチの効果もチェックする。

身長175cmの筆者がまたいでみたところ、足つきは両足のつま先が付く程度だった。サスペンションの沈み込みが少なく、シートも硬めなため足付き性はあまりよくない。しかし、腕を伸ばした位置にハンドルがあり、とても自然なポジションだ。体重が適度に手にも分散されるので、長時間乗っていてもお尻が痛くなりにくそう

実際に走り出して気がつくのは、エンジンのトルク感。低速からアクセルを開けた際にグググッと押し出すような感覚で、とても気持ちいい。表現しにくいが、4気筒エンジンのトルク感がグーッという感じなのに対して、XSR900の3気筒エンジンはタイヤが細かく地面を引っ掻いて車体を前に進ませるような具合だ。そこからの回転の上昇は非常にスムーズで、あっという間に速度が乗る。一般道ではすぐに制限速度に達してしまうので、そこまでアクセルを開けることは少ないだろう。ただ、制限速度に到達するまでのトルク感が爽快なので、速度が出ない街中でも十分に楽しい。

エンジンの回転数に関わらず、気持ちいい加速感が味わえる。もちろん、高速道路で大きくアクセルオープンすれば力強い加速に!

エンジンの回転数に関わらず、気持ちいい加速感が味わえる。もちろん、高速道路で大きくアクセルオープンすれば力強い加速に!

ハンドリングは非常に素直。車体を傾けるとハンドルが切れて曲がっていく感覚がとても自然だ。そして倒し込みの操作が、この排気量のバイクとしては軽い。4気筒エンジンに比べてコンパクトな3気筒は、重量が中心部に集中している効果だろう。また、足回りは前後のピッチングモーション(サスペンションが沈み込む動き)が少ないため、ブレーキをかけてコーナーに入る動きがスムーズ。サスペンションの動きを積極的に使ってコーナリングするのは楽しいものだが、公道ではどこでもそのような積極的なライディングができるわけではない。そういう意味でも、XSR900の落ち着いたサスペンションの動きは好感が持てた。

低速でもギクシャクしないし、高速コーナーでも落ち着いた動きをしてくれる

低速でもギクシャクしないし、高速コーナーでも落ち着いた動きをしてくれる

もうひとつ、街乗りでありがたいと感じたのがクラッチの軽さ。A&Sクラッチの恩恵で、クラッチのスプリングをやわらかくできるので長時間乗っていても左手が疲れることがない。エンジンブレーキが効きすぎてリアタイヤがハネてしまうような状況も避けられるため、安心感にもつながる。細かい部分だが、毎日の通勤や長距離ツーリングなどで大きな違いになるだろう。

試乗を終えて

3気筒エンジンが楽しいということは、以前試乗したMT09で体験済みだが、今回XSR900に長時間乗ったことで、その確信はさらに強まった。4気筒エンジンに比べてコンパクトなため倒し込みが軽く、低速のトルク感も強いので、バイクを寝かした状態からアクセルを開けてトラクションを感じながら立ち上がるという一連の操作がとにかくおもしろい。速度の出ない街中の交差点を曲がるだけでも、その感覚が得られる。

個人的にはMT09のスーパーモタード的なハンドリングが好みではあるが、3気筒エンジンの乗り味をより多くの人が楽しめるのはXSR900のほうかもしれない。その理由は、ポジションとサスペンションのセッティングにある。よりオンロードバイク的な着座位置と、落ち着きのある足回りは幅広いライダーに受け入れられるはずだ。そして、後輪のスピンを抑えるTCSや軽くて扱いやすいA&Sクラッチなどの先進機能によって安心感も高まっている。XSR900は、バイク初心者からベテランライダーまでバイクを操る楽しみの原点に触れられるモデルといえるだろう。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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