バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
手頃な価格帯でも極上の楽しさが堪能できるスクーター

世界初の2輪ハイブリッド! ホンダ「PCX HYBRID」で味わう電子モーターの加速感にハマる!!


何台もの電動バイクに試乗してきた経験から電気モーターの加速の楽しさはよく知っているものの、スピードや航続距離に満足いく手頃な価格帯のモデルがなく、電気モーターの特性を気軽に味わえるバイクが発売されることを心待ちにしていた筆者。そんなの中、2018年9月に筆者の望みをかなえてくれそうなマシンが登場した。それが、世界初となる2輪車のハイブリッドモデル、ホンダ「PCX HYBRID」である。さっそく、その乗り味を体感してみよう。

人気モデルをベースにハイブリッド化

一般的に125ccのスクーターは、50ccまたは250ccのボディに125ccのエンジンを搭載していることが多いが、「PCX HYBRID」のベースとなったガソリン車「PCX」は125cc専用設計とされている。このクラスとしては大径となる前後14インチホイールを装備した車体は排気量以上に大きく見えるが軽快なハンドリングで、かつ、走行安定性もバツグン。非常に人気の高いこの車種にハイブリッドシステムを搭載したのがPCX HYBRIDだ。

3代目となる現行の「PCX」(排気量125cc)。152ccエンジンを搭載し、高速道路も走れる「PCX150」もラインアップされている

「PCX HYBRID」はシリーズ共通の外観デザインにブルーを基調としたアクセントを加え、ハイブリッド車らしい上質な仕上がりとなっている。ハイブリッドシステムが搭載されたため、車重はPCXより5kg重い135kg

先進的なイメージを演出したヘッドライト。LEDならではの細長いスタイルをうまく組み合わせている

先進的なイメージを演出したヘッドライト。LEDならではの細長いスタイルをうまく組み合わせている

上下2段に配置されたテールランプは、「X」型のようにも見える。こちらもLEDを採用

上下2段に配置されたテールランプは、「X」型のようにも見える。こちらもLEDを採用

2010年に誕生した初代モデルから続く前後14インチ径のホイールが、軽快なハンドリングに貢献。ブレーキはABSを備える

2代目モデルよりもストロークがアップし、バネレートが3段階になったスプリングを備えたリアサスペンションにより、さらに乗り心地を向上

PCX HYBRIDに搭載されるハイブリッドシステムは、一般的に「マイルドハイブリッド」と呼ばれるもの。ハイブリッドシステムには、EV走行もできる「2モーター」(トヨタ「プリウス」はこのシステムを搭載)をはじめ、モーターの数を減らしてコストを抑えた「1モーター」、エンジンを始動するためのセルモーターにアシスト機能を持たせたACGモーターを採用する「マイルドハイブリッド」といったいくつかの種類が存在し、燃費性能は高いほうから2モーター→1モーター→マイルドハイブリッドの順となる。ゆえに、マイルドハイブリッドの燃費性能やモーターのアシスト力は低めだが、仕組みが簡易で重量やコストが抑えられる点において2輪と非常に相性がいい。ホンダによると、燃費よりも楽しさにフォーカスしたそうで、現に燃費(60km/L定地燃費)はPCX(54.6km/L)より0.4 km/L向上した55km/Lにとどまっている。エンジンの最高出力も12PS/8,500rpm、最大トルク12Nm/5,000rpmと、PCXと同様。ただ、この数値にモーターのトルク4.3Nmが上乗せされるため、計算上は152ccのエンジンを搭載した「PCX150」(最高出力15PS/8,500rpm、14Nm/6,500rpm)よりも最大トルクでは勝ることになる。つまり、125ccのバイクでは物足りなさを感じる出だしの加速が、ハイブリッドシステムのおかげで増していると予想されるのだ。

最高出力1.9PS、最大トルク4.3NmのACGモーターで124ccの単気筒エンジンをアシスト。走行中や減速中はACGが発電機となり、シート下にある48Vのリチウムイオンバッテリーに電力を充電し、ライダーがスロットルを開けると、アシスト制御やバッテリー監視機能を持つ「パワードライブユニット(PDU)」がスロットルの開度や速度、エンジン回転数などを計算し、最適なアシストを供給する

シート下のラゲッジボックスは、リチウムイオンバッテリーを搭載したことで23Lに減少。2人乗りができるが、ヘルメットはひとつしか入らない

4秒間だけ味わえる極上の加速感がたまらない!

筆者は初代「PCX」に試乗したことがあり、その際、あまりの乗りやすさとスクーターっぽくないバイク的なハンドリングに衝撃を受けたこともあり、その乗り味がハイブリッド化しても変わらないのかどうかが気になっていた。さっそく、PCX HYBRIDで街中を走ってみよう!

PCX HYBRIDのサイズは全長1,925(全長)×745(全幅)×1,105(全高)mm。原付二種クラスのスクーターとしては大柄な部類ということもあり、またがった際の足付きは身長175cmの筆者でも両足のつま先が付く程度だ。ただ、車重が軽く、バランスがよいので不安感はまったくない

エンジンをかける前にグッときたのが、メッキのバーがむきだしになったハンドル。ひと昔前のスクーターカスタムがはやった頃の手法に習っており、ハンドルを支えるポストなども質感が高い。運転中、常に目に入る個所なので、この仕上がりは気分が盛り上がる。

パイプハンドルがむき出しとなったコックピットの構成は、初代モデルから一環したもの

パイプハンドルがむき出しとなったコックピットの構成は、初代モデルから一環したもの

同社のスポーツモデルなどに採用される、通称「ロッシ・グリップ」が装着されているのも好印象。素手でもグローブを付けていても、貼り付くようなグリップ感で操作性がいい

ひとしきり車体の仕上がりを堪能したあと、いよいよエンジンをかける。軽くアクセルをひねるとあきらかに普通のエンジンのトルクとは異なる、車体をグッと押し出すような力が感じられる。これが、ACGモーターによるアシストのようだ。回転が始まったタイミングから最大トルクを発揮する電気モーターが、125ccとは思えないような出だしの加速を味わせてくれる。モーターによるアシストは4秒で切れるが、その間にエンジンの回転数が上がり、加速力がバトンタッチされるので加速が鈍ることはない。

交通の流れが速い幹線道路でも、出足の鋭さを生かして流れをリードしていくことができる。その加速感は、爽快のひと言

なお、アシストの強さは2種類の走行モードを切り替えることで選べる。快適な走行と低燃費を両立する「Dモード」ではアシスト力が抑えられ、モーターによる力強さは感じるもののアクセル操作に気を遣う必要はない。対して、よりスポーツ性を高めることを目的とした「Sモード」では、アクセルを少し開けただけでもバイクが機敏に加速するので、スポーティーに走りたい時に最適だ。

一般的に125cc の4ストローク単気筒エンジンを搭載したスクーターは、登り坂で非力さを感じることもあるが、「Sモード」ではトルク不足を感じることはなく、グイグイ登っていける

トルクが大きく、加速の鋭いマシンはコーナーの立ち上がりで挙動が乱れがちだが、PCX HYBRIDでは心配なし! モーターによるトルクの立ち上がりはPDUによってよく調律されており、アクセル操作に対してリニアに反応する。4ストローク単気筒エンジンにありがちなトルク変動がうまく補われているのか、むしろ扱いやすい。もともとPCXシリーズはやや細めで大径のタイヤを生かしてタイトな街中の交差点などをキビキビと走れるマシンだったが、そこにモーターのトルクが上乗せされたことで、曲がってからの立ち上がりがより楽しくなっている。信号待ちからのスタート時や、コーナーからの立ち上がり、そしてアクセルを開け足して前車を追い越すような場面をはじめとするアシストの効くシーンがとにかく気持ちいいのだ。

ハンドリングは軽やかで、立ち上がりの加速はアシストが効くため、寝かし込みから立ち上がりまでのコーナーでの一連の動作が楽しい。4秒しかアシストされないのが残念なほど、この快感はクセになる

アシストが効いている間は、メーターの上辺に右に向かってバー表示が現れ、回生が効いている際はそのバーが左側に伸びる。4輪のハイブリッド車などでは見慣れた形式だ

試乗を終えて

125ccの4ストローク単気筒エンジンのスクーターは街中では小回りが効いて速いものの、排気量が小さいためやや非力さを感じる場面もある。それを補うべく152ccのPCX150が誕生したわけだが、高速道路に乗る必要のない場合、原付二種クラスの維持費をあきらめてまでPCX150のパワーを選ぶというのも考えものであった。その点、PCX HYBRIDはPCXとPCX150のいいところを集約しており、さらに、ハイブリッド化により、アクセルを開ける気持ちよさや快適さは向上している。正直、電子モーターによる加速感は1度体験するとまた味わいたくなるほどクセになる気持ちよさ。電動バイクでも出だしの加速感は同じように得られるが、充電する手間や航続距離に上限がある。また、PCX HYBRIDと同価格帯の電動バイクでは、PCX HYBRIDほどのスピードも望めない。PCX HYBRIDは電動バイクとガソリン車のおいしいところを堪能できるスクーターと言えるだろう。

メーカー希望小売価格はPCXより約9万円、PCX150のABS付きモデルより約4万円高い43万2000円(税込)となっているが、個人的にはその価値を十分感じることはできた。通勤や通学などで毎日乗る人にこそ、この快感をぜひ体感していただきたい。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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