バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
長きに渡り支持され続けた「SR」シリーズが復活

スピードを出さなくてもスポーティーで楽しい! ヤマハ「SR400」の色あせない魅力


1978年の登場以来、ヤマハのオートバイの顔であり続けた「SR400」。2017年に惜しまれつつも生産終了となったが、40周年の節目である2018年に見事復活を遂げた。そんな新型「SR400」に試乗して感じた魅力をお伝えしよう。

40年を超えて支持され続ける「SR」シリーズの歴史を振り返ろう

今回紹介する「SR400」も属する「SR」シリーズが登場したのは1978年のこと。ヤマハのオフロードモデルである「XT500」をベースに、空冷単気筒エンジンを搭載したSRシリーズには、排気量499ccの「SR500」と399ccの「SR400」がラインアップされた。当時の国産車には例がないオンロード向けの大排気量単気筒(シングル)モデルで、最高出力は「SR500」が32PS、「SR400」が26PS。当時としてもアンダーパワーな車種だったが、発売当時のキャッチコピー“ヤマハスポーツ新時代”からもわかるように、スポーツ性を打ち出したマシンであった。他メーカーが高回転・高出力化に力を注ぎ、そのために有利な4気筒などの多気筒エンジンを搭載したバイクを数多くリリースしていた時代に、ヤマハがあえてスポーツ性をアピールしていたのは、単気筒エンジンの持つ「スリムで軽量」なところが、日常的な速度域で“バイクを操る楽しさ”に生きるということを強く打ち出したかったのではないだろうか。しかし、発売当初は爆発的なヒットとはならず、SRシリーズが息の長いヒットモデルとなるきっかけはまだ先のこととなる。

SRシリーズのベースとなった大排気量のオフロードマシン「XT500」

SRシリーズのベースとなった大排気量のオフロードマシン「XT500」

1978年に登場した最初のSRシリーズの1車種、排気量499ccの「SR500」

1978年に登場した最初のSRシリーズの1車種、排気量499ccの「SR500」

スポークホイールにディスクブレーキ(前輪のみ)だった構成を、翌年の1979年に、剛性の高いキャストホイールを装備したモデルにチェンジ。スポーツ性という意味では進化といえるが、市場の反応はかんばしくなく、販売台数は落ち込んでしまう。そこで1982年に、スポークホイール仕様の限定モデルを発売したところ、これが大ヒット! この結果を受け、1983年モデルからはスポークホイールが標準となった(キャストホイールモデルも併売)。さらに、1985年にはフロントブレーキがディスクからドラム式に変更されるなど、性能的には退化とも呼べるモデルチェンジを受ける。ユーザーがSRシリーズを“クラシカルな単気筒モデル”として支持していたため、よりクラシックなイメージを持つドラム式のブレーキのほうに変更されたのだ。このように、通常のバイクの進化とは逆行するようなモデルチェンジをしながらSRシリーズは着実にファンを獲得。レーサーレプリカブームを初めとする高性能化が急速に進む中、ハイパワーなバイクで飛ばすのではなく、単気筒エンジンならではの鼓動を感じながら走りたいというユーザーや、カスタマイズして自分色に染めたいというユーザーを中心に根強く支持されることとなる。

初期型モデルはフロントがディスクブレーキだったが、1985年モデルからは前後ドラムブレーキになるというめずらしい進化を遂げる

高性能化に明け暮れたバイクブームが幕を閉じたあとも着実に販売を重ねていたSRシリーズだが、安全基準が厳しくなった2000年にフロントブレーキをディスクブレーキに戻すこととなる。しかし、排気ガス規制が年々厳しくなっていき、排気量の大きなSR500は2000年で生産終了となった。SR400のほうは存続していたものの、2009年からさらに厳しくなる排気ガス規制に対応できないという理由から、2008年に30周年を記念するアニバーサリーモデルを最後に生産が終了。しかし、30年間で累計12万台以上を販売していたSRシリーズをヤマハは見捨てなかった。2009年に開催された東京モーターショーに、燃料供給を電子制御のフューエルインジェクション(FI)化した「SR400」が参考出品され、このマシンが2010年モデルとして見事に復活を遂げたのだ。基本設計やデザインは継承され、以前からのSRファンも納得の完成度であった。さらに、フューエルインジェクション化によりエンジンの始動性が向上。SRシリーズはボタンを押せばエンジンのかかるセルスターターを装備していないため、キックスターターでエンジンをかけなければならないのだが、このかかりがよくなり、エントリーユーザーにも支持を広げた。

燃料供給がフューエルインジェクションとなった2010年モデル。基本的なデザインやイメージは初期型とほとんど変わらない

しかし、奇跡的な復活を遂げた7年後、さらに厳しさを増す排気ガス規制により、2017年に再び生産終了となってしまう。

“SRらしさ”を損なうことなく復活した新型「SR400」

2017年に生産が終了となったSRシリーズだが、実は、生産終了を告げるプレスリリースの最後には時期モデルが開発中であると書き添えられており、多くのファンが復活を期待していた。そして、その想いに応えるように、ヤマハは2018年に40周年アニバーサリーモデルと同時にSR400の新型モデルを発表。その姿は「まさしくSR」といえるクラシカルでシンプルなもので、エンジンのスタート方式も従来と変わらずキックスターターとされた。だが、排気ガス規制に対応させるため、各部がブラッシュアップされている。燃料供給の機構はもちろん電子制御のフューエルインジェクションだが、蒸気化したガソリンを大気中に放出しないようにキャニスターを新たに装備したほか、エンジンに送る燃料の量を最適化するためのECUユニットを刷新し、排気ガスのさらなるクリーン化が図られた。また、ECUユニットにおいては、変更したことでサイズが大きくなったため、搭載位置をサイドカバー内からシート下に移動したという。

サイズは2,085(全長)×750mm(全幅)×1,100(全高)mm。車重は175kgと、2017年モデルより1kg重くなった

サイズは2,085(全長)×750mm(全幅)×1,100(全高)mm。車重は175kgと、2017年モデルより1kg重くなった

エンジンはシルエットも歴代モデルと同様の499ccの空冷単気筒。このエンジンの造形にもファンが多い

エンジンはシルエットも歴代モデルと同様の499ccの空冷単気筒。このエンジンの造形にもファンが多い

エンジンの左横に追加されたキャニスター。できるだけ目立たないように小さくしたという

エンジンの左横に追加されたキャニスター。できるだけ目立たないように小さくしたという

ウインカーは新しくなったものの、こだわりのガラスレンズを採用したヘッドライトはLED化せず、クラシックなイメージを保守

テールランプもLED化は見送られたが、ウインカーは両方同時に点滅するハザードが装備された

テールランプもLED化は見送られたが、ウインカーは両方同時に点滅するハザードが装備された

コックピット中央に位置する2つのメーターはホワイトパネルとなり、よりクラシカルなイメージを強めている

コックピット中央に位置する2つのメーターはホワイトパネルとなり、よりクラシカルなイメージを強めている

ブレーキは2000年から導入された片押し2ポッドのディスク式。タイヤサイズは90/100-18で、スポークホイールのため、タイヤ内にはチューブが入っている

リアタイヤは110/90-18で、フロント同様、スポークホイールに合わせたチューブ式。ブレーキはドラム式で、サスペンションは伝統的な2本タイプが採用されている

燃料タンクはティアドロップ型と呼ばれるバイクらしい形状。容量は12Lだ

燃料タンクはティアドロップ型と呼ばれるバイクらしい形状。容量は12Lだ

フラットで座りやすく、前後の着座位置移動もしやすいシートにはタンデムベルトはなく、2人乗りする場合は後ろのバーをつかむ

試乗で隠されたスポーツ性の高さを実感

新型「SR400」を試乗する前に、多くのSR乗りたちにとって“儀式”のようになっているキックスターターについて触れておきたい。排気量の大きな単気筒エンジンは、キックが重く、エンジンをかけるのにコツが必要なため、スムーズにかっこよく始動できることがSR乗りにはひとつのステータスになっている。2009年にフューエルインジェクションモデルが登場した際、セルスターターが装備されるというウワサもあったが、あえてキックスターターのみとしたことは、ヤマハとしてもこの儀式を重視していることの現れだろう。だが、いっぽうで、力が弱い人にとってはSRシリーズに乗りたいと思っても、キックスタートであることがハードルになっていたことも事実。2010年モデルでもエンジンはかなりかかりやすくなっていたが、新型ではキックを軽くするなど、さらなる始動性向上が図られている。

簡単に言ってしまえば、キックペダルを下まで踏み抜いてエンジンをかけるのがキックスターターだが、キックペダルを踏み込む前に準備の操作をすることで、よりラクにエンジンを始動できる

キックスターターの手順は、下の動画で見てほしい。最初にイグニッションをオンにし、キックペダルが重くなるところまで踏み、そのタイミングで左手側にあるデコンプレバーを引く。次に、デコンプレバーを握ったまま、エンジンの右上ある小さな窓が銀色になるまでキックレバーを下ろす。最後に、キックレバーを1番上まで戻し、一気に下まで踏み抜くとエンジンがかかる。

上の動画で、途中、筆者がエンジンのほうを見て確認しているのは、この窓。このように金属の合マークが見えたところで、キックレバーを下げるのを止める。なお、写真ではわかりづらいが、ライダーからは金属の合いマークは銀色に見えるので(夜間は除く)、判断に困ることはない

なお、慣れた人ならデコンプレバーは使わなくてもエンジンをかけられるという。しかし、初心者であればデコンプレバーを使ったほうが少ない力で始動できる

SRシリーズの味でもあるキックスターターの説明を終えたところで、いよいよ試乗に移ろう。新型「SR400」の最高出力は2017年モデルから2PSダウンの24PSで、最大トルクは1Nmダウンの28Nmとなっており、発生回転数が5,500rpmから3,000rpmへと低められている。しかし、これは低回転を多用する街乗りなどではむしろ乗りやすくなっているということ。街中を走り、高速道路にも乗り、存分にSR400の実力を堪能してみる。

シート高は790mmと低めなこともあって、身長175cmの筆者の場合、両足がかかとまでベタッと接地した。ライディングポジションは、座った姿勢で手を伸ばしたところにハンドルがあり、足を上げたところにステップがあるという非常に自然なもの。リラックスした姿勢で走行できるので、長時間乗っても疲れは少ないだろう

エンジンをかけると響き出すエンジンの音も、実は、これまでとは異なる。マフラーの形状は従来モデルと同じなのだが、中身は完全に別物なのだ。変更されたフューエルインジェクションのセッティングに合わせるのと同時に、単気筒らしい歯切れのよい音になるように徹底的にチューニングされている。

従来と変わらぬシルエットのマフラーだが、中身は完全に新造。音質に関しては、特に、街中で常用する回転数での排気音の歯切れのよさを重視してチューニングしているという。下の動画は2,000回転からアクセルを開けた際の音だが、小気味よくなっている

心地よいエンジンの音を聞きながら走り出すと、フレンドリーな特性を実感。大排気量の単気筒エンジンは低回転のトルクが大きいため、ギクシャクすることもあるのだが、新型はトルクの出方がスムーズなので、シングルならではの鼓動感を感じつつもスルスルと発進することができる。パワーダウンによる非力さはあまり感じないが、スムーズさはアップしている印象。燃料供給がフューエルインジェクション化される前のモデルにしか乗ったことがない人は、なめらかな回転上昇に驚くかもしれない。

よりスムーズになったトルク特性のおかげもあり、街乗りはとてもしやすい

よりスムーズになったトルク特性のおかげもあり、街乗りはとてもしやすい

そのまま高速道路にも乗ってみたが、車体の安定感は高い。ただ、風をさえぎるものがないので、スピードを思いっきり出すのはがまんが強いられそうだ。体を伏せればだいぶマシになるが、そういう姿勢で走るのが似合うバイクではないので、100km/hくらいで巡航するのがSRシリーズらしい走り方だろう。とはいえ、新型が遅いのかというと、そんなことはない。街乗りでも感じたエンジンのスムーズさは高回転でも同様で、アクセルを大きく開ければレッドゾーンが始まる7,000rpmまで、そのままきれいに回ってくれる。そして、その際の加速フィーリングはライダーにかなり速いと感じさせるものだ。

そして、今回の試乗でもっとも楽しかったのがコーナリングだ。最新のスポーツモデルのようにフロントに荷重をかけて曲がってもハンドリングにキレがある感じはないのだが、少しシートの後方に座り、リアタイヤに荷重をかけながら曲がると想像以上に軽快な特性に驚かされる。SRシリーズの初代モデルが発売された頃、ヤマハのマシンは“リアステア”と呼ばれ、リアタイヤを軸に曲がっていくような走り方が合っているとされていたが、その当時のキャラクターが色濃く残っていると感じた。

アクセルを開け気味にリアタイヤに加重して走ると、予想以上に軽快なハンドリングで楽しい

アクセルを開け気味にリアタイヤに加重して走ると、予想以上に軽快なハンドリングで楽しい

試乗を終えて

最新のスポーツモデルは、100km/hを超えるようなスピードでコーナリングをしても問題ないように作られているが、公道でそこまでの速度を出して走ることはない。そのため、公道をメインで走るライダーは、設計時に想定されたスピードよりだいぶ低い速度で走ることになる。今回、新型「SR400」に乗って感じたのは、このマシンが公道で走る速度域を想定し、そのスピードで“スポーツ”を感じられるように作られているということ。だからこそ、交差点で曲がるだけでも、それほどスピードを出さなくてもスポーツライディングの楽しさを感じることができたのだろう。このような心地よさが日常の速度域でも味わえるバイクは、とても魅力的で、貴重な存在でもある。

お詫びと訂正:一部誤解を与える内容があったため、訂正いたしました。お詫び申し上げます。(2019年4月9日)

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
バイク本体・パーツのその他のカテゴリー
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る