バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

BMW初の中免で乗れるバイク! 余裕のある車体設計で加速も安定感もバツグンな「G310R」

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大型のエンジンを搭載し、長距離ツーリングに向いた車種を得意とするBMWだが、近年はレーシングタイプやオフロードモデルなどラインアップを充実させている。そんなBMWから、初めて日本国内の普通自動二輪免許で乗れるモデル「G310R」がリリースされた。313ccの単気筒エンジンを搭載したG310Rで気になるのは、ただひとつ。BMWのスローガンでもある“駆け抜ける歓び”は、小排気量でも得られるのかということだ。

100年の歴史を受け継ぐ小排気量モデル

BMWというブランド名を聞くと、まず4輪車が思い浮ぶが、実は同社で製品化されたのは自動車よりバイクのほうが早い。さらに言えば、1916年に創業した当時は航空機のエンジン製造メーカーだった。第1次世界大戦において母国ドイツの敗戦により航空機の製造ができなくなったため、バイクへと移行することになったのだ。その第1号モデルが、1923年に製造が開始された「R32」。R32はシリンダーが左右に張り出した水平対向型のエンジンを搭載しており、このタイプのエンジンはその後のBMW製バイクのアイコンとなる。そして、時は下り1980年代からは直列4気筒や2気筒、単気筒のエンジンを装備したモデルといったようにラインアップを増やしつつも、いずれも大陸を横断するような長い距離を快適に走れるツーリング車であることは一貫。そのため、単気筒の「G」シリーズであっても排気量は大きなものが多く、400ccを上限とする日本の普通自動二輪免許で乗れるモデルはこれまでなかった。

長く伸びた車体に水平対向2気筒の空冷エンジンを搭載した「R32」。流麗なデザインは今見てもカッコイイ

長く伸びた車体に水平対向2気筒の空冷エンジンを搭載した「R32」。流麗なデザインは今見てもカッコイイ

航空機のエンジン製造メーカーだった時の遺伝子は、青い空と白い雲をプロペラで象ったエンブレムとなり現在に引き継がれてる

そんなBMWから、ついに普通自動二輪免許で乗れるバイクが誕生。2017年6月に発売された、「G310R」だ。同社のバイクとしては非常にコンパクトなG310Rだが、昨今メーカー各社が力を入れている250〜300cc前後のカテゴリーのマシンとしてはやや大柄。他社の同クラスのバイクがスポーツ性を売りにしているのに対し、G310Rは街乗りからワインディングなどまで快適に走れる「ロードスター」という位置付けとなっている。安定性を向上させ、乗り心地をよくするために、ある程度大きめの車体サイズが必要だったのだ。

なお、G310Rは成長著しいアジア市場を視野に入れた世界戦略車とされており、多くのユーザーが手軽に乗れるように排気量も価格も抑えられている。58万円(税込)でBMWブランドのバイクが手に入れられる点は、大きな魅力だろう。とはいえ、車両を見るとコストを抑えるために手を抜いたという印象は受けない。心臓部となるエンジンは313ccの単気筒だが、前方から吸気し、後方から排気するという通常とは逆のレイアウトを採用。このレイアウトにより、吸気から排気への流れが適正化されるほか、シリンダーを後傾させ、重心位置を下げることが可能となったことで安定性の高いライディングを実現した。また、倒立式のフロントフォークや軽量化された長いスイングアーム、ABS付きのラジアルマウントブレーキなど足回りのパーツにもコストカットの跡は感じられない。

カウルのないネイキッドスタイルのデザイン。サイズは820(幅)×1,070(高さ)×2,000(長さ)mmで、重量は159kg
※サイズはミラーを除いたもの

写真では見えにくいが、シリンダーが後傾し、後方から排気管が伸びる構造を採用した単気筒DOHCエンジン。9,500回転で最高出力を発揮する高回転型の特性を持つ

上の写真では見えにくかったので、別のアングルを用意してみた。ホワイトのスプリングが目を引くリアサスペンションの横に、エンジンから伸びる排気管が見える

デザイン上の存在感が大きいだけでなく、剛性を高め、安定したハンドリングを実現するゴールドアルマイト加工されたΦ41mmのフロントフォーク

フロントには110/70 R17サイズのラジアルタイヤを採用。ブレーキはブレンボのブランドである「BYBLE(バイブレ)」製のラジアルマウントキャリパーが装備されている

リアブレーキもBYBLE製で、リアタイヤのサイズは150/60 R17

リアブレーキもBYBLE製で、リアタイヤのサイズは150/60 R17

スチール製のパイプを組み合わせたフレームはエンジンを包み込むようなレイアウトとされ、剛性感も高い

スチール製のパイプを組み合わせたフレームはエンジンを包み込むようなレイアウトとされ、剛性感も高い

容量が11Lあるフューエルタンク。カタログ燃費は30.3km/Lなので、長距離ツーリングも問題なくこなせそうだ

容量が11Lあるフューエルタンク。カタログ燃費は30.3km/Lなので、長距離ツーリングも問題なくこなせそうだ

シートは細身だが、予想以上に座りやすくタンデム(2人乗り)もしやすい

シートは細身だが、予想以上に座りやすくタンデム(2人乗り)もしやすい

オーソドックスなデザインのマフラーは、容量も⼤きくしっかりと消⾳されている

メーターはフルデジタルで、下部にバーのように回転数が表示される。油温やガソリン残量、航続可能距離、平均燃費、平均速度なども確認可能

やる気にさせてくれるエンジン・フィーリングでライディング!

排気量300ccのクラスとしてはやや大柄の車体となるG310Rだが、BMWでは“身長を問わず乗れる”ことをウリとしており、シート高は785mmとなっている。身長175cmの筆者がまたがると両足のかかとがべったりと着くほどだったので、身長がそれほど高くない女性でも不安を覚えることなく乗れるだろう。

ハンドル位置もアップライトで、着座して手を伸ばした位置にグリップがある感覚。ライディングポジションが非常に自然だ

34PS/9,500rpmの最高出力、28Nm/7500rpmの最大トルクを発揮する単気筒エンジンは、低回転のトルクも厚いため、軽い操作感のクラッチをつなぐとスルスルと車体が加速する。街乗りでは、低速トルクを生かして早めにシフトアップしていく走り方で十分に交通の流れをリードできた。いっぽう、高速道路では10,000回転まで回る⾼回転型の特性が顔を出す。途中、やや回転がもたつく部分もあったものの、7,000回転を超えたあたりから一気にレッドゾーンまで吹け上がる。アクセル操作に合わせてタコメーターの針が跳ね上がるようなレスポンスのよさはないが、高回転まできっちり回るエンジンは楽しい。

エンジンを始動すると、単気筒らしい歯切れのよい排気音が耳に届く。しっかりと消音はされているのでうるさくはないが、やる気にさせてくれる音だ

単気筒のエンジンに対して、⾞体はかなりしっかりとしている。これは同社の⼤排気量マシンにも共通する特徴で、エンジンパワーに対して車体が勝っている設計。G310Rではその傾向がさらに顕著になった。特にブレーキは好印象。シングルディスクながらラジアルマウントされたキャリパーは高い制動力を持ち、タッチやコントロール性もすぐれているため、313ccのエンジンが生み出すスピードをすべて右手で制御できる。強く握ればしっかりと車速が落ち、その幅も意のままにコントロールできるので、コーナーに入る前に最適なスピードに持っていきやすい。また、車体の剛性が出力に勝っているため、コーナリングでも安定感はバツグンだ。

これだけの安定感があれば、サーキットを走るようなことがあっても、車体や足回りに不安を覚えることはないだろう

特に楽しかったのは、コーナリング中の自由度の高さ。上半身を立ててバイクだけを寝かすようなリーンアウトや、逆に上体を内側に入れるリーンインなどさまざまな姿勢で街乗りしてみたが、どんな乗り方をしても受け止めてくれる安心感がある。コーナリング中にラインや姿勢を変える操作をしても不安感がないのは、⼩排気量であってもさすがはBMWのバイクだと感じた。

写真ではリーンイン気味に乗っているが、オフロード車っぽくリーンアウトで乗っても違和感のない懐の広さを持つ

試乗を終えて

“中免で乗れる初のBMW”という点で注目を集めるG310Rだが、乗ってみて感じたのは「これは確かにBMWのバイクだ」ということ。簡単にいうと、エンジンにも車体にも余裕があり、小排気量車だからといってアクセクする要素がない。発進や加速をスムーズに行える余力のあるトルクのおかげで交通の流れをリードできるし、高速道路では高回転まで回るエンジン特性のおかげで悠々と追い越しもできる。そして、車体や足回り、ブレーキなどのキャパが大きいため、コーナリングで多少失敗したとしてもリカバリーが効く。このような構造は、ライディング中の気持ちにも余裕を持たせてくれる。気持ちに余裕を持って乗れるということは、初心者や久々にバイクに復帰するリターンライダーにとってもありがたいもの。長距離のツーリングでも疲れが少なく済むので、遠くに出かけてみるのもいい。

大排気量モデルのようにアクセルのひと開けで他車を置き去りにするような速さはないが、BMWが標榜する“駆け抜ける歓び” を十分に味わうことができる。初心者の「ファーストバイク」としても、経験豊富なライダーの「ファーストBMW」としてもうってつけなバイクだ。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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2017.11.16 更新
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