レビュー
見えてきたのは、初代NAの偉大さ

マツダ「ロードスター」初代から新型まで歴代モデルに全試乗!

1989年、マツダからライトウェイトスポーツカーの「ロードスター」が発売された。それから30年、100万台を超えるロードスターが世界中のユーザーのもとに届けられている。

今回、マツダ「ロードスター」歴代モデルに試乗したので、各モデルの特徴や初代から新型に至るまでの共通点、フィーリングの違いなどをレビューしたい

今回、初代から最新モデルのロードスターまでそれぞれ1週間ずつ借り出して試乗したので、その歴史を振り返りながら歴代ロードスターをレビューしたいと思う。そこから見えてきたのは、「マツダが目指すロードスターの世界はぶれていなかった」ということだった。

なお、便宜上、初代ロードスターを「NA」、2代目を「NB」、3代目を「NC」、4代目を「ND」と型式で記したい。

世界的に人気を誇っていたが……消えてしまった「ライトウェイトスポーツカー」

マツダは、30年にわたってオープン2シーターを作り続けてきた。いっぽう、マツダは「2030年までに、すべての車種を電動化する」という戦略を発表している。その内訳は、5%がEVで残りが内燃機関と電動化技術を組み合わせた車両だ。だが、電動化などの技術的な進化は、あくまで規制や環境に対してクリアしていくための“手段”であり、マツダが本当にお客様へ届けたい“価値”や“守りたいもの”は、ロードスターの30年間を振り返ることで見えてくるはず、というのが本企画の背景である。

まず、マツダがこだわるライトウェイトスポーツカーの歴史について話を始めたい。1930年代、戦前のイギリスに目を向けると大型の「ベントレー」や「ジャガー(SS)」、「アストンマーティン」など高価格帯のスポーツカーとともに、MGの「Mタイプミジェット」や「Tシリーズ」など、財布の軽い若者たちに向けたスポーツカーが誕生していた。特に、MGは乗用車のエンジンやシャシーなどを使いながらもボディを軽量化することで走行性能を向上させ、さまざまなレースやラリーなどで活躍した。その最大の特徴は、「軽い車重」「軽快な走り」「価格の安さ」、この3点に尽きる。

オースティン・ヒーレー「スプライト」MK1

オースティン・ヒーレー「スプライト」MK1

これは1960年代になっても変わらず、MG「ミジェット」や、トライアンフ「スピットファイア」、オースティン・ヒーレー「スプライト」などがデビューし、そのほかにも世界中でさまざまなライトウェイトスポーツカーが登場していた。日本でも、ホンダ「S800」やトヨタ「スポーツ800」などが誕生し、一世を風靡していた。

しかし、1970年代に入るとアメリカの「マスキー法」による排出ガス規制や安全性の高まりにより、ライトウェイトスポーツカーの姿は一気に消えていく。排出ガス規制により、排気量の大きなエンジンでも出力の大幅低下は否めず、安全性では重量増となり、ライトウェイトスポーツカーの生き残る道はなかったのだ。

マツダ「ロードスター」誕生前夜

マツダ「サバンナRX-7」(初代)

マツダ「サバンナRX-7」(初代)

1978年、マツダは「サバンナRX-7」を登場させる。その発表会会場に、アメリカ人の自動車ジャーナリスト、ボブ・ホール氏がいた。当時、ホール氏は研究開発本部長だった山本健一氏から「マツダが、次にどんなクルマを作ったらよいか」と尋ねられたという。そこでホール氏は、「価格の安いスポーツカーではないか」と答えた。これが、今に続くロードスターの始まりだった。

翌年、マツダ本社を訪問したホール氏は、山本氏のオフィスで理想のライトウェイトスポーツカーについて、黒板を使って説明。その際、ホール氏は4代目「ファミリア」(X508)であれば、容易に実現できると話したそうだ。その後、ホール氏は山本氏の推挙もあり、マツダリサーチセンターアメリカに入社し、ライトウェイトスポーツカーの商品化を推し進めることになった。彼こそが、ロードスター誕生のキーマンだったのだ。

世界中で大ヒットを記録した初代「ロードスター」

マツダ「ロードスター」(NA・初代)

マツダ「ロードスター」(NA・初代)

そして登場したのが、初代ロードスターだ。そのカタログの冒頭には、大きな見出しでこう書いてある。「だれもが、しあわせになる。」そして文末には、「このクルマを手に入れるほんの少しの勇気を持てば、きっと、だれもが、しあわせになる」とある。ほんの少しの勇気とは、オープンカーに乗るというハードルだ。乗りにくい、不便なというハードルを越えるほんの少しの勇気さえ持てば、誰もがしあわせになれるという意味だ。そして、これは今に至るまで連綿と続くロードスターの根底に流れている、大きな想いでもあるのだ。

マツダが、初代ロードスターを開発したときの基本的なコンセプトは大きく3つだ。

・歴史的に培われてきた、伝統の良識を守る。フロントにエンジンがあって、後輪を駆動する伝統的な様式を守る。
・最新の技術で復活させる。世の中が求めている最新のものをクルマに投入する。
・正当なライトウェイトスポーツと言えるものを作る。乗っていてスポーツカーだと分かるというクルマを作る。

これらは極めてシンプルな内容ではあるものの、これまでのライトウェイトスポーツカーは、これができなかったために皆消滅してしまったのだ。そして、ロードスターはこれらの条件を克服してデビューした結果、世界中で大ヒットを記録する。その後、そこには大きなマーケットがあるということから他社からも多くのライトウェイトスポーツカーが発売された。しかし、さまざまな要因でそのほとんどが市場から姿を消していく。だが、ロードスターは4世代、30年間に渡って作り続けられている。小さく、軽く、安いクルマだから、時代の流れに抗うことは難しい。しかし、マツダは多くの工夫や技術を使って作り続けた。それは、「走る喜びを提供したい」という強い思いからだ。

マツダ「ロードスター」(NA・初代)

マツダ「ロードスター」(NA・初代)

さて、“人馬一体”というワードをマツダはよく使う。流鏑馬(やぶさめ)という神事があるが、これは馬に乗って走りながら的を射るもの。当然、馬と人間の動きをシンクロさせないと、的に当てることはできない。そこで、騎手は乗る前に馬と呼吸を合わせ、会話をして馬と同期させるところからスタートすると言う。そういった馬と人との関わり合い、一方的に馬を人に合わせるのではなく、人間も馬に合わせて行くことが、クルマと人間との関わり合いに非常に似ていることを踏まえ、人車一体というところをあえて人馬一体としているのだ。そして、このワードは、初代ロードスターから使われており、クルマと人が一体となったときのよろこびが、人馬一体感ではないかとの考えからこの言葉がずっと使われ続けているのである。

今やロードスターは、世界中で知られるオープンスポーツカーとなった。マツダは、今後も飽くなき挑戦を続け、ロードスターを守り続けていくと言う。4代目ロードスターのチーフデザイナー、開発主査の中山雅さんは、「ライトウェイトスポーツの星を目指して、今後もNEやNF、10年、20年と生産を続けていく」と明言した。

「NA」(初代)/「人馬一体」の感覚がストレートに伝わってくる

ここからは、初代NA、NB、NC、ND、そしてRFまでの5台を1週間程度借り出して500〜1,000kmほど走らせてみたので、歴代モデルのショートインプレッションをお届けしたい。

まず初代NAは、前述の通り“人馬一体”をコンセプトとして、それを実現するために次の4つを目標に開発された。

・一体感:ドライバーとクルマとのコミュニケーションを可能にし、その会話を通じて最大のパフォーマンスが発揮できるような構造とする。自然との一体感を全身で満喫できるようなデザインと構造にする。
・緊張感:コクピットにおける、スポーツするぞ!という感覚をタイトな空間の中に音や振動などの五感をも動員した演出を行う。
・走り感:走りの絶対性能よりも、ドライバーの体感性能を重視した設計とする。
・ダイレクト感:ドライバーの操作が、またクルマの反応が“打てば響く”ように応えてくれる構造とする。

また、10年経っても陳腐化することなくオーナーへ所有する喜びを提供できることも、開発の重要なテーマとして設定された。

実は、これらのことは歴代ロードスターの共通項として存在し、そして、これらが根幹としてロードスターが作り上げられている。それは、今回5台を乗り換えたことでより明確に感じることができた。

マツダ「ロードスター」(NA・初代)のエクステリア

マツダ「ロードスター」(NA・初代)のエクステリア

さて、NAに乗り込んでみよう。ゆっくりとクルマに近づいていくと、「こんなに小さかったっけ」と驚く。最新の軽自動車のほうが、大きいイメージだ。NAのボディサイズは3,970×1,675×1,235mmだが、あえて大きく見せるようなデザインがなされていないことも、見た目の印象に大きな影響を与えている。

マツダ「ロードスター」(NA・初代)のインテリア

マツダ「ロードスター」(NA・初代)のインテリア

ドアを開け、低いシートに腰を下ろすと、タイトなコックピットが眼前に広がっている。キーシリンダーにキーを差し込み、クラッチを踏み込んでキーを回す。そうすると少しのクランキングの後、身震いをしながら1,600tのB6ZEエンジンは目覚めた。冷え切ったエンジンをいたわるために、少しだけアイドリングをさせながら幌を下ろす。その手順は、ルーフトップの左右のロックを外すとともに、リアウインドウ周りのジッパーを開けてリアシェルフ側に落とす。その後は、無理をしないようにリア側に幌をたたんでいけばよい。

そして、クラッチを踏んでしっかりとしたシンクロを感じながら、1速へシフトする。サイドブレーキを解除したら、クラッチのミートポイントを探りながらスタート。その瞬間から、NAはまるで自分の手足になったかのように、思い通りに走り出した。

マツダ「ロードスター」(NA・初代)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(NA・初代)の走行イメージ

NAは、とにかくすべてが小気味よく、レスポンスのよさに驚くばかりだ。電気デバイスがほとんど介在しないクルマだからこそ、このダイレクト感が味わえるのだろう。また、ボディサイズも非常にコンパクト、かつ軽量であること(車検証データで980kg)も大きな要因だ。馬力はたった120psしかないが、そんな数値は関係ない。それよりも、走らせて楽しいかどうか、笑顔になれるかどうかなのだ。そういう意味では、どのロードスターよりもNAは最上だ。

マツダ「ロードスター」(NA・初代)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(NA・初代)の走行イメージ

たしかにボディ剛性は低く、安全デバイスなんて皆無だ。しかし、「だから何だ?」という魅力がNAにはあふれ出ている。それは、“人馬一体”を目指す作り手の熱い想いで、それがストレートに伝わってくるのだ。ふっとステアリングを切ったときの動きやアクセルを踏み込んだとき、わずかにノーズを持ち上げて加速体制に入った時の姿勢変化など、ダイレクトにドライバーに伝わってくるそれらの動きに、ドライバーは思わずニヤリとしてしまうのだ。

だからこそ、高速道路は退屈で仕方がない。90km/hくらいまでは幌を下ろしていてもそれほど風を巻き込まず淡々と走らせることができるが、本当に退屈で仕方がない。時間に追われていたのでそのまま高速道路で移動したが、時間さえ許せば一般道に降りて手足を使ってドライビングした方がはるかに楽しく、喜びにあふれたものになっただろう。

マツダ「ロードスター」(NA・初代)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(NA・初代)の走行イメージ

信号が青になってスタートし、4,000回転くらいまで引っ張って2速へとシフトアップ。少しだけ加速をして、それ以上は制限速度をオーバーしてしまうので、そのあとはポンポンとシフトアップをすることになるのだが、その程度であってもエンジンのトルクとパワーを十分に感じられ、またその回転もストレスなく吹け上がる。

30年も前に登場した初代ロードスターに乗りながら、「これ以上、何を求めるのだろうか」と思いたくなった。

「NB」(2代目)/初代をブラッシュアップ、走りには明確な違いが

2代目となるNBの開発に際して、最初に決定したのは「ロードスターの持つ“魂”を受け継ぎながら、“身体”を新たに作り直して鍛え上げる」ことだった。つまり、人馬一体コンセプトを継承し、ロードスターの魅力を高めることによって、その楽しみをより多くのお客様に提供することを目指したのだ。また、日常ユース腕の実用性を向上するとともに、高い品質と安全性の実現を目指している。

マツダ「ロードスター」(NB・2代目)のエクステリア

マツダ「ロードスター」(NB・2代目)のエクステリア

NAからNBに乗り換えると、まさにブラッシュアップされた印象が強い。ボディ剛性は確実に上がっており、しっかり感が増し、すべてがかっちりとした印象だ。足回りにしてもかなり固められており、よりスポーティーになっている。

マツダ「ロードスター」(NB・2代目)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(NB・2代目)の走行イメージ

排気量も、1,800tにアップしたことでよりパワフルに走ることができる。ただし、個体差なのか若干エンジンの回り方が重く感じた。さらに、車重の関係(1,040kg、車検証データ)かもしれないが、信号からのスタートなどで極低速域でのトルクの細さが気になった。NAのようにクラッチだけでスタートしようとすると、結構気を使うのだ。もちろん、そこを超えればトルクもパワーも十分以上で、活発に走ることができるのだが……。また、コーナーでの旋回性能もNAのほうが腰で回っていく感覚が強く、NBはもう少しステアリングとタイヤに頼りながらコーナーを駆け巡るイメージを強く感じた。

しかし、これらはすべてNAと比較してのことだ。NBのコンセプトからすれば、NAをより現代的に解釈することだから、すべてのセッティングを見直した結果、よりパワフルになり、ボディ剛性を上げたことでピュアすぎるNAよりも一般的なライトウェイトスポーツカーに仕上げられたと言っていいだろう。

「NC」(3代目)/ボディが拡大し、パワーで走らせる印象が強くなった

そして、3代目のNCだ。NBは、NAのアンダーボディを継承していたが、NCではほぼすべての部品を最新の技術で新設計している。初代から十数年を経てロードスターを刷新するにあたり、マツダのアイコンモデルとしてのポジションを成立させながら、“人馬一体”コンセプトをさらに進化させることに焦点が置かれた。この人馬一体を実現するための要素は、初代とまったく同じく「走る」「曲がる」「止まる」というクルマの基本3要素に、「視る」聴く」「さわる」という五感の3要素が加えられた。

マツダ「ロードスター」(NC・3代目)のエクステリア

マツダ「ロードスター」(NC・3代目)のエクステリア

そういったコンセプトはさておき、じっさいにNCを目の前にし、また乗り込んでの印象は、やはり「大きくなった」ということだ。そのサイズは、3,995mm×1,720mm×1,245mmと、特に全幅の成長が著しい。安全性能などが求められた結果とはいえ、やはりファットな感じは否めない。車重も、1,120kgと一段と重くなってしまった。

マツダ「ロードスター」(NC・3代目)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(NC・3代目)の走行イメージ

いっぽうで、よりパワフルになったエンジン(2,000ccで170ps)は、レッドゾーンまで気持ちよく吹け上がり、パワーの出方もこれまでとはまったく違い、ぐいぐいとクルマを押し出すようなイメージだ。ハンドリングも、どちらかというとクルマをねじ伏せるような大胆なドライビングに移り変わっている印象だ。したがって、これまでのロードスターのように軽快にひらひらと舞うようなドライビングではないのは確かだが、パワーで豪快に走らせる魅力がある。

ステアリングは微妙に重く、切り初めに少し鈍な部分がある。それは、特に高速道路で不快に感じられ、いまひとつの直進安定性に、さらにこの鈍な感覚が加わり、常に修正舵が求められた。

マツダ「ロードスター」(NC・3代目)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(NC・3代目)の走行イメージ

また、足回りに関しても、最近のマツダ車のように妙に足が突っ張る感じで、NAの足の考え方とは異なっている。つまり、とにかく足を固めてロールをさせないようにしてコーナーリング性能を上げようという考えに変わったのだ。

このように、NCはこれまでのロードスターの持っていた繊細さの変わりに豪快さを手に入れ、パワーでクルマをねじ伏せる乗り方に合ったクルマに変貌していた。果たして、これがロードスターの正常進化かと問われると、答えに詰まるところはなきにもあらずだし、すべてを乗った結果から言っても少し異質な感じも否めなかった。

「ND」(4代目)/乗った瞬間にわかる、初代への「回帰」

マツダ「ロードスター」(ND・4代目)のエクステリア

マツダ「ロードスター」(ND・4代目)のエクステリア

そして、最新のNDの登場だ。歴代ロードスターが、人馬一体の走りやLots of Funにこだわるのは、マツダがこのクルマを単なるモノとして捉えていないからだ。その姿を眺める、思いのままに走る、感触を味わう、自分らしさを主張する、仲間と集い語り合う。このクルマがいることで、人生がより楽しく、より濃密になる。クルマであることを超えた存在になることを願って、NDは「人生を楽しもう〜Joy of the Moment , Joy of Life〜」がコンセプトとして掲げられた。これを具現化するために、商品の進化の方向性を、クルマとしての機能や美しさの進化、すなわちSKYACTIVE技術と「魂動デザイン」による進化だけでなく、「人がクルマを楽しむ感覚」を徹底的に追及した。NDは単にこれまでの延長線上を目指すのではなく、クルマを楽しむ感覚、“感(かん)”をキーワードとした商品開発と作り込みが行われた。

また、2016年にはリトラクタブルハードトップモデルのRFも追加。ソフトトップとは異なる、オープンエアモータリングの楽しみが提供されるようになった。

マツダ「ロードスター」(ND・4代目)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(ND・4代目)の走行イメージ

NCからNDに乗り換えて、走り始めた瞬間「初代と一緒だ」と感じた。もちろん、初代よりもはるかに洗練され、乗り味も現代的だ。しかし、そのサイズ感やアクセルを踏んだときの感覚、ステアリングを切って腰で回っていく感覚などが、かなり初代に近いのだ。また、パワーもNCほど豪快ではなく、ワインディングでは思いきりアクセルを全開できる、ほどよいパワーがまさにNAと一緒なのだ。

また、フェンダーの“峰”がドライバーからよく見えるので車幅がつかみやすく、とても乗りやすく感じるのも、デザイナーの良心ともいえよう。そのほか、MTではブレーキペダルから足を離すとわずかにエンジン回転数が上がり、停止時からスタートしやすくするなどの工夫がなされているのも、MT初心者だけでなく、少しずぼらに運転したい、あるいは疲れているときなどにはやさしい心配りだ。

マツダ「ロードスター」(ND・4代目)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(ND・4代目)の走行イメージ

NDは、2018年の改良によってロードスターとして初めて「テレスコピック」が搭載された。これまでもドライビングポジションに不満はなかったが、この採用によってより多くのドライバーが好みのドライビングポジションを取れるようになった。弊害が予想された、ステアリングの取り付け剛性の低下なども感じられない。

「RF」/ハードトップならではの豪快な味付け

マツダ「ロードスター」(RF)のエクステリア

マツダ「ロードスター」(RF)のエクステリア

せっかくなのでRFを、あえてクルマの性格を考えてATを選んで借り出してみた。その印象はグランドツアラーに近く、ロードスターにハードトップを付けて少し大きなエンジンを載せてゆったりと走りたいというコンセプトが、とてもよく伝わってきた。特に街中で走らせていると、十分以上のトルクとパワーが溢れてくる。したがって、きびきびと走ろうというのではなく、流れに乗って少しバタつく足を気にしながらもゆったりと走らせたくなるのだ。そのいっぽうで、ガバッとアクセルを踏み込めば、荒々しく加速を開始するというギャップも持ち合わせている。言い忘れたが、1,500tのソフトトップとは異なり、RFは2,000tのエンジンを搭載している。

マツダ「ロードスター」(RF・4代目)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(RF・4代目)の走行イメージ

RFに搭載されているエンジンは、少しざらついた印象を伴っており、また若干大味だ。つまり、NCのイメージに近いといえば伝わるだろうか。以前、主査の中山さんと話をしたときに、「僕の目の黒いうちは、日本市場にこのエンジンを搭載したソフトトップは導入しない」と言っていたことを思い出した。このときは、このエンジンを搭載すれば、とてもパワフルでやんちゃなスポーツカーが完成するのにと思ったのだが、ロードスターが目指すところはやはり「手のひら感覚」で、自分の手のうちで思い切り遊べることが重要なのだ。RFの場合は、たしかにアクセルを踏み込めば豪快な走りが手に入るが、そういったところよりも高速道路などで余裕をもって淡々とクルーズさせる、そういうシーンを想定しているといえよう。ただ、そのときにはもう少し足にしなやかさがほしいとは思うのだが。

マツダ「ロードスター」(RF)の走行イメージ

マツダ「ロードスター」(RF)の走行イメージ

RFのフロア周りの剛性は少し弱めで、段差などを超えると少しブルブルとした振動が伝わってくる。だが、この剛性の弱さはルーフを閉じてしまえばかなり軽減できる。このルーフは電動稼働なので、その速度は若干遅いものの、解放感が簡単に得られるのはとても魅力だと感じた。

このように、5台を次々と乗り換えながら歴代ロードスターを味わってきたのだが、そこで感じたのは初代NAの偉大さだった。もちろん、最新のNDは洗練されて乗りやすく、また使いやすく開発されている。では、いまNAに乗って何か不便なところはあるかと問われると、答えに窮してしまう。

ロードスターの重要なコンセプト、“人馬一体”は既に初代で完成してしまっているのだ。NDではそこに気付き、ふたたびボディをサイズダウンし、パワーの頃合いを見極め、初代ロードスターの想いを世に問うているように感じる。

「ロードスター」歴代モデルを試乗して感じたのは初代のすばらしさで、マツダはその魅力を歴代モデルを通じて守り続けているということだった

主査の中山さんは、「だれをもしあわせにするために、ライトウェイトスポーツを蘇らせた偉大な先人たち。その志と情熱を引き継ぎ、30年経ったいまでも愛してくれるファンのために、想定を超える感動を提供するのが私たちの使命。この先もロードスターを守り続ける」とコメントし、「今後は、ライトウェイトスポーツカーを作るのがさらに難しい時代になっていくかも知れません。そんな時代だからこそ、私たちはこのクルマを作り続けたいと思います。それがロードスターのレーゾンデートル(存在意義)だと、私は信じているからです」と述べた。

こういう人たちがロードスターを作り続けていれば、これからもロードスターは魅力あふれ、人々を笑顔にし続けるに違いない。クルマは人が作るものだからだ。

*参考文献:
三樹書房刊 マツダロードスターの30周年
マツダロードスター30周年プレスキット

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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