バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
ノスタルジックなデザインに高い走行性能を装備

さすが「KATANA」、段違いの注目度!約20年の静寂を破り復活した新型「KATANA」の乗り味にハマる


ここ数年に登場したバイクの中で、発売前から大きな話題となっていたスズキの新型「KATANA(カタナ)」。一世を風靡した名車「GSX1100 KATANA」にルーツを持つ車名を受け継ぐ新型モデルの乗り味を、たっぷり堪能してみよう。

バイクブームを支えた伝説の名車

「KATANA」シリーズの初代モデルとなる「GSX1100 KATANA」がお披露目されたのは、1980年に開催されたドイツ・ケルンモーターショーでのこと。もともとBMWの専属の工業デザイナーだったハンス・ムート氏が率いるターゲットデザイン社がデザインを手がけたGSX1100 KATANAは、日本刀を思わせるシャープなデザインで世界に衝撃を与えた。特に目を引いたのは、これまでに見たこともない“尖った形状”のハーフカウル。視覚上のポイントとなっているだけでなく、実際に風洞実験を繰り返してデザインされており、空力性能にもすぐれているのだが、先鋭的過ぎたため、この形のまま市販されると予想する人はほとんどいなかった。しかし、翌、1981年にはケルンモーターショーに展示されていた姿そのままにヨーロッパ向けに輸出販売がスタート。空冷1,074ccの4気筒エンジンを搭載し、最高出力は110PS。空力性能の高さも相まって200km/hオーバーでの巡航も可能とされ、ヨーロッパでは爆発的ヒットとなった。

1981年にヨーロッパ向けに輸出販売が開始された「GSX1100 KATANA」。デザインを手がけたのは、BMWの専属の工業デザイナーだったハンス・ムート氏が率いるターゲットデザイン社で、ハンス・ムートの名は「KATANA」の名称とともにバイクファンに長く記憶されることになる

なお、日本国内ではGSX1100 KATANAは販売されず。というのも、当時の日本では、国内で販売できる車種の排気量が上限750ccに自主規制されていたからだ。そのため、GSX1100 KATANAはヨーロッパからの逆輸入で流通されていた。ちなみに、この逆輸入という言葉が一般的になったのも、GSX1100 KATANAがきっかけと言われている。

そんな日本市場に、GSX1100 KATANAをベースとした「GSX750S」が1982年に登場。しかし、規制に合わせて排気量は747cc、最高出力は69PSに抑えられていたほか、デザインもベース車とは異なっていた。まず、極端に前傾した乗車姿勢が当時の保安基準に合致しなかったため、低い位置にセットされたセパレートタイプのハンドルはアップライトなパイプハンドルに変更。この、妙に高い位置に配置されたハンドルは「耕運機」などと揶揄されたものだ。さらに、フロントスクリーンも許可がおりず、初期モデルには装備されず(1982年11月に許可され、以降モデルで装着)。また、凶器を連想させるという理由から「KATANA」という車名は使われることはなく、輸出仕様車にはあった「刀」のステッカーも貼られないなど、日本国内のバイクファンには不満の残る仕様であった。

1982年に発売された「GSX750S」(写真は、スクリーンが装備された仕様)。アップタイプのハンドルを交換するユーザーが多く、それが取り締まりの対象となったため、「カタナ狩り」という言葉まで生まれた

その後、1983年にGSX750Sはモデルチェンジする。シートの形を変更するとともに、アップタイプのままではあったがハンドルも形状を変えた。さらに、エンジンの出力も72PSに引き上げられ、ホイール径もフロント16インチ、リア17インチにサイズダウン。しかし、「KATANA」の車名は採用されないまま、1984年をもって日本向けの生産は終了してしまう。

それから1年後、「KATANA」の名を冠した日本仕様の「GSX750S KATANA」が登場したのだが、スズキの社内でデザインされたためか、輸出仕様のGSX1100 KATANAとはイメージが若干異なっていた。シリーズのイメージを踏襲してはいるものの、特徴的だった尖った形状のハーフカウルもなく、少し丸みを帯びている。そんなことも関係し、販売的にはあまり振るわず、1986年にモデルチェンジを受けたモデルを最後に生産は終了された。

「3型」と呼ばれる「GSX750S KATANA」は、2輪車としては日本国内初採用となるリトラクタブル式のヘッドライトを装備し、リアサスペンションを1本式とするなど、近未来的なデザインに。筆者は個人的に好きなデザインだったのだが、あまり人気は出なかった

日本国内での展開がいまひとつ振るわないKATANAシリーズだが、まだその火は消えていなかった。1991年に排気量248ccの水冷4気筒エンジンを搭載した「GSX250SS KATANA」が登場し、1992年には排気量が399cになった「GSX400S KATANA」が発売されたのだ。どちらも水冷エンジンではあったが空冷を思わせるフィンが刻まれるなど、シリーズのルーツであるGSX1100 KATANAのデザインを忠実に再現。排気量はGSX1100 KATANA(1,074cc)におよばないものの、日本国内ではこれが功を奏した。というのも、この時代、大型2輪免許は「限定解除」と呼ばれ、教習所に通うだけではなく、試験場に出向き実技テストを受けなければ取得できないハードルが高いものであったのだ。そのため、GSX250SS KATANAとGSX400S KATANAは中型免許で乗れることから、若いライダーにヒット! 当時、“中免小僧”だった筆者のまわりでも、この2車種を購入したライダーが結構いたほどの人気ぶりであった。

「GSX250SS KATANA」(1991年発売)の最高出力は当時の上限値である40PSで、ホイールは前後とも17インチの3本スポーク。1998年までカタログモデルとして販売された

「GSX400S KATANA」(1982年発売)のホイールサイズはフロント18インチ、リア17インチ。ホイールが星型のデザインとされるなど、GSX1100 KATANAのルックスを忠実に再現している。2000年までラインアップされていた

そして、排気量上限の自主規制が撤廃された1994年、ついに、輸出車仕様のみだったGSX1100 KATANAが日本国内で販売されるようになる。細かいモデルチェンジや限定車などの追加を行いながら販売が続けられ、スズキの顔とも呼べるモデルとなっていったものの、エンジン設計の古さから環境規制への対応が難しくなったため、2000年に1,100台限定のファイナルエディションを最後に惜しまれながら姿を消した。

イメージを受け継ぎつつ一新された新型「KATANA」

最後のモデルが姿を消してから約20年。ふたたび、「KATANA」が動き出した。2018年にドイツのケルンで開催された「インターモト2018」に、新型「KATANA」が姿を現したのだ。大きな話題と注目を集めた新型「KATANA」だが、かならずしも称賛の声ばかりではなかった。シリーズの元祖となるGSX1100 KATANAのデザインは受け継いでいるものの、現代的にアレンジされたルックスはエッジが丸くなっているようにも感じられ、ハンドルも不評だったアップタイプが採用されている。過去の“カタナ狩り”を知るオールドファンからは「セパハンじゃないのか……」という声も聞かれた。ただ、こうした声が多くあがったのは、KATANAシリーズを知る人が多いだけでなく、愛されていたモデルであった証拠だとも言えるだろう。

シリーズのイメージを継承しながら、近未来なスタイルに仕上げられた新型「KATANA」。サイズは2,130(全長)× 835(全幅)×1,110(全高)mmで、重量は215kg

ライトはLED化されているが、尖ったライトカウルやスクリーンはKATANAの遺伝子を感じる造形だ

ライトはLED化されているが、尖ったライトカウルやスクリーンはKATANAの遺伝子を感じる造形だ

タンクからライトカウルに向けて伸びる直線的なラインもKATANAシリーズの血統を強く感じさせる

タンクからライトカウルに向けて伸びる直線的なラインもKATANAシリーズの血統を強く感じさせる

シートはかなり短くなり、ストリートファイター的なシルエットとなった

シートはかなり短くなり、ストリートファイター的なシルエットとなった

ナンバーとウインカーは片側のステーを介してスイングアームにマウント。スズキでは初採用となる機構で、近未来感のただようルックスにもひと役買っている

新型「KATANA」は、かつてのシリーズを忠実に再現したモデルではない。初代モデルであるGSX1100 KATANAは空冷エンジンに2本のリアサスペンションを装備し、鉄のパイプフレームを採用。中免ライダーに人気を博したGSX250SS KATANAやGSX400S KATANAは水冷エンジンだったものの、空冷のフィンは再現されており、2本式のサスペンションや鉄パイプのフレームも受け継がれていた。それに対し、新型は4気筒の水冷998ccエンジンで、パイプフレームはアルミ製。空冷エンジンを思わせるフィンも再現されていない。実は、新型のベースとなったのは同社の「GSX-S1000」という車種。スーパースポーツ「GSX-R1000」をベースにカウルを取り去り、アップハンドルのネイキッドタイプとしたモデルで、運動性能の高さには定評がある。

スポーツタイプのトップモデル「GSX-R1000」から受け継がれたエンジンは148PS/10,000rpmを発揮。2005〜2008年に発売された「K5」タイプに搭載されていたもので、スポーツタイプのエンジンとしては低回転からトルクがあり扱いやすいと評価されるパワーユニットだ

アップタイプのハンドルもベースとなったGSX-S1000と共通するが、形状は異なり、やや高くセットされている

アップタイプのハンドルもベースとなったGSX-S1000と共通するが、形状は異なり、やや高くセットされている

このほか、装備も現代のバイクらしいものとなっている。ABSを備えているのはもちろん、近年の大排気量車では一般的となっているトラクションコントロールも搭載。アクセルを急開してもリアタイヤのスリップを抑えてくれるので、ライディングの安心感が高まる(介入の度合いは3段階に調整可能)。クラッチは、シフトダウン時にリアタイヤがロックされたり、ハネたりする挙動を防ぐスリッパータイプを採用。

ブレーキはブレンボ製のラジアルマウント。制動力だけでなく、コントロール性の高さにも定評のある

ブレーキはブレンボ製のラジアルマウント。制動力だけでなく、コントロール性の高さにも定評がある

クイックシフターは付いていないものの、スリッパークラッチを装備したシフトは操作しやすい。ローレットの刻まれた金属むき出しのステップは、スポーツマインドをくすぐる

やみつきになる走行性能を実感

運動性能の高さを支持されているGSX-S1000のエンジンや足回りを取り入れているのだから、新型「KATANA」は単にノスタルジックなデザインに仕上げられたバイクではなく、高い走り性能が期待できるに違いないと、試乗前からワクワクが止まらない。さっそく、走ってみよう!

身長175cmの筆者はかかとが接地しないくらいの足つき性。存在感のあるタンクは前後長が意外と短く、ハンドルクランプの位置が体に近い。シートに座り手を伸ばした位置にグリップがあるハンドルの形状も違和感はない

いよいよ、新型「KATANA」を起動させる。スマートキーではないため、キーを回してオンにすると、液晶メーターに「刀」の文字が浮かび上がった。当時としては先進的なメーターのデザインだった初代モデル「GSX-S1100 KATANA」を思い起こさせるような挙動に気分が高まる。

メーターはデジタル式。速度は数字、回転数は弧を描くバーで表示される

メーターはデジタル式。速度は数字、回転数は弧を描くバーで表示される

マシンが起動して響くエンジンサウンドは、リッタークラスらしく、野太く迫力のあるもの。クラッチをつないで走り出すと、思った以上に低回転のトルクが太く、215kgの車体を力強く押し出してくれる。これには発進時や低回転走行時に、エンジン回転の落ち込みを制御する「ローRPMアシスト」機能の恩恵もあるようだ。スポーツタイプのエンジンは、低回転での走行をあまり重視していないため、街中での走行やUターンの際に不安定になってしまうこともあるが、新型「KATANA」は安心して操れる。

高回転の伸びも気持ちいいが、一般道ではそこまでエンジンを回すことはほとんどないので、低回転から力強い加速を味わえるのは最高だ

アップライトなハンドルと1,000ccクラスとしては軽量・コンパクトな車体により、扱いやすさは上々だが、足回りは硬めな印象。路面の凹凸を拾いやすいため、もっとスピードを出して強めに荷重をかけたほうが本来の性能を発揮してくれそうな気がする。そこで、ワインディングにも足を伸ばしてみた。スーパースポーツをベースとする車体だけあり、バンクさせる操作も軽快で、向きが変わるのも速い。それでいて上体が起きたライディングポジションなので、リラックスして操ることができる。多少スピードを出して曲がっても、車体や足回りはビクともしないほど安定しており、峠道程度の速度域だとまだまだ余裕がある感じだ。おそらくサーキットを走るような速度でもまったく問題ないだろう。

峠道では撮影できなかったので、写真は街中で撮ったもの。荷重をかけるように走るとサスが踏ん張っている感は増すが、峠道ではまだまだ余裕はありそうだ

さすがにサーキットまでは行けないので、高速道路を走ってみる。トップギアの6速に入れた状態でもアクセルをひとひねりすれば、追い越しに十分以上な加速を得ることが可能。ただ、高いスピードを維持し続けようとすると、上体にかかる風圧が気になる。アップライトなハンドル形状のうえ、フロントのスクリーンが小さいので、速度を上げると風圧がかなりキツく感じるのだ。

スピードを出す際は、もっと前傾姿勢になるが、装備されているスクリーンでは走行風はほとんどガードできない。スクリーンにもう少し高さがあるほうが、過去のKATANAシリーズのイメージに近づくと思う。高さのあるスクリーンにカスタマイズするのもよさそうだ

試乗を終えて

近年、過去の名車のデザインや車名を受け継いだネオクラシック路線のマシンを各メーカーがリリースしている。往年のバイクファンにはビッグネームとして記憶されるKATANAの名をスズキが復活させることは、ある意味必然だったともいえるだろう。実のところ、1975年生まれの筆者は初代モデル「GSX11000 KATANA」の直撃世代ではない。しかし、日本国内の若いライダーにハマった中型免許で乗れるGSX250SS KATANAやGSX400S KATANAが発売された1991年頃に高校生だったので、KATANAと聞けばハンス・ムートの名とともに造形が頭の中に蘇ってくるくらい鮮烈に記憶に刻まれている。

新型「KATANA」は初代モデルの造形をそのまま再現したマシンではないが、見た瞬間にKATANAだとわかるもの。現に、今回試乗している最中に「新型KATANAですか? かっこいいですね」と声をかけられたし、ライディング中もすれ違いざまに凝視する人がたくさんいた。アップライトなハンドルなど細部の作りに不満を感じる古くからのファンもいるかもしれないが、中年になった今乗ってみると想像以上にアップライトなポジションが乗りやすい。それでいて、運動性能の高さは現代のスーパースポーツモデルと同等なのだから、サーキット走行などをたしなんできたベテランライダーも満足できるはずだ。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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