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ホンダ N-VAN 試乗/N-VANはカングーになり得るか!? アクティバンとも比較

N-VANは日本のルノー「カングー」になり得るか

ルノー「カングー」(左)とホンダ「N-VAN」(右)

ルノー「カングー」(左)とホンダ「N-VAN」(右)

こういうことをつらつらと考えていたとき、どこかでこの魅力を感じていたと思い返して、ふと気づいた。ルノー「カングー」だ。

ルノー「カングー」のサイドブレーキは、耐久性と使いやすさが考慮されている

ルノー「カングー」のサイドブレーキは、耐久性と使いやすさが考慮されている

元々商用車として開発されたカングーは、パリの郵便局で大量に使われることをターゲットに開発。サイドブレーキは、1日に何百回と操作するために引きやすい形状とするなど、徹底的に“プロユース”にこだわって開発された。それが日本に輸入された途端に、お洒落な店の看板カーになり、また、個人で購入し手を入れながら楽しむユーザーも多くいる。1,000台を超えるカングーが年に一度集結するイベント「カングージャンボリー」をのぞいてみると、1台として同じクルマがいないほど、それぞれの思いを込めて手が入れられたカングーを見ることができる。しかし、ルノー・ジャポンが行ったことの多くは、カラーバリエーションの追加くらいだ、と言ったら怒られるか。

いずれにしても、カングーとN-VANの共通点は、プロユースに徹底的にこだわったことだ。道具に装飾はいらない。それよりも、素の美しさこそが大いなる魅力なのではないかと思う次第だ。

実現できなかったスペアタイヤレイアウト

ホンダ「N-VAN」では、リアバンパー裏にスペアタイヤが装着されている。リアバンパーは中央部分を取り外すことができ、そこからスペアタイヤを取り出せる。

少し脱線するが、ここで開発エピソードをひとつご紹介しよう。N-VANのスペアタイヤへの交換はリアバンパーを取り外すことによって可能になる。これは商用車なので、パンクをしても修理剤ではなく、即交換をしなければならないという要望があったからだ。そこで、荷室を犠牲にすることなく場所を探した結果、荷室下に設置され、そこから取り出す方法がなく、バンパーを分割し取り出せるようにしたのだ。

実は、山口さんは別の案を考えていた。彼の案は、サイドの給油口の後ろにスペアタイヤを置くというものだったのだ。なぜなら、高速道路でパンクした時に後ろに回るのは嫌だ。それであれば、エクステリアとして見せてしまえばというのがその考えの基本だ。商用車は、それほどスタイリングを気にして買う人がいないことも踏まえると“使える”ほうがいい。「それであれば真横につけてしまえばいいじゃないか。昔、ランドローバーはボンネットの上につけていて、かっこよかったでしょう。それと同じように、これが道具として新しいかっこよさになるかもしれません。そういう提案をしたのですが誰にも聞いてもらえませんでした。その理由は、今までのエクステリアという概念が払拭できなかったからです。僕らはホンダですし、商用車ですからできると思っていましたがダメでした」と悔しい表情を見せた。ホンダだからこそできた、新しい挑戦が見られなかったのは非常に残念だ。

“コト価値”をデザインしたN-VAN

また、山口さんはこうも言う。「このクルマを使っていろいろなことができるという夢が広がりますよね。結局、我々は“コト価値”をデザインしているのです。いろいろな使い方のアイデアが生まれてくるというのも結局はコト価値です。今UX(ユーザーエクスペリエンス=ユーザー体験)とよく言われますが、本来、UXはホンダがユーザーを喜ばせるためにはどうしたらいいかということでしょう。N-VANのカタログでは、ほとんどクルマが見えておらず、お客様が何かをやっているシーンばかりです。それが今回、デザインしたことかなと最終的には思っています」と話す。広大な荷室をうまく使うと自転車はおろか、かなり大型のバイクも乗るという。そうするとサーキットのパドックも一変するかもしれない。何せ、今はこうした用途出使われる車のほとんどが「ハイエース」なのだから。

ホンダ「N-VAN」の使用例のイメージ。バイク(左上)、サーフィン(右上)、車中泊(左下)、生花(右下)

ホンダ「N-VAN」の使用例のイメージ。バイク(左上)、サーフィン(右上)、車中泊(左下)、生花(右下)

このクルマを持つことで、何ができるか。その素材をホンダは提供してくれる。オーナーはそこから自分で考えて、使いやすく仕上げていってほしい。ホンダは、そういったユーザーが手を入れにくい部分、メーカーでしかできないこと、たとえばカラーであるとか、安全装備を充実させていけば、あとは彼らがいうUXにつながるのではないだろうか。

プロユースのN-VANが、街を走り始める。その7割がGかLグレードで、その仕様には現在白かシルバーの2色しかない。そこに「+STYLE」のカラーバリエーションを増やすことができたら、街はかなりカラフルになるに違いない。そういったことこそが、本来メーカーがやるべき姿だと思うのだが、いかがだろうか。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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