バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
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快適性は自動車レベルで、乗り味はバイク! 新型「ゴールドウイング」が予想以上におもしろい

プレミアムなツーリングバイクとして名高い、ホンダ「ゴールドウイング」が17年ぶりにモデルチェンジ。自動車のような快適な乗り心地がウリであったゴールドウイングだが、新型では“バイクらしさ”を重視した大幅な改良が行われた。実は筆者、これまでゴールドウイングに試乗したことはない。というのも、“自動車のような=快適ではあるが軽快さは望めないであろう”と考えていたからだ。しかし、バイクとして楽しめるようになったという新型には俄然興味がわく。どのような操作性と乗り心地を味わわせてくれるのか、長距離ツーリングに出かけてみた。

自動車並みの豪華な装備と快適性で人気モデルに!

「ゴールドウイング」が誕生したのは、今から40年以上前のこと。1972年に開発がスタートし、1975年に北米で発売された初代モデル「GL1000」(排気量999cc)は、大陸横断も快適にこなせる大型ツーリングモデルという位置付けで、バイクとしてはめずらしい水平対向型のエンジンを搭載していた。そして、その性能に注目したユーザーの多くが大型のカウルやパニアケースを装着するといったように、さらにツーリングでの快適性を高めるためのカスタマイズを始め出したのだ。このような背景を受け、1980年発売にリリースされた2代目モデル「GL1100」(排気量1,085cc)には、初代モデルと同じカウルのないネイキッドスタイルの標準モデルのほかに、カウルやケースを標準装備し、オプションでステレオシステムまで選べる「Interstate(インターステート)」グレードも登場した。

水平対向の4気筒エンジンを搭載した、初代モデル(1975年発売)。今ではシリーズのアイコンともなっている、カウルやケースを持たないネイキッドモデルだった

2代目モデル「GL1100」(1980年発売)の「インターステート」グレード。標準モデルより高価だったにもかかわらず、「インターステート」グレードのほうが人気は高かったという

その後も、大排気量化と装飾面のグレードアップは進んでいく。1984年に発売された3代目モデル「GL1200」(排気量1,182cc)にも、標準モデルのほかに、4スピーカーのオーディオシステムやクルーズコントロールを装備したグレードがラインアップ。そして、4代目モデル「GL1500」(1988年発売)では排気量が1,520ccまで拡大し、水平対向エンジンが4気筒から6気筒となったため、車重が410kgとなり、押し歩きにも苦労する重さだったことから、セルモーターを利用してバックができる機構が装備された。

4代目モデル「GL1500」(1988年発売)から、日本でも正規販売がスタート。6気筒となり、さらに重厚感が増した

装備の豪華さは、5代目モデル「GL1800」(2001年発売)で極められることとなる。排気量は1,832ccに拡大し、燃料供給はキャブレターから電子制御の「PGM-FI」に変更され、さらに、後部座席にバックレストを設けるなど、自動車のような快適性を実現した。そして、2007年には世界初のオートバイ用エアバッグを搭載したモデルを追加。2008年には日本初となるオートバイ用のナビをビルトインしたモデル「ゴールドウイング<エアバッグ>」も登場。このように、ユーザーの嗜好に合わせて装備を充実させていったゴールドウイングは、他のバイクには置き換えることのできない独自の世界を構築し、累計生産台数が79万5000台を数える人気モデルに成長したのだ。

5代目モデル「GL1800」(2001年発売)は装備の豪華さと重厚感では頂点に達したものの、車重は415kgまでアップ

バイクへの原点回帰を果たした新型モデル

充実した装備や快適な乗り心地で人気を博した「ゴールドウイング」シリーズだが、そのいっぽうで、それらがバイクとしての扱いやすさや操る楽しさを阻害することにもなっていた。また、価格が200〜300万円強と高く、「それならば自動車を購入したほうがいいのではないか」とも言われる始末。このような現実を踏まえ、17年ぶりにフルモデルチェンジした新型は、なによりも“バイクとしての走る楽しさ”に重きが置かれた。そのひとつが、軽量化だ。さまざまな工夫が施されたが、もっとも軽量化に貢献したのは新設計されたエンジンとフレームだろう。水平対向の6気筒というエンジン型式は前モデルと同じだが、エンジン単体で約6.2kgの軽量化を達成し、フレームも単体で約2kgの重量低減を実現。前モデルより総車重が40kgほど軽い仕上がりとなった。

6代目モデルの最上位機「ゴールドウイング ツアー デュアル クラッチ トランスミッション」。サイズは2,575(全長)×905(全幅)×1,430(全高)mmで、重量は383kg

新設計のエンジンは最高出力126PS、最大トルク170Nmを発揮。燃焼効率などが見直され、カタログ値で27km/Lの燃費を実現した

そして、“バイクとしての走る楽しさ”を実現するために、軽量化とともに見直されたのが操作性。なかでも注目しておきたいのが、フロントに新たに採用されたダブルウィッシュボーン式のサスペンションだ。一般的にバイクに装備されることの多いテレスコピック式のサスペンションは、前輪を支えるフロントフォークそのものにショックを吸収する機能をもたせているのに対し、ダブルウィッシュボーン式は前輪を支えるフロントフォークとショックを吸収するサスペンションが別になっているため、ハンドルに伝わる衝撃が30%以上軽減されるという。さらに、フロントフォークの可動部も軽くなり、軽快なハンドリングも望めるようになった。

ダブルウィッシュボーン式サスペンションの採用により、路面追従性が格段にアップ。このタイプのサスペンションは、自動車によく使われている

ダブルウィッシュボーン式サスペンションは、前輪がギャップを通過した際のショックがハンドルに直接伝わらない仕組みとなっている

さらに、フロントタイヤが何かを乗り越えた時にはサスペンションが車体側へ寄らず、真上に動く構造なので、前輪周りのスペース効率も高まった

このほか、心地よい風を感じられるようにやや小さくなったカウルも、運動性能向上に貢献している(走行抵抗が低減するため)。とはいえ、高速道路などスピードを出す時には走行風を避けられるほうがありがたいのは確か。その部分をカバーするため、電動で上下するスクリーンを装備。バイクらしい自然なフィーリングを重視しつつ、ゴールドウイングの個性である快適さはしっかりと継承されている。

前モデルに比べてカウルは小型化されているが、スクリーンを目いっぱい上げればライダーに直接風が当たらない

なお、6代目モデルからラインアップの名称が一新され、リアに大型のトランクを備えたモデルが「ゴールドウイング ツアー」、装備しないモデルが「ゴールドウイング」(メーカー希望小売価格253万円/税別)となった。

「ゴールドウイング ツアー」に装備されるトランクは、フルフェイスのヘルメットを2個収納できるほど大容量。筆者所有のバックパックもゆったりと入れることができた。このリアトランクにはスマートフォンなどを充電できるUSBポートも用意されている

収納スペースはリアトランクのほか、左右にパニアケースが用意されており、トータルで約110L収納可能。ただ、パニアケースの容量は十分だが、形状が独特なので柔軟性のないものは入れにくいかもしれない

今回紹介する「ゴールドウイング ツアー デュアル クラッチ トランスミッション」は最上位モデルで、307万円(税別)。通常モデルの「ゴールドウイング ツアー」(メーカー希望小売価格274万円〜/税別)よりも30万円ほど高い理由は、変速を自動で行う「デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)」とエアバッグが搭載されているためだ。ちなみに、通常モデルの「ゴールドウイング ツアー」に採用されているマニュアルトランスミッションも従来の5速から6速へと多段化している。

エンジンの後方に位置するのが、7速のデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)。変速操作を自動化し、ツーリングの快適さを向上させるとともにスポーティーな走りにも貢献する

操作は、ハンドル右側のボタンで行う。「D」ボタンを押すとDCTが1速に入り、そのあとはアクセルの操作だけで自動変速される。なお、「N」ボタンでニュートラルになり、「A/M」ボタンで自動変速とマニュアル変速を切り替え可能

また、左手側のレバーを操作すれば、任意のタイミングで変速できる

また、左手側のレバーを操作すれば、任意のタイミングで変速できる

試乗して驚がくした、運動性能の高さ!

今回は、最上位モデル「ゴールドウイング ツアー デュアル クラッチ トランスミッション」に試乗するわけだが、このモデルから初めて搭載されるデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)の効果が気になるところ。なにせ、17年ぶりのフルモデルチェンジというからには、大きく進化しているはずだ。そんなはやる気持ちを抑え、車体にまたがってみると、当たり前ではあるが、かなり大きい。しかし、着座位置が低く、シートの両脇が細くなっているため、足つき性は良好だ。

身長175cmの筆者でも、両足のつま先は余裕で接地する。車重は383kgと重いものの、片足でも十分に支えられるバランスのよさも感じられた

キーは、自動車では一般的なスマートキーを採用。リッチな仕様のゴールドウイングには適している

キーは、自動車では一般的なスマートキーを採用。リッチな仕様のゴールドウイングには適している

エンジンをかけ、DCTをドライブモードに入れて走り出すと、車体の重さは一気に感じなくなる。低速からトルクがあり、静粛で振動も少ない水平対向の6気筒エンジンの快適性をすぐに実感できた。低い位置に重心があるエンジンの設計もひと役買っているようだ。そして、車体のバランスのよさもバツグン。慣れない大型のバイクに乗ると、はじめのうちは緊張からハンドルでバランスを取ろうとしてしまい、低速でフラついたりすることもあるが、ゴールドウイング ツアー デュアル クラッチ トランスミッションは走り出した瞬間からブレずにまっすぐ走ることができた。あまりに安定しているので、信号待ちなどで足をつくことを忘れてしまいそうなほどだ。

走り出してまず感じるのは圧倒的な直進安定性。慣れない車体におっかなびっくり乗っても、ハンドルがブレるようなことは一切ない

高速道路に入ると安定感はさらにアップ。アクセルを開けているだけで、ピシッとした安定感で快適に巡行できる。このようにロングツーリングしている時に使いたいのが、車速をキープしてくれるクルーズコントロール機能。右手をハンドルに添えているだけでいいので、走行が断然ラクになる。そして、自動で変速してくれるDCTも快適! いくつかのDCT搭載のバイクに乗ったことはあるが、このマシンとの相性がもっともよいのではないかと思えるほどの完成度だ。ただ、自動変速といってもスクーターのような無断階変速とは異なり、シフトアップやシフトダウンの感覚はきちんと伝わってくるほか、そのタイミングが乗り手の意思と乖離していないので違和感がない。まるで、ライダーが変速したいタイミングを察知して、上手な人が自分の代わりにスムーズにシフト操作をしてくれているような感じなのだ。

高速道路を走っている時の安心感は、もはやバイクのレベルではない。それでいて、レーンチェンジなどは軽快で、自動車とは明確に異なる俊敏さを示す

ライダーの意思に忠実な走りを提供するのに役立っていると感じたのが、シーン別に用意されるライディングモード。燃費を重視した「エコノ」、快適性の中にスポーティーさを残した「ツアー」、スポーツ性を高めた「スポーツ」、路面が濡れているシーンに対応した「レイン」の4種類のモードがあり、道路の状況や気分に合わせて切り替え可能。特に圧巻だったのは「スポーツ」モードで、変速タイミングが高回転まで引っ張るように設定されるだけでなく、排気音もスポーティーなサウンドになるので気分が一気に盛り上がる。右手をひとひねりすれば一気に加速する感覚は、大排気量のスポーツバイクに乗っているようで、正直なところ自分の腕では扱いきれないと感じるほどだった。このモードがあれば、スポーツタイプのバイクと一緒にツーリングに行っても遅れを取る心配はないだろう。

スピードメーターの下に走行モードを表示。「ツアー」モードでも十分にスポーティーで、かなり俊敏な走りが味わえる

さらに、驚くことにコーナーリングが非常に軽快! ヘビー級の車体と長いホイールベース、高速道路で感じたバツグンの安定性から、カーブが続く道などは得意でないと予想していたが、それは見事に覆された。どっしりとシートに腰かけたままで、車体を寝かすことができるのだ。その際にも重さをほぼ感じないのは、低重心の設計とダブルウィッシュボーン式のフロントサスペンションのおかげだと思われる。バンク角も深いので、よほどのことがなければステップなどが接地することもなさそう。扱いやすいトルク特性のエンジンは、コーナーリング中から積極的にアクセルを開けていくことができるので、その気になればかなりのハイペースで峠道を駆け抜けることもできそうだ。

大きな車体を軽快にバンクさせてカーブを抜けて行くのが本当に楽しくて、カーブが見えてくると曲がるのが待ち遠しくなるほど気持ちが高ぶる

試乗を終えて

これまで、ゴールドウイングに乗ったライダーを見かけたことは何度かあったが、正直なところあまりうらやましいと思ったことはなかった。快適な乗り心地は得られても、バイクならではの“操る楽しさ”があるとは想像できなかったからだ。しかし、今回試乗したゴールドウイング ツアー デュアル クラッチ トランスミッションは、高速道路ではバツグンの快適さを発揮し、コーナーリングはクセになるほどのおもしろさを味わわせてくれた。カーブが連続する峠道を走るのが楽しいスポーツモデルは数多く存在するが、峠道まで行くにはある程度の距離を走らねばならないため、その移動で疲れてしまうこともあるが、新型のゴールドウイングは長距離の移動も快適にこなすことができるうえ、ワインディングも楽しむことができる。

そして、最後に、2人乗り(タンデム)の乗り心地にもふれておこう。そもそもゴールドウイングは「2人の感動に一層の輝きと充実を」というコンセプトを掲げている。走る歓びをひとりで味わうだけでなく、バイクで行くツーリングの楽しさをパートナーと分け合うことをテーマとしているのだ。今回の試乗では友人に協力してもらい、タンデムライドも試してみたが、タンデムでも安定性はバツグン。直進安定性の高さはひとりで乗っている時と遜色なく、コーナーリングでも後席の乗員の動きに影響されることはなかった。これほどまでにタンデムでの安心感が高いバイクは、ほかにはないのではないだろうか。ちなみに、筆者もリアシートに乗り、乗せられる体験もしてみた。リアシートはしっかりと体をホールドしてくれるので、不安感はゼロ。バイクとの一体感も高く、コーナーでライダーの動きに合わせようとしなくても自然にバイクと一緒に倒れ込んでいくことができる。正直、自動車に乗っているのと近い感覚だ。

包み込むような座面に腰を降ろし、リアトランクと一体化した背もたれに寄りかかって肘かけに腕を置くと、その安楽さはほぼ自動車と同等。子どもを乗せてツーリングを楽しむのもよさそうだ

なお、フロントシートやグリップ同様に、リアシートにもシートヒーターが搭載されている

なお、フロントシートやグリップ同様に、リアシートにもシートヒーターが搭載されている

ほかのバイクには真似のできない唯一無二の魅力を持つ、新型ゴールドウイング。価格もちょっとしたスポーツカー並みだったりするが、その価値は十分にあると感じられた。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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