2018年11月18日(日)、お台場特設会場(東京都江東区)において、クラシックカーの祭典、「お台場旧車天国2018」が開催された。二輪、四輪合わせておよそ700台、2万人ほどが来場しにぎわいを見せた。
700台を超えるさまざまな旧車、絶版車などが集まって、参加者それぞれの“当時”を楽しむことのできるイベント「お台場旧車天国2018」が開催された。主催は趣味をメインとした雑誌を発行する八重洲出版による「お台場旧車天国2018実行委員会」
会場に足を踏み入れると、そこはまさに旧車の集まり。1985年までに作られた「天国エリア」と、1986年以降のクルマが集う「地獄エリア」にびっしりと懐かしのクルマたちが並ぶ。展示を中心とした“置きイベント”なので、日本車の姿が多いことが大きな特徴だ。
積み上げられた懐かしいプラモやミニカー、絶版車のパーツなどが販売されているのは、旧車イベントならではだ
また、お買い物天国エリアではミニカーやプラモ、カタログや雑誌、さらには興味のない人が見ればガラクタ(!?)としか映らないマニアックなパーツまで、ありとあらゆるものが販売されているのがおもしろい。
日本オートサンダル自動車「オートサンダル」
イタルデザイン「アズテック」
そのほかにも「マニアック天国」として、日本で初めて軽自動車規格の四輪車を作り、1952年からわずか2年しか存在しなかった、日本オートサンダル自動車の「オートサンダル」や、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインした、イタルデザイン「アズテック」など、ほかでは見られないクルマたちが展示されていた。
スバルは「SUBARU天国」と題して、幻の試作車やスバルのルーツとなる貴重なクルマなどが展示していた。画像は、2018年に60周年を迎えた「スバル360」
今回SUBARUは、スバル360誕生60周年を記念して「SUBARU天国」として出展。スバルは、2018年2月の「ノスタルジック2デイズ」、同4月の「モータースポーツジャパン」といったイベントにも出展しており、スバルの安心と愉しさの歴史をヘリテージカーとともに振り返るという企画でイベント出展してきたが、今回のお台場旧車天国はその集大成と位置付けられている。
ノスタルジック2デイズでは、スバルが所有する中からエポックメイキングと称されるクルマとして、「スバル360」の増加試作型や、スバル初の小型車である「スバル1000」、初めての四駆「スバル1300G4WD」、スバル初の6気筒エンジンを載せた「アルシオーネVX」、スバルのクルマ作りを変えた「レガシィ」などを展示。モータースポーツジャパンでは、スバルのモータースポーツの歴史を飾るということでレガシィの「10万キロ世界速度記録車」や、レオーネの「サファリラリー車」などが展示された。そして今回は、その集大成として「お客様のクルマをお借りして、お客様と一緒にスバルの歴史を振り返ることにしました」と話すのは、SUBARUスバルネクストストーリー推進室室長の佐々木元康さんだ。
SUBARU天国ブースには多くのスバル車が展示されたが、その中には同社が所有する「すばる1500 P-1」(1954年)と「A-5」(1963年)も展示。
「すばる1500 P-1」
P-1は、スバル360が発表される5年前の1954年2月にすでに試作車が完成していたが、当時の市場状況や、その他の事情から実際には市販されなかった。エンジンは水冷4サイクルOHVで、排気量は1,500cc、55馬力。最初に“スバル”を名乗ったのはこのクルマなのである。ボディサイズは全長4,235mm、全幅1,670mmと堂々たるもので、当時のトヨタ「クラウン」(4,285mm、1,680mm)とほぼ同じ大きさであった。
スバル「A-5」
もう1台のA-5も、試作車である。このA-5は、アメリカの関連企業と電気自動車を共同開発しようということからスタートしたもので、残念ながら市販には結びつかなかった。電気自動車なので空気抵抗も重視され、空力に有利なリアのクリフカットを採用。またアメリカでの使用も見込み、6人が乗れるようにフロントシートに3人座ることができるようにされた。
最終的には電気ではなく、エンジンが搭載されたのだが、そのレイアウトは当時ほとんどがFR方式だったにもかかわらず、効率のよさを追求しFFを採用。このまま市販すれば、国内初のFF車となる予定だった。その実現に向けてエンジン型式も、直列4気筒エンジンより全長が短くバランスにすぐれ、振動の少ないエンジンということから空冷水平対向4気筒が選ばれた。ここまで読んで、詳しい方はすでにお気づきのとおり、A-5はスバル1000のレイアウトに酷似しており、このクルマのスケールを小さくしたことがスバル1000につながったと言っても過言ではない。さらに、のちのレオーネで採用されたサッシュレスウィンドウも採用されており、非常に先進的なクルマであった。
そのほかにも「360」や「サンバー」、歴代「レオーネ」、「アルシオーネVX」などが展示されていた。
スバル「アルシオーネVX」「レオーネクーペ」
スバル「サンバー」
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トヨタ「セリカXX」と「カムリ2000GT」
トヨタ「カローラレビン(TE27)」と「AE86型 カローラレビン」
旧車の集まりではどうしても日産系に押されがちなトヨタだが、それでもこのイベントでは「カローラ店80’」として、この時代に扱われていた車種「セリカXX」や「カムリ2000GT」、「カローラレビン」などが展示されていた。いずれも、オリジナルコンディションを保った程度のよいクルマで、大いに来場者の注目を集めていた。
トヨタ「クラウン4ドアハードトップ スーパーサルーン エクストラ5-SPEED」
また、今年フルモデルチェンジし15代目に進化した「クラウン」だが、その5代目となる1979年式の「クラウン4ドアハードトップ スーパーサルーン エクストラ5-SPEED」も展示されていた。後期型となる車両で、その名のとおり5速マニュアルが搭載されている。
トヨタ「クラウンコンフォート ブライダル仕様車」
同じクラウンでも珍しいものとして、クラウンコンフォートのブライダル仕様車も展示されていた。髪を結った新婦の乗り降りが大変だ、とコンフォートをベースにリアのルーフを開閉できるようにしたものだ。
トヨタ「コロナマークIIハードトップ1900GSS」
また、コロナ系でも3代目「RT50」のコロナなどのほか、2代目となる「マークIIハードトップ1900GSS」なども展示されていた。
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会場に最も多く参加していたのは、やはり日産系のクルマたちだ。クラブ単位でも、「ダットサン会」や「PMC(プリンスモータリストクラブ)」などのほか、個人も含めるとかなりの数が会場を占めていた。
日産「プレジデント」(初代)
こういったイベントでも、なかなかお目にかかれないのは初代の「プレジデント」だろう。フラグシップたるこのクルマは4リッターV型8気筒と3リッター直列6気筒エンジンが搭載され、当時の価格で300万円ほどだった。
手前が日産「プリンススカイラインスポーツ」、奥が「プリンスグロリア」
また、ジョバンニ・ミケロッティがデザインした「プリンススカイラインスポーツ」や「グロリア」のほか、4気筒DOHCエンジン(FJ20)を搭載した6代目「ニューマンスカイラインRS」や同「2000GTターボ」、そのFJエンジンを2.4リッターまでスープアップしホモロゲーション用として生産した日産「240RS」、そのベースモデルとなる「シルビア」や「ガゼール」の姿も見られた。
日産「シルビア」(2代目)。手前が前期モデルで奥が後期モデル
日産「レパード」
日産「セドリック」(230型)
手前が日産「Be-1」、奥は「ローレル」
日産「サニーエクセレント」と「サニークーペ」(初代)
日産「ブルーバード」(手前が810型、奥が910型)
そのほかにも、ロータリーエンジンの搭載が検討された2代目「シルビア」(前期・後期)や、“あぶない刑事”でおなじみの「レパード」、そのドラマ中でよく破壊される運命となった230型「セドリック」、パイクカーとして一躍有名となった「Be-1」、今となっては非常に珍しい「サニーエクセレント」、「ブルーバード」(810型・910型)なども見ることができた。
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ホンダ「シビックRSL」
手前がホンダ「シティ(マンハッタンルーフ仕様)」、奥はスバル「レオーネ」
ホンダ「バモスホンダ」
いすゞ「ピアッツァ」
もちろんそのほかのメーカーのクルマも充実しており、たとえばホンダではCVCCエンジンを搭載した「シビックRSL」や初代「シティ」のマンハッタンルーフ仕様、少しさかのぼって「バモスホンダ」や「バモスステップバン」の姿があったし、いすゞはジョルジェット・ジウジアーロがデザインした美しい「ピアッツァ」が並んでいた。
左がマツダ「R360」、右がホンダ「ステップバンピックアップ」
マツダ「シャンテ」
マツダ「ファミリアセダン」
三菱「ギャランGTO」
三菱「デボネアエグゼクティブ」
三菱「ミニカピックアップ」
マツダは「R360」のほか、「シャンテ」や5代目「ファミリアセダン」など、近年街中では見かけなくなった懐かしいクルマたちを見ることができた。三菱も、「ギャランGTO」やフラッグシップだった「デボネアエグゼクティブ」、「ミニカピックアップ」などの姿があった。
左が「バックトゥザフューチャー」でおなじみの「デロリアンDMC-12」、右が「ウルトラセブン」の「ポインター号」
手前が「クラウンビクトリア」のポリスカー、奥がナイトライダーの「ナイト2000」
また、こういったイベントでおもしろいのは、映画に登場したクルマを模したモデルがいることだ。今回も「ウルトラセブン」に登場していた「ポインター号」や、その横には「バックトゥザフューチャー」でおなじみの「デロリアンDMC-12」(ちゃんと前にスケートボードが置いてあった!!)、アメリカ映画では定番となる「クラウンビクトリア」のポリスカーや、マイケルと会話ができるかもしれない「ナイトライダー」の「ナイト2000」などが展示され、大いに注目を集めていた。
ゆっくり見始めるとたぶん丸1日かかってしまうくらい、充実した参加車両やお買い物天国エリアだが、フードコートも用意されているので、疲れたときにはひと休みも可能だ。今回、会場を見て回って気づいたのは、家族連れが多かったこと。お父さんと子供が熱心にクルマに見入っていたり、奥様と一緒に熱心に小物を物色したりする姿は微笑ましくもあった。もし、少しでも古いクルマの興味をお持ちなら、一度のぞいてみてはいかがだろうか。買い物もせず、クルマを見ているだけでも、その時代に思いをはせることができるだろうから。
そして、ひとつだけ気をつけていただきたいこともある。今回もエリア内で喫煙コーナーが設けられているにもかかわらず、出展者や一部の参加者が自分のテントや車両だからとそこでタバコを吸っていたことだ。小さな子供たちが熱心にクルマを見ているその中で、窓を開けて平気でタバコを吸っている姿はどうかと思う。最低限のルールは守って皆が気持ちよく楽しめるよう、気を配っていただきたいと感じた。
(Photo:内田俊一・内田千鶴子)