バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
新技術でオンロードの走行性も格段にアップ!

荒れた路面もガツガツいける! “2輪2足”でオフロードを走破するヤマハの新型「セロー250」


2017年9月に生産が終了となった、ヤマハのオフロードバイクの代名詞的存在である「セロー250」。オフロードライダーだけでなく、オンロードでしかバイクに乗らない人からも復活を望む声は大きく、そんなユーザーの思いを受けてか、セロー250が最新技術を搭載して復活。その乗り味を公道と林道でテストしてみた!

初心者ライダーにも評価の高かった「セロー」シリーズ

「セロー」シリーズは車検が不要な軽二輪クラス(125cc以上250cc以下)のオフロードバイクだが、1985年に発売された初期モデル「セロー225」は、上限の排気量250ccではなく223ccであった。その理由は、当時の最高出力などが重視される“スペック至上主義”へのアンチテーゼとして、“山道(トレール)を走る楽しさ”を提供するため。オフロードを走るのに最適な出力に留め、扱いやすさに重きが置かれたのだ。そのための工夫は、足まわりにも見られる。一般的なオフロードバイクは、大きな凸凹も乗り越えられるようにサスペンションのストロークを長く取るのだが、その分、シートの位置が高くなり、足付きがあまりよくないモデルも多い。いっぽう、セロー225はシート高を低くし、足付きをよくすることで、足を着きながらクリアする“2輪2足”の走り方を実現。足がしっかり接地する安心感で、オフロードへのハードルを下げたのだ。このほか、111kgという軽い車体や大きく取られたハンドルの切れ角、低速のトルクを重視したエンジン特性、低速寄りにされたギア比といった構造も功を奏し、セロー225は初心者にも乗りやすいモデルとして支持を集めた。

バランスのよさと乗りやすさで多くのライダーに支持された初期型「セロー225」

バランスのよさと乗りやすさで多くのライダーに支持された初期型「セロー225」

その後、1989年にセルスターターが装備され、1993年にリアブレーキがドラムからディスクに変わり、1997年にはリアタイヤがよりパンクしにくいチューブレス式となるなど、幾度ものブラッシュアップを経ながら、長年にわたりヤマハのオフロードバイクの顔であり続けた。そして、2005年に排気ガス規制に対応するため、燃料の供給方式が電子制御のフューエルインジェクション(FI)となり、排気量を250ccにアップした「セロー250」へとフルモデルチェンジしたのだ。この進化は速さを追求したのではなく、長距離のツーリングに出かけたとしても余裕のある走りを実現するためのもの。その甲斐もあり、オンロードでの快適性も向上し、オフロードライダーだけでなくツーリングユースの乗り手からも支持を集めた。ただ、さらに厳しくなる排気ガス規制に対応することが難しくなったため、2017年には惜しむ声の多い中、ついに生産終了となってしまう。

2005年に発売された「セロー250」は排気量がアップするとともに、外観も大きくイメージを変えた

2005年に発売された「セロー250」は排気量がアップするとともに、外観も大きくイメージを変えた

初期型のコンセプトを体現する新型「セロー250」

そんなセローが、生産終了から約1年の期間を経て新型「セロー250」として復活した。車体やエンジンの基本設計は従来モデルを踏襲しているが、新たにガソリンの蒸気が空気中に排出されるのを防ぐキャニスターや、排気ガス中の酸素濃度を測定し、フューエルインジェクションへフィードバックする「O2センサー」を装備するなどして現代の排気ガス規制をクリア。これらの対策によって車重はわずかに3kg増加したものの、最高出力は2PSアップし、カタログ燃費も40km/Lから48.4km/Lへと向上した。外観デザインも、垂れ下がっていたリアフェンダーがピンと跳ね上がったシャープな形状となるなど、進化を遂げている新型だが、初代から続く乗りやすさを重視したコンセプトは維持されている。

新型「セロー250」のサイズは2,100(全長)×805(全幅)×1,160(全高)mm で、重量は133kg

新型「セロー250」のサイズは2,100(全長)×805(全幅)×1,160(全高)mm で、重量は133kg

空冷単気筒の249ccエンジンは、20PS/7500rpmの最高出力と20Nm/6,000rpmの最大トルクを発揮

空冷単気筒の249ccエンジンは、20PS/7,500rpmの最高出力と20Nm/6,000rpmの最大トルクを発揮

排気ガス規制に対応するために装備された、蒸気ガソリンを回収するためのキャニスター

排気ガス規制に対応するために装備された、蒸気ガソリンを回収するためのキャニスター

オフロードバイクとしては一般的な21インチのフロントホイールを装備。サスペンションは剛性の高い倒立式ではなく、細めの正立式を採用する。むやみにストロークや剛性などを求めない本機の哲学が感じられる部分だ

リアホイールは18インチのスポーク式ながら、独特のリム構造とすることでチューブレス式のタイヤを装着可能としている。パンクしにくく、ツーリングなどでもありがたい装備だ

シートの中央部を凹ませることで、830mmという低めのシート高を実現。クッション性がよく、幅も広いので座り心地がいい

ライトがLEDに変更され、フェンダーの形状もスタイリッシュになった。昔からセローに乗っている人には旧型のほうが好まれるかもしれないが、個人的には新型のほうがかっこいいと思う

マフラーの容量は大きいが排気音はかなり静かなので、住宅街でも迷惑になることはなさそうだ

マフラーの容量は大きいが排気音はかなり静かなので、住宅街でも迷惑になることはなさそうだ

メーターに表示される情報は最小限だが、オフロードバイクらしいシンプルなコックピットによく似合う

メーターに表示される情報は最小限だが、オフロードバイクらしいシンプルなコックピットによく似合う

セローシリーズは「走る、曲がる、止まる」だけでなく、「転ぶ」ことも想定して設計されているのもおもしろいポイント。ハードなオフロードではベテランライダーでも転倒してしまうことがあるが、セローはエンジンやブレーキをはじめとする走行に必要な部分は破損しないようにしっかりガードされているほか、バイクを引き起こしやすい構造となっている。初代モデルから踏襲される設計ではあるが、速さを競うモトクロスなどとは異なり、山道を走る楽しみに重点を置いて開発されたセローシリーズの大きな特徴だ。

ぬかるみなどにタイヤがハマってスタックしたり、転倒したりした際に車体を引っぱれるようにグリップが装備されている

“2輪2足”の走破性はどれほど?

セローシリーズは初心者に支持されるオフロードバイクあるとともに、コンセプトと設計のよさからアンダーパワーであるにもかかわらず、ベテランライダーが乗るとオフロードで予想以上の走破性を発揮する。ハイパワーなバイクに乗っていながら、林道でセローにぶち抜かれたという人も少なくないはず。かくいう筆者もそのひとりで、その光景が忘れられず、かつて中古のセロー225を購入してしまったほどだ。実際、セロー225に乗ってみると、オフロードでは数値上のパワーよりもバランスや乗りやすさが有効であることを体感できた。そんなセロー225の乗り味を胸に、今回新型「セロー250」に試乗する。このマシンの特性をたっぷり味わうために、舗装路だけでなく、山道(未舗装路)もがっつり走ってみよう!

公道を中心とした山道での走行やツーリングに対応したトレールモデルであるセローは、シート高が低め。身長175cmの筆者がまたがってみても、両足のかかとまでベッタリと接地する

エンジンをかけると響く排気音は、よく消音されていて静か。非常に安定しているアイドリングが、トレイルバイクであることを感じさせてくれる。クラッチなどの操作も非常に軽く、走り出す際に何も気負うことはない。低回転でもトルクのあるエンジンなため、街中での走行ではあまりアクセルを開ける必要はないが、少しアクセルを多めに開ければ交通の流れを余裕でリードできる。もちろん、筆者が過去に乗っていたセロー225でも同じように交通の流れをリードすることはできたが、新型「セロー250」では高い回転域でのフィーリングが非常によくなっており、ストレスなくエンジンを回して加速できるのが気持ちいい。排気量や電子制御された供給方式など搭載されている技術が異なるためではあるが、新型と同じ排気量の1世代前のセロー250と比べても、回転の上昇の仕方がスムーズな印象だ。2005年にモデルチェンジし、排気量がアップした際、舗装路を中心としたツーリングライダーにもセローの支持者が増えたが、新型はさらにツーリングでの使い勝手がよくなっている。

舗装路での乗り心地がかなり向上しているので、オフロードをあまり走らないライダーでも楽しめそうだ

舗装路での乗り心地がかなり向上しているので、オフロードをあまり走らないライダーでも楽しめそうだ

この走行性は、高速道路でより強く実感できた。80〜100km/h程度で巡行している際のストレスが非常に少ないのだ。250ccクラスの空冷単気筒の場合、これくらいの速度域で走っていると何となくバイクに負担をかけているような気持ちになる車種もあるが、新型「セロー250」ではそういった感覚がまったくない。とはいえ、100km/h以上のスピードを出そうとすると、やはりエンジンも苦しそうな音を発し始める。追い越し車線をかっ飛ばすのではなく、走行車線を一定のペースで巡行するのに向いているバイクと言えるだろう。

そして、いよいよオフロードを走行する。最初に現れたのは砂利が多めの林道だったが、とにかく乗りやすい! タイヤが路面を蹴るトラクションをしっかりと感じることができ、安心して走ることができる。グリップの悪いオフロードでも怖さを感じないほどの安心感に、乗っている筆者も驚いたほどだ。舗装路を調子よく飛ばしてきても、オフロードに入ったとたんガクッとペースが落ちてしまうライダーを見かけることも多いが、新型「セロー250」は、ペースをある程度維持したまま突入できる。

林道でも乗りやすさと安心感の大きさは特筆もの。グリップの限界を探りながら飛ばすようなマシンではないが、結構いいペースで走ることができる

あまりの乗りやすさにテンションが上がり、ぬかるんだ登りにもチャレンジしてみた。路面はかなり粘土質で、雨の後でもないのにかなりすべる。エンジンのパワーをかけて登ろうとするとタイヤが路面をかき、ヌルヌルの粘土質が露出し、空転してしまうため、下手にアクセルを開けると車体が横を向いてしまう恐れがある。そんな状況で威力を発揮したのが、低速回転のトルクフルなエンジン特性と足付き性のよさだ。止まってしまうほどのゆっくりとした速度からでも、両足を路面に付きながらジワジワとアクセルを開けていけば、トコトコと歩くように登って行ってくれる。いたずらにパワーを求めるのではなく、“2輪2足”で扱いやすさを追求したセローが、ほかのハイパワーなオフロードバイクよりも長く支持されている理由を体感することができた。

ハイパワーなバイクでは路面をかいてしまい登れないようなセクションも、セロー250なら、足を付きながらトコトコと登っていくことができる

ただし、焦ってアクセルを大きく開けるとリアタイヤがすべって車体が横を向く。低回転でトルクを生かしてゆっくり登ることを徹底すれば、難易度の高い路面もクリアできるだろう

試乗を終えて

セローシリーズに乗るのは久しぶりだったが、モデルチェンジしても変わらない乗りやすさは、さすが。新型「セロー250」と同じ2018年に発売されたオフロードバイク、ホンダ「CRF450L」(排気量449cc)のようなコンペマシン(モトクロスなどのレース向けに作られたコンペティションマシン=競技車)ではなく、公道走行もできる「トレール車」であるため、刺激的な乗り味は望めないものの、オフロードを走っているのにおだやかで、長時間乗っても疲れにくい。パワーで突破するのではなく、“2輪2足”でセクションをクリアする際はゆっくりと走ることになるが、バイクを操っている満足感も十分に感じることができる。これはセローの当初からの特性であり、むしろ、そこが支持されているところ。ハイパワーのコンペマシンは慣れたライダーでないと扱いづらいところもあるが、セローなら初心者でも乗りこなしやすいのは確かだ。

そして、新型「セロー250」はパワーとエンジンを回した時のフィーリングが向上したこともあり、舗装路での移動が格段にラクになっている。オンロードメインで使っても十分満足できるバイクなので、オフロードは走ったことがないけれど、少し興味があるというなら新型「セロー250」は最適。出先でおもしろそうな道を見つけた時に、ちょっと遊んでみるか!と積極的になれる可能性を秘めたこのマシンで、バイクの楽しみ方を広げてはいかがだろうか。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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